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復讐者、復讐を思い出す

「ここだ」


リョウマ達は花街にあるガ―ジルのアジトの前に佇んでいた。


「お前ら!周囲に避難指示を出してこい!」


「「「はっ!!」」」


ガモンは部下の数名に住民の保護を頼んでいた。


しかし、目の前に娘、そして自分の部下出もあり仲間の存在がいるのだ。


リョウマの耳、そして頭には彼女らを助ける事しか頭になかった。


ゆっくりとアジトである酒場の前へと歩くリョウマ


「何をするのですか?」


ラウラが心配そうに声をかける。


中には未知数の犯罪者達。


そこに足を踏み入れるのを危険と彼女は思ったのだ。


「大丈夫よ」


すると、レンコは止めに入ろうとしたラウラを止めた。


「リョウマはただ自分の大切なものを早く助けたいの。そのためにしか行動ができないの、だから任せましょ」


そういい、周囲に様子を見るよう諭す。


一方リョウマは自分のスキルでより詳しい状況を把握していた。


(ここにはヒカリはいないみたいだ…ならやってもいいか)


手っ取り早く、そして未知の相手を屠る時の方法はいつでも単純だ。


一網打尽だ。


腰を低く構え、握りこぶしを作る。


腹に力を加えながら、徐々に腕にもその力を伝染させ、強力な力を放てるようにする。


シュッ!!!!


そうして、5mはまだ離れているガ―ジルのアジトへと向けて空中を殴る。


そして、それはすぐに起きた。




どっかんっ!!!!!!!!!





寂れた酒屋の入り口を吹き飛ばす。



破片は外へと塵と化し、大きな破片も空へと高く舞う。


アジトの大半を抉る様にして大きな穴を出来た。


もはや、アジトには屋根がなく、倒壊したようにただ少し開けた土台が見えるだけだ。



そして、そこを中心に一人の大男が佇んでいた。


漆黒の大斧でリョウマの拳を受けきったのだろう。


足元には後ろへと引きずられたような跡がある事から只者では事は伺える。


何よりも、あの惨劇を目の当たりにして彼は笑っていた。


「ひゅー、聞いたぜ今のは!」


「…俺の仲間はどこだ?」


リョウマの顔は怒りで満ちていた。その額に青筋が見える。


「あー!!リョウマ!町を壊すなぁー!」


ガモンが大慌てでリョウマの行った事に注意を入れる。


周りの衛兵は怯え切っていた。


「…すごい」


そしてその光景を見たラウラはそのあまりに現実離れした行いに唖然とする。


「ふふふっ変わらないわね」


ただ一人、レンコは彼の行いを肯定し、笑っていた。


「私も挽回しないと」


そして、気持ちを変えて戦闘態勢に入る。


そんなみんなの心境をよそにガ―ジルを睨むリョウマ。


ガ―ジルはその迫力に驚く。


「お前は一体誰だ?」


「俺は魔王国三大将軍の一人、リョウマだ」


「ほう、お前がか、見た目では分からないものだな」


ぱっと見、ただの青年であるリョウマが先程の事した事に驚いてるようだ。


「俺はお前が誰なのかは実際どうでもいい…



…俺の仲間と娘はどこだ?」


「ほう、さっき来たあの子たちの親か…とんでもないものを引きやがってマッコウのやつ」


ガ―ジルは奥へと逃がした若造に叱咤を入れる。


「あいつらならこの奥の地下室だが…それにしても、早いな…もうここを暴くとは、もう少し掛かると思ったぜ」


「こっちには優秀なスキルを持っているやつがいるからな」


ガ―ジルから見て右側にいた男、ガモンがいう。


ガモンは辺りを見渡し、ある人物がいないか確認する。



「…移動スキルの女はいないみたいだな…」


「メグを誘拐した男もいません。」


その場には女はおらず、マッコウの顔を覚えているラウラもその事を告げる。


「ローナを知っているみたいだな、あぁそうだな、俺ができるアドバイスは早くした方がいいってことかな」


ガ―ジルは不敵に笑う。


「…レンコとラウラは追ってこい、可能なら殺さずにだが、状況を見て判断してくれ。最優先は味方の命だ…



そして…俺はこいつの相手をする。」


そういい、両手の拳に力を入れ、構えるリョウマ。


ガ―ジルはそれに応える様に大斧を構える。


「だがぁ!そう簡単には…「行かせるよ」 !!!」


そう言ったそばから、リョウマはガ―ジルの元へと瞬時に飛び、そして顔面へと殴った。


バゴッ!!


「ぐっ!!!!」


しかし、頑丈なのかガ―ジルはすぐに持ち直して大斧を振り上げる。


「痛ぇーじゃねぇか!」


突風を感じさせるほど早く振りぬかれた大斧はその速度に合わせて力を増幅させる。


ギンッ!!!




しかし、そんな斬撃を覆すかのように鉄と鉄が打ち合う音がした。


リョウマは大斧を両手で抑える。


(こいつの手は鉄かなんかか?!)


そして、ガモンとその衛兵もそれぞれの敵と向き合う。


「レンコのねぇちゃんとラウラちゃん!きっと誘拐された人はあの奥の地下室にいる!花街は地下が広い噂もあるから十分に注意していってくれ!」


「わかりました!」


「了解」


二人は走り出す。


すると、リョウマはレンコへ声をかける。


「レンコ!…」


レンコはリョウマの方へ顔を向ける。


「しっかりやれ」


リョウマはレンコにだけ聞こえる声で言う。


「こんなやつがいるんだ、もしも敵わない敵に合えば…俺のパーティ仲間だったころを思い出せ」


そういい、リョウマはガ―ジルへと飛びかかる。


レンコはまだ正直彼が何を彼女に伝えたいのか分からないでいた。


叱りたいのか、心配しているのか


しかし、ヒカリを助けたいという思いは変わらない。


「分かったリョウマ!」


(待っててヒカリ!)


ラウラの後を追って、レンコも続くのだった。


母でもあるレンコにその走りに一切の迷いはない。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



そのまま地下室の階段を下りたラウラとレンコは唖然とする。


「何気に広くないですか?」


ラウラは広く建てられていた地下室に文句を言う。


それは昔のレイフィールド名残でもあるのだが、最近から他国から移住してきた二人には分からない。


しばらく地下室を走ると二手に分かれる道に出た。


「考えている暇はないわ、私が左へ、ラウラは右に」


「了解です」


そして二手に分かれるラウラとレンコ。


そのまま暫く、レンコは暗い道を走っていた。


(ヒカリ、メグ!無事でいて)


彼女の中でもう誰かを見捨てるのはこりごりだった。


自分勝手に見捨てた結果、リョウマに傷を与えて苦しめている。


それでもリョウマは自分を生かした。勿論、それが彼女の罰でもあるが、それが同時に救いとなっていた。


罪を償っているという行動は何よりも彼女の中で安らぎを与えていた。



もう失いたくない。その絆の象徴である我が子を。


なので彼女は懸命に走る。


彼女は大切なものを再び手に入れるために行く…



「あっ」



すると、突き当りに部屋の扉を見つける。


それが最後の扉だった。


「ヒカリ!メグ!」


勢いよく開けるレンコ。


そして、前を見ると男とメグそして眠っているヒカリがいた。


すると、そこは運動場なのか?少し広い造りになっていた。


「ヒカリ!メグ!今助けに来たわ!」


すると、後ろから悪寒を感じる。


正確には自分の後頭部に…


「くっ!」


間一髪、横に転がるように避けるレンコ


そして自分のいた位置を見つめると、その地面は抉られていた。


「な!」


「おや…思ったより早かったな、そして速かったな…」


そして、それをしたであろう男を見るレンコ。


剣を肩に載せたその男、ザッカはにへらと笑いながらこれから起こる戦いを少し楽しみにしていた。


(この男…二刀流…)


「あなたがザッカね?」


レンコは彼に聞く。


「おや…名乗る前に俺の名前を知っているとは…あの女が言ったのかな?」


ザッカは微笑みながらいう。


「先に忠告するは、すぐにあの二人を解放するなら痛い目には合わせないよ」


共に連れてきた長年の愛刀に手を掛けて言う。


「はっはっは…それが無駄な言い合いだという事は分かってるようですね」


そして、すっと両手の剣を前に出すザッカ。


「ロウドさんとは戦えなかったけど…あなたはそれよりも強いですかね?」


そう言われながらも、手の刀を構えるレンコ。


ここでは一人の産みの母とそして殺人鬼の男の戦いが始まった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






別の道を行ったラウラは内心戸惑っていた。


(これ…私ひとりじゃない!!どうするのよー!)


ラウラも戦えるが、根は貴族の元女子学生…その力は衛兵の一人でしかない…それでもその年では十分に強いのだが、精神的な所は弱い。


皆の圧力に自分も流れ出来てしまったが、一人になって冷静に考えたらとんでもない所にきてしまったと軽く後悔をする。


(とりあえず、隙を見て倒すしか…そして全速力で逃げよう)


そういいながら、ある部屋の入口の横に来るラウラ。


(あれ?誰かいる?)


覗くとそこは倉庫なのか多くの資材や道具みたいなのがあり、その奥で男性と女性が話しあっていた。


「何を!すぐに移動できないのか?!」


「回復までまだ少しかかるわ!あなたがあの子を奪うために使わなければとっくに街に帰っていたのよ!」


「くそっ…じゃあここで待つしかないか…」


茶髪の男は悔しそうにいう。そして樽の上へと座る。


女の方も近くの柱でたたずむ。


(あの人!メグを誘拐した人!)


メグが誘拐された現場を見ていたラウラはすぐにマッコウを当てた。


そして、女の方が被害者の妻が言っていた移動スキルを使う人だと推測するラウラ。


(うぅーでもどうすれば…)


ラウラは手段を考える。


ここで二人を監視しても意味がない。


しかし、戦ったといって大人の二人では勝てるとは思えない。


女性の方はまだしも、茶髪の男は剣を持っている。武闘派ではない彼女には荷が重かった。


すると、下の方を見るラウラ


そこには中年の男とその子か思われる二人が倒れていた。


後ろでは他の人質だろうか、眠らされていて身動きが取れなくされていた。


すると、倒れている男が顔をラウラの方へ目を向けた。


(!!!!)


驚きに声を上げそうになるが、済んでの所で口を抑えて我慢をする。


これで声をあげたらあの二人に気づかれる。


改めて、男の方を見る…ロウドである人物を見る。


すると、ロウドは口パクで気づかれないようにラウラに向けて言う。


(枷を解いてくれ?…それが出来れば…)


そして周囲を見るラウラ。


マッコウたちがいる部屋は倉庫になっており、扉が付いていないタイプの入り口だった。


そして身を隠せそうなところが多い事に気が付く。


、女の子一人でなら隠れながらいけそうだった。


(よしっ)


そして、ラウラは気を引き締めて行動に乗り出す。


手前の棚の裏に無事に隠れると、そのまま忍び足で行くラウラ…



(やばい、このかくれんぼやばいです!)




ここでは若い女子による忍ぶ戦いが始まった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



そして場はリョウマの所に戻る。


キンッ


ギンッ


キンッ



まだ鉄と鉄が打ち合う音が聞こえる。


「…お前の体は鉄か何かでできているのか?」


ガ―ジルはリョウマに聞く。


「はっ、俺のスキルさ」


そういい、上段のパンチを喰らわせるリョウマ。


「ぐっ…」



「くらえぇー!」


そして、ガモンが飛びかかるが…


「うるさい!」


大斧で殴り飛ばされる。


そのまま引きずられるように後ろへと飛ぶガモン。


「仲間がやられたぜ?いいのか?」


顔色一つ変えないリョウマを見ていうガ―ジル。


「あいつは【頑丈】のスキル持ちだ。気絶はしても死なねぇよ」


仲間の戦線離脱を平気で宣告するリョウマ。


後ろの方では彼の部下が慌てて介抱をする声が聞こえる。



「そうか、しかしお前すげーな。素手で俺の大斧とやり合うなんて。そんなスキル、聞いた事無いがな…まさに“鉄人”。こんなやつがこの魔王国にいたとは驚きだぜ」


「お前らこそ、この国になにが目的で来た?」


リョウマは距離を空けて、詳細を聞く。マリアンの話だと、この誘拐の目的を知っているのは彼だけらしい。


「まぁ、そうだな」


興が乗ったのか、ガ―ジルが話を始めた。


「まぁ、簡単な話、ビジネスってやつだ」


ガ―ジルは何気なくいう。


「最近、とある国の学者は魔力を増大にさせる学説を解いていてな。その対象に()()()()()()を与える事でその人の魔力やスキルを飛躍的に伸ばすという説だ」


「しかし、それを立証するために学会は止めたそうだ。なぜか分かるか?」


リョウマは身に覚えがあった。それは正に今の彼がしている事なのだから。


「印象深い場面ってのはな…実は負の感情、つまり家族の死やそして裏切りがよりその対象者の力を引き出すのさ。」


リョウマはそのままガージルの説明を聞いた。


「家族を誘拐したのはそのためか…くず野郎が!!」


それがどれだけ残酷か、もうすでにリョウマには嫌程理解している。


「あぁ、そうだな、子供の肉親や場合によってはその逆…母親って場合もあったな。そうする事で運のいい時はスキルの発現や魔力での筋力の増幅に繋がったみたいだ」


人は劇的な場面で強くなる。


これは何もリョウマのスキルである【英雄】に限った話でない。


人間は人知れずに日々の力を抑えている。そしてそれが時と場合のよって解放されるのだ。


その上限を【英雄】は無視できているだけで、火事場の馬鹿力と同様に人間は苦境を覆す力を遺伝子単位で持っている。


しかし、リョウマそれを他の人にやってほしいと思った事は一度もない。


それはとても苦しく、そしてずっと口に中で苦く残り続けるものだからだ。


「すでに依頼されたの90人の検証が終わっている。これでデータとしては十分。後は諸国に高く売れればいい。“人を強くする仕組み“だ、大金が舞い込んでくるだろうな」


「何故、俺らの国を?」


「さぁな、上の指示はこの国でやれだそうだ」


悪びれなくガ―ジルは言う。


恐らくだが、彼はお金と強者にしか興味がないのかもしれない。


そして、そんなやつに自分の仲間が危険な目に会っている事に苛立ちが募る。


「分かった……よく分かったよ、おまえらは俺が嫌いな連中だってことがな」


リョウマは無駄な質問をしない。


良心はないのか?心は痛まないのか?


そんな事を問うのは実に意味がない、彼らはすでに事を犯し、またそれで生活をしているのだ。


だからこそ、リョウマは聞かない。


それがリョウマの中で最善だった。


「おまえみたいなのは久方ぶりにみるぞ」


静かにリョウマは言う。


怒りをより確固たるものにして、相手にぶつけるために…


思えば、こんな感情はあの裏切りに合って以来だ。


それはとても澄んだ感情で明確に目の前の男へと向かっていた。


そして思う、彼をめちゃくちゃにしたい。後悔させたい。


何が悪かったとそして自らの過ちが何なのかを、


さらにそれがどれだけ取り返しがもう着かないかを…



「楽しもう」



ただし、それは俺だけだがな…


そう思いながら、再び戦いを始めるリョウマ。

彼の中ではもうガ―ジルをどのように料理するかしか考えていなかった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




一方魔王城では…


「何!誘拐犯の一味がこのレイフィールドにいるだと!」


アマンダはその事を衛兵団の連絡兵から聞いた。その後の事にも驚愕する。


「はっ、さらに団長のガモン様と将軍の一人でありますリョウマ様が小隊規模で花街のアジトへと向かいました。おそらくもう戦闘が始まっているかと」



「確か、エズカルバンですよね…リョウマだけでは他に手が回らないのでは?」


ジェフはアマンダに助言を乞う。


「どうにしろ事件の解決は最優先事項だ!至急増員を向かわせろ!他の将軍は?」


「はっ、魔王国三大将軍であるラフロシア様は現在は外交で本国にはいません。同じくルガルド様ですが、つい先程廊下ですれ違いました。」


「呼んで来い!あいつも増員として連れて行ってくれ」


「はっ!しかしですが…なんでもリョウマ様に呼ばれて花街に行くとか言ってましたので恐らくすでに向かわれたと思われます」


「なるほど」


ジェフは落ち着いて兵士に返事をし、そしてアマンダにいう。


その意図を感じたアマンダも落ち着く。


「…分かった…では、至急急ぐように、また街全体に注意報も流しておいてくれ。」


今回の騒動は国をも揺るがす話。そのためになんとしても彼らを確保、もしくは撃退しなければいけない。


できれば、()()()()()()()一人や二人残してほしいが…


「リョウマだからなー」


アマンダは想い人の名を呼ぶ。


彼は怒ると見境がない。それに少し女性として惚れるのもあるにはあるが…国王として彼の暴挙は少しは遠慮してほしいと思う。


「この国の広報関係にも確認を取ってくれ、場合によっては規制をかけざるをおえないかもしれない。」


リョウマがこれから仕出かすことによっては外国に報告できない可能性もある。その対策として今から準備をするアマンダ。


もうすでに花街の一部を倒壊した事はまだ届いていないようだ。


「分かりました、手を打っておきましょう」


それを了承するジェフ。


これでアマンダができる事は全てした。


後は、事の成り行きを見守るしかない。


(リョウマに皆…頼んだぞ)


アマンダも自らの国で犯罪を犯したやつらをこてんぱんにしたい思いは少なからずある。

なので、その思いを思い人とその仲間に託す事する。


彼女は無事にこの件が終わる事を祈った。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



衛兵団の医務室のベッドの上でマリアンはそわそわしていた。


(お願い…どうかロウドとジェムを無事に返してください)


彼女はベッドのある医務室にいるが、心が落ち着かない。


内心、現場にいって彼らを助けたい。


なんの力になるか分からないが、それでもここでじっとしているのが耐えれなかった。


「マリアンさん…落ち着いてください」


女医のミルダが入れたのだろう…暖かいの飲み物を彼女に渡す。


「…有難うございます」


「夫と息子さんを想う気持ちは分かりますが、彼らはあなたを助けたくて逃がしたのでしょう?それが危険な所へ行くとなれば彼らは悲しみます…


今は耐えて、無事を祈りましょう」


そうミルダは諭す。


「はい、分かっているのですが…」

そう思うも、やはりまだ内心落ち着かないマリアン。


「…では私の権限で、無事を確認した次第すぐに向かいましょう」


ミルダは提案する。


「え?」


そんな事が一介の女医にできるのだろうか?


「大丈夫ですよ、だって私副団長なんですから」


「え?」


男の多い衛兵団でトップ2にいるのが細身の女性。


そんな驚きの情報をいきなりいうミルダ。


「それが私にできる最大限の配慮です。だから、今は落ち着いて、信じて待ちましょう」


おそらくこれが最大の譲渡だとマリアンは感じた。


「…分かりました。それと有難うございます、ミルダさん」


マリアンは了承し、すぐに来るであろう報告を待つ事にする。



父と子を思う母は、その無事と生還をただただ願い、その時が来るのをじっと待つのみだった。


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋


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