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プレゼント2 その2

それは昨日のことだった。

 メリーの説明が終わり、さあ帰ろう、となったところで呼び止められた。

「何だ? まだ何かあるのか」

「さっきとても大事なことを言い忘れてた」

「何をだ?」

「明日の集合時間までに大量の感情を集めてきてね」「

「メリーの食事にするのか」

「それもあるけど、サンタ服にある特殊能力はある一定量の感情がないと使えないんだ」

「なるほど」

「集める感情はなんでもいいよ。喜びでも悲しみでも恨みでも。とにかく多く集めてくること」

「集める感情によって質量みたいなのは変わるのか?」

「と言いますと?」

「悲しみの感情より喜びの感情の方が良いみたいな?」

「何で疑問形?」

「いや、自分でも理解できてないというか、あまりにも現実離れした話だから頭に入ってこないというか……」

「それでもまだ君たちは良いほうだと思うんだけど……」

「そうなのか?」

「亮は今、僕の話を何とか理解しようとしてるだろ? ひどい人達は聞く耳を持たないし、最初にあげた手紙も読んですぐ捨てるんだよ」

それが普通の人のリアクションだと思うんだが……。

「今までそういう人たちにはどうしてたんだ」

「えっ? 決まってるじゃん。実力行使だよ」

「へ、へー……」

 メリーがにたりと悪い笑みを浮かべている。今の俺にはこいつが悪魔にしか見えない。

「いやー、この前の男の方のサンタはすごかったよ。あの時はさすがにきつかったけどゴキブリとムカデを百匹ずつ召喚――モガモあっが!」

 今まで話に加わらず本を読んでいた加奈が急にメリーの口を押えた。

「どうしたんだよ急に」

「何でそんなに平然として聞いてられるの! 気持ち悪くならないの⁉」

「聞いた瞬間に考えるのをやめたから大丈夫。それよりもメリーを離してやれよ」

「そうだった。ごめんねメリー」

 加奈はメリーの口から手を放した。

「ハアハア……死ぬかと思った……」

 メリーは息を切らしながらフラフラとしている。

「でえ、なんの話をしてたんだっけ?」

「ええと……確か……あれ? 何だっけ?」

「感情の質量がうんたらかんたらって話でしょ? 質問者が忘れてどうするの」

「聞いてないのによく覚えてるな」

「ケッ。ちゃんと聞いてるから覚えてるんだよ」

 加奈さん、口調がヤンキーになってますよ。

「で、どうなんだ?」

「感情の種類に優劣はないからどの感情が良いっていうのはないかな。質量は感情が強ければ強いほど大きいという考え方でいいよ」

「すまん。わからないから例えをくれ」

「恨みを持った人間と喜んでいる人間が一人ずついる」

「はい」

「まず、種類には関係ないからこの時点ではどちらが良いというのは分からない。そこで二人の感情を詳しく見てみる。恨みを持った方の人間の恨みは周りに愚痴って発散するレベルのもの。もう一人は宝くじが当たった時にでた喜び。じゃあ、このとき恨みと喜びはどっちが大きい?」

「もしかしたら宝くじなんていらないという奴がいるかもしれないが、普通は喜びが大きいはずだ」

「正解。もう理解できた?」

「何となくわかったぞ。つまりその当事者に聞かないとどれぐらいの感情をいだいてるのかわからず、他の感情とも比べようがないということ……だよね?」

「うん。そんな感じ」

「そういえば、この前感情のバランスがどうのこうの言ってたよな? あれは関係ないのか?」

「あれは僕だけだから」

「ふーん」

「それでどうやってその感情を集めるのかというとあれを使います」

 メリーが指しているのは加奈のサンタ服だった、。

「なるほど。サンタコスをして男から集めようというのか」

「いやいや。それが出来るのはスタイルが良くて可愛い女の子だけだから。そんな人、ここにはいないから」

「ですよねー!」

 メリーと笑いあってると後ろから殺気を感じた。

「メリーさん。ちょっと後ろから殺気を感じるんですけど気のせいですかね」

「奇遇だね。実は僕も感じてたんだ。」

「メリー、ちょっとだけでいいから後ろを振り向いてくれないかな?」

「実は昨日寝違えて、首が回らないんだ。亮が見てくれないかな?」

「ちょっと今、金縛りにあってて体が動かないんですよねー」

「嘘つくなー! じゃあ何で今会話してるの⁉」

「え? 知らないんですか? 最近の金縛りは首だけ動かなくなるんだよ。」

「さすがにその言い訳は苦しいと思うよ……」

「いやいや、それをいったらメリーの言い訳もダメでしょ! 猫が寝違えるなんて今まで聞いたことねーよ⁉」

「最近の猫は――」

「寝違えるんだよね?」

 後ろから声が聞こえた。俺とメリーはガクガクと震えながら振り向いた。

 そこには鬼の形相をした加奈が俺たちを見下ろしていた。

「で、どこにスタイルのが良くて可愛い女がいないんだっけ?」

「「いえ、あの……その……」」

「二人とも声は被らせなくていいから、私に聞こえるように言ってごらん。怒らないからさ」

「「ここにです!」」

「お前ら二人とも地獄に落ちやがれー!」

「ゴフッ!」

 加奈はメリーを何の躊躇いもなく蹴り飛ばした。メリーは勢いよく壁に激突してピクピクとしている。

「さて、次はあんたの番よ。なにか遺言はあるか?」

 どこから持ち出してきたのか知らないが、加奈はボクサーが手に巻いているバンテージを巻き始めた。

「ちょっと待って! 俺がここで怪我したら加奈一人でサンタをすることになるよ!」

「……」

「だから、ちょっと落ち着こう。ね?」

「チッ。次はないと思えよ」

「ありがとうございます!」

 加奈はバンテージを巻くのをやめて片付けだした。

「亮に聞きたいことがある」

「な、なんでしょうか!」

「亮は何で私が地味っ子に見える?」

 これは答えても良いのだろうか。答えたらいきなり殴られるとかないよな……。

「早く答えろ」

「眼鏡してて、スタイルも微妙で……それと前髪が長くて目が隠れているように見えるからです……」

「じゃあ、亮が最後に私の顔を見たのはいつ?」」

「今だけど?」

「違う。眼鏡がなくて、前髪で目が隠れてなかったときの私」

「うーん……そういえば全然見てないな。眼鏡をし始めたのが確か小学五年の時だったような気がする」

「そこから先は見ていないと?」

「そういうことになりますね」

「そうか。なら明日楽しみにしておけ」

「あ、はい……」

 化粧でもするのかな……。

「よしよし。メリー大丈夫だった? ちょっとイラってきたから蹴飛ばしちゃった。でもあんなこと言うメリーも悪いんだからね」

 加奈は頬をぷくーっと膨らませながらのびているメリーを抱きかかえた。

 ちょっとイラッとしただけであそこまでするのか。これからはうかつに加奈を怒らせないように気をつけよ。

少ししてのびていたメリーが目を覚まし、説明が再び始まった。

「感情はサンタの手袋で集める。体のどこの部分を触ってもいいけど、洋服の上からでは感情を集められないから注意しよう」

「はーい」

「どれぐらい集めたかを知りたいときは手袋についている時計みたいなメーターがあるからそれを見よう」

「ノルマとしてどれぐらい集めればいいんだ?」

「満タンにしていて欲しいけど、もう時間もないから半分ぐらいかな」

「了解」

「他に質問ある?」

「特にはないかな」

「私も」

「じゃあ今度こそ解散!」

「お疲れ様でしたー」


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