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復讐者、獅子は戦場へと身を置く

メグとケンの戦いが起きている最中、メグと別れていたルカルドは魔王城のとある部屋を目指していた。


ルカルドの役目は敵への攻撃に徹する事だった。


ラフロシア、レンコとスフィアの女性陣が魔王アマンダを助け、メグ、エマ、ラウラの女子陣がレイフィールドの街の人と共に街で騒ぎを起こす。


その間にルカルドはイグルシアの本陣がある魔王城へと強襲するのがこの作戦の大まかな筋書き。


現段階の流れを察するに、このレイフィールドでの戦いはルカルドの予想通りに進境していった。


しかし、よりにもよってだが、自分の作戦の方で違和感をルカルドは感じた。


「誰もいないにゃ?」


ルカルドが目指しているのは魔王城の玉座の間だった。


イグルシアの要人がいるとすれば立地等の観点からそこにいる可能性が高いからだ。

しかし、その道中、どう考えてもイグルシアの兵士が少なく感じた。


そしてルカルドは玉座の間にたどり着いた。

しかし、そこには誰もいなかった。


「なん…」


その瞬間、光が照らし出された。


「?!」


自分が今向かおうとしている所も決して優しい敵がいるとは思わないが、ここまで早く見つかるのは計算違いだった。


「やぁ、ルカルド・エヴァン・ラオハート…君ならここに来ると思っていたよ」


玉座に座るのはラルフ。その両隣には青髪の女性と赤髪の女性がいた。


レーナ・イブシロンとローナ・イブシロン。


二人の空間移動が出来るスキル保持者がこの場にいた。

ルカルドはローナとは一度合っている。なので、髪以外は瓜二つのレーナを見て似たスキルを持っている可能性があると感じるのは当然だった。


故に、なぜ二人そろってここにいるのか分からないが、ルカルドはそのままラルフに向かって問いかけた。


「あんたかにゃー…その様子では俺がここにくると分かっていたみたいだけど…にゃ…どうして兵士を配置しなかったのかにゃ?」


ルカルドが来たのは魔王城の玉座のある間だった。そしてこの部屋は王が座り込む事から建設上、最も守備に向いた空間は魔王城だった。


だからこそ、ルカルドはここにイグルシア帝国側の要人がいると踏んで侵入したのだが…


「そうなると読んで、すでに姫さんや帝王一族はすでに別のところに避難してもらったよ」

ラルフが不敵に笑う。


「つまり…その空間移動女子…達がここにいるのはその場所へ向かわせないためにゃね」


ルカルドは察した、この男は自分と似ていると。


「へぇー、よく分かったね。そうだよ、俺の側程に安全な場所はないからね」


にかっとラルフは笑う。その笑みはまさしく不敵と呼ぶにふさわしかった。


「そこにあの男もいるのかにゃ…なるほど…あぁ、安心したにゃ」


この会話で指すあの男とは他でもないラガーン・ドラゴ二ウム。イグルシア帝国で最強の男とされる存在だ。


「何に安心しただと?」


「いや、別に順番が決まっただけにゃ、最初は君、次にあの竜野郎にゃ」


正直、ラガーンの相手はきついと感じていたルカルド。



決してラルフの事をなめているわけではない。だが、ラガーンよりも倒すモチベーションがあるのはラルフだ。


だから、挑発した。


「こいつ!ラルフ様になんて言葉遣いを!!」


しかし、釣れたのは隣の青髪の女性、レーナだった。

レーナがルカルドの軽い口調に怒りを感じたのか、目線を強めてルカルドを睨む。


「レーナ、いいから」


「そうよ、姉さん…私達じゃあどうやってもあの男には敵わない、それじゃあ腰巾着よ、もしくわ他人任せ」


「ローナ、あなたは黙ってなさい」


ルカルドは今の会話に疑問を持った。


「二人とも落ち着いて、そもそも彼は敵じゃないんだ」


当然、ルカルドは敵じゃないというラルフ。


「でも、あの獣人!全然ラルフ様のご威光にひれ伏さないのよ!」


「俺元々平民…みたいなものだけど…ローナの中で俺はどうなっているの?」


「姉さんは少し妄想癖がありますから…」


3人はそう言いながら話しているのを見てルカルドは呆気にとられる。


「にゃ?さっきからなんの冗談でもいっているのか?今俺の事は敵じゃないと?ふざけるのもいいかげんにしろにゃ」


自らの国、自らの仕える女王を軟禁しておいて敵じゃないと言い放つラルフにルカルドは笑えないと感じた。


「いや、そういう意味じゃないんだ。魔王国三大将軍が一人であるルカルド。この場を設けたのは

他でもない…君に僕たちの仲間になってほしいんだ」


「…さらに笑えない冗談だにゃ、お前…お前らは侵略している自覚がないのか?」


「その理由も説明しよう、それにさっきラガーンを倒すといったが、君では無理だ」


「馬―鹿、そもそも敵であるお前の言い分を信じる理由がどこにあるだにゃ」


そういうとルカルドは戦闘の構えを取る。


ルカルドも馬鹿ではない、ラルフの言動から何かしらの理由があって攻めたのだと、だがそれは魔王国の中枢であるルカルドにとっては聞き入れない事だ。


「お前をぶっ飛ばした後に…その理由とやらは聞くにゃ」


「…まぁ、その展開が一番可能性として高かったから、仕方ないけど…手加減はしないよ?」


「ほざけにゃ、魔王国三大将軍が一人、ルカルド・エヴァン・ラオハート、貴様の命をいただくにゃ」


そういうと瞬時にルカルドの姿が消える。


「無駄だよ」


しかしラルフはルカルドの姿が消えた事に対して気にもしない。


キンッ


そしてラルフの後ろからナイフが出てくる。ルカルドの攻撃だった。


「早いっ!」

「ラルフ様!」


側にいるはずのローナとレーナは気づく事もできなかった。


「ほんの挨拶にゃ」


舌をペロッと舐め、大胆不敵に笑うルカルド。

その眼は獲物を狩る獣の目になっていた。


「獅子は常に全力を出すものにゃ」

「今の俺を仕留めきれなかった一撃が全力だと?」


ルカルドの言葉にラルフは応戦する。


「悪いにゃ、お前を舐めてたにゃ」


そしてルカルドは次々と攻撃を繰り広げる。

その速さは常人の域を超えるモノだった。


「何あれ!あの見た事のない武器達は!?」


ローナはルカルドの攻撃の種類の多さに驚いた。

ルカルドはどこからともなく武器を出現させてラルフを攻撃しているのだ。


「カットラス!サーベル!ククリ!太刀!グラディウス!」


剣で大振りをしてよけるラルフの行動の先を予測し、


「ショートソード、スモールソード、レイピア!」


速度重視の攻撃で着実にラルフに傷を与えた。


「くっ…」


ラルフも避けるのに精いっぱいで中々攻撃に移れなかった。


(操作系のスキルみたいだが…身体能力は並みみたいにゃ!)

「クレイモア、双手剣、ダガー、棍棒!!」


攻撃の手を緩めないルカルド。


そして、棍棒の一撃がもろにラルフへと飛び込んだ。

「ぐっ!!!」

もろに一撃を受けたラルフ。


そのまま玉座の間の壁へと飛ばされる。


ローナとレーナは心配するも…声は出さなかった。

明らかに目の前の戦いは自分たちの補助できる域ではなかった。二人はただ信頼するラルフを信じるしかなかった。


「…」


ルカルドもまだ集中を切らさないでいた。


(…手ごたえはあったにゃ、けど止めという程では…)

手ごたえはあった…だが、あり過ぎた。


(それに、あの二人の姉妹?のラルフっての信頼振りは…少し気になるにゃ)


似たような信頼のされ方をルカルドは別の男を見て来て感じていた。しかし、その男はこの場にはいない。

そんな事を考えていると、案の定、ラルフはふらつきながらも立ち上がった。


「いやーすごいね…マジックボックスみたいなスキルかな?あらゆる武器を繰り出して相手を屠る!実に応用に長けたスキルだ…あっ!つまり君の身体能力は天性のモノなんだね」


「…」

ラルフの言う通り、ルカルドのスキルは【収納】だ

自分の選んだスペースのモノならどこからでも出現させる事が出来る。

ルカルドは自分の部屋に大量の武器や物をすでに購入し、部屋へ収納しており、それを己の天性の運動能力と合わせる事で三大将軍まで登り詰めた。


基本的に争うを好まないルカルドはこの【収納】から眠り薬や痺れ薬を取り出して相手を無力化するのが戦法だ。


ラウラにはこの部屋を覗かれて、からくりを知られたようだ。

シンプルが故に、ラウラには口を閉ざしてもらったのだ。


「じゃあ、俺のスキルも見せるよ」

「だいたい察しはついているにゃ、操作系のスキルだろ?」


すると、落ちていたルカルドの武器が全て空中へと浮かぶ。

そしてその矛先は全てルカルドを向いていた。


「あぁ、俺のスキルはの名前は【自在】、己の意思が望むがままに空間を移動させる事ができる」


そういい、ラルフは空中に手を掲げた。


そして玉座の間の入り口からおびただしい数の剣が飛んできて、玉座の間を埋め尽くす。

その光景は正に圧巻と呼ぶにふさわしかった。


「パワーバランスおかしいでしょ…ただのスキルではないにゃ?」


ここまで操作が可能なスキルはルカルドは見た事がない。

それは先天的のような自然の力でもない…となると一つしかルカルドは思い浮かばなかった。そして、それは先程の姉妹達のラルフへの信頼感からある可能性が導きだされた。


「お前は…リョウマっちと同じ…番人のスキルとかいうのを持っているのか?」


「そうだ、あいつはこのスキル達を持つ事がどういう事か知らないみたいだったけどね」


ラルフはそういうと、剣の一つを操作してルカルドに切りかかる。

それを難なく避けたルカルドは、剣を熱魔法で溶かす。


「魔法も使えるのか…天才だな」


「天才かにゃ…敵でも褒めてくれるのはありがたいにゃ」


「実際…貴方の事はイグルシアでもスカウトを考えていたぐらいですからね」


ラルフはイグルシアではNo.2の実力者だ。そのためイグルシアでの様々な事に関して詳しくなっていた。


「恐らく、あのリョウマがいなければ我々の軍門に下っていたのでしょうね…」


「ご名答にゃ、あんたらとつるむよりも…リョウマっちと一緒の方がたのしいんだにゃ…大丈夫にゃ、お前が思う程あいつは弱くないにゃあいつは人一倍失う事を恐れているからな、今のあいつなら守るためならなんでもする。お前が手を出そうとしているのはそのリョウマが守りたい存在だ」


「分かるよ、俺には痛いほどに…だからこそあいつが来る前にここでの戦いは終わらせる」


そうして操った剣でルカルドを切りかかるラルフ。先程とは逆の立場になり、避け続けるルカルド。そして20分もの間、ひたすら攻めてくるラルフの攻撃を避け切った。


「はは…ここまで避けれるのは流石は三大将軍だ。だが、次で」


辛うじて避けているルカルドだったが、浅い切り傷が体中の至る所に出ていた。その出血は時間と共に無視できないものになっている。動きも単調になり、のろくなる。


「もうすぐ…殺しはしない、けど寝てもらうよ」


止めの一撃をルカルドの足を狙って切りかかる。その数は10本の剣先が向かう。

側で見ているローナとレーナもラルフの勝利を確信した。

しかし、ラルフの剣がルカルドの胸を通る前に、まるで察知したかのように避けた。


「…まだ動けたか」


剣を操作するラルフはそのままの軌道で剣をルカルドに向き直し切りかかる。

しかし、また避けるルカルド。


「…何?」


流石に怪しいと感じたラルフは続けて攻撃する。しかしいくら早く操作しても今度は軽傷もなく、避け続けるルカルド。

ルカルドがラルフに微笑んで、初めて彼は気が付いた。

与えていた切り傷はルカルドがわざと受けていたのだと


「まさか…この短時間で…俺の剣の行動を予測できるまでに俺自身の操作パターンを分析した?!」


「はははっ!ご名答にゃ!!!」


そしてルカルドは笑みを漏らした。


「俺っちの強さは何もスキルにこの身体能力だけじゃない…元はこの頭の良さが本来の武器でね、こうして手順が分かれば、後はとどめのこいつにゃ!」


そして、その武器にラルフは身震いした。

前の世界でもその武器の危険性は十分に理解されているからだ。


(なっ?銃!?この世界にだと!)


「武器をたくさん落としていたのは…この罠のためか?!」


思えば、ルカルドの出した武器は剣や打撃系の武器のみだった。


「実は先出ししているけど、まだ他の戦線の現状を知られていなくてよかったにゃ…後、この玉座にいる事が分かってから、この顛末は考えてたにゃよ」


近くにいるローナは己の体験した事と既視感を覚えた。


「あれは…私の靄を薙ぎ払ったみたいに…対処してる」


「さて、これで長い戦いも終わりにゃ」


レオルドは笑みを浮かべて、銃口をラルフへと向ける。


「…殺しはしない、けど寝てもらうにゃ」


ラルフはただ静かにレオルドが向ける銃口を見つめる。しかし、その眼にはまだ曇りはなかった。

ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋



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