復讐者、友の生い立ちを知る
白とベージュの建物が均一に並ぶ街並み
内陸にある街だからか、日差しが強く感じるがそれと同時に心地よい風が流れるので苦しくは感じない。
「なんか西海岸のような街並みで驚くなー、獣人の街だからもっとワイルドな佇まいかと思った」
ケンが街を歩きながら感想を言う。
「ここは獣人の国でも有数の観光地だから国を挙げて都市開発が進んでいるみたいだね」
「はい、授業でも行ってみたい観光地ベスト3に入っていると習いました」
レンコはメグの話を聞いてかつての王国の教育を心配になりながらも、メグは嬉しそうに話すので話を進ませる。
「うーん…あれかな」
そしてある建物を指をさすリョウマ。
手には地図を持っており、そこの中央にはペケマークがついている。
「あの大きな建物ですか?何者なんだろルカルドの弟って」
「あれで長男…」
そう、これから会う人物というのはルカルドの弟だ。
先にルカルドより俺らの紹介を兼ねた手紙が届いているはずで、宿泊やリョウマの件で面倒を見てもらう約束をしている。
俺の弟だからきっとしっかりと面倒見てくれる!というのはルカルドの弁。
「あぁ、それも町長をしているらしい。まぁ、魔王国の将軍を担っている者の弟だ。スペックも高いのだろう。忙しそうなのに、面倒を見てくれる事を了解してくれて本当助かったよ」
後での話になるがリョウマはこのルカルドの弟に会いたかったのだ。スキルについて学ぶために。
「だからあんな立派な建物に住んでいるのか…しかし良い町長ぽいな。ここに住んでいる人は笑顔が多い」
そして今度は人を見るケン。
確かに猿、羊、熊、犬と猫と様々な獣人がいる。少ないが人やエルフにドワーフといった彼らからしたら異種族の人種もいる。
それら全員が特別暗い顔せずに生活している様子がこうして見れるのは、それ程街が豊かだという事の表れなのだろう。
「とりあえず向かいましょう」
ラフロシアが街を見るのに忙しい他の四人を急かす。
「そうだな…行こうか」
そして地図にかかれた建物まで向かうのだった。
◇
「え…」
リョウマは驚きの表情で出てきた使用人に見せていた。
「申し訳ありません…レオルド様が言うには会う予定がないと…」
「これ…ルカルドの紹介状…」
「はい…レオルド様にも確認したのですが…貰っていないと…と、とりあえず今は忙しいので後日改めてきてほしいとの事で…」
猿の使用人の男は申し訳なさそうに答える。
(…ルカルドの弟だから気さくな人だと思ったけど、まさかの門前払いとは…いや)
リョウマはある考えを思い浮かべる。
リョウマはこの展開は予想していなかったか言わんばかりに冷や汗を流す。
「ラフ…念話」
「…………分かった」
そしてラフロシアに確認の念話を頼む
ラフロシアは念話のポーズを取って、今回の問題の原因の人物に連絡をした。
「もしもし…おい、お前手紙出したか?…何…今郵便を確認して送り返されていた?住所が間違っていた??お前は何歳だバカ者!!!!!!!」
念話で声に出す必要はないが、分かりやすいように、そして珍しく声を荒げてラフロシアは念話の相手に怒りの感情を伝えるながら罵倒する。
「あいつ帰ったら覚えておきなさい…昔のようにみっちり鍛えてやる」
ガチャリという音が聞こえそうな勢いで念話を切るラフロシア。
「話で出たとおりだ、あのバカ…手紙が送り返されているのを確認していなかったようだ」
これではこちらにも非がある事になる。
どうしようかと悩んでいると奥から声を掛ける者が現れた。
「いえいえ、お二方は魔王国のラフロシア様とリョウマ様と見受けられます。お二方の名声はこのジュライドでもお聞きします。それとルカルド坊ちゃまのお友達という事も私は把握しておりますので宜しければ宿の方が手配できるまで暫くお屋敷の方で旅の疲れを癒しませんか?」
すると、奥のから羊の執事がでてきた。
「メ―ウェン執事長!」
そして先程応対していた使用人が後ろに下がった。
「ご苦労様です。ここは私が応対致しますので後ろに下がっていて下さい」
そういい、後ろに使用人を下げさせる
「お初にお目にかかります。この屋敷で執事長をしておりますメ―ウェンと申します。又、坊ちゃま達のせいでご迷惑をおかけして申し訳ありません」
突然出てきた羊の角を生やした老齢の執事が丁寧にお辞儀をする。
「いや完璧にこちらのルカルドのせいだと思いますけど…」
メグがぼそりと呟く。
最近こういうのが増えた気がする。
身内びいきでもルカルドが全面的に悪いとリョウマや他の皆は思う。
「いえ…長年ラオハート家に仕え、ルカルドとレオルド様の側に居りますが、お二方は少々関係性に難がありまして…どちらにしろ普通には面通しできなかったでしょう…」
「はぁ…」
兄弟仲が悪いのかとリョウマは感じた。
(しかしそういう話はルカルドから聞いていないんだけどな…あいつ適当だな)
「では中へとご案内いたしますのでこちらへどうぞ」
そしてメ―ウェンという執事に連れられて屋敷の中へと入る一行。
お屋敷は南国にありそうな解放感溢れる造りになっており、とても仕事でここを使用しているとは思えない造りとなっていた。
「こちらはラオハート家の屋敷兼ジュライド市役所となっています。皆さまはルカルド様のお客様なので屋敷の方へとご案内いたします」
窓が多く、外の日差しで明るい屋敷内
それを少ないが十分に見栄えのある芸術品で落ちついた模様になっている。
「凄い…」
一番若いメグが驚きの声を上げる。
「あれ…ケンはあんまり驚かないんだな」
「あぁ…前住んでいたのが貴族の屋敷だからね、でもここまで立派な雰囲気ではなかったな…」
意外と冷静なケンをよそに王城暮らしのリョウマもそこまで驚いていない。
そして応対室のような所に案内されていった。
「こちらで小一時間休憩になられてください、その時間には宿の準備もできるかと思われますので」
「あっメ―ウェンさん…でしたっけ?ルカルドとその弟さんの執事なんですか?」
レンコが少し気になっていた事を聞き出す。
「はい、ラオハート家に仕えてそろそろ30年となります。ルカルド様とレオルド様が生まれてからは専属執事としてお側に仕え、成長を見守ってきました。ルカルド様は自由奔放な方なので国を出られましたが、残られましたレオルド様と共にこのジュライドの街にやってきました次第です」
「そのラオハート家ってなんだ?」
リョウマはルカルドから自分の家族の事詳しくは聞いていない。
「ラオハート家はこの国を代々守護する一族だ。王族とはまた違うみたいだけどね」
するとラフロシアが説明を挟む。
「はい、その通りでございます。この国は内陸にあるため魔物も多くおります。我々獣人族は武に強い者もいれば弱い者もおります。その全てを守るために長年我が主人であられますラオハート家はその任を引き継いできました」
メ―ウェンは嬉しそうに自分が仕えている主人の話をする。
「へぇーあの意地悪もいいとこの坊ちゃんなんだ」
レンコは普段のだらけているルカルドの印象とは違う話を聞いて驚いている。
確かに普段のルカルドを見ていると、国家将軍になったのも平民から成り上がったようにも写る。
「ラウラは知っているのかな?」
メグは同じ年の友達が師事した相手がかなりの大物だった事に少し驚いた。
「おぉ…なんと、あのルカルド様が弟子を持つようになったと…」
それにメ―ウェンが嬉しそうに聞いていた。
「メ―ウェンさんってなんかルカルドのおじいちゃんみたいだな」
「ほほほ…やはり生まれてからお側におりますので老婆心と言いますか…執事としては間違いかもしれませんが、孫のような思いで見守っております。それを許して下さる現ラオハート家当主であるご主人様に感謝しております」
メ―ウェンが胸に手を当てて、嬉しそうに今の境遇を話す。
「きゅん…」
「なんだ眠いのかカツ?」
ルカルドの面識のないケンはカツとじゃれ合いながら時間を潰していた。
リョウマは嬉しそうなメ―ウェンの様子を見てほっこりとしていた。
なんというか友達のおじいちゃんと話している感じで楽しい。
一方、ラフロシアはメイドに注文した緑茶を飲みながら落ち着いた様子で佇んでいる。
「美味しい…」
こうして少しだけリョウマ達はラオハート家の屋敷での時間を過ごしたのだった。
◇
若いメイド服を着た犬のメイドが宿の準備ができた事を知らせにやってきた。
屋敷では用意できなかったので手ごろな宿を手配してくれた。
「有難うございます、メ―ウェンさん」
「いえいえ、問題ありませんよ」
「では、そろそろ我々はお暇致します。また明日伺ってもよろしいですか?」
ラフロシアがメ―ウェンに話しかける。
「はい、明日の昼前にお時間を用意いたしますので、その時間に来ていただければ問題ないかと…」
メ―ウェンが丁寧に話す。
「忙しいのに悪いですね」
「いえいえ、ルカルド様は最近書類作業で根を詰めれられておりますので、丁度良い休憩なるかと思われます」
「あれは辛いよな…」
書類作業と聞いて日々の仕事を思い出すリョウマ。
「しかし休憩か…俺は割と真剣な要件なんだけどな…」
「ほほほ…言葉が過ぎて申し訳ありません。しかしリョウマ様もお会いになれば私の言葉の意味も分かるかと思いますよ?ルカルド様よりレオルド様が何の権威かはお聞きになられていますでしょう?」
リョウマは勿論存じ上げている。そのために来たのだ。
そのまま部屋を後にするリョウマ達。
メ―ウェンに案内されながら玄関へと向かう。
(結局レオルドさんには会えなかったか…)
一日ずれる事に少しだけ不満を思う所があるが、それはいいとした。
そして屋敷の玄関に向かった時に事は起きた。
屋敷は玄関の中央には階段があり、一階から二階が見える造りになっていた。
そして正に出る時に二階の方からある人物が姿を現したのだった。
綺麗な鬣を風通しの良い屋敷に流れる風に流れながらその者は現れた。
「あれって」
ケンがその人物に気が付いて声を出す。
するとメ―ウェンが一礼をして声を出す。
「おや、レオルド様、お仕事はもう終わったのでしょうか?」
赤いと白を基調として綺麗な服。
少し髭があるように見えるが、兄であるルカルドの印象とは程遠い、まるで屋敷の主といった雰囲気を持っていた。
身長もリョウマよりも高い事が遠目見ても分かる。
「あぁ…少し風に当たりにな…そいつは誰だ…」
「ルカルド様のお客様達です。どうやらルカルド様の手違いでレオルド様にその一報が届いておられなかったみたいで…その代わりに私の方で応対をしておりました。明日また改めて来るように致しましたので…」
「違う…メ―ウェン、そいつは誰だと俺は言ったのだ」
そして急な殺気を出すレオルド。
鬣が不思議とゆらゆら揺れていたように見える。
「え?」
「きゅん!」
「は?」
「ん!?」
メグとレンコとケン(後肩で寝ていたカツが起きて)が突然の空気の変化に驚く。
「なんだ?やるのか?!」
リョウマも突然の事で戸惑うが臨戦態勢を取る。
「…」
ラフロシアも手元に種を用意する。
シュンッ…
すると二階にいたレオルドが突然消えた。
「消えた!」
「どこ?」
メグとケンが辺りを見渡す。
「くっ」
メグがリョウマの元に掛ける
ラフロシアも種をリョウマの方に投げる。
ドンッ!!!!!
そしてどうやったのかリョウマの前へと出てきたレオルドはリョウマに拳を突き付ける。
「ぐっ…ぐぅ…!!!!!」
そしてレオルドの拳がリョウマの手の甲で受け止められる。
リョウマはあまりの威力に目を喰らう。
足幅三つ分程後ろに下げられる。
床には熱を帯びた引きずられた跡が残る。
険しい顔をしてレオルドはリョウマに殺意を向ける。
「お前…なぜ【復讐】のスキルを持っている?」
そんな気を当てられて、戦いに明け暮れたリョウマも落ち着いてはいられない。
「何だ?どうして知っている?」
ルカルドの手紙が届いていない以上、リョウマの詳細は知らないはずのレオルドから出た【復讐】のスキル。
(なんだこいつ?これがあのルカルドの弟?)
気さくなイメージと違い、厳格且つ落ち着いた印象の男に驚く。
そしてそんな人物が突然襲ってきた事に戸惑いを隠せないでいるリョウマ。
リョウマも最悪は戦闘をする事を考え、目の前の突然の敵に敵意を露にするのだった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋