プロローグ 復讐の始まり
復讐もの書きたくなったので筆が動いた次第です。
面白いと感じて戴けたら、モチベーションになりますので感想や評価の方をよろしくお願い致します。
とある宿屋
そこでリョウマ・フジタは身動きが取れない状態で倒れていた。
リョウマの眼差しが目の前にいる彼女らを鋭く睨む。
目の前にはこれまでパーティーメンバーとして活躍してきた仲間達。
黒髪の和風美人であるレンコ・ヤギュウ
赤髪をツインテールにしたエマ・ラマール
綺麗な白髪を短くしているスフィア・ウィンゴールド
レンコは顔を逸らす様に、エマはおどおどとした様子で、そして唯一スフィアだけはリョウマの死線から真っ向と反らさなかった。
そんな3人の仲間達の横には…かつて因縁つけてきたこの宿屋のある国…ランドロセル王国の貴族である小太りの男がいた。
その人物はこの状況を心底楽しそうにして見ており、倒れ伏すリョウマを見下していた。
「…」
「ごめんね、でも許して、仕方なかったのよ~」
「あなたとお金を天秤に考えに考えた結果です…」
「はっはっはっはっは!無様だな!リョウマァ~!」
順にレンコ、エマ、スフィア、そして貴族の男…ケインが言う。
リョウマは俗に異世界召喚を経て、この世界に降り立った。
そして様々な事を経験をし、この国に来てから数年の時が経っていた。
ランドロセル王国にて英雄として祀られ、魔物討伐や盗賊討伐といった血生臭い事もして生きてきた。
今日もそんな依頼を終え、ランドロセル王がいる王都こにある我が家の同然の宿屋に帰ってきていた。
寝ようと寝室のベッドに入ろうとしたら、突然、体が動けなくなり、さらには仲間である三人の女性がが流れ込んできたのだ。
あまりの出来事により、瞬く間に拘束されたリョウマは身動きがこの取れない状況に陥った。
目の前の貴族の男…名をケインが言う。
「はっはっは!!リョウマ!実に愉快だ!高かったのだぞ?この場を用意するためにギルドでのメンバー紹介の斡旋をから始まり、私の息がかかった者を貴様の仲間として入れていたんだ!それがこいつらさ!」
ケイン侯爵は仰け反りそうな具合に腰を曲げて高笑いする。
「さらに君を拘束するために魔力を封印する石を用意した!どうだ身動きがとれまい!」
現在、リョウマはこの世界でも強者の部類に立つ存在だ。
ランドロセル王国の宿敵、魔王国…そしてその土地を象徴する三大将軍という存在達にも引けを取らない存在だ。
彼らのその力は千人の軍よりも強く、そして特殊な力を持つと噂されている。
そんなものに対抗するべく、リョウマはケイン侯爵の仕えるランドロセル王に転移させられ、これまで仕えさせられた。
転移させられたリョウマだが、彼のいた世界…すなわち地球の世界の価値観とケイン侯爵…延いてはランドロセル王国の価値観とかみ合わず、険悪な関係だった。
特にケイン侯爵とは折り合いが悪く、リョウマに難癖をつけてはいじめをし、それにより返り討ちで軽い戦闘を行った事がある。
その結果、貴族として、それも上位の立場として育ったケイン侯爵は未だに根を持っているようだ。それがこの仲間からの裏切りを招いたのだろうか。
リョウマは薄々その可能性を感じていたが、このような形とは露にも思っていなかった。
それはリョウマをより深く心を絶望へと落とすものであった。
「本当なのか?お前ら…」
リョウマはただケインが言っている事を聞きながら、その側にいる三人に目を向け続けた。
右からポニーテールで剣道娘のビジュアルに近いレンコ。普段は髪を下ろしているが、戦闘時は髪を結んでいる。実際に王国のはずれにある剣術の道場の一人娘で、戦闘の時はよく彼女の踏ん張りと気力に助けられたものだ。
次にツインテールの赤髪が特徴のエマ。魔法使いで魔力攻撃や豊富な知識を武器に回復役としてチームの看護をよくしてくれた。この中で一番若く、将来は魔法学園へ入学する事を目標に頑張っていると聞いた。びびりで逃げ足が速いのが玉に傷だが…それでもパーティーメンバーとして信頼を築けていたつもりだった。
最後に白髪をショートにしているスフィア。迷宮にあるトラップやパーティの財政管理と事前の聞き込みといった多岐に渡る仕事を任せるシーフとして共に時間を過ごした。力は弱いが、彼女の事前の準備や知識があった事で助かった事は多く、リョウマは彼女をとても信頼していた。将来は冒険者の知識を生かして商人になると言っていた。
「…おい!聞いているのか負け犬が!」
ケインが無視されたのが気に食わないのか、リョウマに罵声を浴びさせる。
「あぁー聞いているよ…」
「なんだその態度は!お前は前前から自分の立場という物を分かっていない!!新参者がのこのこと色々と言いやがって…今の状況を理解しているのか!?あぁ!!」
続けてケイン侯爵はにたにたの何かを思いついたように言い続ける。
「いや、理解しているからこそ、目を背けたいのだろう?なぁ?仲間だったもんなぁ、この女どもと…でも残念だ!!全部俺様が仕組んだ事!そしてこいつらは金に目がくらんで俺に賛同した君の言葉でいう“仲間”だ!」
「…」
「…」
スフィアとエマは呆れる様にして気が乗っているケイン侯爵を見た。
「さて…ここでてめぇを殺すのもいいが、民は君を気に入っているのも多いからな…ここで殺すのはまずい…だから【英雄】には立派なお仕事を渡そうと思う」
すると、ケインは手元に石ころを出した。
「これは転移のスキルを持っていなくても転移ができる優れた代物だ」
そういい、転移の準備をし、リョウマの足元が光りだす。
「今、てめぇはスキルが止まっている状態だ!…その状態で、かの魔王の城まで転移してもらおう!勿論魔王討伐の命でな!」
魔王城
そこには邪悪な魔王がいるとランドロセル王国の貴族達は口をそろえて言う。
そして、リョウマの下には浮かび上がった紋様が点滅しはじめた。
「これで最強と言われるお前もおしまいだ!魔王城で残忍な魔王に殺されてしまえ!」
そう言うと、ケインは手元にある転移石を投げた。投げた転移石は空中で塵となり、リョウマを包み込む。
そして、リョウマの下にある床に大きな紋様が浮き出た。
「これで最強と呼ばれるお前もおしまいだ!!はははは!!魔王城で残忍な魔王に殺されてしまえ!」
怒鳴るように言う高らかに笑うケイン侯爵。
しかし、先程から彼の言葉など最初からリョウマには届いていない。
彼は最愛の仲間達…存在を見ながら言う。
「…おい、最後にお前らに聞くぞレンコ、エマ、スフィア…お前らの中で少しでも罪悪感があるなら…今言ってくれ、その謝罪を受け入れる」
しかし、返事がなかった。
すると調子こいているケインがちゃちゃを入れる。
「…はっ、何を聞いても無駄だ!だがそうだな?おい、お前ら、思っていた事をそのバカ勇者にいってやれ」
三人の内レンコだけ言いにくそうにしていたが、彼女が最初に口を開いた。
レンコから言った。
「…道場の経営のためだ」
その顔を悲痛な表情ながら、どこか終わりを迎える喜びなのか、口が笑っていた。
次にエマが言う。
エマはおどおどしながら言った。
「わたし…魔法の力をあるのに、折角得たのに…今度はお金の問題で学園に通えなくなって困っていたんです。悪いとは思いますけど、私はどうしても学園に行きたいのです…リョウマさん!ばいばいです」
そして最後にため息を吐きながらスフィアが言った。
「商人になるためにお金が必要なのよ。むしろ私は罪悪感よりもあなたに感謝しているわ」
それぞれの言葉を聞いてリョウマは聞いてケインはそれに爆笑した。
「はっはっはっは!笑わせてくれる。元パーティメンバーなのに、いいように利用されただけではないか?聞いたぞ?献身的に共に冒険したのにこの者達の本心を知らなかったとは間抜けもいい所だ!お前の持つ道徳なんかこのようなやつらのいいかもでしかないのだよ!」
ランドロセル王国に召喚されてからというもの…リョウマは冒険者として依頼をこなしてきた。
異世界で異国に地にいる中で、リョウマにとって彼女ら三人は数少ない仲間だった。
しかしこの現実を見てリョウマは自分の甘さに悔いる。
最愛の仲間達…だった存在を改めて見るリョウマ。
すると、足元の紋様の点滅が加速しだした。
「どうやら時間のようだな。じゃあなぁリョウマ!この世の地獄とされる魔王城を人生最後の光景として楽しんでくれたまえ!!」
ケインは意気揚々とリョウマは言うが、彼の言葉はリョウマには届かない。
それ以上にリョウマは最後に…おそらく転移させられる前に目の前の3人に言いたい事があった。彼女らを見ながら、リョウマは言う。
「…3人とも…まずは今まで有難う。そしてごめん、気づいてやれなくて…」
3人ともおそらく…おそらく最初は…ここまでの非道をするつもりはなかったのだろう。しかし、彼女たちの譲れぬ思いとすれ違いが交錯し、今の現状にいたったのだ。
それに対する懺悔…リョウマは謝罪した。
そして同時に込み上げてきたのは怒りだ。
「…お前らの選択に文句言わないし、言えない。人は何か大事なものを心に持ちながら生きている。それを否定するのはどんなやつにでもできない。」
リョウマは静かに決断した。
転移の直前、最後の瞬間に顔を上げて3人とケインを見る。
彼は口は…確かに…その口角が上がっていた。
「「「「…!!!!」」」」
それを見た4人は背筋に冷たい悪寒が走るのを感じる。
そして、3人を見つつ、リョウマはさらに言う。
「…だから、俺も好きにさせてもらうぞ?おい!ケインこう…いや、くそデブ…俺の道徳がどうかいったな…」
「…!っ…あぁ?なんだ?!」
リョウマは顔を笑わせて、言い放つ。
「俺が前の世界で育った国はな…確かに、お前ら貴族達と比べたら優しい国だ…だけどな、その国の歴史にはその優しさ故に、世界をも驚かせる行動に出た事が歴史に刻まれている」
リョウマの世代では形骸化しつつある崇拝の心だ。それのより、自爆の攻撃も最大の敬意と捉えらていた過去と歴史。
別にそのような事に習って、次にする事を行ったのではない。
ただ、最後っ屁でやりたかったのだ。
そしてリョウマはどこからともなく爆弾を出した。
「何?!」
「え?」
「なんで爆弾を!」
「この!」
ケイン侯爵、レンコ、エマ、スフィアの順に彼の行動に驚く。
それもそのはず、彼は一切の魔法といった力が出せないはず。
「爆ぜろ」
そういい、どこからともなく現れた爆弾は床へと落ち、爆発する。
「あばよ、しばらくお別れだ」
リョウマは一人に向かって言った。
そして爆弾が床に着いた瞬間。
ドガーン!!!!!!
暫く経って、辺りの爆炎が消えて、視界が晴れる。
「ケホケホ!自爆か?」
爆発がした所にはリョウマのと思われる千切れた足と血が散乱としていた。
そして、4人は無傷だった。
彼の行った爆発にはどういう意味があったのか、4人には分からなかった。
「なんだ?最後に自暴自棄になって自殺か?はっはっは、これでやつの死は確実だな!ざまぁ!!」
ケインは爆発の後の現場を見て、リョウマが死んだと断定した。
「…約束は守ってくれるわよね?」
レンコがケインに向かって厳しい目で言う。
「あぁ…そうだな。3人とも…それぞれの約束はしっかり守る、今までご苦労だった。なんなら妾にしてもいいぞ?」
3人ともタイプの違う美人だ。貴族の妾として引けをとらない。
しかし、3人ともきっぱりと断る。
「冗談やめてよ。私たちはただの協力関係よ?」
にやっとエマは笑って言う。
「お金さえもらえば、私はそれでいい。帰る、もう二度と会う事もないでしょけど…」
スフィアはそういい、場から離れた。
「…」
レンコは無視をして、この場を去る。
ケインはつまんなそうにして、最後に宿屋から自宅へと帰って行った。
こうして、ある有名冒険者パーティーが人知れず解散したのであった。
そして、事件は終わったかに思えたが、場所が変わり、この劇は未だに続くのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
場所は変わり、魔王城
空には細い三日月が星空と共に出ていた。
「あ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!あ゛ぁ゛ーーーーーー!!」
しかし、それを見る余裕は今のリョウマにはない。
足を置いていった代償は大きな激痛と共に押し寄せてきた。
そしてそれは仲間を失った痛みと重なった。
「あ゛ぁ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!あ゛ぁ゛ーーーーーー!!くそーーー!」
暫く叫び…やがて落ち着いた。
「くそ…いてぇな…やっぱ爆弾で退場は少し無理が過ぎたかな、はははは。」
そういい、リョウマは失った足を見る。
「死んだと思ったかな…」
一人でそう愚痴るリョウマ。
すると、火の玉のような明かりが彼のすぐ側に来た。赤髪の女性だ。
「リョウマ!大丈夫か!お前の反応がここに出たからすぐきたぞ!」
その女性は焦りながらも、その美しさは色褪せずにいた。よく見ると小さな角が髪の間から覗けた。
「お?早いな…来るのが遅いと思ったよ…魔王様」
リョウマはへへへと笑いながら駆けつけてきた美女…魔王に言う。
「リョウマ、その足は!」
そして美女もリョウマの足の惨劇に目を引く。
「えーとっ、まだ相手に死んだと思わせたくて…とかげのしっぽ的な」
「早く!治療を!!!」
「あぁ…大丈夫だよ、今なら治せるから」
それを聞いたリョウマは手を両足にかざして、あるスキルを併用した治癒魔法を唱えた。
≪回復への祈り≫
そう心で詠唱し、しばらくする。
すると、失った両足がまるで生えてくるように再生した。
そしてズボンは未だに破れているが、足は前と同じように存在していた。
「リョウマ!それは一体なんだ!そんな事は手紙でも、魔王国でも使っていなかったじゃないか?!」
「あぁ…これは2回目の召喚の時にでたスキルだ。」
実は2回の召喚を経た事でリョウマは2個のスキルを得ていた。
そして最初にリョウマのいた世界と…違う世界であるこの異世界へと召喚したのが目の前の女性…かの魔王アマンダ・レイフィールドだった。
その後、1年の間、魔王国の仲間達と共に修業し、不運にも再び…ケインのいるランドロセル王国に召喚をされたのだ。
リョウマが召喚された魔法。
名前を異世界召喚魔法と呼ばれる代物はその召喚された者にこの異世界に存在する特殊能力…通称スキルが手に入れる。
スキルと言っても、その力は多岐に渡り、さらには大変…感覚的存在だ。使ってみなくては効果は何となくでしか分からなく、幅というのが掴みにくい。多くは実際に使用し経験で何ができるか学ばれている。
まず。魔王国に召喚された時に得たスキルの名前は【英雄】。
リョウマはこのスキルを身体能力が上昇するスキルと認識し、武器をしようせずとも剣のように鋭い拳や獣のように速く移動できる。
そして王国に召喚された時に得たスキルの名は…【復讐】
あらゆる復讐のための力を与えてくれるスキルだった。
どうして、こんな物騒なスキルが自分に授かったのかが分からない。
その余りの物騒さに、リョウマはこのスキルを隠した。そして使わないよう努力した。
しかし、今回裏切った三人、そしてケインとの件。
それだけではなく、さらにはランドロセル王国の貴族は…とても腐っていた。
ケイン侯爵は勿論の事、多くの人はリョウマを異世界人と言う理由でないがしろにした。
召喚した王も戦力がほしいというくだらない理由だった。リョウマとしては早々に見限ってもいい理由だった。
散々変わってもらおうと行動した。しかし、今回の一件で、リョウマの心は折れた。
アマンダはリョウマの顔を見る。
彼の表情は、これまで見せた事がない程の微笑みが顔を支配していた。
「あの国を変えなきゃな、アマンダ」
【復讐】は復讐をするためのあらゆるサポートをするスキルだ。
最初は禍々しいと感じていたこのスキルだが、今は心地よくこのスキルの存在に感謝する。
「…いいの?あなたは反対していたはずだけど」
「まぁ、それだけ…今回の件は…俺の心がくじけたという事かな、アマンダ」
魔王はいずれランドロセル王国の人間達には制裁を与えなければいけないと感じていた。
しかしリョウマは手紙を通じ、それを止めていた。リョウマはぎりぎりまで…彼らで変わるチャンスが起きるもしれないと思っていたのだ。
しかし、ランドロセル王国にとって…彼らの知らない最後の壁であった存在であるリョウマはかの国に見切りをつけた。
「…」
「どうしたのアマンダ?」
アマンダにはすぐに分かった。
リョウマ今危うい状態だと。
何とかしなければいけないと。
「リョウマ、私はリョウマが好きよ」
「ありがとう…アマンダ程の人にそう言ってもらえると自信になるよ」
アマンダは自然とリョウマに抱き着く。
「幸い…私は女としての魅力はあると思うから…その…」
照れくさそうに魔王はいう。
この世界に転移してから、おそらくリョウマのなかで一番長い付き合いが彼女だ。
これが恋愛なのか、肉欲なのか分からない。
だが、目の前にそびえたつ魔王城にいたのはたった1年だが…彼女と過ごした時間はランドロセル王国と時よりも濃密でかけがえのない時間だったように感じる。
そんな魔王の対応に有難く思いながら、心のままにリョウマは答える。
「ちょっとだけ、久しぶりに頼む…」
リョウマは優しくアマンダに言う。
「///////」
そういい、二人は魔王城へと向かった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋