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『Cave…』

最高のアウトドア日和♪

お天道様もテカテカといつもより綺麗に輝き、風も程よく、日光浴でもしながら一日過ごせそうな天気だ。

磯の香り。大地の香り、ついつい鼻の穴を大きくして深呼吸したくなるような…


が俺達は今、外界とはまるで違う真っ暗な洞窟に居る。


『なぁ。じぃさん。ソロソロ何か話してくれよ。何も言わずに、ただちょっと着いて来いって言われるままこの懐中電灯無しでは歩けない変な洞窟まで連れてこられて…』

と五右衛門が言うと話を最後まで聞かず、じぃさんは『よし、ここじゃ。』と言い、少し湿った岩の上に腰掛けた。


『小僧。もぉ懐中電灯きってええぞ。』


とりあえず言われるがまま明かりを消すと、一瞬にして、直ぐ隣にいる五右衛門や光の顔が見えなくなるほど暗くなった。


『小僧!!!すまんがもう一度明かりをくれ!!』


またもや言われるがまま明かりをつけると爺さんがマッチをジュバっと音をたて擦り火をつけた。その日を岩の上にあるろうそくにつけ、辺りはろうそくの優しい光に包まれた。


『消して良いぞ。』


なんだこいつ!!!とイライラする気持ちを抑えながら、俺達もその場に座り込んだ。


『さて、なにから聞きたいかね。』


と言うじぃさんに、光が即座に、質問を繰り出した。


『とりあえず1つ目の質問や、なして、こないな気味の悪い洞窟にきたんや??』


じぃさんは少し黙り込み、それは後から教える。とだけ言い、それ以上は答えなかった。


『なんやそれ。まぁええわ。次ぎの質問や、あんたはココ(樹海)で何してんねん??』


『生活じゃ。』


『は?!?あんた、現実逃避者か??』


『まぁその辺は好きに解釈してくれてええ。わしはココで生活せなあかん理由があるんじゃ。』


『あそこのボロ小屋がじぃさんのマイホームか??』


『そうじゃ。ボロ小屋って言うでない。』


『あの石は何や??それにあの未来の日付のエロ本、一番聞きたいのはこの二つや。』


光の質問にじぃさんの寝てるような表情が一気に変わり、キリっとした、表情で答えだした。


『わしもその事を調べるためにかれこれ20年ここで住んどる。』


爺さんの話で色々と分かった事があった。

まず本名だ。

爺さんの本名は石田密造と言うらしい。

年齢は87歳で見た目異常にかなり老いた人のようだ。

そもそも、ココに住むきっかけになったのは、火事で家族が亡くなり、生涯孤独の一人身になってしまったことがきっかけらしい。


50年近く人生を共にしてきた最愛の女性…


色々と苦労をかけたが、立派に自立した自慢の息子…


そんな息子からの最高のプレゼントとも言える、仕草がとても可愛い孫…


火事という事故で、一瞬にして、大切な人達が消えてなくなってしまった…


そんな孤独すぎる毎日が苦痛で自殺するつもりで、何ももたずに樹海に飛び込み、結局死ねず今に至る…


と言うのは全て嘘らしい。


『(((嘘なのかよ!!!!!)))』


カカカと笑い、じぃさんは話を続けた。


当時わしはまだピチピチの60代じゃった。

仲間内での老人軍団の旅行でわしらは熱海の温泉旅行へ行ったんじゃ。

わしも昔はやんちゃしててのぉ。色んなおなごを泣かして来たもんじゃ。

体力と知能とルックスには自信のあったワシは、仲間内でもリーダー的な存在じゃった。

熱海の温泉旅行も、無事に終了してのぉ、ワシらはそのまま富士山を見に行ったんじゃ。


『小僧、達磨山ってしっちょるか??』


知るはず無いだろうと首を横に振る俺達にじぃさんは『ふむ』と頷き、『日本で一番綺麗に富士山が見える場所じゃ、小僧達も観光で静岡にきたなら是非行ってみるとええ。』と得意げに言い、『…話をそらすでない…』と謎めいた怒りを俺達にぶつけ、てめぇが言い出したんだろ。…と言う気持ちを堪えて、爺さんの話の続きに耳を傾けた。


達磨山からの富士山は話に聞く以上に絶景じゃったんじゃ。

残り少ない命尽きる前に日本一の山を是非間近で見てみたい、と言い出した不届き者がおってのぉ。

そのまま、ワシらは富士山の近くまで行ったんじゃ。


一人の阿呆が、『富士山には、死の樹海を通り抜けねば登る事すらできないんじゃ。皆の集心してかかれ。』と言い出しての。。。

ワシらは無謀にも死の樹海を抜ける事にしたんじゃ。


ところがのぉ、本当に樹海で迷ってしまってな、老いた体には少しの迷いが命取りになるんじゃ。


お天道様は意地悪でのぉ…ワシらが迷っているのを知っておるのにいきなり雨を降らせたんじゃ。


ワシらは少ない体力を振り絞って逃げるように雨宿りできる場所をさがしたんじゃよ。それで今居るこの洞窟にたどり着いたんじゃ。


最初は入り口で雨が止むのを待ってたんじゃがな、一向に止む気配が無かったもんで、ワシらは腰を下ろせる場所を探して、しばしの休息をとったんじゃ。


何時間くらいかの〜。皆眠ってしまってな、恐らく4〜5時間くらいこの洞窟で雨宿りしてたんだわな。


起きた頃にはすっかり日が暮れてて雨も止んでおったわ。


お終い。


『え???なんやねんそれ!!ワイの質問の答えに全くもってなってないやんけ。』

爺さんの話が終わるや否や光は鋭く突っ込み、怒りをあらわにした。


『ソロソロかのぉ…』

爺さんが光の怒を無視し、一人で呟き「小僧。ソロソロ外にでるぞ。」と言い俺達に有無言わさずそそくさと歩き出した。

止むを得ず俺達もムシャクシャとした気持ちを引きずりながら、爺さんの後を追って歩いた。



『は!!!!?』出口が見え、俺達三人は絶句し、口をポカンとあけ、何度も携帯の時間を確かめた。


『入ったのはまだ、午前中だったよな??』俺の言葉に光も五右衛門も大きく頷き、足を止めた。


爺さんだけが、何事もなかったかのようにタダタダ出口へと足を進めていた。


『何を突っ立っておるんじゃ。早くこっちに来い!!』


急に後ろから誰かに追われているような恐怖感に襲われ、俺達は足早に、外にでた。


『この洞窟は時忘れの洞窟じゃ…』

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