『球技大会!!(中+)』
光に言われるがまま集まった俺達は、輪を描くように丸く固まった。
『あんまり皆緊張したらあかんで!?特に優馬。』
『あぁわるい…』
やっぱりこの中断は俺のせいだと、改めて実感した。
うつむいている俺にゆっくり光が近づいてきた。
『なぁ優馬。大丈夫か??』
『あ?』
『お前狙われ取るで??さっきみたいにボケとったらのぉどんどん狙われてまうで??』
『あぁ。だからわりぃって言ってんじゃん。。』
最悪の態度だ。心配して言ってくれてる光にも冷たく、自分でもこんな態度取ったらダメだって分かってるのに。気持ちとは反対の言葉がでてくる。
『おぃ!』
『あぁ??』
バチン!!!!
…え?…平手打ち?ダブル平手??…光に両手で平手打ちされるみたいにバチン!と顔をつかまれた。
『お"い"!!!!!!われ!!!やる気あるんかいな!!!???われのミスに怒っとるんや無い!!われのやる気の無さにイラついとるんや!!1度や2度ミスしたくらいでなんや!!お前のミスをカバーしたれなんだ俺らのミスでもあるんや!!お前一人で抱え込んでたらあかんで!?コレは個人競技とちゃう!!チーム戦や!!
逆に言えばおんどれがやる気のぉなったら負けるんじゃ!!勝気のぉなったんやったらとっととうせて薫の見舞いでも行ってこいや!!ボケが!』
それだけ言うと光はコートに戻った。
『…』
あまりにも的確に言われて、何も言い返せなかった。…勝つために…優勝するために…皆必死なのに俺は…罪悪感と自分の情けなさに、涙が出そうだった。悔しさを下唇を噛み締める事で絶え、唇からは少し血が出た。
カオリンへの伝言を頼んだのは他でもない俺だ。光に叩かれて赤くなった頬を自分でもぉ2、3回叩き。気合を入れた。
ピーピピピ!!
『もぉ再開しますので選手の方はコートに戻ってください。』
審判からの合図でそれぞれがコートに戻り、俺だけが外に居た。
『優馬!早く!!』
キキに呼ばれトボトボと歩き持ち場に戻る途中で足を止めた。
『光!!サンキュー!!絶対勝とうな!!』
何だか意味不明で強烈に恥ずかしいけど…お礼を込めて言いたかった。…言ったら雨雲が去ったかのように何かすっきりとした気分になった。
『おう!!!あったりめーよ!!』
また光に救われたって思い、少し笑えてきた。
ピー!と審判が笛を鳴らし試合開始。今の事で俺達のやる気や優勝への意識は改めて強くなったが、それで流れが変わる事はなく、1vs5とあれから立て続けに点を取られた。…でももぉ二度とあきらめたりしない!!
相手のサーブはまた俺の所に来た。実を言うと、相手の最初のサーブからずっと俺が狙われていて、もはや必然的に思えるようになってきた。
威力より正確性を重視しているサーブだけに、慣れればどぉってこと無い。冷静に判断し、誰にボールを出すかなども考えて動けるようになってきた。
光がフロント側に居ないときはとりあえずセッターに!俺はキキにボールを回し、キキのトスで羽樹がアタックした。
少し、ジャンプが早かったのかボールの的を捕らえられず威力はあまりでてなかった。
ピー!!!
相手のまさかのお見合い。思わぬ展開でサーブ権と要約2点目をGETした。
『よっしゃ!!今ので流れが変わったで!!』
光の発言に皆は大きく頷いた。
ローテーションして羽樹のサーブ。ボールを自分の身長くらい高く投げジャンプサーブ。
バン!
バン!
バン!
と全く相手は触れる事が出来ず、ものの1分くらいで3点をとってしまった。
5vs5
要約並んだ。が、毎回長いラリーをしてただけに、残り時間はもぉあまりない。
今度はキキのサーブ。キキは羽樹とは違い確実性のあるサーブを入れた。
ゆるい球なのに相手の反応はあまりよくなかった。
相手も触れたには触れたのだが何かぎこちなく、重心が定まらないのか、最後に腕だけ大きく動かして強引に取りに行ってるような…
俺には何してるんだろう???疲れたのかな??程度にしか分からなかった。
相手はキキのサーブを1打で返してしまい、こっちでボールを処理し、五右衛門のスパイクで逆転。
6vs5!!
運が良かったとばかり思っていた俺をよそに羽樹と光はキキに【ナイスサーブ!!】と良い。キキもブイサインで応答した。
この後のサーブに関しても同じで、キキのゆるいサーブに大して、敵はミスを連発。
結局残りのサーブで2点取ってしまった。
8vs5!!
ココに来て俺のサーブ。流れも運もこっちにある今、俺も一回くらいバシッっと決めたいと思い、あまりやった事の無いジャンプサーブ!!
『ヨッシャァァ!!もぉ一点プラスするぜ!!!』
バシッッ!!!!ボールを光の顔と思い全力で振り切り凄い音が鳴った。
流石男ってだけの事はあって威力も速さも羽樹の倍近く、例えて言うなら…メジャーリーガーの投手が時速160キロくらいの球を投げ空振りで見事キャッチャーミットに突き刺さったかのようにネットに突き刺さった。
『…』
『…』
ピー!!…っけ…所詮コレは現実…願ったり思ったりしたところでドラマや漫画みたいには上手くいくはずねぇよな…
半分開き直ってる俺に、今度は本当に周りの視線が痛かった。場外からも無数の視線の針でチクチクと刺されている気がした。
しぶしぶ、場外に転がっていったボールを自分で取りに行き相手選手に渡した。
相手が構えた時…ピーピーピーと試合終了の合図がなり、最後はちょぉっと集中が途切れたが俺達は決勝への切符を手に入れた。
最後はちょっとぐだってしまう結果になったが、試合終了でそんな事は一瞬で忘れ去られ、俺達は抱き合って喜びを分かち合った。
クラスの奴らも一斉にコートに入ってきて皆で一勝を喜びあった。
正直勝てると思って居なかった所を羽樹とキキに救われた。
キキが代表で報告に行っている間にキキのサーブの事を光に聞いたら、あれは無回転のブレ球サーブだった。そうそう打てる球じゃなく結構難しいらしい。一体羽樹やキキは中学校時代どれくらいの成績を残してきたのだろう…そんな事を思いながらひとまず決勝に備えてキキの帰りを待ちながら木陰に固まって座っていた。
『おまたせぇ。決勝は15分後で相手は2組らしいよ!!』
『お疲れ!!2組かぁ。。奴らの成績はやっぱり全勝??』
『ぅん。クラス対抗の時から全く負けてなくて、しかもさっきの試合でも余裕勝ちだったみたいだよ…』
『せやなぁ。さっき岡田がゆぅとったんねやけど、2連続試合やのにボロ勝ちやったらしいわぁ』
『強そうだな…でもまぁ勝てるよな!!』
『当然や!』
『だな!』
今は、考え込むより前向きに突っ走った方が良い。誰もがそぉ思っていた。
俺達は少しだけ作戦を立てた。作戦と言っても試合の流れ的に効率が良いのを選んだ。
まず最初にサーブの上手い、羽樹→キキ→光の順番にサーブが回るようにして、一気に点差を広げようって言う作戦だ。
相手は強い上に俺達より人数が多い。それを考えるとまともにやり合ったら、厳しい展開になるかもしれない。
そこで点差が広がったらある程度時間を稼ぐ事にした、サーブは普通に打つのではなく、俺と五右衛門に関しては天井サーブ。
天井サーブとはアンダーハンドで高く打ち上げるサーブの事で普通よりほんの少しだが敵が触るのは遅くなる。そして今回の試合は外で行われているだけに太陽光の影響もあって目くらましにもなって一石二鳥のサーブだ。
とりあえず俺達は勝つ!あの手この手を使って…
『ただいまより、決勝戦を開始したいと思います。一年生も2、3年生同様、決勝は外で行われますので速やかに移動してください。勝っても負けても悔いの残らない試合にしましょう。それでは決勝に残った代表のチームはコートに集合してください。』
『フゥ…よし行こか!』
キキに言われ全員でコートまで向かった。そこにはクラスの奴らは当然、他のクラスの奴らも集まっていて、若干興味無く来てない連中も居たが観客は200人以上だった。俺達が5人って事もあり、俺達よりの応援者の方が多かった。とは言っても真剣に応援してる奴らは各々のクラスくらいでそれ以外はどっちが勝つのだろうって野次馬連中だ。
『えーこれより、3年生の決勝戦を行います。ルールは先ほどとは違い、時間が5分多い25点先取の20分です、なお長時間になるので10分たった時点でタイムアウトを入れますので水を補給してください。それではリーダの方は握手し、サーブ権を決めてください。』
コイントスの結果は俺達だった。…よし!!これでさっきの作戦が有効になる可能性が出てきた!!…
『それでは4組のサーブ先取で試合を開始します。礼ッ!』
『((オネガーシャース!!!!!))』
皆ポジションに付き、羽樹はサーブの位置に付き、ボールをバウンドさせ、審判の合図を待っている。
ピーッ!!!
合図と共にボールを高く投げ、ジャンプサーブを打った。さっきより、綺麗なうち方で完璧なサーブだった。
『ナイスサーッ』
光の声も観客の声には勝てずあまり響かなかった。
ボールは相手の人と人とのを狙っており、何とも取りにくい良い狙い場所だ。
『俺が行く!!』
相手の一人が叫び、体制を崩しながら羽樹のサーブでのポイントを阻止した。
ボールは高く上がり、倒れてる味方をまたぐ様に飛び越え場外へと飛んだボールを必死で追いかけ、コート無いに戻した。
アタックで返す事は出来なかったが、羽樹のジャンプサーブが初めて止められこっち側としては同様が隠せない。
『皆気持ち切り替えなアがンで!!!』
光の声で皆冷静になった。まだまだこっちが押している事には変わりない。
ふわりと上がったボールの落下点に行き、俺は光にパスを出した。
『行くぞ!!光!!』
『おう!!』
俺の出したボールは綺麗に光にわたり、光は【優馬!!そっちもどすで!!】と良い。五右衛門への合図だなとわかった。
俺は俺でバックアタックを演じなければならない。軽く走り、光のトスに合わせて飛んだ。
それより少し遅めに五右衛門がとび、敵の意表をついた。
敵は俺の攻撃と信じ、ややコート後ろ寄りで構えていた。五右衛門へのトスだと相手が気づいたときには五右衛門はスパイクを綺麗にきめていた。
先制点GET!!
羽樹のサーブが止められた時は本当にどぉなるかとおもったよ。何がともあれとりあえず1vs0作戦どぉりとは行かないが、先制点を入れることが出来たのは大きな達成だ。
『よっしゃよっしゃ!!今のええ感じやったぞ!!!』
『おう!!』
さっきまでの緊張は嘘の様に晴れ、何だか楽しい気分になっていた。
再び羽樹のサーブ。
さっき同様、今回もかなりのキレがある。応援してくれてるクラスの奴らも、当然俺達も、さっき止められたのはまぐれだ!!今回は止められるはず無い。
って思っていたに違いない。あの凄いサーブを見たら誰もがそぉ思うだろう。
が…またもや止められた。
今度は以前の様にバランスを崩す事も無く、大きい音を立ててしっかりとレシーブした。
…マジかよ…
流石の光も驚きの表情が溢れていた。
敵はそのまま上手くボールを自分のものにし、俺らの穴…5人故の穴…中央…を的確に狙ってきた。1vs1。
『悪い!!わぃがカバーせなあかなんだ!!中央狙いはセッターが少し下がって対応せな…』
『ドンマイドンマイ!!』
誰も、お前をせめたりしねーよっと。仲間は勿論、場外からもドンマイの声が聞こえた。
サーブ権を失い、点差も0になり、俺達の作戦とは程遠い結果になってきた。
『サーブイッポーン』
敵陣から気合の声が聞こえるや否や、死守する体制にこっちも気合を入れた。
敵のサーブも威力が無いわけでは無いが羽樹ほどではなかった。
ボールは俺の方に来て、【よし!これなら上手く光に送れる!】と思った瞬間。
『優馬!!!その球ブレるで!!!!』
光の声がボールがブレ出すより早く耳に入った。
え??…でも頭ではボールがブレるまでに理解する事は出来なかった。
やばい!!…野球のフォークボールっていうのかな?ボールは行き成り降下し軌道を変えた。
とっさに反応して、何とかボールをそのまま地面に落とすって事はしなかったけど、ボールは後ろの方に飛んで行き、流石にアウト…
1vs2。逆転されてしまった。
『気にするな!!最初から分かってれば何とかなる!!』
五右衛門の言うとおり。最初から分かっていれば取れない球じゃない!!
内心不安はあったが弱気は付け込まれてだた狙われ的にされるだけ…今は空元気でも空自信でも相手にビビって無いって事を精一杯努力するしかない。
情緒不安定の俺達を待ってくれるはずも無く、試合は進んだ。
またしても、無回転サーブで今度は羽樹の方に飛んでいった。羽樹は軽く体を横にずらし、横向きにそのまま敵に返す様にブレ球処理をした。
『ナァィス!!OKOK!それで良いで!!』
敵陣に帰ったボールはすぐ様こっちに戻ってきた。凄い音のスパイクとなって。
スパイクは五右衛門のブロックによって何とか阻止されたが、ボールが場外に落ちてしまい、結局敵の追加点。
1vs3。
こっちがミスをしてるわけでもなく、それぞれ良い動きをしているのだが紙一重の差で敵に点を持っていかれる。
実力は均衡…それぞれ一人一人の差は無いだけに、俺らが一人少ないと言う事が決勝に来てかなり響いてきた。
敵のサーブは羽樹やキキにも引けを取らず、何とかしのいでラリー戦に持ち込んでも穴を付かれたり、戦術で一歩相手が上回るなどと点差は縮まる事無く開くだけだった。『まだ15分あるお前らなら逆転できるぞ!!!』と誰かが言っているのが耳に入り、時計を見てみると試合開始から5分がたっていた。
まだ5分??…異常に長く感じる…もぉかれこれ20〜30分くらいプレイしてるよな…
ピー!!
試合の流れは一向に変わる事無く、一方通行の道にいるかの様に相手からの攻撃が雨の様に降り注ぎ、俺達はそれをただどれだけ長い間耐えれるか…
そんな感じで試合は1vs7になっていた。
『フゥ!!どないしたん!?元気のぉなっとるやんけ!!』
状況的に光が言うのも分かるが、逆に元気がなくなるのも無理は無い。
耐えて…耐えて…耐えて…負ける。これの繰り返しだもん。
相手のサーバーが代わり、いきなりゆるゆるのサーブが飛んできた。
あ?…ついに目まいまでしてきたかと思ったが、実際にゆるゆるの誰でも取れるボールだった。
チャンス到来!!!
みんなの視線が一気に集まり、相手の一人を確認したのち互いに顔をあわせ小さくうなずいた。
穴…大穴発見!!!
『光!!行くぞ!!』
『よっしゃこいや!!待ちくたびれたで!!』
声を出してなかったのは精々2分くらいだが、何時間ぶりに声をだしただろう…そんな気がした。
この千載一遇のチャンスを誰も見逃さなかった。
砂漠で迷子になり、絶望で頭を抱えいた俺達の目の前にオアシスが見えた!!
光は俺からのボールが来る前に【キキいくで!!】と叫んだ。自分で打つ合図だ。
俺はいつも以上に丁寧に、なるべく高めに光にボールを回した。
光はキキの方を向き、若干早く飛び、トスの体制からパシっとさっき見つけた大穴さんの横に叩き落とした。
ピー!!2vs7。
要約俺達の追加点…長かった、遠かった、でも何とかたどり着けた一方通行越え。
相手は相手で【ドンマイ気にするな】と肩を叩いて励ましあい、早くも意識を切り替えていた。
サーブ権が変わり、キキのサーブ。フロント側には俺、五右衛門、光と攻撃型2枚目の作戦実行だ!
え?作戦は1つじゃなかったのかって??
いやいや、頭脳派の光君がもしもの時を考えないわけないでように。
約15分前。
…『サーブ先制点及び時間稼ぎ作戦がもし失敗に終わった時の事も考えといた方がええ!!』…
…『いやいや、羽樹やキキにいたっては誰も止められんでしょ!!』…
…『そぉ信じとるけどな、作戦はただやねんしもぉ一通りくらい用意しといて損はない!!』…
…『じゃぁどんな提案があるの??』…
…『クイック攻撃や!!』…
…『ふぅん。それなら別にネット側に男子じゃ無くてもできるんじゃない??』…
…『ちゃうんや、殆ど合図なしのクイック攻撃や!!』…
…『俺達が男やでとかそんなんでこの策を言っとるんや無い!!ゆわば、いっつも金魚の糞みたいに一緒におった俺達やでできるんや。』…
…『キモ…』…
この後合図決めみたいのは無く…マジでぶっつけ本番となった。
まさか本当に合図なしで出来るのかな??不安はあったが俺達三人なら何か出来る気がした。
ピーっとなり。
キキは当然大穴さんを狙い、それを察したベテラン君がカバーのつもりか…もぉ打ち返す体制の整った大穴さんに向かってダッシュした。
ベテラン君も頑張りもむなしく、大穴さんは飛んできたボールをオーバーハンドでポーンとそのままこっちに返してきた。
彼女の落ち込み様からすると恐らく、返してきたじゃなく、味方にパスしたつもりがこっちのコートに入ってしまったが正しいだろう。
やわらかいボールが来て最上無二のチャンスがまたも到来した。
羽樹はそのボールを光へと回し、俺と五右衛門は光からどんなパス…合図…が来るんだろうと見逃さないように見ていた。
『42!』
光はそぉ言った気がした。
最初のトスは多分だけど俺に向かって出されたと思う…
が…何??何??何??何??何なのこれ!!!?
42!?…あれが合図??…それとも合図無し!?…見落とし!?
速攻に打つ球??時間を空けて打つ球???…とりあえず俺に出されたトスには間違いなさそうだし、頂点を捕らえて打つ事にした。
…【あ!?!?光が言いたかったのはそぉいう事か!!!】…