復讐者、仲間の変化を知る。
リョウマ達三人はそのままジュライドの屋台の方を回った。
途中でケンのお店を助けたりもしたが、レンコの料理下手などが相まって逆に苦労を掛ける形となってしまった。
しかし、今更でもあるが、旅のメンバーの親睦がより深まっていったのを実感する。
「どうにか脱したようだな」
屋台の料理を手伝いながら、横でケンが聞いてきた。
「うん、心配かけてごめんね。これからは色々と迷惑かけると思うよ」
「いいんだよ、俺らみたいな立場は迷惑かけるのが前提さ」
リョウマはケンの事を羨ましいと思った。
彼はここ数日で屋台に参加してくれた獣人達ととても仲良くなっていたのだ。
それは彼自身の力なのかもしれない。
「俺も、ケンみたいに皆と仲良くなれたらな」
「いや、めんどくさいぞ?めちゃくちゃ舐められるし。まぁ、そうだな…。とりあえず自分が面白いと思っている事をやれば皆ついてきてくれるよ」
「自分が面白いと思う事?」
「あぁ、やりたい事でもいい、とにかく自分が前に進むうえでやる気になる事だ。大人になるにつれてそれを見つけるのは難しい。だが、見つけてしまえば、どんどん突っ走っていける。少しだけ人生が先輩の者のアドバイスだ。」
そういい、ケンは料理の方へと集中する。
(なるほど…やりたい事か)
思えば、この世界の民を助けたいという事はやりたい事だったのではないだろうか?
悩みもしたが、その中でやりたい事はしっかりと見つけられていたのではと気づくリョウマ
(じゃあ、後は仲間をどうやって共に同じ目標で進めるか)
そして、側で会計をやっているレンコに目を移す。
今日は後ろ髪をポニーテールにして活発な屋台に似合う恰好をしている。
長時間外にいるので、少し汗を掻いているが、それがまた魅力的に写ってしまうのは惚れている弱味か。
そんなレンコに説得されて、リョウマの仲でのレンコの扱いは変わりつつあった。
(レンコを復讐の相手と思うのはもうやめよう)
もう彼女には命を救われていると同意義の事をされた。それなのに復讐の相手と思うのは復讐をした者として礼儀に反するとリョウマは考えていた。
(復讐をする相手は一方的にやられた場合のみだ。これを破ると人間じゃなくなる…ような気がする)
そしてケンのお店は連日の大盛況。
そんなお客さんの列を整えるために。ラフロシアが己の種魔法で線を引いていた。
ケン曰く珍しいエルフの客引きの目的もあるとか
(その図々しさを見習わなきゃな)
結局の所、どこか汚れるところを恐れていたリョウマなのだ。
しかし、ラフロシアはそんなリョウマでも友人として付き合い続けると言ってくれた。
(ラフロシアの故郷にも次は訪れるし…楽しみだな)
最近、任務に就いて忘れているような気もするが、勿論忘れていない。
しかし、敵、この場合はイグルシア帝国が同行してくる可能性は少ないと思っている。
(道中、誰かにつけられている節もないし、このまま帝国まで無事に入る事が出来れば…。)
まずは戦力強化とリョウマは考えていた。
ようやく心の問題が晴れたのだ。
スキルは過去の経験に強く影響されるとレオルドは言っていた。
つまり、精神的に強くなれば自ずとスキルの力は強化されるのではないのだろうか?
心を病んでいた時期ですら、王国に大打撃を入れた【英雄】
そして、おそらくだが、【復讐】も戦闘で使えるようになっている。
というか、【復讐】の使い方を察したのだ。
今回の経験で。
(試したいな…)
かつて多くの魔物を討伐していたリョウマは早くもうずうずしていた。
そんな風に考えていると、急に影がリョウマの前にできる。
「どうやら息災のようだな、復讐者」
そうな名前でリョウマを呼ぶのは一人しかいない。
「…やぁ、レオルドさん。おかげさまで」
リョウマの前に現れた獅子の獣人であるレオルドは人間のとは比べ物にならない程するどいと感じさせる犬歯を見せて言う。
おそらくだが、笑っているのだろう。
「どうやら、解決したようだな、俺も受診者があのまま落ち込まれては心が痛いのでな。良かったよ」
「はは、あなたは少なくともそんな玉ではないでしょう?」
スキルは己の感情や経験を元に生まれる。
レオルドはそういったのだ、そしてそれが彼に当てはまらないわけではない。
「あなたも苦労しているのですね」
「若造が知った風な事をいうな、俺はとっくのとうに乗り越えておるわ」
おそらくだが、その件が彼の執事であるメ―ウェンがおっしゃっていたルカルドとの悶着に関係しているのだろう。
なので、深くは聞かない事にするリョウマ。
そういうのは話したい時に話す事が大事なのだという事は身を持って知っている。
「じゃあ、お礼代わりにタコ焼きなるものをくれ」
「並んでください」
「けち臭い事をいうな、俺はお前の恩人だぞ?」
「恩人でも町長でも先に挙げてしまっては並んで楽しみにしてくれているお客さんに目処が立ちません。それに仕事はどうしたのですか?」
「そんなの置いてきた、まぁたまにするのだよ」
ルカルドとレオルド…この二人の兄弟性はどこにいったかと思ったが、なるほどと思うリョウマ。
ただ単にレオルドのほうが大人という事だ。
「はぁ…ここは一旦お仕事の方に戻って戴いて、お店が終わったら届けに行くという事でどうでしょうか」
具材を切るのに集中しながら言うリョウマ。
「おう、そうしてくれるか!助かるぞ!」
「いえいえ、恩には恩で返す質なので」
そういい、レオルドは満足げに帰っていった。
「あいつ、きたのね」
するとレンコが話しかけてきた。
「別に悪い奴じゃないぞ?」
レンコはどこかレオルドを敵視していた。最初の出会いが出会いなだけに気を使っているのだろうか。
「リョウマも人が優しいのよ。普通あんな目にあったら怖くてもいいのよ?」
「まぁ、それは俺のスキルがそれだけ強いって事で…」
「はぁ…あんたって本当に人が良いんだから」
レンコは丘で説得してからどこか前よりもフランクになったように感じる。
それでも甲斐甲斐しくお世話をしてくれるので、しっかり者のメイドからおせっかいなメイドになったっという感じだ(別にメイド服を着ているわけではないが)
「レンコ!変わってくれ!外は暑くて大変だよ」
すると、列の整理を変わってくれるよう屋台の外にいたラフロシアがレンコに声を掛ける。
「いいよーラフ」
「ちょうどいい!ラフロシアさん!この具材も切っておいてくれ」
すると、ケンが入れ替わりできたラフロシアにお願いして言う。
「分かった。水を飲んだら調理を手伝うわ」
そういい、少し水を飲むと、リョウマの隣で何かの野菜の皮むきをする。
「芋よね、これ?」
「あぁ、なんか売り切れになったら賄いで芋料理を振舞っているみたいなんだ、ジュライドって芋の産地みたいだし」
「へぇー」
そういい、ラフロシアは魔法で皮むきをし始めた。
「≪皮むきの風≫」
「まんまだな」
ラフロシア程の魔法使いなら無詠唱でもいける、それをそのまま言うなんておちゃめな所を見せたいのだろうか?
「なんか、ラフも変わったね」
前は先生としての自覚のためか毅然としていたが、最近はボケる様になった。
どこかぎこちないが、そのぎこちなさが癖になるというかなんというか。
「あなたもね、ふふふ」
何より、前よりも笑顔を見せてくれるようになった。
少しずつ変わっていく日常をしみじみと思いながら、屋台での日常は過ぎていく。
「いてっ」
そんな事を思っていると、少しだけ指を切ってしまったリョウマだった。
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「いやー一時はどうなるかと思ったよ」
お昼休憩をしにきたケンは公園のベンチで遅めのお昼を食べていた。
「本当、このままでは空中分解するところでしたね」
そして久しぶりの登場のメグ。
「俺やメグはリョウマと古い付き合いじゃないから、ただ少し病んでいるだけとしか思っていなかったからな…」
最初のリョウマの落ち込みやラフロシアの失意、そしてレンコのリョウマに対する過剰な心配症は見ているこっちがはらはらした。
でも、同じ男としてあんな美女二人に思われいる同郷の男を羨ましくも思う。
「うーん、どこかにいないかなー」
「なんの話でしょうか?」
「いんや、こっちの話…でももうすぐ流狼祭も終わるな」
今は最終日の二日前。
市役所で集計している集計によれば、ケンたちの屋台が後半から大きく他の屋台の売り上げを離したみたいだ。
このままいけば優勝は間違いないみたいだ。
「といっても、売り上げは3割取られるし、賞金があるわけでもないしな」
「でも、これでレイフィールドにてお店をするに至って大きな足掛かりになりましたよね」
ここ数日共に過ごしてきたケンとメグ。
そしてその中でメグはケンがこれからどうするか聞いていたのだ。
彼はこの旅が終わったら、エルフの街から転移でレイフィールドの街へと転移するのだそうだ。
そして、先にお店を開くそうだ。
そのための書類はすでにリョウマの手で送られているみたいとも言っていた。
「楽しみです」
「あぁ、楽しみにしていろ」
レイフィールドにはすでにリョウマが敷いた日本食が多くあるそうだ。
その中でこそ、ケンの実力は確かめられると本人は思っている。
そんなやる気に溢れる中、メグは少し照れくさそうに言う。
「私、あんまり感情が表に出ない人っていわれるんですよ」
「あぁ」
メグの過去は少し聞いているケン。
「でも、最近美味しい物を食べるとどこか心がほっこりするような気がして…。」
すると、顔を赤くして言う。
「特にケンさんの料理を食べると、なんというか心がみなぎるような気がします」
(あれっ心なしか…だるさが…)
メグは緊張のあまり、己のスキルである【大喰らい】が発動して、近くにいるケンの体力を吸っているのだが、その事はケンは知らないのでただただ吸われていく。
「その…有難うございます。なんというか、こういう日常的な行為で幸せに感じるのが久しぶりで、その事に気が付かせくれたのは料理を心の奥底から楽しんでいるケンさんのおかげだと」
「あぁ…」
「任務が終わっても絶対食べにいきますからね。むしろ雇って下さい。賄い目当てで働きます」
「えぇ…そんな子初めてみたよ」
意外と食い意地が張る子なのだろうか。
メグの生まれは寂れた村なので、食に対してうるさくなるのはある意味では当たり前なのだが、その事は知る由もないケン。
そして、【大喰らい】で吸われ続けた体力は数時間すでに働いている、+非戦闘員のケンには数十秒が限界だった。
ばたんと倒れるケン。
「え!…ケンさん!大丈夫ですか!ケンさーん!!!」
その後、屋台の方まで運ばれ、ラフロシアの回復魔法で意識が回復するが、女子の前で情けない事をしてしまったと、少しの間だけケンは悶絶とするのだった。
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一方、リョウマ達のホテル。
ここにはケンのペットでβ級魔物のカツがお留守番をしていた。
人が多いのと、元はモグラの魔物なのであまり日光が好きではないので日中はホテルで主人に帰りを待っている。
「きゅーーー」
でもずっと寝ているわけではなく、時々部屋を散歩もする。
その時は少しだけ大きくなって、棚のお水やえさを取ったりもできる程にカツは賢い。
そんな水を棚から取った時だ。
「きゅ!!!」
何か得体のしれない気配を感じたカツ。
思わず、手に持っていたお水を落とす。
パリンッ
後で主人に怒られる事も気にせず、その気配の方をへと向く。
それは魔物特有の気配察知。
スキルではなく、野生の勘に近い物だった。
とても恨みや妬みの籠った気配だ。
そして、それは人間ではなく、魔物のモノだという事もカツは察した。
なぜならカツはこれの感覚を前に感じた事がある。
それはリョウマにぶん殴られる直前の話。
自分がリョウマ達に出会うキッカケとなった事だ。
あの時もこんな禍々しい気配を近場の山から感じて大慌てで逃げてきたのだ。
おかげでリョウマという強者と出会ったが…そいつよりもこの気配の主は禍々しいものを感じされる。
「きゅうーーー」
まだ遠くに感じるそれは位置を移動していない事は察して分かったカツ。
そしてその生物が何かは分からないが、どうかこのまま動かないでほしいと思うのだった。
とりあえず、ご主人のケンにそれとなく注意して、早めにここと出ようと促そうと思うのだった。
しかし、その思惑は翌日に覆される。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋




