『Mystery弐』
ほんのりと明かりを放つランタンが光によって慌しく光粉をばら撒いた。
地面に置いてあったランタンを謎の石に近づけ、光は必死で文字を確認し、その文字列を地面に書き出した。
【どうだ妹と二人暮らし、どうだいもっととうもろこし】
【どうだいもうととふたりくらし】
【どうだいもっととうもろこし】
『これどぉ思う!?』と光は振り返り俺達に質問してきた。
『いや。ひらがなにしたのは分かるけどそれ以外は意味不明…』
『俺も五右衛門と同じくわかんね』
はぁ…三人寄れば文殊の知恵とは嘘っぱちやな。と言い放ち、再び一人で考え出した。
俺と五右衛門も必死で光の思考に追いつこうとしたが、いかんせん。そもそものIQが光とは天と地の差なのだから…
『俺らに出来る事は…』と五右衛門が言い出し、【何!!こいつまで理解しだしたのか!?!】と一瞬ドキッとしたが、最後まで聞いて俺の胸の高鳴りも無駄だった。
『俺らに出来る事は光の邪魔をしないことくらいだな…』と自信満々に五右衛門は言い放ち、よっこらせと胡坐をかいて座り込んでしまった。
少しくらい光の手伝いをしたいと思ったが流石に無理そうだな、と俺も五右衛門の横に座り込み、天を仰いだ。
午前中は綺麗に輝いていたお天道様も、一瞬にして闇の覇者、お月様へと変わってしまっている事に今更ながら変な違和感を抱いた。
お月様を引き立てるように満遍なくばら撒かれた星達が丁寧な光を放っていた。
樹海の中だけに湿度が多く、ジメジメと体中をナメクジが這っているのでは…と思うくらいに気持ち悪い感じでたまらなかった。
真夏の夜に聞きたくないと言っても無理だろう。
方向感覚を奪うような蝉時雨がザーザーと鳴り響き、天を仰いで居ると目が回りそうになった。
『優馬!!五右衛門!!ちょっときてくれんか!?』と光に呼ばれ再びよっこらせと立ち上がり、石に食らい着いている光の元へと歩み寄った。
『わかったんか!?!?』と五右衛門が聞くと、たぶんな…と光もこっちを向いて座りなおした。
『まずな、実行する前にワイの結論を聞いてほしいねん。』
ふむふむ。と俺達は頷き、今日は話を聞いてばっかりの一日だな…と思いつつも光の話に耳を傾けた。
『まずコレは隠語やねん。まぁワイの予想やしな、絶対にあってるとは言えへんけど多分当たってると思うで。』
もったいぶらずに早く言えよ!!!と俺と五右衛門で急かすと光はカカカと笑い説明してくれた。
『ワイの予想やけどコレは【灯台下暗し】って事やないか!?』
は!?といまいち理解できない俺達にまぁ待てと光は話を続けた。
『どうだ妹と二人暮らし、どうだいもっと玉蜀黍。この二つの共通点を搾り出したら【灯台下暗し】になんねん。』
『まぁそぉ言われると何となく二つとも【灯台下暗し】って諺に似てる気もするけど…それが何をいみしてんの!??』と俺が聞こうと思った事を五右衛門が先に聞いてくれた。
『はぁ…そもそも灯台下暗しって諺の意味はしっとるんか!?』
『まぁ何となくだけど、灯台は周りを光で照らして自分の足元は暗いよって意味だろ!?!?』
『ふむ、まぁそれはそのままの意味だな。それは意味やないねん。単純に灯台下暗しってのを長く言っただけや。本来の意味は身近な事情に疎いこと。これや。例えるなら、警察が犯人捜すために、色々な調査したりしてるとするだろ!?それで何日にもわたって調査したけど結局犯人は警察署ないのしかも自分の相棒でした。ってのが灯台下暗しって事何や。』
『ほうほうほう。何となく分かったけど、なんでそんな事がココに書いてあるん?!?』
俺も五右衛門とほぼ同時に理解し、五右衛門と全く疑問を抱いていた。灯台下暗しって意味は光の説明でよくわかったけど…なんでこんな石にそんな事が書いてあるのか!??
『さすがにはっきりとした事はワイもわからへん。この石はそもそもワイらやのぉて爺さんへのメッセージやしな。爺さんの身近な所で何か変化があったんやろな…』
『これの謎を解いたら、もしかしたら除霊されて爺さんも若返るかもな』と五右衛門がゲラゲラと笑いながら言った。
『アホか!!そないなファンタスティックな事いまどき映画でもあらへんで!!』
『冗談だわ!!冗談!!流石にそんな事本気でおもってねぇよ!!』
『五右衛門が言うと何かマジで言ってるように聞こえるのは俺だけか!?!?』
『いや、ワイもや。』
『何だそれ。言っとくけど俺はそんなに馬鹿じゃねぇぞ!!光には言われてもしゃぁないけど、優馬!お前には言われたくないね!!』
『なんと…』
俺と五右衛門がガヤガヤともめているのを光はどっちも同レベルやないか…とケラケラと笑いながら見ていた。
『うんこ!!しね!!』
『お前がうんこやろ!!あほ!!』
『は!?じゃぁ、おめぇはうんこ以下やわ!!!』
『あ!?俺がうんこ以下ならお前なんかウンコロスケだわ!!』
『ウンコロスケってなんじゃそれ…まじでアホだろ…』
とまぁ自分でも恥ずかしくなるほど幼稚な言い争いをしていたわけで、光もあまりの幼稚さに呆れ、『どぉでもええけどさ。とりあえず爺さんに聞きに行ってみぃへんか!?』と俺と五右衛門の痴話喧嘩を止めてくれた。
うむ…そうだな…と俺達は爺さんの残していったランタンを手に取り、爺さんの住んでいるボロ小屋に行く事にした。