『Mystery壱』
時忘れの洞窟の正体は幽霊達の悪事だと聞かされ、爺さんが五右衛門の質問に答える前に少しの休憩に入った。
俺達は昼飯にと持ってきたおにぎりを食べ、流石に喉が渇いてしまったので、爺さんに水を貰う事にした。
『カカカ。心配せんでええ。コレは湧き水じゃ。ほれ、そこの』と俺達の不安そうな顔を見て、爺さんは笑いながら言い放った。
湧き水の場所を教えてもらうと、飲み干して空になったペットボトルを片手に、3人で水を入れにいった。
『なぁ…さっきから変な感じがしてるのんはワイだけか!?』と光が爺さんに聞こえないように小さい声で俺達に訊いた。
『いや、何かずっと、寒気がするって言うか…見られてるって言うか…』
『うむ、まぁ一瞬にして半日くらいが進んだんだし体が違和感を感じるのも無理は無いかもな…』
不安な思いを解消する事も、解消するすべも見つける事すら出来ず、水を汲み終えると爺さんの所まで戻った。
『じゃぁソロソロ、お主の質問を答えようかのう…』と爺さんは顎をクイッっと五右衛門に向け、語りだした。
五右衛門は畏まり、お願いしますと言い爺さんの話に耳を傾けた。俺と光も同様に話を聞いた。
『結論から言うかのぉ。ワシが霊があの場所に溜まっていると言う事は知人から聞いた話なんじゃ。ワシにも昔は友人と呼べる仲間がおった。友人の中には霊感のつよいもんがおってのぉ。』
『その霊感の強い友人って洞窟で俺達に話してた仲間の事なんすか!?』と五右衛門が話を割ってはいると、あの洞窟での話は単なる時間を稼ぐためのつくり話じゃ。とニヤニヤと笑い、再び話し出した。
『一人でこもるようになってどぉしても分からなかった事は、さっきまでお主らが抱いていた疑問そのものじゃ。何故時が進むのか…という点は実体験しても全くわからなんだ。そこでワシは依頼したんじゃ。樹海って言う事で霊が関係してるんじゃねぇのかってのは何となくだったがのぉ、まぁ自分のカンを信じて霊感の強い友人に頼んであの洞窟を調査してもらったんじゃ。EMFとか言う小型機械とか専門的な機械を使って本格的にな。で、結果は霊が大量に居るとの事じゃ。ワシも一日かけてその友人に色々な事を教えてもらったよ。さっきお前らに話した内容はその時教えてもらった事のまとめみたいなもんじゃ。ワシに霊感があったらのぉ。もっと詳しい話を聞かせてやれたんじゃが…いかんせん。ワシは全くといって良いほど霊感オンチじゃ。』
すまんのぉ。と俺達に小さく頭をさげ、爺さんの話は終了した。
まだ洞窟について訊きたい事が山ほどあったけど、俺達が次の質問に移った。
『あの…その石は???』と俺は爺さんの背後の空から降ってきたと日記に記された石を指差し、爺さんに問いかけた。
『これか??』と爺さんはポンポンと叩いて、俺の方を見た。
俺は小さく頷き、『外に落ちていた日記には空から降ってきたと書かれてたんですけど…』と勝手に人様の日記を読んだ事を少々気まずいと思いながらも爺さんに聞いてみた。
『この石はワシにもわからんのじゃ。』
『え!?でも空から降ってきたのは見てたんですよね!?』
『いいや。みとらせん。さっき話したと思うが、わしが1日篭って出てきたら家がボロボロで自分自身も老けていたと言ったろう!?』
えぇ。と小さく頷き、そのまま俺は爺さんの話を聞いた。
『ワシは2〜3日寝こんだあと、身の回りの物を色々調べてたんじゃ。見物者によって壁は落書きだらけ、家電製品も色々盗まれとったわい。そして毎日つけていた日記帳じゃ。平常心を取り戻してわしの日課だった日記を書こうと思ってな、日記帳を開いたんじゃ。するとな、洞窟での勝手に過ぎてしまった月日もびっしりと日記が記されておったんじゃ。ワシの字でな。ここにある石はその時に記されていた一部でな。ワシも何故落ちてきたのかと言うのは全く分からんのじゃよ。』
爺さんは一通り話終えると腕を組んで、考え出した。少しすると『あぁ。そうじゃそうじゃ。』と一言付け加えた。
『ちなみにワシは元々、昆虫を食う趣味があったわけじゃないぞ。あの洞窟に篭ってからご飯が喉を通らなくなってのぉ…それからと言うもの昆虫ばっかりを食うようになってしまったんじゃ。』
ビクっとする俺達を見て、おぬしらはほんの少ししか入っとらん。大丈夫じゃ。とニコっとわらって爺さんの話は終了した。
『何も小僧達の解決には繋がらなかったかもしれんがな、ワシかて全部把握しちょるわけじゃないんじゃ。忝い…もぉ遅い。ソロソロ帰りなさい。』
とそのまま、ランタンと俺達を残して家の中へと入っていった。
『なぁ…爺さんもあぁ言ってるしソロソロ帰るか!?』
『せやかて…謎は残ったままやないかい。このまま帰ってもろくに眠れへんわ。』
『五右衛門は!?』
『俺か…俺は正直帰宅したいって気持ちもあるな…けど…光が言うみたいに気にならないって言ったら嘘になるけど…』
結局俺達は爺さんに言われるがまま直ぐに帰宅はせず、ランタンのキラキラと輝く光を見ながら、少し考え込んだ。
『なぁ…そこの文字どぉおもうよ。』最初に口を開いたのは五右衛門だった。
『俺はカオリンと一緒に初めて見つけたときは何のこっちゃ全く分からなくてそのまま感想をキーボードに打ち込んだんだけど…』
『キーボードってあの爺さんが遊び心で置いた奴だろ?!?それも洞窟に篭っている間にさ…』
『ホンマに訳わからへんな…』
『で、五右衛門は何て打ち込んだん!?』
『うーむ。SIAWASE…』
『((は!?))』
『幸せって打ち込んだ!!だってさ、義理の妹と二人暮らしだしトウモロコシは俺の大好物だし…でもあってたと思ったんだけどな…』
『((WHY))』
『だってさ、入力が終わったとたんにそこの窓がピカ!!!って光ってさ…まぁそれは結局光とキキの懐中電灯だったんだけどな…ハハハ…』
何言ってるんだこいつは…と俺は大きくため息を吐いて、石をじっと見つめ何か引っかかるんだよな…と頭の中を整理していた。
『あ”!!!!!』
と光の大声に俺も五右衛門も心拍停止するかと思うほどびっくりした…。
『何や!!!うるせーな。』
『分かったかもしれへん!!!』