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復讐者、温泉でだらける

ケンと出会った翌日。


リョウマ達一行はジュライドという街を目指して歩いていた。


そこで行われる流狼祭に出たいという異世界の料理人…ケンを連れて、今日も馬を進める。


その道中に時々魔物は出てきたが、どれもリョウマとラフロシアの敵ではなく、瞬く間に討伐された。


今も出てきたゴブリン達を瞬殺して、血で濡れた武器を洗っていた。


「リョウマ強いな…私達の世界でリョウマの国の人は平和的で通っているのだけどね」


「そうなんですか?」


「あぁ、謙虚過ぎで、怖いぐらいいい人のイメージが付いてるぐらいだよ」


メグがケンの話す事に耳を傾ける。


「まぁ、少しだけあっているけど、全員がそうではないよケン」


「ははは、すまんすまん」


同郷という事もあって、新加入のケンと一番話しているのはリョウマだった。


出会って一日も経っていないが、軽い冗談も言い合えるようになった。


「しかし、召喚ってそんなに頻繁に行われるものなのか?」


素朴な疑問をリョウマは聞いてきた。


すると横を並走してきたラフロシアが言う。


「いや、そんなはずはないわ」


やはりここでも博識なラフロシアが説明をしてくれた。


馬で揺れる長い水色の髪を整えながら話す。


「リョウマを召喚した召喚魔法はそもそも禁術の一つなのよ。長い間王国に秘匿されていたものだってアマンダが言っていたわ」


とラフロシアは言う。


「え?じゃあどうして一領主のところからケンは召喚されたんだ?」


「召喚魔法ではないからだね?ケン」


ラフロシアはあの後ケンから聞いた話でそう推測した。


「そうなのかな?」


当の本人は知らないようだった。


「恐らくだけど、召喚魔法ではなく転移魔法。()()()()()()()()()のままここに来たんだろう。あの魔法なら世界間でも…そもそも人間一人を呼ぶ事は可能だよ」


「その説明だと召喚魔法は人間には使えないの?」


「あぁ、召喚魔法は本来は精霊や悪魔といった精霊界か魔物暮らす暗黒界の二つから呼ぶ術なんだよ、ここにいる魔物は元々そこから来たとされているわ」


「へぇ…知らなかった」


「まだ確証のない話だからだわ、教科書にも載っていないはずよ」


ラフロシアのいう事にメグは納得をする。


「で、転移魔法だったという証拠に…ケン、君にはスキルと魔力がないのでしょ?」


そう言うとケンに目を向けて確認するラフロシア。


「えぇ、確かに俺はそのスキルも自分の魔力もは持っていないですね」


ケンは顎を弄りながらラフロシアの質問に答える。


「人間への召喚魔法ならこの世界の体の構築によってスキルが授かるし、体内魔力も生成される。だけど、転移魔法ではそれがないのよ」


「よくここまでの力で旅をしましたね…」


メグが呆れ気味に言う。


「いやー、魔王国内は安全だから護衛もいらないと言われたんだけどね…」


「多分、それ魔力がある程度ある前提でのお話ですよ」


レンコもケンの天然ぶりに呆れる。


リョウマはレンコとメグが楽しそうなのを見て安心する。


(ケンの料理が美味しかったのかな?)


レンコもメグも警戒していないようだ。


特に、メグだ。人知れず【大喰らい】のスキルを持つ彼女の胃袋をキャッチしたケン。


「でも料理が出来るだけで、こっちではかなり優遇されるんだよ、ケン」


リョウマの言う通りに何か一芸に秀でている人はこの世界では活躍する。


「あぁ、そのためにもジュライドで名を上げるぜ!」


そう意気込むケン。


そしてそのまま旅は続き、そんなこんなケンと出会って数日後の昼。


リョウマ達は魔王国の国境に着いた。


国境はしっかりと関所が設けられており、その近くには宿場町もあった。


馬を預り所に預け、宿を取る一行。


「じゃあ今日は久しぶりに町で一泊しよう」


「「「「賛成」」」」


ラフロシアがリョウマ達に指示して、本日の宿に入る。


一通り見まわったが、この宿場町は小さめだが必要なものはそろっているみたいだ。


「ここは獣人の国ヴォンロウドと魔王国を繋ぐ宿場町だからか他の宿場町に比べて盛んだな」


宿は勿論、食事処や花街もあるそうだ。そしてリョウマにとって嬉しい話が舞い込んだ。


宿の主人に聞いたら近くで温泉が湧いており、無料で入れるそうだ。


そして荷物を宿に置いて、しばらく休憩したら一行は温泉へと向かった。


木造でできた小さな旅館のような作りで囲いが作られており、しっかりと男湯女湯で分けられていた。


効能が掛かれており、疲労回復との事


「お風呂に入れば疲労は大体回復するのでは?」


「しっ!!!」


メグが子供ながら突っ込むところをリョウマが制して、それぞれ分かれて入る。


ラフロシアは残りの旅程の街や魔物の情報を集めるために冒険者の所に行ってからくるとの事


そしてメグ、リョウマ、レンコ、そしてケンはその温泉に浸かりに出ていった。









カポーン


鹿威し特有の音を聞きながら、露天風呂でのんびりするリョウマとケン。


「いや~いい湯だな~」


久しぶりの温泉にリョウマはのんびりする。


「酒あるぞー」


「いいね」


時間は夕暮れに差し掛かり、とてもこの温泉は山の上にある事で景色も絶景だ。


「じゃあ、一杯だけ貰うよ」


あまりリョウマはお酒に強くないので一本だけ貰う事にする。


ちなみに魔王国で一般的に飲まれるお酒はラガーだ。日本のより少し苦い味がするとリョウマはいう。


「じゃあ、旅に乾杯」


「乾杯」


そして温泉でお酒を嗜むケンとリョウマ。


「てか、飲んじまったけど平気?」


「こぼさない事とごみを持ち帰れば問題ないって番頭が言っていたぜ」


ぷはぁーと言いながら二口目のお酒を戴くケン。


「そういえば…これから向かう【流狼祭】だっけ?どんなお祭りなの?」


リョウマはあまりこっちの世界の行事は知らない。というか気にした事がなく改めて聞こうと思ってケンに聞いてみた。


「お前こっちに住んでて【流狼祭】知らないの?」


すると驚かれた顔で言われた。


「いや、こっち来て…忙しかったからな」


修行と勉強で一年を潰し、その後は王国で冒険者稼業を強いられていたので他国の行事には疎いリョウマ。


「それなんだけどさ、聞いたよレンコさんやメグに…もう婚約者を二人持っていて、さらに子持ちだってな!びっくりだよ!」


笑いながらリョウマの近況を面白がるケン。


「まぁね…俺には勿体ない二人だよ」


「そうなんだ」


リョウマの深い過去についてはまだ言っていない。そこらへんは時間を見て話そうと思っている。


「しかも…かの王国を潰した英雄が同じ世界の人だったのは驚いたよ」


どうやらケンは新聞を見て、リョウマの名前を見てもしかしたら同じ世界の人ではないかと思ったらしい。


「案外、いっぱいいるのかもな。この世界には俺らみたいなの」


「うーん、でもそうなるとスキルがないんだろ?魔法はもし体外魔力を扱えれば使えるみたいだけど…」


もし、他にも異世界人がいたらと思うと心配するケン。


「そうだな…俺も落ち着いたらその辺りの捜索をするのもありかもしれないな」


そういってリョウマも二口目を戴く。


「そういや、そのお祭りって一体どんな祭りなんだ?」


「【流狼祭】か?。毎年ヴァンロウドの第三の都市であるジュライドで行われる食の祭典さ。なんでも屋台料理を中心に大陸の各国の料理を食べれるみたいでさ。そこで俺も料理を振舞いたいと思ってな」


「へぇ…でも材料はどうするんだ?」


「そこが【流狼祭】のいい所なんだけど、基本的な食糧…例えば小麦とかは用意してあるみたいなんだよ。肉類や魚類は自前みたいだけどな」


料理人に優しいお祭りだとリョウマは思った。


「で、最後の日に投票をされて一番人気だったの料理人には優勝賞金と名誉が得られるってもんよ。俺はとりあえず前の世界の料理で簡単に作れる物を作って名を上げたいようかなと思う。逆にリョウマはどうしてジュライドに?」


今度はリョウマがなぜジュライドに行きたいのか聞く。


「知り合いの紹介があって、その人に俺のスキルや戦闘面のアドバイスを求めたいんだ」


「なるほど…じゃあ俺のお店の手伝いは無理そうか?地球の知識があるリョウマなら…いてくれたら助かるんだけど…」


「まぁそこまで忙しくはならないと思うから、平気だと思うよ」


元々ケンの料理にも興味があったので、手伝う事はやぶさかではないと思っているリョウマ。


「いやー良かった、これで調理が捗りそうだよ」


ケンは嬉しそうに言う。


「それよりこの後、花街に行かないか?」


ケンがリョウマを遊びに誘った。


「お前、一応婚約者がいるのにそんなの…まぁ行きたいが…いてっ!」


するとどこからともなく桶がリョウマの頭に当たる。


どこから投げられたかはすぐに分かった。


「やめておくよ」


「あっそっか…すまんな…なんか」


「いえいえ…」


そうして笑いながら風呂を楽しむ二人だった。









一方、女子風呂は…


「ふ~、気持ちいい~…レンコさんなんで桶を男湯の方に投げたんですか?」


「なんかリョウマが怪しい行動をとりそうだった様な気がして…」


そんなこんなでレンコも温泉を楽しんでいた。


「…」


温泉が始めただというメグも肩までつかり頭にはタオルをのっけのんびりしていた。


「ラフロシアさんもくれば良かったのに…」


メグは一人だけ別行動のラフロシアがいない事、寂しがった。


「仕方ないよ、情報収集も大事な事だよ」


どこか距離がある彼女


普段は仲良く話すが最年長だからか他のみんなと一定の距離を保っているような気がする。


レンコは少しだけ心配するが、今のところは怪しいと思うまでの部分はないので気にしないでいる。


「彼女には気を付けて」


そういったアマンダの一言は常に頭に入れているが、ずっと気を張るのも良くない。


そういう意味では彼女の別行動の今は久しぶりののんびりとした時間だ。


「そういえば…レンコさんはリョウマさんの事をどう思っているんですか?」


「ぶっ…」


いきなりな事を聞いてくる。その顔は少し赤くなっているが相変わらず無表情だ。


「どう思っているかって…」


改めて言われると答えに困る答えだ。


いや、常に思っているが他に人に言葉でいうのは恥ずかしさを伴う。


まさか彼女もラウラの様に…と気にしてしまうレンコ。


「あっ…先に告白しますと、私はリョウマさんに憧れていますが、異性としてではありません」


レンコの思わん事を察してからか、先に述べるメグ。


「憧れ?」


レンコはメグの答えどこか的を得ていない顔を向ける。


「はい、一度言っておいた方がいいと思って言うのですが…私のリョウマさんの憧れは異性のそれではなく…頼れる上司や師匠といった感じです。これが恋愛のそれとは思いたくないと思っています」


メグははっきりといった。


「そう…」


こんなにしっかり話す子だったっけと思うが…彼女の方を見ると温泉に浮いたお盆の上でお酒が乗っかっていたのが目に写る。


さらに、そもそも考えてみればなぜ年下の子にリョウマを盗られる心配をしなければいけないんだと思い、メグを疑うのをやめるレンコ。


折角なんで話してやろうと思うレンコ。


「そうね、答えを出すにしても一つじゃないよね」


レンコの中ではリョウマは大部分をしめており、それはつまり相棒であり恋人であり主君でありといったあらゆる関係を指すと思っている。


「なるほど…それが普通の恋愛なのでしょうか?」


「いや、自分でもいうのは可笑しいけど、かなり重い方だと思うよ」


こんな女性がそれこそ全員とかになれば、世の男は大変苦労するだろう。

そして、そのように自己評価してどこか自虐の念が心に生まれるレンコ。


「なるほど…レンコさんのリョウマさんに対する思いは重いと」


洒落かなと思うが違う事を口にするレンコ。


「どうして私の事を聞こうとしたの?」


恐らくだが、先程の質問はリョウマの事ではなくレンコ自身の事を聞こうとしたのだろうと思った。


「いえ、私なりに感情を取り戻そうと思っていて…時間を掛けてゆっくりとですが、それで感情面で気になった事は人に聞こうと思ったのです」


目の前の少女であるメグは学園の頃の圧力で表情を固くなっている。


少しずつ和らいでいたが、まだ普通の表情を取り戻していない。


「ふーん、じゃあ逆に聞くけど、メグはいないの?気になる子?」


「…いないですね」


「本当にいなそうね、その答え方だと…」


メグが嘘がうまいとも思えないので話の路線を変える事にしたレンコ。


「じゃあケンは?料理人でかっこいいと思うけど」


「タイプではないですね」


あっさりというメグ。


意外といい仲だと思っていたレンコは少しショックを受ける。


「ルカルドは?彼は将軍で結構モテるよ?」


「女遊びしてる人はちょっと…」


「…ガモンさん?」


「あの人も同類…それも…ガモンさんはミルダさんがいるじゃないですか。そうなるとミルダさんなんでガモンさんの事意識しているんだろう」


一途な人と恋愛に興味がない女性の会話。


自然と矛先は違う女性の話になり、自分の事はそっちのけで話は進み、女性陣のお風呂は終わるのだった。

ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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