復讐者、いざ参上
煙草の香り
この煙の香りには落ち着く効果があると信じているマッコウ。
スーハァー
煙草を吸いながらマッコウは、ガーゼルとザッカが来るのを待った。
他の仲間もいるが、基本的に彼は自分より強いものしか認めていない。
男は強さ、女は可愛さ
この言葉をそのまま生きているのがマッコウという男だった。
「まだかー?」
ホントはさっさと攫った女と事を構えるはずが、入り口にいるローナに止められてしまった。
待っている間に出た鑑定のせいで、彼女…メグにも手出しができなくなった。
万が一の対象の赤ん坊の生贄として彼女は生かす必要があった。
さらに起こってしまったこの騒動。全くついていない
マッコウの目当ては金だ。
ガ―ジルの実力と非公式だが…後ろにいる帝国の財力。
それで莫大のお金がいただける。
しかもする事は子供の誘拐。
まぁ、家族の一人は誘拐するようにと言われているので、従来の誘拐よりも手間はかかるが…それもこれから貰える金額を考えるとどうでもよくなる。
(場合によってはおまけもあるからな…女とか)
この話がエズカルバンで出回った時は良い話だと多くの野郎は飛び込んだものだ。
しかし、ザッカが加入した時点で皆怖気づいて、逃げた。
“狂い殺し”
エズカルバンでも恐れられる悪の肩書の一つ。
その一人がザッカ。
あらゆる殺しを達成させるために関係ない人まで殺すためその名前がついた。
まるで、殺しの練習をするかのように…
先に加入したマッコウもザッカが戦列に加わった時は戦慄をしたものだ。
(なんでも元々ガ―ジルと組んではいたみたいだが…)
そして会って話してみるとただの青年だったのはマッコウは驚いた。
あまりに噂と違い過ぎて、最初は思わず喧嘩を売った程だ。
そして戦ってみて後悔した。
かなわない位に強かった。
あの時に一言が怖くてマッコウは忘れられない。
「今は気が向かないから…殺さないでおく」
彼にそう言われたのは救いと同時に恐怖だった。
身近に気分次第で命を狙われる状態。
普通なら頭が可笑しくなる。
しかし、逆にマッコウは安心もしていた。
彼がいかなる敵にも負けるはずないと。
そして、それを従えるガ―ジルなら問題ないと。
なので、のんびりと煙草を吸う。
そして、倒れているじじぃと子供を見る。
じじぃ事ロウドはぐったりと倒れていた。
子供は寝ているのか動かない。
聞けば、このじじぃには奥さんが一緒に居たらしいが、ザッカは逃がしたそうだ。
ザッカに言えないが、どうせならこんなじじぃを逃がして、奥さんの方が楽しかったのにと思う。
(そもそも、なんでザッカは逃がしたのだろう?)
これまでの事を考えると経歴に泥を塗るような事だ。
それも、兵士ではなく…なんでもないただ女性だ。
「はぁー」
再び息を吐くマッコウ。
そんな事を考えても仕方がなかった。
結局の所、ザッカにしかその本意は分からない。
案外、自分の時と同じで気が向かなかっただけかもしれない。
天才という者はよく分からないものだとマッコウは思う事にした。
どうせ任務もすぐ終わる。
そんな事を考えているうちに……息がしづらくなった。
「ケホケホ…タバコが気管に入ったか?」
軽く咳をする。
すると、今度は首がうまく動かない事に気が付く。
肩こりかと思い、体を動かそうとするが…ある感触を感じる。
「!!!!?」
(なんだこれ…!いや、これは……俺はずっと決められていたのか!)
自分の首の周りを触るマッコウ。
最初は分からなかった、しかし、段々とそこのある感触が分かる。
腕だ。
(腕!なんで?いや…技が決めらているだと!!!)
そこでマッコウは自分の認識がおかしい事に気が付く。
(腕!間違いない!誰か俺の喉を締めている!)
なぜ気づかなかったのか。
マッコウはすぐに答えを出す。そんなのは簡単だ。この世界では幽霊よりも信じられない話がある時に言われるものがある。
(スキルか!くそ誰が!)
「かっ…はぁ!!…」
何か掴むものはないか、せめて投げれるもので入り口にいるローナに知らせなければ…
しかし、手元にそのようなものはない。
マッコウの首を絞めている人が全て、彼が気づかないうちに動かしていたのだから…
(やべぇーーーーー!!意識が!)
そして、どんどんマッコウの目の焦点がなくなり、彼の口から泡が出る。
しかし、誰も気づかない。
不思議な事に…そばにいるロウド達も…
(………)
そして、マッコウの顔を下に向け、手足が力を失ったかのようにだらりとなる。
そこでマッコウを倒した人は姿を現す。
「うぉ!」
ロウドは小声でびっくりする。
気づいたら、そばにいた男は倒れており、代わりに女の子が佇んでいたのだから。
「ロウドさんですね?助けにきました。」
始めて倒した敵を前にして、マッコウを倒した少女、ラウラは笑顔でロウドに聞いた。
(いつからそこの?)
ロウドは驚く。スキルには“隠密”といった行動を静かにし、極力気づかれないようなのはある。
しかし、ずっと倒れている男の側にいたからこそロウドには分かる。
隠れている訳でもなく、そこで彼女はすんなりとマッコウの首を腕で締め上げた。
いたのに、おかしいと思わなかった。
隠れているとかそんな次元ではない。
(この少女のスキルなのか?)
ラウラ自身もこのスキルに驚愕している。
しかし、まずは助けなければいけない命が彼女の目の前にある。
「ロウドさん?」
真剣な顔でラウラは確認をする。
「あぁ、間違いない、私がロウドだ。こっちが息子のジェム。彼の方でいいから先に縄を頼む」
そういい、ジェムの方を優先させるロウド。
まだ気絶しているのか、起きない。
それに従い、ジェムの縄を解き、そしてロウドの方も解く。
「有難う、息子は魔法をかけられて眠っているんだ」
そういい、ジェムの安否を確認したロウド。
しかし、ジェムを助けようとした瞬間に後ろから物音がした。
入り口のローナが気が付いたのだ。
「ちょっと!あんたら何してんのよ!」
振り返ったローナは驚いた。
先程までマッコウが見張っていたのに、その本人が倒れている。
「でもまだ人質は解放していないようね。これで形勢逆転ね。」
ローナがが微笑んで言う。
「くっ!」
苦々しく唇を噛むラウラ。
「この女のスキルかい?やっかいだが、それだけだ。魔法も戦闘もそこまでではなさそうね」
それがあれば、入り口にいた彼女が真っ先にやられるはずだ。
「おとなしく捕まりなさい!」
ローナは観念しなさいとばかりにラウラに言う。
すると、後ろに目が行く。
(あれは!)
なんと、マッコウの腕が動いたのだ!
そして、そのままマッコウはラウラを抑えにかかる。
「きゃっ!」
「はははははは!!!!捕まえたぜ、お嬢ちゃん!さっきのはいい締めだったぜ!今度は俺のでどうよ?」
(しまった!生きていたのね!)
ぎゅうぅぅぅぅうぅとラウラの首を絞めるマッコウ。
「脇が甘いね!ちゃんと気絶したか確認しなきゃ?」
首を絞めるどころか、暴力自体が始めただったラウラ。
そんな少女が大の大人を気絶まで追いこんだだけでも褒めてあげるべきだ。
しかし、それがこの状況を作ってしまったのも認めるしかない。
(やばっ!?)
せっかくスキルを得て、皆の助けになると思った。
これで少しずつ変れると思ったのにとラウラは思った。
(私最後まで…こんな感じ。)
涙目になるラウラ。
息苦しいだけではない。このまま終わるかもしれない己の人生に悔いているのだ。
ロウドも助けようとマッコウの腕を外そうとするが、一向に外せない。
「邪魔だ!」
「うぐっ!」
そして傷口を蹴られ、飛ばされてしまう。
大の男をすら蹴る脚力を持つ男、それがマッコウ本来の実力。
そんな男が少女に気絶されたのだから、彼のプライドは地に落ちているのだ。
マッコウは最高に怒りで切れていた。
「あぁー?もう終わりか?まだまだ!苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで苦しんだ後に…ぽっくり行きな!はははははは!!!」
ラウラから顔は見えないがかなりひどい笑みで笑っているだろうと思った。
そして、今度はラウラの意識が遠くなる。
「おっ?そろそろかー?まぁ意識がなくなっても俺は絞めるけどな!」
(あぁ…お母さん、お父さん…メグ、レンコさんにアマンダさん…)
ラウラは家族と友の名前を思い出す。
(リョウマ…)
そして、最後に想い人の名前を心で唱える。
「さぁさぁさぁさぁさぁさあさぁさぁさぁーーーー!死ね―――!!!!!…」
マッコウの勢いが上がり、力が増す。
マッコウの力が最大限になろうかとする……その直前だった。
ピキッ
「あ?」
マッコウは彼の真上から木くずを落ちるに気が付いて、その次の瞬間。
ドガーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!
彼の真上からなんと天井が抜けて、何かは分からないが落ちてきた。
「ぐぶぇばっ!!!」
そして、その勢いで、彼の腕は千切れて、マッコウは潰れた。
そして、多少血まみれになるもラウラを解放する。
「……けほっ…はぁ!」
新しい息を吸うラウラ。
「え?」
あまりの出来事に言葉を失うローナ。
「何が?」
同じく、目の前の衝撃に目を奪われるロウド。
「うん?」
そしてその衝撃に起きるロウドの息子、ジェム。
そんな4人を放っておいて、屋根をぶち破り、地下室へと落ちて来た物………いや、者のシルエットが舞い上がった砂埃から浮かび上がる。
「あっ!やべー敵か味方か確認していなかったけど…大丈夫か?」
場の雰囲気とは違う口調で呑気に言うその男。
(誰?)
ラウラは意識を正しながらその男を見る。
「最悪…あのガリガリエルフに頼むかー」
その男の耳には猫の様にぴんとしていた。
ぽりぽりと頬を掻きながら言う。
そして、その者はラウラの存在に気が付いて声を掛けた。
「あっ!ラウラちゃん!じゃあ、こいつ敵かー良かった!」
そう言いながら、短い鬣をかきながら言う男。
その男はリョウマと同じ立場であり、魔王国三大将軍が一人。
そして獣人の最高責任者
名をルカルド・エヴァン・ラオハート
その人がそこに登場した。
「で?これ今、これどういう状況?」
そんな男はとぼけるかのに様に状況を聞くのだった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋