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復讐者、誤解される

レオルド・エヴァン・ラオハート


獣人の国(ヴォンロウド)を長年守護してきたラオハート家の次男にして、魔王国にて将軍を務めているルカルド・エヴァン・ラオハートの弟。


道中、ジュライドの街の民を少しながら見てきたリョウマは知っている。


このジュライドの領主は良い領主だと。


誰一人として悲しい顔をしておらず、また日々の生活を楽しんでいる。


王国にて冒険者をしていた時、リョウマは知った。


街の人の顔はそのまま領主の行政に関係している。


沈む顔をしている民の領主は己の至福を己の財と権力に集中するあまり、悪行に手を染めている。


明るい顔をしている民の領主は己の幸せを己の至福としている領主が多い。


ジュライドは正に後者。


そんな街の領主をしているルカルドの弟のレオルドはどんな人物だろうと楽しみにもしていた。


しかし、結果は…


「なぁ…流石に温厚と言われている俺も…この扱いは怒りを覚えるぞ?」


そんな事誰もいっていないと周りは心に突っ込みをいれた。


突然のいわれのない殺意を向けられ、もし防御の構えをしていなければ怪我だけでは済まされない一撃を受けていたリョウマ。


目の前の男、レオルドはそんなリョウマの言い分を無視し、冷たい目を向ける。


「温厚?笑わせるな…【復讐】持ちのやつが平和を望んでいるわけではないだろう」


レオルドは鼻で笑う。笑う時に彼の口にある牙がきらりと光るのをリョウマの眼には写った。


「レオルド様!このお方は魔王国に居られますルカルド様の盟友であり、将軍のラフロシア様とリョウマ様御一行です!」


メ―ウェンは焦りながら説明を続ける。


「これ以上の行為は国同士の問題に発展致しかねません!!このメ―ウェン、失礼ながら申し上げます。レオルド様、これ以上のご乱心はおやめになってください」


メ―ウェンがレオルドの側によって彼の行動を止めようとする。


「だそうだ…俺もその止めにきた執事に免じて、ここで止めるなら騒ぎにはしないがどうする?」


「【復讐】持ちが何を…」


レオルドは納得がいっていない顔をする。


彼の中で【復讐】のスキルは相当に危険視されているみたいだ。


「【鑑定】持ちも他人の考えまでは分からないんだな」


「!!!」


リョウマの突然の言葉に今度はレオルドが驚いた。


「…どうして分かった?いや愚問だな」


「そうだな、答えはお前が出しているんだから」


そしてお互いに攻撃の構えをを解いて、面と向かうように立つ。


「そうしてくるという事は本当に害をなす気はないんだな」


「…それを言う前にお前の方から来たんだろ」


少し怒りを含むように言う。


「あぁ、すまないすまない…ものはついでと言ってなんだが…」


レオルドは頬を掻きながら言う。


「君のお仲間さんの剣もおろしてくれないか?」


後ろを見ると、レンコが己の刀の切っ先をレオルドの向けていた。










「無礼を許してくれ、そして初めまして、レオルド・エヴァン・ラオハートだ」


「いい、こちらこそ味方が無礼を働いてすまなかった。どうして襲いにかかったのかお聞きしたいですが、明日にしておきましょう。これを私の方から申し出るというのが私の身の潔白を証明する一因になりませんか?」


リョウマがにこりと笑いながらレオルドの眼を見て言う。


「ははは…勿論」


そうして突然…もしかしたらとんでもない大事になりかけた事件は終わった。


メ―ウェンさんが横でこれでもかと謝ってもいたのでここは彼の知識の多さが起こした問題だと思い、大事にはしない事にした。


メグやケンもリョウマの意見を尊重して特には言わなかった。


しかしレンコは不機嫌だった。


「…リョウマ、あの人切る」


レンコがまだ怒り気味に愚痴る。


刀を両手で持ってきらりと光らせる。


「刀をしまいなさい、レンコさん。いいんだ、その訳も明日聞くから」


少しばかりの不安を残して屋敷の出た俺らはメ―ウェンさんが手配したホテルへと向かった。


意外だったのはラフロシアもどこか不機嫌だった。


「ラフ…どうして不機嫌なんだ?」


ラフロシアなら大事にしない方が双方に良いという事は彼女の立場からも理解できるだろうとリョウマは思っていた。


しかし、レンコ程ではないが、普段の態度よりもどこか気を不機嫌にしていた。


そう言われたラフロシアは言葉を選ぶように言った。


「…国の関係者があんな行動をとったから呆れただけだ…」


そういうとそっぽを向かれた。


リョウマは少し不思議そうに思いながらも、深くは考えずにホテルへと向かう。


「しかし、あのレオルド…なんていうかメッチャ速かったな!俺、見えなかったよ、獣人ってみんなあんなんなのか?」


ケンはレオルドがやったあの高速移動の事を言っているのだろう。


「いや、あれは獣人中でも一部の者が使えるものだろ。獣人の獣由来の筋力で実現できる代物だ。現にあの攻撃に魔力は感じなかったよ」


獣人はその名通りに獣の体を有する人間だ。そして魔力が苦手の者が多くいる中、その動物由来の筋力で魔力を超えた力を発揮する事に長けた種族だ。


レオルドの一撃を受けたリョウマは淡々と言う。


「まぁでも工夫をすれば、人間でもできるよ」


自信満々にリョウマは口にする。


「すげーな…てかあんなのとリョウマはこれまで戦ってきたの?」


すると答えづらい事を聞いてきたケン


(これは素直に言うしかないかな…)


リョウマは素直にいって恐怖されるのではないかと心配した。


しかし、嘘をついてもどうしようもないと思い素直にいう。


「そうだね、あんな強い人は稀だけど、戦ってきたよ」


「ふーん、俺より若いのに大変だな」


すると予想したどの反応とも違う反応をするケン。


「どうしたの急に」


「いや…俺とリョウマ同じように異世界に来たのに全然違う道をきてきているから少し考えちまった。気にするな」


そう言って前の方へと歩くケン。


(違う道か…)


確かにと思う。


召喚や転移と方法は違えど、二人の異世界のでの立場は違う。


考えても仕方ないとは思うが、それでも考えてはいられない。


どうして俺はケンみたいに好きなようにできなかったと…


ズキン…


すると、リョウマの心のどこかで痛みを感じる。


それを気にしてか無意識に考えるのをやめた。


いつもの様に、考えると心が潰れてしますから。


自分の中で考えても仕方がない事だと決め、リョウマは思考を保留した。


「ではまた明日会おう、復讐者、そこで貴様の聞きたい事も分かるだろう。」


別れ際にレオルドはそういい、一行を見送った。











そのまま五人は街を少し観光しながらメ―ウェンの用意してくれたホテルへと向かう。


ホテルはこの街の領主が手配したためかとても豪華だった。


夕食を食べて、皆でお店の意見を出し合った。


メグが甘い物はどうかとか言っていた気がする。


そして久しぶりの湯船につかりながら疲れも癒した。


ケンがバカな話をしていたような気がする。


その後も久しぶりにベッドで横になって寝ようとする。


しかし、いつもの様に寝る事ができなかった。


頭の中にはこの世界に来て感じた嫌な思いが出てくる。


王国での裏切り


突然のスキル


日々感じる見慣れない景色と考え。


そして…


そこでまた考えるのをやめた。


まただと思う、いつもこれだ。


ここ数日は毎日この思考が繰り返されている。


良くないと分かっていても、してしまう。


本当に傷つきたくないから。


傷をつけられるぐらいなら、目の前の事から背く。


そうした方が利口に生きれるのだから。


そんな考えがまた彼に小さな憤りを募らせる。


そして、それすらも考えないようにする。


そして浅い睡眠が来る。


眠れば忘れる。


また思い出すのはいつも寝る前だ。こうすれば自分の精神は安定するとリョウマは知っている。


()()()()()()()()()()()()()()()


その睡眠で久しぶりに前の世界の夢を見た。


前の世界のクラスメイトといつも繰り広げていた日々。


仲の良い異性との登下校。


家族との夕食


それはあまり…リョウマは今は見たくない光景だった。

ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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