プロローグ2
「は?」
全員の声が揃った。ただ一人(ry
加奈が俺の目の前に立つと同時に、俺にだけ聞こえるように言った。
「返答次第では引っ越しを検討しないといけないかも」
何それ? それどういう意味?
「さあ、早くしないと昼休みが終わっちゃうよ?」
やばいやばいやばい! どうしよう。これってどっち選んでも死亡じゃない? 仮にさっきの加奈の要求に応えたら男子からの攻撃が飛んでくるだろう。なんせうちのクラスには彼女持ちが一人もいない! 逆に応えなかったら引っ越し検討レベルの攻撃。どうにかしてこの状況を打破する方法はないのか? ……。うん、ない! 俺の脳味噌ではそんな方法は思いつかない。というか野次馬どもがさっきからうるさい! ギャーギャー騒ぐんじゃない! いかんいかん。落ち着いて考えるんだ。どっちがリスクが高い? どっちが生き残りやすい?
「あと五分だよ」
もう時間はない。
俺は目を閉じて深く深呼吸をした。覚悟は決まった。
「加奈」
「皆ちょっと静かに!」
加奈のその一言で全てが静まり返った。
「どうぞ」
加奈はにこりと笑った。
「好きだよ、加奈。愛してる」
俺は片膝をつき、加奈の手にそっとキスをした。
「私も好きだよ。亮君」
加奈は俺を立ち上がらせてギュッと抱き着いてきた。
その瞬間、野次馬の歓声が沸き起こった。
女子はキャーキャーと騒いでいたが、意外にもクラスの男子は落ち着いていて、全員が拍手をしていた。中には泣いているやつもいた。
「えっと……加奈? 俺はどうすればいいんだ?」
加奈はさっき抱き着いて全然離れないから身動きが取れない。
「亮も抱き返せばいいんじゃない?」
えへへと笑いながらスリスリしてくる
やばい! なんかこいつ可愛いな! しかも加奈が動く度にすごくいい匂いがする! そして暖かい! なにこれ? 癖になりそう。
加奈が抱き着いたまま俺にひそひそと話す。
「どう?」
「いい匂いがする。癖になった」
「それはどうも。そうじゃなくて、これで全て丸く収まったでしょ?」
「なるほどね。ありがとう加奈。助かったよ」
「どういたしまして」
先ほどの言動で俺は加奈が好きということになり、俺のゲイ疑惑は晴れた。
これは後から加奈に聞いた話だが、違う計画のために加奈は俺が気づかないところで皆に俺が好きだと言っていたらしい。だからそれを知っている男子たちは攻撃出来なかった。
そしてこれで誰からもクリスマスの日に誘われない。完璧だ。
チャイムが鳴り皆がぞろぞろと帰っていった。加奈も抱き着くのを止めて自分の席に帰った。
ほんわかとした空気の中、ただ一人激しい憎悪を出している奴がいた。
「ウラギリモノ、アトデコウシャウラニキテモラオウカ」
言うまでもなく隼人だ。
だが俺は掃除当番だったから隼人の所には行かなかった。
次の日
俺は隼人の機嫌を直すことと仲直りのために、今話題の駅前のクッキーを持って謝りに行った。
「おはよう亮。ん? 俺にこのクッキーくれるのか⁉ 俺何かしたっけ?」
「いや昨日のお詫びだ」
「なんかあったか? まあいいや。クッキーありがとう!」
「お、おう……」
隼人は許すも何も昨日の出来事を忘れていた。