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プレゼント1 その4

 ピピピピピピ!

 俺は携帯のアラームによって起こされた。

 アラームを止めて、時間を確認する。

 十二月二十五日。午前六時半。

 そうだ。サンタはどこに行った! あ、エロゲはある。

 エロゲは窓の近くにあった。しかも意識が無くなる前にはなかったリボンがついていた。

 そして俺の机にはサンタ服が置かれていた。一枚の紙とともに。

『こんにちは。これを読んでいるということはあなたは来年のサンタに選ばれました。あなたのパートナーになるサンタは平野加奈さんです。詳しいことはメリーにお聞きください。

注意! これは妄想ではありません。ここに指を乗せるとわかります』

「書かれていることが分からん……」

 まず状況を整理しよう。

 昨日のサンタが俺たちを指名したことで来年のサンタが俺たちになった。

 もう一人のパートナーが加奈。

 詳しいことはメリーさんという人に聞けと。

そして紙の上に指を乗せると妄想ではないことがわかる。

 「……」

 多分、紙の上に指を乗せると昨日のサンタが言っていた通り窒息するのだろう。

 さてこれからどうしようか。

 まずは加奈と話をしに行かないといけないのか。

「はあ……」

 おもわずため息が出る。

 どうやら俺は変なことに巻き込まれてしまったようだ。まあ腹も減ってきたしとりあえず朝飯でも食うか。


「おはよー」

「おはよう」

 リビングに行くと母さんは一人で朝食を取っていた。姉と父さんはもう出て行ったようだ。

「ねえ、亮」

「何?」

 母さんの声音がいつもと違っていた。しかも俺を見る目もおかしい。簡単に説明するならごみを見るような目だ。

「はあ……」

「え? ちょっと待って? 俺なんかしたっけ?」

「昨日の夜のこと覚えてない?」

 サンタが来てエロゲをもらったなんて口が裂けても言えない。

「いや、全く覚えてない」

「あれは夜中の二時ぐらいかな。私は目が覚めてトイレに行ったのよ」

「はあ……」

「部屋に帰ろうとしたら、いきなりドサッて何かが落ちたような音が聞こえたの」

「……」

「その音が何の音か気になって亮の部屋に行ったのよ。私はいつも通りに何回かノックしてみたんだけど中からは何も反応はなかった。寝てるのかと思い私は扉を開けてしまった」

「そうしたら?」

 母さんの手がカタカタと震えていた。

「亮が息子をにぎったまま床に寝ていたのよ。部屋中にティッシュをまき散らして……」

「ま、まじで?」

 俺は声が震えてきた。やばい! 死にたい!

 でもおかしいな。俺は昨日、薬品を嗅がされて眠らされた。俺は昨日していたけど最後までやっていない。やっていないから当然ティッシュだって使っていない。

 いや待てよ? その状況を作れる奴が一人いるじゃないか。

 サンタが!

「あいつ殺す!」

「ついに人のせいにするのかい。往生際が悪いよ」

「待って、誤解だ! 俺じゃないんだ」

「じゃあ誰が?」

「サンタ」

 母さんの顔が真顔になった。しかもよく見ると涙目だ。

「エロゲのしすぎで息子が壊れた件について」

「やめて! そんな議論をしても意味がないから!」

誰得だよ⁉ それ!

「まあ、私はやさしいからちゃんと部屋を片付けて亮にズボンを穿かせて、さらにベットに運んだのよ。まさか高一の息子にズボンを穿かせる日が来るとは……」

「うん。そこはそっとしていて欲しかったな」

 母さんは優しさの意味をはき違えている。

「これからは気を付けるのよ。親を泣かせたらダメ」

「すいませんでした!」


その後、父さんには、

「せめて目立たないようにしような」

 と言われ温かい目で見られた。

姉はこのことをなかったことにしてくれた。


家族が皆優しい人で良かったよ。下手したら精神崩壊ものだ。




「あー、あのサンタ殺したいわ……」

「すごいよ亮! この亮の悪の感情めっちゃドス黒かった! あ、もう食べたから良いよ」

 俺は言われてハッとする。

「あれ、巨大化は?」

「そうだった。じゃあ、ちょっと離れてね」

「加奈もどかす?」

「そうしてー」

 俺は雑誌を顔にかけて寝ている加奈を部屋の端に移動させる。

「なに亮。引っ張らないでー」

 起きた。

「今からメリーに巨大化してもらうからここ移動させたんだ」

「へー」

「興味なさそうだな」

「前に一回見たことあるし」

「なるほど」

「じゃあ巨大化するよ」

 メリーの足元が徐々に黒くなってきた。やがて足元だけではなくメリー全体が黒色の空気に覆われていき、メリーの姿が見えなくなった。

 黒色の空気はゆっくりと大きくなっている。そして、ついに部屋全体を覆った。

「この黒い空気って大丈夫なのか?」

「巨大化に黒くする必要はないらしいよ」

「関係ないのかよ!」

「だってほらもう……」

 加奈がさす指の先には俺よりも二回りほど大きいメリーがいた。

「どう? これで信じてくれた?」

「わかった。認めるから元の大きさに戻って」

「え、なんで!」

 メリーが驚いたような顔をしている。

「大きすぎてもう猫じゃないし、可愛くない」

 加奈がとどめを刺した。メリーをお気の毒に思うが、加奈が興味を示さない理由が何となく理解できる。確かに可愛くない。

 メリーは無言で体を小さくなっていった。やっぱりこっちの方がしっくりくる。

「そうだ、昔を思い出しててメリーに聞きたいことがあった」

「なに」

 明らかに落ち込んでいる。どうやらかなりダメージを受けたらしい。

「メリーがここに来て一回もこの仕事について聞いてないんだよね」

「そうだっけ?」

 メリーはニャハハと笑ってごまかそうとする。すごく可愛いけど説明はしてもらう。

「まずは集合時間と場所」

「二日とも夜六時にここに集合。それで――」

 ここから一時間ほど話が続くので、要点だけをいう。

二十四、二十五日の二日間。サンタ服で夕方六時に集合。解散は夜中の三時。

二日間で届けるプレゼントは三つ。

 サンタ服には色々な機能があり、それらを使ってプレぜントを届ける。

 そして達成できなかったら来年もしないといけない。

「最後に質問。プレゼントは自腹?」

「いや、僕が作るからもってこなくていいよ」

「感情で?」

「そうだけど?」

「……」

 何でもありのメリーのおかげで、準備する手間が全て省けた。

 これで後は明日を待つだけだ。


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