表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/115

復讐者、もう一人の主人公

突然だが…そして当然の事なのだが、リョウマいる異世界では多くの国が存在する。

その中で、リョウマのいる世界を騒がせている国は三つしかいない。


まずは東の地域に位置する魔王国。


これはかつての勇者が建国した国であり、さらには多くの新しい取り組みをしている事から他国から尊敬の目や畏怖の目で見られる事が多い。

多様な種族に文化、身分制度があるこの世界では魔王国の斬新な取り組みは他の国にとって貴重な情報源となっている。


次は西の地域に位置するイグルシア帝国だ。


この国は軍事国家であり、その勢いは近年さらに増してきている。だからといって野蛮な国かと言われればそうではない。

むしろ、イグルシア帝国に吸収される事を望んでいる他国の民は多い。


その理由はイグルシア帝国でに技術の進歩だ。

科学技術が各国の都市部でしか発展していないこの世界では、大国の庇護下に入る事で安定した生活ができる。イグルシア帝国内の制度として、自国には平等の設備をという物があり、その軍事力を恐れる民がいるのは事実だが、同時にその分生活水準も高い事から加入したいもしくは移住したい民は常に多い。


ちなみにリョウマの世界で言うなら明治時代の科学技術はある。


その中でイグルシア帝国は問題が一つあった。


新戦力がどんどん入るも…イグルシア帝国では新しい強者が出てこなかった。

人の流れが激しいイグルシア帝国では優秀な人材を誘う事で技術の進歩があっても、指導者としての教育がおろそかになった一面が浮かび上がったのだ。

それは八蛇師団の面々を見ても裏付けられた。


ラガーン・ドラゴヴルムを始め、すでにクラウマン・アラポール、フレディ・オッポサム、サンジュウロウ・ニトベ、カモッラ・ギャングスタンが各師団長として君臨していた。


ラガーンを除いてスカウトで移住したが彼らが指揮をする立場にありながら、後世の育成には興味をしめさなかった。


そのためイグルシア帝王は次代の帝国を導いてくれる存在を生むためにある方法を考えた。そして明晰な頭脳を持ち、かつ民の象徴として君臨出来、短期間で見つける方法はないか調べた結果…異世界召喚を見つけるのだった。


そして人材を求めるためにイグルシア帝王は異世界召喚を行った。

召喚は無事に成功。その時、帝を始め、皆ほっとした。


しかし、召喚をした後に問題があった。

召喚した者からこの世界に対しての強い拒絶が起きたのだ。



「で、玉座の間で大暴れするお前をなんとか各師団長で止めて…今はこのスキルを封じる鎖で大人しくしているという訳ね、がははははっ!やるじゃないか小僧!」


「…」


捕まった異世界人は鎖の様なものでぐるぐる巻きにされ、かろうじて前へと進めるぐらいに歩いていた。


「で、あんた…名前はなんていうんだ?まさか名無しではないだろ?」


「…」


イグルシア帝国に召喚されて早々に暴れた異世界人はとりあえず頭を冷やしてもらうために牢屋へと入れる事になった。


しかし、牢屋といっても権威ある方を軟禁できるように作った牢屋であり、その実内装は整っていた。


現に、牢屋へ案内している男も、その異世界人の歩みに合わせて歩いている。


「ふーん…言いたくないってか、まぁいいさ、俺は適当に小僧と呼んでやろう!」

「…」


異世界人はこの男の神経の太さに呆れるも、無視を貫いた。


そんな雑談をしばらくして、目的の牢屋へと着く。


「ほら、ここだよ、とりあえず中に入りな…俺は当分の間、小僧の牢番をするズズっていう。少し頭冷やせば帝様も話しがしたいだろうし、すぐにもっと上の客室へと移すだろう」


これから牢屋に入れるが、元々は国を導くために呼んだ国賓に近い存在だ。


ズズはもちろんの事、イグルシア側は悪いようには扱わないつもりだった。


「…一つ質問だ。」

その異世界人の男は部屋をぐるりと見て、ザッシュの方を向かず、虚空を覗いて言う。


「ここは本当に異世界なんだな」


ザッシュにはその異世界人の男は何かを覚悟するように言っているように感じた。


「あぁ…悪い事をしたな小僧、ここの牢番をするって事で説明を聞いたんだが、もうあんたのいた世界には帰れないらしい」


召喚される異世界人はその異世界人の世界ではなくなるはずの命だった事から帰れる望みは無いに等しい等の説明をした。


「…だが…イグルシア帝国民はお前がここに来てくれた事を歓迎しているよ、新しい風が来たと街では騒いでいるよ、すぐには見せられないが…いつか街の様子を見るために連れてってやる!そうだ!俺のおごりでだ!!」


説明していく内に目の前の異世界人に同情してしまったズズは早口で言う。


「…そうか…少なくともあんたはいいやつだという事は分かったよ、じゃ」


そう異世界人の男いうと、部屋の奥へと行き、用意されていた椅子に座りこんだ。


大人しくなった異世界人の男を見たザッシュはこれからの予定を簡単に述べた。


「まずはだな…明日から家庭教師をつけてこの世界、国について知らない事を学んでもらう」


ちなみにドアには小さな窓があるので、開ける事で会話は可能だ。


「そうか…別に俺は興味はないんだけどな…危害加えないからこの鎖といてくれ、んで脱出してやる」

そういい、両手にくくり付けられた錠をザッシュに見せる異世界人の男。


「冷静になれ…そんな事をすればのたれ死ぬって事ぐらい分かるだろ、今のお前がどうにしろ、ここである程度学べば外を見せてくれる事にもなっているし、ある程度の自由もある…今は俺達に従いな」


「…くそ」


それが男に言えた一言だった。



イグルシア帝国で異世界間召喚が行われた翌朝


異世界人の男の牢屋にある女性が訪れていた。


「私が家庭教師を務めます、マリアです、よろしくね」

「おいズズ…家庭教師って…俺とそんな変わらないじゃないか!」


目の前の女性は金髪の髪を綺麗なストレートにし、触れると傷がつきそうと思う程に儚さを感じさせる美しい女性だった。


「おいーーーーーー!!!、失礼な口を聞くな!!このお方は第一皇女のマリア様だ!この国の継承者の内の1人だ!」


ずさんな態度にズズは思わず異世界人に注意する。


しかし当の第一皇女であるマリアはあまり気にしていない。


「まぁ、私は兄弟が多いから帝になる事は無理でしょうけどね」


マリアはそう補足で説明するも、イグルシア民のザッシュは終始平伏している。


(昨日までの俺への態度とずいぶん違うじゃないか…まぁこの容姿なら仕方ないか)


確かにマリアの容姿は恐ろしいまでに整えられており、それに反応するのは男としてしょうがないと思う。


だが、この異世界人は素で綺麗なバラにはとげがあると信ずる信者であり、この異世界人の男はできるだけこの女に関わり合いたくないと思っていた。


「はっ、馬鹿か、こんなやつが俺の家庭教師?無理だろ?!却下だ、帰れ」


そんな冷たい態度を取る。泣いてくれれば儲けだった。


「それであなたの名前は?」


「…」


「では、ラルフと呼びましょう」


「は?」


マリアは微笑みながら言う。


「名前が無いには不便でしょう?私が好きな絵本の中の登場人物の名前がラルフなの、であなたを

そう呼びます」


その笑みはまるで子犬に向けるかのように笑う。


「おい!待て!そんな名前認めないぞ!」


異世界人は否定から入るが、ズズがそれに間を挟むようにして言う。


「かー小僧!皇女様から名前を賜うなんて羨ましいね!小僧…いやラルフ!とりあえず、親睦がて

ら俺はお暇するぜ、あ!俺はズズっていう牢番だ!よろしくですマリア様!」


「えぇ!ズズさん、こちらこそよろしくです!ラルフの事よく見てやってください」


まるでズズをラルフの先生かの様にしてマリアはズズに言う。


「くそっ…」


そうして、異世界人の男…名をラルフ…はイグルシア帝国皇女のマリアから名前を賜わった事でそ

う呼ばれるようになったのだった。



「さて…ではここに問題用紙があるので解いてください。」


そういい、マリアは用意した問題用紙を出した。


「くそ…この世界に来てからどんどん勝手に話が進むようになった」


そう言いつつもマリアからもらった問題用紙を解いていく。


基本的には問題なく問題用紙を解く。その速度にマリア驚いていた。


「素晴らしいです…算数及び数学は満点…これがあなたの世界で普通ですって?あなたの国は可笑しいのでは?これでは内乱が起きないのですか?」


ラルフの知力に驚くマリア。しかし、ラルフからすればこの程度でそこまで驚かれても困るといった心境だ。


「まぁ、学力と同時に俺らの世界の歴史や道徳も習うからな、まぁ物理的な争いは減っているよ、ないとは言わないが…んで俺は学校では確かに頭は良かったが、ここの世界の学力はそれ以前の問題だよ…難しい問題でも中学生なら大体解けるぞ?」


この世界での学問の水準はかなり低いようだ。


ラルフの知識の高さに驚くマリア。


「おっほん…しかし、この世界の常識、政治、戦術はだめですね…どうしてこの国語はいいのでし

ょうか?まだこの世界の言語を知らないはずなのに話せますし…」


「なんか知らないが読めるぞ?まぁそれでも古代文字とやらは読めないが…」


言語のテストは少なくともラルフの目には母国語のテストの様に解ける。


ただし、古代文字など視覚に頼る言語はその限りではないようだ。


「ふーん、ではこの成績を見る限りですと…やはり勉学よりもこの世界の事を説明しながら学んで

いく方があなたにはいいのでしょうね」


そういい、マリアは答案の束をまとめて、近くの棚へと置く。


「もうある程度諦めたからそれもいいけど、俺は前の世界に帰る方法を研究したいんだけど…」


ある程度現状を受け入れる事にしたラルフだが、目的は諦めていない。


「はいはい、ラルフ、そういうのはまた今度ね」


「今度っていつだよ!」


そして、毎回研究する事をお願いするが、その許可をマリアに適当にあしらわれる。


そんなこんなでラルフがマリアから勉学を学ぶようになって1年程経つ。


といっても主な事は最初の3か月で終え、その後は復習をはさんでラルフの世界の技術をどうにか異世界でできないかマリアと共に試作していた。


牢番だったズズもラルフと共に過ごした時間が多かったためか、貴重な意見提示を繰り返した事で隊長にまで昇格していた。


今も時々合間にラルフと訓練をする中になった。

そんな中、ふとラルフは気になる事をマリア話した。


「なぁ、俺みたいな異世界から来た人っているの?」


充実な1年を過ごしたせいか、その点を失念していた事を思い出すラルフ。


今となって最初に抱いてい故郷の世界へと帰る事もあまり思い浮かばなくなった。


「えぇ、数は少ないですが確認されていますよ」


「へぇー、ちなみにその人達には会えないの?」


「難しいですね、この国にいる異世界人はラルフ、あなた一人です。そしてうちは軍事国家なの

で…迎え入れるには国を迎合しないと無理です」


つまり争う必要があると暗に言いたいようだ。


「ちょっと待って!別に個別出来てもらえば…あっ…なるほどね、それで争う必要があると…」


別に個別に会えばと思うも、己の現状から察してそれが難しい事が分かる。


「分かりましたか?あなたの今の状況をから考えれば…他の異世界人がどのような待遇か分かりますでしょう」


どの国でも好待遇なのだろう…、それでは会いに行くのは一苦労しそうだ。


「へぇー、じゃあマリアが留学とかするとか?」


「あら?異世界の方が女性とは限らないわよ?」


にまっと微笑むマリア。


「…あぶな、くさっても皇女だわ」


「れっきとした皇女ですわ、侮辱したとお父様に密告しますわよ」


「やめてくれ…それに俺はまだ決めていないからな」


「えぇ、返事は待ちますわよ、私はいい女なので」


実は数週間前にマリアは心に秘めた思いをラルフに伝えている。


実はマリアはとある理由で自由な恋愛が認められている。

ラルフは詳しくは知らないのだが…


ラルフはその返事を保留した。我ながらくずだと思うが、理由はある。


彼の中のもう一つの支えである前の世界への帰還だ。


それにある終わりを見せないとマリアの想いへと素直に向けないのだ。


それからも今まで通りの関係を築けているのはある意味で奇跡だとラルフは思っている。


「そういや、お前のお父さんとは最初にあった時以来、会っていないな」


「私は月に1度程会いますが、まぁお父様はそんな簡単に姿を見せれば権威が廃るので城の中でもそ

う姿を見せませんわ…それよりもスキルはどうでしょうか?」


マリアとの勉学以外の時間はスキルの強化もしているラルフ。


「あぁ、やっぱ強いよこのスキルっての!」


「スキル【自在】…触れたものを無限に操作できるなんてずるいもいい所ですね」


「前の世界ではチートというんだよ、ホント順調なんだけどさ…悩みである前の世界に帰る方法が見つからない点だよ」


時間のある時に探しているが、中々見つからない帰還方法。


「そうですね…もしかしたら、バランにはあるかもしれないですね」

「バラン?なんで?」


商業の国 バラン。


その事はラルフもこれまでの勉強で知っている。


そして、世間を騒がしている第3番目の国とされている。


だからこそ、バランになぜ元の世界に帰るという重大な情報があるかもしれないとマリアが述べた

のかがラルフには分からなかった。


「バランは今でこそ商業の国ですけど…同時にこの世界にて最初の国でもあるんです」


マリアは神妙にして話す。


「え?なんか正直…ここへよく来るバランの商人はあんまり凄そうに見えないけど…」


「バランに住んでいる人は皆優しい方ばかりですよ…優しすぎて、怖くなさ過ぎて私は怖いと思う

のですが…まぁいいでしょうその話わ。ただその頂点に君臨している方がいるみたいでこの事は一部のえらい人達しか知らない情報なんですけど、時々にバランで悪徳商売をした人がその人らが消されているかもしれないのです。」


「殺したとか?」


「違います…存在がです」


「え?」


存在そのものを変える…それこそ神の所業と例えて仕方のない出来事だ。


「あくまでも噂です…でもその様な情報そして滅多に姿を現さないという人物はいるのは確かです」


意外な情報を知るラルフ。


「なんか怪しいなバランみたいだな」


「そうね…」


怪しい国と感じるようになったバラン。


しかし、現状では調査する方法がない。


この後はしばしの雑談しながら、今日も二人で過ごすラルフとマリアだった。



またとある日。


ラルフはラガーンと対面していた。


「あんたがラガーンか」


「君がラルフという異世界人か、帝王より武術の指南をお願いされたが…面白いスキルを使うと聞いている」


「最初は簡単だ、まずは手合わせていこう」


にやつかせて言うラルフ。


「じゃあ、遠慮なく」


そういって始まった勝負は一瞬だった。

地面へと倒れるラルフ。


「な、あの人強くね?」


空が眩しいと感じる。


「だから言ったでしょ?」


するとひょこっとマリアがラルフの視界へと移る。


どうやら観戦していたようだ。


「ラガーンさんに勝つのは厳しいと思うわ、そもそも刃を通さない肌がで、傷をつけられる人がい

ないのよ」


「…なんで、そんなやつがイグルシア帝国にいるんだよ?ラガーンならそのままお前の父さんを殴って支配できそうなのに」


危ない事をいうラルフ。


「…彼はそういうのに興味がないのかも、もう数百年もラガーンさんは帝国に尽くしているから、まぁ本人の力を最大限に出せば他国への交渉も楽になんだろうけど」


嫌そうな顔をしてマリアはラガーンを見る。


当のラガーンはすでに興味を失ったのか、どこかへと歩いて行った。


「あの感じ…まぁ、やっぱ本気出していないんだな」


「えぇ…それは皆察しているわ、でもそれでも貢献しているから誰もその事は言わないわ」


「そうか」


目の前の強者にラルフは軽い感動を覚えた。


正直、自分のスキルがあれば最強だという万能感は良かったが、やはり挑戦者という立場の方がラ

ルフは燃えた。


そして、時々ラガーンと戦い、帰還方法がないか探す日々が続いた。


その間にもイグルシア帝国への助言も欠かさなかった。


それらはラルフの才能だけではなく、マリアが献身的に支えてくれたのも大きい。


それはラルフにとって本当に楽しい日々が続いた。


しかしその本当に楽しい日々は長く続くわけがなかった。


それはラルフが異世界に来て二回目の春が来る頃だった。


普段は一般の人も入れない帝の住まう区域、そこにラルフは怒鳴り込んで入ってきた。


「おい!!!、どうしてマリアがバランへ行かなきゃならないんだ!!!」


目の前にはかつてラルフを召喚した帝。


この時、ラルフは戦術長官として帝とも意見を交わせるようになっていた。


その帝は怒鳴り込んできたラルフに向き合うように座っている。


「ラルフ…これは決定した事だ」


「ふざけるな!あいつはそれを望んでいるのか!!!?違うだろ!」


「あいつが自由な恋愛を許可されている理由を彼女から聞いたか?」


「…あいつはその事だけは話したがらなかった…それとこの件がどう関係あるんだ!」


ラルフは帝に怒鳴る。


「我ら帝の一族の第一皇女はバランへと嫁ぐ事か決められている、しかし具体的な歳は一切なく、

向こうが指示してこない限りは自由だ…」


「だからマリアは嫁がなかったのか…だけど、そんなの俺とラガーンがいれば断る事がイグルシア帝国にはできるんじゃないか?!」


異世界人のラルフの婚約者、最強のラガーン。この二人の名前を出せば、バランも黙るだろうとラ

ルフは考えた。しかし、帝の…マリアの父の顔は優れない。


「ラガーンか…お前にだけは真実を言おう…娘を想う気持ちに免じて」


そして、ある真実を聞くラルフ。


それはあまりにも信じられない真実だった。


その真実を聞いたラルフは真っすぐ帝のいた部屋を飛び出してある男を探す。


「ラガーン!!!」


ラルフが聞いたのはラガーンについてだ。


そして、ラガーンは城の中庭にいた。


ラガーンを前にして、ラルフは彼に聞く。


「マリアの父さんから聞いた。本当なのか?」


「…」


「おまえはバランの国から来た監視者で、イグルシア帝国を抑えるためにずっと監視してるって!そして、今回のマリアのバランへと嫁ぐ件はお前よりも上にいる奴にお前が進言したってことをだよ!!」


そう、マリアが嫁ぐ事は決まっていた、しかしそれを最も悪いタイミングで進行させたのは目の前の男だと知ったラルフは怒りで体がはちきれそうだった。

そんなラルフを見つめながら、ラガーンは静かにはっきりという。


「あぁ、お前はまだ分からないだろうが、お前のスキルは特別だ。それがイグルシア帝国と深く結びつくとこの先どうなるかなんて分からない。この国での俺の役目はこの世界に生まれるであろう不穏分子を止める事だ」


「ラガーン!この野郎…」


「…勘違いするな、私はこの国が好きだ。それは勿論マリアも、故に差別しない。一人の命で大勢が助かるのなら私は迷わずその一人の命を差し出すまで、この世界に来て数年の若造にこの世界の何が分かる!」


ラガーンはラルフを説得するようにして言う。ラガーンの口から何かしらの事情がラガーンにもある事は敏いラルフにも分かった。何かラルフにも知らない秘密がある。


しかし、そんな事は今この場では関係なかった。


「あぁ、分からないよ、前の世界でもそんな事は考えなかった、俺の大事を!目の前の大切なモノな大事を!返してもらうぞ!!!ラガーン!」


そういい、ラルフは過去に触れている武器を城から集めた。


「…素晴らしいスキルだ…そしてお前の気持ちは分かった、それで貴様が満足するなら受けて立とう」


そういい、ラガーンはラルフの決意に正面と向き合う。


その戦いは一日続いた。


それにより城の一部は破壊され、城下町を守る塀は粉々になった程の激戦だ。


しかし、最後に立っていたのはラガーンだった。


ラルフは全身傷だらけになりながらも、辛うじて息をしていた。


ラガーンの方には大きな傷があるも、致命傷には至らなかった。


「…くそ!くそっ!くそっ!くそーーーーーーーーーーー!」


地面に倒れ伏しながらもラルフの悔しさは天へと轟く。


ラルフは力を求めた。


これ程までに求めた事はないほどに…


すると、心から別の声が聞こえる。


「誰だ?」


そんな事を思っているうちにマリアが倒れるラルフの元へと駆けるつけていた。


「ラルフ!!!!」


急いで回復魔法をかけるマリア。


そんなマリアに一瞥を向けながら、ラガーンはラルフの止めを刺そうと手を上げる。


「待って!!!」


しかし、それを見たマリアはラルフをかばう。


「私はバランへと行くわ!それで問題ないでしょ!!」


「いや、そういう事ではない…私に勝てないようではだめなのだ…そのためにこいつを殺さねばならないんだ」


「貴方の事情は私は知っているわ。私、その務めを知ってからあなたやバランについて沢山調べたの」


「ほう…流石帝から最高峰の頭脳を持つと言われ、そのためにこいつ…ラルフの家庭教師に任命される事はあるな」


「そこから考えたあなたのしたい事もね…一つだけあるわ、それを達成できるかもしれない方法が」


そして、マリアは己の見解を述べた。


「成程…そうか、そうか…それは面白い…その仮説にのってやろう…その7人集まれば、あるいはあの存在を倒せるのかもしれない。その情報に免じて今回の事は報告しないでおこう…ただ貴様はすぐに我らが魔王国の地を踏む頃にはバランの中へと入るだろうがな」



「構わないわ…この時のラルフの命を守れるなら」

マリアは決意のある目でラガーンを見る


「ねぇ…ラガーン…あなたは一体どっちの味方なの?」


「…次は私の本気でその小僧と戦う時に証明しよう、そのためにこれからのイグルシアの行動は黙認する。どうせ私を倒してもあの方を倒さない限りは無理なのだからな」


そして、マリアと、ラガーンとの戦いで目覚めた存在…それが番人だったのだが…ラルフはこの世界の真実にたどり着いた。


それがイグルシア帝国の魔王国への侵攻が激化した理由だ。


ラルフは急いで魔王国を攻めるのだった、己の想う人を助けるために


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ