『☆覗き★』
番台に座ったオッサンのように一匹の鳥が男湯と女湯を仕切る竹の上に止まり、男湯をチラッと見て、女湯をジーっと見ていた。
憎たらしい鳥め…と思いながらも、俺達は俺達なりの閲覧方法で見学する事にした。
『誰か居てるのかぁ??』と光が聞くとカオリンから返事が来た。
『あたしだけ居るよ〜♪』
『他の二人はもぉでたの??』と五右衛門が聞くと、スチームルームにいったぁっと返事が来た。
『じゃぁワイらはソロソロでるわ♪ゆっくり休めよ〜♪』と光が言い放ち、ガラガラガラとドアを開け、ガラガラガラピシャ!!っと少し大げさにドアを閉めた。
『ココからは小声で話すデ…』
光の第一作戦は、まず相手に俺達がもぉ露天風呂には居ないと思わせる作戦。
出るでーっと言い、ドアを大げさに開け閉めし、本体は室内には戻らず、カオリンの頭の中の男子達が戻っただけ。
その証拠に、さっきまで静かだた、カオリンが鼻歌を鳴らし、あまり上手いとは言い辛い歌声を披露していた。
『さぁって。ええ場所発見したで!』光の目が光沢を帯び、口は逆さにした『へ』の字の様にニヤリと笑った。
どれどれ…と俺も五右衛門も、サササと爪先移動で光のそばへと近寄った。
なんと!!…最高のポジションだった。隙間無くなれべられて居る竹が、ココだけは竹と竹が若干曲がり、数センチだけ隙間が出来ていた。
三人がみたらしだんごの様に縦に連なり、五右衛門のマグナムが俺の顔の横にあっても微動打にせず、ひたすら女体を捜した。
カオリンのほかにも女性はチラホラと伺えた。こっちが貸しきり状態だけに女湯も貸切とばかり思っていた。
光が一時撤退の合図肩を三回叩くの動作をし、俺達に言った。
『やばいな…これは…犯罪やで…カオリンだけかと思ってたわ…』
ME TOO …と俺も五右衛門も少し躊躇した。
チラッと見たところ、カオリンを含む若い女性が3人くらいと老いた人が2人くらいだった。
少し悩んだが、もぉどぉにでもなれ!!俺達はあの死地から脱出した勇者だ!!こんなくらいで怯むな!!と、皆決意し、再びだんごのように連結した。
光が直立、俺が立てひざ、五右衛門が和式うんこ座り、通称ヤンキー座りの体勢で凝視した。
夏の蝉たちが俺達の集中力を引き立て、闇が俺達の姿を隠蔽した。
闇にライトアップされた女性達の生まれたての姿は、それはそれは美しく、老いた人をチラっと見たりし、脳を少し逆の刺激を与え冷静さを保った。
いまにも俺のマグナムが戦闘体勢になろうとしていた。
『うむ、素晴らしい光景じゃのぉ。目の補強になるわい。』
『ですよねぇ♪』と相槌を打つと、俺の横にこれまたとんでもなく老いたおっさんが立てひざで見学していた。
うお!!!!!!っと叫びかけた声を殺し、ひたすら歯を噛み締め耐え、早急に一時撤退の合図を出した。
サササと爪先移動をし、一旦湯船に入り、『って!!オッサン誰!!!』っと即座に聞いた。勿論小声で。
『ホホホ。わしもちみらと同様、ただのエロいおっさんじゃ。』
ちみらって…突っ込みたかったが突っ込む気すら失せ、俺達は質問しまくった。
『おっさん、ええ歳して除きはあかんで!?』と言う光に、『ええ歳しとるから除くんじゃ』と堂々と言い。
こっちも除いていた身…何も言い返せなくなり、仕方なく、仲間に入れることにした。
頭は禿げ上がり、仙人かと思われるほどの立派な髭を生やし、何処からどぉにても70歳は軽く超えていた…が心は青春時代の成年同様でおちゃめな部分もあった。
追放…通報…されなかっただけでも俺達はラッキーだと、開き直り、今度はじぃさんを含めた四人で拳を前に出し、オーっと誓った。
先ほどと同様に、じぃさんは俺の横に立てひざで並んでいた。
じぃさんの目はキラキラと頭に負けんくらいの輝きを出し、全てを録画するように真剣な眼差しで見つめた。
『う!やば!!40半ばと思われる見苦しい女体がこっちにくるで』光が小声で叫んだ。
ドキッ!!!や…やばい…四人の空気が止まり、じぃさんにいたっては心臓まで止まりそうだった。
五右衛門が一番初めに動いた…
ヤンキー座りの大勢から足の筋肉と足のバネだけでバクチュウ(三回転ヒネリ)をして最後は足のバネをクッションにし、爪先をピンッと立て、飛び跳ねた魚が着水するより綺麗に、わずか50センチくらいの水深の風呂に音も立てずに温泉に飛び込んだ。神業だった…
人間、馬鹿力を発揮すると恐ろしいとは聞いたことがあったが、あれはありえないだろ…と、俺と光とじぃさんは飛び出た目を元に戻しながら言った。
五右衛門はそのまま、音を立てずに湯から上がり、そそくさとドアを開けて室内に戻っていった。
裏切り者!!!!という憎悪が込上げてくるが、そうこうしているうちにオバハンがドンドン近づいてきた。
今立ち上がると確実にばれる…【謝罪】,【逃走】,【三回転ヒネリ】どぉするの俺!どぉするのぉ!!…続きはWEBで…
っとCMのようには終われないのが現実。
光も俺も何度も目を閉じては開け、を繰り返し、オバハンにレッツターンを祈ったがレッツゴーを貫き…謝るしかないな…と流石の光も諦めた。
『小僧…諦めるな』とじぃさんが凛々しく勇ましく小声で呟き、ウィンクをし、いきなりその場に横向きに倒れた。
『このくそじじぃ!!!』と俺は顔面を踏みつけてやろうと思ったが、光が何とかなるかもしれへん、と俺の怒りを抑えてくれた。
その数秒後、事態は起きた。
キャー!!!!という姿とは似ても似つかぬ可愛らしい甲高い声をあげ、係員の人と、女風呂に居た人たちがゾロゾロと集まりだした。
終わった…何もかも…と俺はポトリと憎たらしく寝転がったじぃさんのボディー涙を落とした。
どぉされました??…あ、あそこに覗きが…なんて会話してるのだろう…と俺は体を震わせ、マッパでタイホされるシーンを思い浮かべていた。
ガラガラガラ。っとドアの開く音と同時に、『何をしてるんだ!!』と警備員の人が服を着たまま入ってきた。
明らかに、入浴しに来たのではない…この状況はサルでも分かる…
『す…す…すいま』
『ちょっと手伝ってくれ!!!じぃさんが倒れたんや!!!』と光が目に涙を浮かべながら警備員の人に訴えた。
は???何を言ってるんだ??そのじじぃは自ら…あ!!!…まさか。俺はボロを出さないために口にチャックをかけた。
『お前らそこで何してたんだ!!!』と言う警備員に光は迷う事無く、
『こいつ(優馬)ともぉ一人の連れ(五右衛門)とこのじぃさんと4人で風呂に入ってたらいきなりじぃさんが倒れて、それでおぼれるとあかん思って、外に連れ出したんや!!そこにおる連れがあんたら呼んだんちゃうんか!?』
と光は五右衛門を指差し、軽く合図を送った。【あわせろ!!!】
みんなの視線が一気に五右衛門に注がれ、五右衛門は俺と光を見ながら、『俺が呼びにいこうと外にでたら、いきなり警備員の人たちが入ってきたから、もぉ誰かが報告したんじゃないかと思って。』と五右衛門も上手い事話をあわせた。
『奥さん、どぉです??本当に彼ら覗いてたんですか??』と警備員は少し服に汗を滲ませさっき俺達を通報したオバハンに訊いた。
『確かに…その子達の横におじいさんが倒れてて…もしかしたら私の勘違いかしら。』と顔を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに俯いた。
警備員の人は呆れたように、ため息をつき、俺達の元に駆け寄った。
『おじいさん。おじいさん。大丈夫ですか!?』と警備員はさっきとは全然違う声で話しかけた。
『うぅぅぅむっほんむっほん!!』とじぃさんは体を起こし、またやってしまったわい。っと笑った。
『この子達が覗きじゃと??今の今までわしと一緒に風呂で話しとったがのぉ。この子達がおらなんだらわしは溺死しとった。ありがとなボーズ達。』と本日二回目の神業に俺は震えた。
警備員はニッコリと微笑み、俺達に謝罪し、戻っていき浴室は落ち着きをとりもどした。
『ふぅぅぅぅぅぅ。マジで心臓が止まりかけた。』
『ちがいねぇ…』
『うむ。。。』
俺達は完全に懲りた。全身の力が抜け、湯船に使った体を支える事すら出来ず、湯船の壁にもたれ、ぐったりとしていた。
こぉゆうもんはな…とじぃさんが語りだした。
『こぉゆうもんはな、ええ歳になってからやるもんじゃ。お前らみたいに若いうちは覗くなんてセコイ真似せんでも、おなごと遊ぶ機会など五万とあるじゃろ。堂々と見ればええんじゃ…いかなる場合にても、喜び大ければ大なるほど、それに先立つ苦しみもまた大なり…お前さんたちにはまだその苦しみは背負えん。』
ほぉぉぉ。っと俺達はエンドレスな、じぃさんの人生話を体がふやけきるまで聞き、いつしか1時間以上も、じぃさんの話を聞いていた。
『じゃぁな小僧。』っと肩にタオルをかけ、背中越しに手を上げ、ケツをプリプリと揺らしながら、マグナムをブルンブルンと像の鼻の様に揺らし、俺達を振り返る事無くじぃさんは脱衣所ではなく、ガードレールのような仕切りをまたぎ、森の闇へと消えていった。
『WHY…』