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『Grandpa♪』

真っ暗な倉庫のような地下室で俺が見たものは人間だった。

俺が向けた光で、眩しそうに眉間に皺をよせ、目を細めて、こちらを伺っていのだ。

バタバタともがき暴れる俺を、『動くな!!動くな!!』と五右衛門達は言うがそんな事不可能だろ。

俺だって、一刻も早く引き上げて欲しい、できれば二人がスムーズに引き上げれるように大人しくしていたいところだ。

けど…体が勝手に振るえ、脳は【早く脱出せよ】と命令を出し、手は無理やりにでもロープを上ろうと俺の意思とは別に勝手に体がバタバタと暴れるのだからどうしようもない。


二人に引き上げてもらってからも俺の震えは少しの間止まることは無かった。

襲ってくるわけでもなく、ただじっとこっちを見つめていた死地の住人はどこか見覚えがあるような顔だった。

発汗は酷かったが振るえも大分おさまり、二人に兎に角一回外に出ようと、必死で声を出し家の外に出た。


大丈夫か???…

怪我でもしたか???…

お化けでも居たのか???…


色々な質問を二人はしてきたが、答えは全て『否』ふたりもまさかこんな所に人間が今も住んでいるなんて思いもしなかったんだろうな。


五右衛門に渡されたアクエリアスを一気に飲み干し、要約大きく深呼吸が出来た。


『地下室に…人が居た…』


え!?っと当然の様に驚く二人に、どこかで見たことがあるような顔だったっと付け加えた。


『人形の置物を人間と見間違えたんじゃないのか???』とまだ信じきれない五右衛門が訊いて来た。


…そうかもしれない…けど、それは多分【俺の見間違いであって欲しい…】と言う俺の望みであって、恐らくあれは本物だろうと、俺は小さく顔を横に振った。


『まさか…死体やないよな??…』と光も少し声を震わせて訊いて来た。


否…


『間違いなく生きてるな、俺の目と奴の目が合ったし…あれは死体じゃない…』力強く訴え、俺はそのまま大の字になって寝転がった。


何処で見たんだろうな…


確かに見覚えのある顔だったなぁ…


綿菓子のような雲が軽快に青い空を風に乗りながら散歩し、それと同時に周りの木々が会釈するようにザワザワとお辞儀した。

木に張り付いてニィニィと鳴いていたセミたちも大きな風と共に飛び立った。

俺の顔の横の雑草は飛ばされないように根に力を注いで踏ん張っていた。


野に咲く…花の様に…雨に打たれて…

野に咲く…花の様に…人を和やかにして…


何故か俺は、頭の中で【野に咲く花】を歌いだしていた。


恐怖の体験からまだ10分も経っていな無いと言うのに…何考えてんだ俺は…

そもそも、まだココは現場中の現場…家から外に出ただけで、あの家には謎の生命体が存在している…

こんな呑気に【野に咲く花】を熱唱している場合では無いではないか…


【野に咲く花】を歌いたい気持ちを押さえ、熱唱するのは温泉に戻ってからにしよう…と謎の誓いを立てた。



あ!!?…温泉…??


何だっけ???…妙に温泉というフレーズが頭に引っかかった。


なぁ…と二人に昨日の温泉での出来事を聞いてみた。


『あ??』

『何やねん、黙りだしたと思ったらいきなり昨日の温泉の事かい!!』


『何か気になってさ…』良いから細かく教えてくれと寝ていた体を起こした。


『まぁええけど、昨日マスターの知り合いの温泉に行って、水を手に乾杯して、貸しきり状態の風呂に入ろうとして、服を脱いどる時に五右衛門の頭から大きいムカデが出てきて、心底ビビって、そのあとに風呂で体洗って、お前ら二人がサウナに入って、その間ワイはジェットバスで寛いで、お前らがサウナから出てきたら皆で露天風呂行って、露天風呂のつくりがうっすい竹の壁で出来とるに気がついたワイの提案で女風呂を覗くことになって、そっからはもぉドンチャンさわぎで変なじぃさんは出現しすわ、警備員はくるわ、』


待て!!!!と光の長々しい演説を中断し、俺が戸惑いながら、言い放った。


『じぃさんだ…』

『は???』と光も五右衛門も何を言い出すんだという表情を俺に向けてきた。


『地下室に居たの…温泉で俺らと一緒になって覗いてたじぃさんだわ…』

『((なに!?!?!?!?!))』


どこかで見たことがあると思ったらあのじぃさんだったとは…脳裏に焼きついたあの不気味な顔と温泉での陽気なじぃさんの顔は同じ顔でも雰囲気の違いでパット見ただけでは同一人物とは思いもしなかった。


俺は、あのじぃさんと分かると安心感が湧き上がってきて、俺は光と五右衛門を置いて家に駆け出した。


待てよ!!と光も五右衛門も俺の後を追い、再び家の中に入った。


『じぃさん…まだ居るか??』と穴に向かって話しかけてみるが返事はなかった。


『やっぱりまちがえじゃねぇのか??』と言われると少々不安にもなる…



『いや、小僧。間違いでは無いぞ。』


穴からではなく、俺達の背後から声が聞こえ、ビクッと3人揃って穴に落ちかけた。


ふと後ろを見るとじぃさんが勇ましい姿で立っていた。


『お!!じぃさん!!!』

『小僧達じゃったのか…わしはてっきり樹海の見物者かと思ったぞ…あいつらは本当に不届き者よ…』


俺達も見学者ですが…とは言わない方が良いなと、黙って三人で暗黙の了解を得た。


俺達は爺さんの話を聞くべく、外に出て、爺さんの取って置きの洞穴のような洞窟…のような奇妙な所に案内された。


期待と不安が高まる中、俺達は爺さんに着いて洞窟の奥の方へと進んでいった。

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