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復讐者、拳を出す



【英雄】


君はこの言葉を聞いてどう思うだろうか?


子供の頃、まだ前の異世界にいた時に俺は思った事がある。


勇者と英雄って似ていない?…と


多くの漫画やアニメの登場人物で出てくるようになった身分


しかし、その意味がどこか空中飽和しているような気がした。


ふとした思いでそのまま辞書を手に取り、俺は調べた。


調べた結果、この二つの言葉の意味は意外にも大きな違いがある事を知った。


勇者は書いている通りに勇気がある者…つまり精神的に強い者もしくは活発である者を指す事。


では英雄は何かというと…非凡な才能を持っている事や偉業を成し遂げた者を指す言葉だ。


つまり勇者は割と簡単になれるが、英雄は確固たる実績を上げなければ難しいという事だと理解した。


ここで疑問がある。


俺は前の世界で特に偉業をした覚えもない。


普通の少年を演じていた。


にもかかわらず何かを成し遂げたとされる【英雄】のスキルを得る事ができた。


【英雄】は非常に使い勝手のいいスキルだ。


上昇の上限は分からないけど、怒りで任せた時に最高で街に地割れを起こした事がある。


さながらスーパーヒーローだ。アメコミだ。


おまけに疲労感も薄い。


といっても肉体的にあんま疲れないだけで、精神的に疲れた場合はその限りではない。

冷や汗や恐怖で動きが鈍るという事だ。


【英雄】があるのに怖いって?


この世界は何が起きるか分からない世界だ。にもかかわらず自分のスキルを過信するのは愚かだと思う。


つまり危険な際に、如何に落ち着いて相手との戦闘に望めるかが、このスキルに使用において重要という事だ。


やはり格上や未知との戦闘は驚く事ばかりだ。そして時には焦りも生じる。


そんな俺の【英雄】のスキルだが…


「まぁ、この相手なら大丈夫だろう」


そしてリョウマは目の前の生物に目を向ける。


体は人の数十倍はある。


目はとても鋭く、見られている者はその鋭さに恐怖する。


「うわっ…出た…」


現に先頭周辺にいた商人や護衛の冒険者は逃げようにも恐怖で足がすくんでいた。


そしてその牙からはよだれの様なものをたらしながら、空に出た太陽に照らされてからかきらりと光る。


「こんな所でβ級の魔物なんて…」


この世界の魔物には公式で上からα(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)δ(デルタ)ε(エプシロン)ζ(ゼータ)η(エータ)の順でランク付けをされる。


つまり目の前の魔物は上位の魔物と呼べる。


こげ茶色の毛で覆われ、そして鋭利な爪を持った指で大きな上半身を支えている。


ただ広い草原のど真ん中で地中にから出て、辺りを見渡している。


周りには掘り出された土が盛り上がり緑の草原に茶色のグラデーションを描き出された。


「ギョ――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


すると大声を上げるα級の魔物


「ていうかこの見た目…モグラか?」


そして特徴的な鼻先を見る。

見た目は怖いが…鼻とかの部分を見るとモグラを連想させる箇所があるように思える。


(モグラなら地中から出ると日光で目が潰れるとかいうけど…)


なぜか辺りを見渡してから一声を上げたが、そのせいで戦闘態勢に入ったのでリョウマも身構える。


「ギョ――?!」


(こいつはそうではないらしいな)


その眼ははっきりとリョウマを見ている。


「ラフ?この魔物の名前と特徴って分かる?」


ここで物知りのラフに聞く。しかし、目の前の野生の魔物は気にせずの口から赤い吐息を吐く。


「「「うわぁー!!!!!」」」


巻き添えで商団の馬車に当たる。


リョウマとラフも避けながら話を続ける。


「あれは≪深層熱土竜(グラビートモル)≫で周りがいうようにβ級の魔物よ。使う魔法は熱と土で見た目とは裏腹に地中での俊敏な動きで来…」



すると地面に亀裂が入り、ラフロシアは会話を止める。


そして次の瞬間、先程は少し先にいた深層熱土竜が地面から出てくる。


いつの間にか潜っていたようだ。


そしてそのまま二人を空中へと飛ばす。


「…るから対策が必要ね。とりあえずここは任せたわ」

「…了解です」


すると、ラフロシアはリョウマの足元に種を落とす。


その種は空中にでると、瞬時に成長し、岩のような形にある。


岩の涙草(いわのなみだそう)


そしてリョウマはそれを足場に下にいる深層熱土竜を見る。


空中にでて動きがとれない獲物を目掛けて先程の熱の吐息を吐こうとしてする。


これがこの魔物の狩る手段なのだろう。


確かに空中に身を投げ出されたら誰も何もするができない。


「俺らは獲物じゃないぞ」


そういうとリョウマは足場の草から下にいる深層熱土竜に突撃する。


「ギョ?」


深層熱土竜も反応するが先に熱の吐息を吐こうと放出する。


そしてそのままリョウマに当たるが…


「効かん」


そしてそのまま深層熱土竜の頬を思いっきりぶん殴る。


「ギョ~!!!!!!!!!?」


β級の魔物にとっては久しく体験しなかった痛みを感じる深層熱土竜。


そのまま連撃はつづく。


空中で一回転をしたリョウマはそのまま足蹴りを殴った頬に与えた。


がはっという音が聞こえる。


そのまま着地をするリョウマ。


見ると深層熱土竜の口から吐血が見えた。


しかし、目は死んでおらず、すぐにリョウマへと視線を戻す。


「ここまで与えて…流石β…丈夫だ」


割ととどめのつもりで与えた二撃を耐える目の前の魔物に敬意を表するリョウマ。


そして敵わないと思ったのか地中に潜る深層熱土竜


「この魔物は攻撃もそこそこ強いけど、一番厄介なのは土竜特有の穴掘りで捕縛が難しい所よ」


声のする方を見るとラフロシアが自分の植物魔法で出したのか地面から出た草の幹に捕まりながら言う。


「お前の魔法で捕まえられないの?」


無事に着地をしてラフロシアに言うリョウマ。


「可能だけど、時間がかかるわ。後、さっきも言ったけど…任せたわよって」


「はいはい」


彼女は特に力を貸すつもりはないようだ。


昔から先生役を買って出るが、それはこの旅でも変えるつもりはないらしい。


「もう一回くるわ」


そうラフロシアが言うのを聞いて辺りを見渡すと、深層熱土竜が地中で旋回して地響きを奏でながら地面を隆起させ、こちらに向かってくる。


「了解」


今度は両手を下に向けて、握るような構えをするリョウマ。


ラフロシアはそれを見て彼の考えを察する。


そして、草から彼女が地面に降りるとケン、メグとレンコもやってきた。


「大丈夫ですか?」


メグが心配そうに言う。


隣でケンが目の前の光景に唖然としている。


彼は冒険者ではないので、このような光景を見るのは初めてなのだろう。


むしろ、逃げずにレンコ達の側にいるのは彼のすごさなのかもしれない。


「あぁ…β級だから問題ないだろう」


ラフロシアは平然と言う。


しかし、メグは恐ろしそうにそれを聞く。


β級は街を一つ滅ぼさせる程とされており、出会ったら死ぬとすら言われている。


「そうですか…なら問題ないですね」


しかし、それを聞いてレンコも安堵していた。


「リョウマさんが強いのは分かるのですけど…そこまで落ち着いているのもおかしいですよ…二人とも」


信頼とはここまで感覚を可笑しくさせるのだろうか?とメグは思う。


「あれ?メグは知らないんだっけ?後ケンも知らなくて当然か…」


するとレンコがメグの反応をみて答える。


そして丁度その瞬間、リョウマの真下に深層熱土竜が出没した。


「ギョ~~~~!!!!」


今度はその鋭利な牙が見える口を開けて、直接食い殺しにかかってきたのだ。


深層熱土竜はいつもこれで多くの獲物を食してきた。そしてこれは深層熱土竜にとって獲物への敬意でもある。


己の誇る牙で瞬時に殺す。


獣特有の誇りで一気に決着をつける。


「なるほど、立派な牙だ」


しかし、相手は人間。あらゆるものを利用し、己の力へと変える生き物だ。


その牙をつかむとリョウマは【英雄】の力を目一杯使う。



「うおぉ

    りぃ

       りゃーーー

           ーーーーー!!!!」


そして、掴んだ勢いのまま、今度は深層熱土竜を空中に投げ出す



「ぎょ!?」


あまりの展開に驚く深層熱土竜


「えー!!」


ケンもその光景に驚く。


人間のよりも遥かに大きな巨体が空を舞う。


常に地中に生きていたこの魔物は己が空中に投げ出されるとは想像すらしていない。


始めて体全体で感じる空気の感触


昼間にでる太陽の輝き


しかしそんな真新しい感触よりも、深層熱土竜は己を投げ飛ばした存在がいる下へと目を向ける。


リョウマは真っすぐと深層熱土竜を静かに見る。


腰を少しひねり、腕に力を溜めるリョウマ。


「お前が俺にした事だ」


そしてその巨体と目が合った時に一撃を放つ。


「返しだ」


そして初めてリョウマの顔を見る深層熱土竜


その顔はとても冷たい表情をしていた。


「ぎょ!!!ぎょ!」


降ってくる深層熱土竜の脳天を目掛けてパンチを加える。




ぐわんっ)))))))))




辺りの空気を振動させ、まるで鐘がなったかのような錯覚を出す。


「ぎっ…」



そしてそのまま、リョウマの前に落ちる


「…ラフ、殺せなかったから捕縛して」


それだけ言うとリョウマは深層熱土竜から離れた。


「…分かった」


そう言われ、植物魔法で蔓を出して深層熱土竜を出す。


「凄かった」


ケンが放心状態で無意識に答える。


そしてレンコは続けてメグに対して答える。


「…リョウマは冒険者としてΩ(オメガ)の段階まで到達しているから」


Ω(オメガ)、先程述べた冒険者の段階の特別最上位


ただ強いだけではなれないと聞く冒険者の頂点の存在。


まさに英雄、何かを成し遂げた者のみの栄光の位だ。


それをリョウマは持っていたらしい。


メグは改めて己の上司がとんでもない存在だと思い知らされる。


「Ωなんて伝説の位だと思っていました。」


「まぁ簡単になれるものではないからね…」


そういうと労いのためかリョウマの方に向かうレンコ。


メグはあたりを見渡す。


結果は商団の馬車が3つほど潰れていた


辺りも隆起のため平の草原が一変して、でこぼこになって荒れた一面を繰り広げていた。


けが人も何人か見えるが…死者はいなかった


それは【英雄】の力を持っているリョウマだからこそできたこその偉業


α級の魔物と面してこれだけの被害に抑えるのは凄いことなのだ。


(だけど…)


リョウマへと目を向けるメグ。


彼の顔は笑顔でいた。


しかし、その眼はどこか悲しそうにメグの眼には写っていた。


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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