復讐者、再び現れる
いつからだろう、私は皆を騙すような真似をしたのは?
私は生まれたころの記憶がない。
いや、人、獣人、エルフや生きる生命は皆そうなのだろう。
ただ私の場合が違う。
アマンダ・レイフィールドは本当にどこで生まれたのか、誰によって生まれたのかが分からないのだ。
一番古い記憶は闘技場での生活だ。
私の見た目がまだ二桁にもならないぐらいの時だ。
私の毎日は戦う日々を過ごしていた。
勝てば良い食事を得て、暖かいベッドで寝れた。
負ければ貧しい食事、蚤だらけのベッドで寝る生活だ。
厳しい現実を毎日見ていたからだろうか。
何が何でも平穏な生活を目指して、上へと駆け上がった。
そして、ずっと勝ち続けたおかげか、前の魔王様の近衛、そして魔王まで上り詰めた。
突然最初は魔王になった時は戸惑ったが、自然とその運命を受け入れた。
どこかこの世界のために良くしようと無意識に行動を起こしていた。
まずはあらゆる種族がいるこの世界で人々が分け隔てなく過ごすための象徴を作ろうと思った。
それは自分のような存在をさらに増やすことで、人々の希望とそれに伴う発展を期待しての事だった。
それで生まれたのは三大将軍の制度、そして異世界人を呼ぶということだった。
その後は少しずつ自分の国を中心に世界をより良くしようと頑張った。
ただ、そんな日々を過ごしていくうちに、この世界への不信感が募ってきたのも事実だ。
そもそもおかしいのだ。
疑問に確信を得たのはリョウマをこの世界に呼んで数か月。
この世界を支配しているのは「スキル」という特殊能力についてだ。
火を生み出したり、時には因果律を曲げる特殊能力。
正に神の所業、無限大の可能性がある現象だ。
それなのに、どうして、文化水準がリョウマの世界よりも下なのか?
アマンダはその理由をこれまで深くは考えなかった。
ただ目の前にいる存在を目の当たりにして全てを思い出した。
「あなただったのね…すべての裏を引いていたのは!!」
アマンダ・レイフィールドは兵士に連れられて魔王城の外に連れられてきた。
そこには空にとどまるかのように浮いている飛行船があった。
飛行船はアマンダの少し先で着陸した。
飛行船の出入り口が開き、中から降りるための階段が出てきた。
そこから二人ほど降りていた。
一人は実に特徴的な男。
鱗に覆われた竜人の男だ。
この者がラガーンだとアマンダは察した。
しかし、その者よりも後に出たきた者の方に、アマンダは驚きを隠せなかった。
なぜ忘れていたのか
なぜこれまで気にしていなかったのか…
世界を正すなら真っ先に気を付けないといけない存在を今まで忘れていた。
ラガーンとその者は飛行船の階段から降りた。
そして謎の人物の方はアマンダを見てすぐに微笑ましそうに口を開いた。
「懐かしいな、アマンダ、息災か?」
「あなたは…」
「貴様が魔王となるとなるまでは計画通りだったが、まさか異世界人をまた呼ぶとは思わなかったよ、うーんやっぱりどうしても長になるとおかしくなるのかな?」
男は不思議そうな顔をする。
「アマンダ…三大将軍なるものまで用意して…全く君は悪い子だ。イグルシア帝国による侵攻と偽装しなければ私の存在を勘づかれるところだったよ、君の事だから私の存在は忘れていただろうけど、万が一覚えていれば歯向かう可能性があったからね」
男はやれやれといった感じにアマンダを呆れた。
「えぇ、今すべてを思い出したは、あなたが私を生んだ存在だということ、この世界が貴方の箱庭だということも…」
アマンダは冷静に己の思い出した記憶を素直に受け入れた。
「つまりラガーンも私と同じ存在ということ?」
アマンダは後ろにいるラガーンをと自分は同じ存在かと確認する。
ラガーンはアマンダが暴れる可能性を危惧してからか、彼女の後ろに立ち、両腕を抑える。
「ラガーンやい、よしなさい。自分の妹を手に駆けるのは兄としてどうかと思うぞ、とりあえず拘束を外しなさい」
「しかしレオナルド様、まだこの者はあなた様を主人とは認めていないと…」
「いいんだよ、全く堅物だな君は。君たち二人は私という存在から同じく生まれたもの同士、先に生まれたのが君だ、次にアマンダ。あぁ、そうだよ、アマンダ、そこのラガーン・ドラゴニウム、君の兄という存在になる。役目は君と同じだった、何となく察したと思うが…」
レオナルドと呼ばれた男は続けて言う。
「ラガーンはイグルシア帝国をこの世界随一の国にした…そして君も…この世界の繁栄のために私、レオナルドが生み出した存在さ」
「それは分かったわ、だけど、どうして今さら…あなたが私を迎えに来るの?」
「いや、それなんだが、どうにも計算外の事が起きていてさ、それを正す前に君を迎えにきたのさ…その計算外って何かわかるかな??」
レオナルドはそういうとアマンダに問いをかけた。
考えるがアマンダにはすぐにこれといって思いつかなかった。
「ヒントだ、そいつらは繁栄を望めば望むほどに呼び出され、そして世界のバランスを崩す存在だ」
呼び出され、その一言でアマンダは誰を指しているか分かった。
「まさか異世界人?」
レオナルドは頷いた。どうやら正解のようだ。
「その通り、異世界人は私にとって計算外の存在だ、君の呼んだリョウマやその前に呼んだラルフ君は僕の考えた世界のバランスを崩す存在だ。ラガーンに続いて君も同じことをしてしまった。私の計画に彼らは必要ないのだよ、それも彼らは多くのこの世界の住人にかかわってしまった。これからいくばかの生命を残して、一新することにする。」
そういうとレオナルドは階段を上り、飛行船へと戻ろうとした。
「ちょっと待って、一新って?!どういうこと。」
アマンダは聞かずにはいられなかった。そんなことは当に分かっていたが、それでも聞き正さずにはいられなかった。
「うん?一新とはつまり削除さ、つまりこの世界の再生、消去、まぁなんでもいい、とにかく作り直すのさ、僕の箱庭を」
レオナルドはさも当然といいのけた。
この世界を、つまりは多くの命を無かったことにすると。
「くっ!」
アマンダは抵抗を試みるも、ラガーンに地面へと屈させられた。
「主様にへの反抗の意志を感じとりましたので…」
「ラガーン、やめなさい」
「しかし…」
「二度はない」
するとレオナルドから静かな殺気が流れた。
「はい」
そしてラガーンはアマンダから離れた。
「くっ!」
地面に押さえつけられているアマンダは立ち上がる。
「さてアマンダ、大人しく言うことを聞くなら、あの青年を元の世界に返して、生き永らえさせる事も可能だ、それでも不服か?」
「くっ、それでもそれ以外の命もなかった事になんてしたくない!そんなあなたの手は握れないわ!」
「おや、実に反抗的だ、お父さんは悲しいよ」
レオナルドはアマンダの反抗的な態度を目の当たりにして茶化すように言う。
「あなたもそれでいいの!かつてはイグルシア帝国を繁栄に導いた伝説!ラガーン・ドラゴニウム」
ラガーンに向けてアマンダは言う。彼も元はアマンダと同じく一国を大国に挙げたいわゆる苦労人だ。
そんな自分がともに育った国を世界もろとも消すという男についていくのを理解できなかった。
「…我父の意向に反するつもりはない、それがどれだけ無駄な事か貴様もわかっているだろう?」
「くっ分からず屋!!」
確かにそうだ。アマンダは分かっていた、否分かってしまうのだ。目の前の男、レオナルドに反する事は不可能だと。
「試しにアマンダ、私を攻撃してみなさいな」
「いわれなくても!!」
そしてアマンダは最高威力の魔法でレオナルドを攻撃した。
しかし、その攻撃はむなしくもレオナルド前へと届く前に空に消えた。
「どうして!!」
さらに連続して魔法を発動するも、レオナルドへと届く前に消える。
「なら!」
アマンダは腕を気を纏わせた。
リョウマが使った秘技、この世界の最強の武力だ。
それを纏った腕で殴打をレオナルドに喰らわせる…とするもそれも無傷だった。
「簡単な話さ、そもそもこの世界は僕のスキルで作った世界、物理法則もそしてすべてのスキルや魔法は僕から生まれたということはつまり…それを消す方法を僕が知らないわけがないだろう?」
その一言を聞いて、アマンダは絶望に打ちひしがれた。
(そんなの誰も勝てないじゃない!)
「だからアマンダ、可愛い娘の気持ちもわかる。なので、さっきの条件で私の元に戻ってくれ、再度この世界を変え、もちろん異世界人は元の世界へと返して、それで終わりと行こうじゃないか」
アマンダが選べるのは二つだ。
全てを失うか、1つを守って全てを失うか、
そんな二択では後者を選ばざるを得ない。
その選択はあまりに残酷だ。だけど、今のアマンダにはそれ以外に選べるものがなかった。
アマンダは思わず涙を流した。
こんな選択しか取れない自分を大いに恥じた。
そして重い口を開けた。
「わかっ…」
そう言おうと思ったその瞬間、声が聞こえた。
「アマンダ!」
そして聞き覚えのある声はした。
その者、リョウマはレオナルドとアマンダの間に立ち、アマンダを守るようにして目の前の男、レオナルドへ向き合う。
「何?!私の気配察知をどう抜けた?」
ラガーンは突然でた男に驚いた。レオナルドの護衛である彼にとって、突然現れたリョウマが自分のセンサーに反応しなかったのが驚きでしかない。
「ふーん、ラガーンを出し抜いたのはまず褒めよう」
「アマンダっ!大丈夫か?!」
「えっ…えぇ」
「よかった、間に合った…やっと出たな、親玉!とりあえずお前を倒せば、いいって事だなレイジ?」
(あぁ… こいつを倒せば世界は本当の意味で平等になる)
「ほう、憤怒を持っているのか、久しいなそれにレイジとは名前もあるのか、たかが感情風情が…」
「リョウマ、あなた誰と話しているの?」
アマンダの眼にはこの場にはリョウマ、レオナルド、ラガーン以外いないはずだ。
それでもレオナルドとリョウマは誰か別の人がいるかのように話していたのが不思議に思えた。
「よし、それなら」
とリョウマは言うと、腕を鳴らした。
「リョウマ!この人には何も攻撃が効かないのよ!」
「あぁ、アマンダの言う通りさ、私には攻撃が効かな「うるさい!!」がぁ!!!!!」
どかっ!!!!
そしてリョウマはレオナルドを殴った。
思いっきり殴り、レオナルドは数メートル後ろへ跳んだ。
「主様!!」
目の前の光景にレオナルド、ラガーン、アマンダも驚いた。
「どうして?!」
あまりの状況、つい先ほどアマンダの全身全霊の攻撃すら届かなかった存在にどうして攻撃が届いたのか…
ただ一人殴られたレオナルドは察した。
「憤怒!まさか貴様の入れ知恵かぁ!!!!!!!」
レオナルドは激高し、目の前の男リョウマ・フジタを見る。
それもそうだ、この世界で抗う者はだれ一人いないと思っていた矢先にこの仕打ち。
怒りを覚えないわけがない。
(いやー痛快だね、もっと殴れリョウマ!)
ただ怒りを覚えているのは、それはリョウマも一緒だ。
「あぁ、レイジ、お前がすっきりするのもそうだが、俺の女を泣かせたお前は絶対許さない!」
そうリョウマは目の前のレオナルドに宣誓をし、戦おうとする。
物語の局面は最後へ移るのだった。




