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復讐者、見つけた料理人

草原熊(そうげんぐま)を狩る事に成功したリョウマだったが、その肉の処理をどうすればいいのか知らなかった。


「さてと…どうするかこの獲物…」


リョウマは先程仕留めた草原熊を見て思う。


大きさはリョウマの体は二つ分ある程に大きく、荷車がない限り馬だけでは運べない程に大きい。


「幸い、まだ止めを刺していないからこのまま見過ごすのも手だよ。私達には解体の知識がないからな」


リョウマが疲れていた旅の盲点をあっさり言うラフロシア。


「いや…そうだよな…冒険者の解体と肉屋の解体は違うもんな…」


解体が出来てもどこが食べるかなんて知らないリョウマ達一行。


リョウマとレンコは冒険者をやっていた時期に解体という物をした事があるがそれは冒険者にとっての解体。


指定部位や依頼の部位を切り取るだけのもの。終わればその死体は燃やすか埋めるかが規則としてある。


それに解体が出来た所でどの部位が食べれるか分からないし、最悪衛生面での問題が起こる可能性がある。


そんなリスクを取る程に少なくとも女性陣は飢えていなかった。


殺しておいて、残すもの気が引ける。


空腹で死にそうなら仕方ないともいえるが、空腹で死にそうという訳でもない。


「この熊さんが襲ってきたならともかく…完璧にリョウマさんの都合ですからね…」


メグもリョウマを非難する。


「…しょうがないな…運べない、解体できないときたら見過ごすしかないか…」


ひと暴れして冷静になったのか…熊を見逃そうとするリョウマ。


「うん?」


すると、ラフロシアが道の先を凝視する。


「あれは誰か来ていないか?」


他の三人も釣られてみると確かに旅人らしい男が歩いている。


しかし、リョウマが凝視したのはその荷物だった。


なんと、その男の鞄にはフライパンらしきものが見えた。


「!料理人か!」


リョウマは嬉しそうに言う。


「まさか…旅人で所持しているだけだろう?」


レンコもそんな都合のいい事はないだろうとリョウマを落ち着かせる。


「とりあえず、聞いてみようぜ。もしかしたら解体の知識を持っているかも。」


そういうと、確認を取る前に旅人の前へと走るリョウマ。


「…行っちゃった」


「あいつ…旅の目的を忘れていないか?」


「どうします?これでもしも加わったりしたら?」


メグは心配そうにラフロシアとレンコの年上コンビに聞いてみる。


「まぁ…将軍の私としては優秀で戦闘をこなせるなら旅に一緒に連れてもいいと思うが…そんな人材が転がっているとも思えないな。次の街まで一緒が精々だな。」


ラフロシアは冷静にもしもリョウマが遠く目の前に写る旅人を連れてきた場合の話をする。


「なんか楽しそうに話している」


レンコも遠くだが、何故かリョウマが嬉しそうなのを感じて微笑む。


「熊起きないかな…」


メグはリョウマの事よりも、身近で気絶している草原熊が起きないか心配している。


そして暫くして時間が経つと、リョウマが旅人を連れてきた。


「いやー、お前まさかだよなー」


「いやー、まさかのまさかですよ」


リョウマ達は何か会話をしているようだ。


「どうしたのですかリョウマ?」


レンコが不思議そうに聞く。


「聞いてよ皆!この人、俺と同じ世界から来た人みたいなんだ」


今度はこちらの世界の言語で話すリョウマ。


「え!」


「何!」


「そんな事ってあるのですか!」


「初めまして。ケンって言います」


旅人の男は自らをそう名乗った。


その()姿()に女性陣は唖然とした。









「なるほど…草原熊ですね…これなら俺の道具でも行けそうです」


そういうと、ケンは血抜きから草原熊の解体を部位単位を一人でやってのけた。


「凄い…こんなに早くできるなんて…」


メグはその達人ぶりに驚く。


「いや、助かったよ、ケン。でなければこのままこの獲物を見逃していた所だから」


「それは勿体ないよ、草原熊は美味しくて警戒度が高くて中々出会えないんだ。出会ってもとんでもない早さで逃げるんだ。」


ケンはリョウマ達の知らなかった情報を話す。


「ある意味であのリョウマのとっさの行動は正解だったのね」


ラフロシアがリョウマに小突きながら突っ込みを入れる。


「解体は済んだけど、この肉どうしますか?」


ケンは解体して食べれる方の部位を指さす。


元あった草原熊の半分程の肉の量になった。


「その量なら私の魔法で冷凍できるかもしれない」


そういうと、何かはツボの様な花を5つ出したラフロシア。


「ラ・ルティーと呼べれる植物で通称【保存草】」で中で冷凍できるんだ」


そうして中に入れる作業を終えると再び馬に乗るリョウマ達。


「ケンは馬に乗れる」


「あぁ乗れるぞ。俺のは食材を買うために売っちまった」


なんか悲しい事を言っているが、乗れるなら彼に馬を貸そう。


「さっき俺らと次の街に行くのは了承してくれたから、馬を貸すよ。代わりにメグはレンコと一緒に乗ってくれ」


「分かりました」


そうして再び道をすする5人になった一行。


そしていつも通り夜を迎えて野営地を建てる事になった。


「凄い…ラフロシアさんって何者ですか…」


「まぁそのあたりも飯の時においおいな」


まだケンにはリョウマは以外のメンバーが何者かも旅の目的も話していない。


彼は自分と同じ境遇のリョウマを信じているだけだ。。


そしていつも通りに 夕方まで歩き、そのまま【妖精の東屋】で一息をつく。


そして待ちに待った時間が来た。


「じゃあ肉を焼きますか!」


「そうですね」


リョウマの声にメグが相槌を打つ。


「私は野菜だけでいいぞ」


「一口もダメなんですか?」


ラフロシアは断り気味にいい、レンコはそれに対して質問してみた。


「にぎやかですね。」


そして新しく加わったメンバーのケンは手に解体した肉を目の前の鉄板に載せていき、焼く。


ジュっ


ジュっ―


肉が焼ける時の特有の弾ける様な音を聞いて楽しむ一同。


そして段々とその音も小さくなり、それと同時に焼き色がしっかりと濃くなっていった。


そしてついに暫くして…


「もういいですよ。どうぞ」


「戴きます!!!」


言うが早いか、すぐに食いつくリョウマ。


「………」


そしてしばらくの黙ってしまう…


「どうした?リョウマ?」


心配そうに聞くレンコ。


「……う…うまぁあああああああああ!なんだこの肉!」


リョウマはあまりの味に笑顔で声を荒げる。


「そんなにか…なら私も…!」


そう言うとレンコもケンの焼いた肉に手を付ける。


「美味しい!美味しいよ!こんな肉初めてだ!」


レンコもリョウマに続いて歓喜に感じながら肉を味わう。


「…そんなにですか…」


メグは豹変した二人を見ながら恐る恐る食べた。


「確かに…美味しいです…」


メグはそんなに大きく変わってはいなかった。


ただ、珍しく微笑みながら味の感想を言っていた。


「裁いた直後だと味も格別ですよ。後は焼き方に注意すれば、とても美味しくいただけるんだ」


ケンはその()()()を皆に向けながら言う。


「とりあえず、先に飯だ!ケン!腹ごしらえが終わったら皆紹介してもらいから!」


「分かりましたどんどん食べてください」


そういうと3人は食事に舌鼓ながら夕餉を楽しんだ。


一人野菜のみを食すラフロシアは少しだけ羨ましそうに見ていた。









がっつりと食べたリョウマ達。


彼は全体の半分を食べきった。


「はぁー満足満足」


膨れたお腹を叩きながら言う。


「久しぶりの肉も悪くないな、それに食べやすかった」


レンコは草原熊の肉が食べやすかった事を口にする。


「あ!洗い物手伝います!後、肉焼いていただき有難うございます!」


メグが気を使って皿洗いを手伝おうとする。それとお礼も忘れていなかった。


「大丈夫だよ、一料理人の端くれとして料理を振舞えて楽しかったよ」


ケンは嬉しそうに言いながら食後の片づけをしていた。


「じゃあしばらくしたらみんなで話そうぜケン」


そして流れに流れていた自己紹介の時間をようやく設けるリョウマ。


「リョウマ…確かに人は良さそうだがこんな簡単にいいのか?」


ラフロシアはそんなリョウマに注意を入れる。


実は彼女は全く肉を食べれないわけではない。


長い森の外での生活…それで多少肉の味というのは知っている。


ただケンの事を完全に信頼していないから、常識の中のエルフでいる事にして様子を見ていたのだ。


だからこそ、少し先程の食事は寂しそうに見ていたのだが…


「大丈夫だよ、あいつはどこかの国の回し者はない。いわば所属がない状態だ」


「だからなんでそんなのが分かる…」


ラフロシアはなぜそんなにケンを…会って間もない男を信用できるかリョウマに聞く。


それ彼の才能なのかとラフロシアは思っていたが…


「あいつ、料理に金注ぎすぎて金がないから付いていきたいってさ…面白いだろ!」


ケンを貶める話すリョウマ。


そして皿洗いが終わったのでメグとケンが居間の方に来る。


そしてテーブルの椅子に座ると彼は始めた。


「では自分から…遅くなりましたがケン・アウロナルと云います。この先にある魔王国の街で老人に召喚されました。」


「召喚がだと?その街の名前は?」


ラフロシアは召喚で来たというケンを疑う様ににらむ。


「カザフロタルという街で親父…俺を召喚した人ですが、名前はレイモンド・フローバルという貴族です。」


「フローバル氏…その街の領主ではないか、確か子爵の地位で人柄の良い御仁だった…数回王城での懇親会にも来て顔を合わせた事がある。でも最近は病に伏せていたはずだが…」


ラフロシアがケン云っている事に合わせていう。


「ええ、呼んだ理由も家族がいないのと寂しさを埋めるために呼んだみたいで…本当は魔獣を呼んでペットにしようとしたところ、俺が出たみたいです。俺の場合は死にそうだった所を救われた形だったので居候で親父と親父の余生を楽しんでいました


「つまり…もうレイモンド氏は…」


ラフロシアは悲しそうに聞く


ケンの顔は険しくなる。


「えぇ、2週間前に亡くなりました、しかし病ではなく、老衰だったよ。最後は寝る様に行ってしまったのは悲しいですが…同時に良かったと思います。そして、俺は身の回りの整理をした後に兼ねてからしたかった料理の旅に出たんだ。ついでに王城に向かうはずだったんですが…そこでリョウマ達に出会ったという流れだ」


ここまでの話をするケン。


「王城にはどうしてですか?」


メグが質問をする。


「勿論、召喚をした事の事後報告みたいです。レイモンドさんには自分が死ぬまで隠せ言われていてね。死んだあとはどうなるか分からないから魔王国に身を置いた方が置いてくれと言われてね。一応、レンモンドさんの紹介状も用意してくれていたんだ」


そういい、カバンか手紙を出すケン。


それを確認したが、ケンを勝手に召喚した事の謝罪から始まり、また事故だった事が記されていた。しかし、孫の様な存在で大切に育ててほしいとも…


ラフロシアはその手紙を注意深く読む。


「…」


「ふーん、でその料理の腕前は?」


ラフロシアが手紙を読んでいる時に、レンコが次の質問を言う。


「解体はレイモンドさん狩りが趣味で、その時に習ったんだ。料理に関しては前の世界で仕事と趣味も兼ねてやっていた事なんだ」


ケンは自営業の店で働いていたらしく、色んな家庭料理を振舞っていたという。


そして一番気になっていた事をラフロシアは聞いた。


「なんで金髪で目が青いの?」


そうリョウマと同郷といっていたが、彼は金髪で青い目の白い肌の正に西洋人のような顔つきをしていた。


目立たないが。髭もうっすらとある。


「俺はリョウマの同じ世界から来たけど、出身は全然違うんだ。まぁ人生の半分ぐらいはリョウマのいた国にも住んでいたけどね」


彼はなにやらハンバーガーが美味しいとされる国から来たのだという。


それがリョウマの留学先でもあったとか…


「びっくりしたよ、最初は」


「あぁ…思わずどうしたって母国語でいったら、それを突っ込まれて同郷だって事だって事がわかったんだよな」


初対面の邂逅を言うリョウマとケン。


「ケンがいれば、国の料理事情も大きく改善されるよ」


リョウマは嬉しそうに言う。


「ふむふむ…なるほどね…それはやりがいがあるね。俺で良ければ是非やりたいよ」


ケンも前向きにこの話に乗るようだ。


どうやらリョウマは少なくとも、ケンを引き込むつもりらしい。


「…では逆に私達の自己紹介と旅の目的を言おう」


今度はレンコがケンに事情を説明する。


一通り説明し、スキルの事は伏せて話す。


「なるほど…じゃあとりあえずはエルフの集落まで同行してもいいかな?」


「えぇ…それまで料理番をしてくれたらこっちも助かる」


ラフロシアもどうやらケンが来る事に同意したみたいだ。


「よし!料理人確保だ!」


この新加入に一番喜ぶリョウマ。


「俺も丁度良かったよ…実はこの先でちょうどお祭りが開かれるんだ。それも料理の…少し王城までは遠回りだけど…このお祭りは外せなかったよ」


すると、興味深い事を話すケン。


「この先と云えば…獣人の国の都市、ジュライド?」


ラフロシアは知っているのかケンに聞く。


「そう、1週間後に1週間程行われる食のお祭り…通称【流狼祭】と呼ばれるのがあるんだ。そこで出店をしようと思っていたので、丁度良かったです。」


「いや…しかし…我々には旅事が…」


レンコが言いにくそうに話す。


数日ならともかく、1週間の拘束は厳しいとの判断だったが…


「じゃあしばらく留まろうぜ。そこで会う人もいるから一週間ぐらいならゆっくりできるよ」


リーダーのリョウマがそういう。


「…なら、問題ないわね」


ラフロシアがそういい、他の女性陣も頷く。


こうして、ケンを仲間に加えて、一行は獣人の国のジュライドへ足を進めるのだった。

ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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