『温泉…男湯』
湯煙が俺達の生まれたままの姿を包み込み、全身の疲労を吸いとってくれるように感じた。
そのまま湯船に飛び込みたい気分だったが流石に泥まみれの体で飛び込むのは俺の善良な心が許さなかった。
光達との会話はやっぱりあの事に絞られた。
『なぁ…どぉ思う??未来の本とか、空から降ってきた石とかさ。』と五右衛門が言い出し、底からは川を下るように話は進んだ。
『ワイとしては、もぉ一回見に行きたいって思っとる。』
『また樹海にか??』
頭をゴシゴシと洗いながら光は軽く頷いた。
五右衛門と俺は顔を合せ、こいつの追求心は尋常じゃないな…と苦笑した。
『でも、もお一回行くって言っても女子達や、マスターがOKしてくれるとは思わんぞ??』
『せやな、やでワイら野郎だけでいくんや!!』
ザーっと泡を流すシャワーの音と、ジャグジーバスのブクブクと言う音だけになり、浴室はシーンとした空気になった。
勿論、俺も行きたくない。出来る事なら、この貴重な旅で羽樹との時間を増やして親交を深め、我が家に帰宅したいところだ。
一番に洗い終わった俺は、そのまま湯船に行かず、浴室で一番静かなサウナ室に向かった。
入る前に持っていたタオルを水に付け、軽く絞って、冷たいタオルを持ってサウナ室に入った。
冷たいタオルはサウナ室で素晴らしく気持ちが良い。
タオルを頭に乗せ、豪快に股を開き、へたれきったマグナムを晒し、腕を組んで瞑想した。
キィーっと言う音と共に冷たい空気が入ってきた。
片目を開けて確認すると、俺より立派なマグナムを所持した五右衛門だった。
【ふん。隠す事などせぬ。】と自分の大いなる意思とは裏腹に俺の膝はN極とS極の磁石の様にピタッとくっついた。同時に頭の上でくつろいでいたタオルは、丁度俺のマグナムが隠れる位置に飛び降りた。
五右衛門は頭にタオルを乗せ、マグナムを堂々と晒し、ドンと俺の横に座った。
『どぉするよ!?』コレが最初にサウナ室に響いた言葉だった。
『何が??』と俺は返したが、分かりきっていた。野郎だけでもう一回行くか??と聞いているのだ。
『樹海よ樹海』と五右衛門は知っていただろっと言いたげな答えっぷりだった。
『あぁ…』っと適当に流し、再び沈黙が流れるかと思った時、五右衛門が語りだした。
『俺は、行っても良いかなって思ってる。野郎だけ、俺達だけで行くならな!!また皆で行くってなると流石にそれは俺も反対だけど、女子がいないなら心配とかする必要ないし、正直言って俺も光と同じくらい、本と石のことが気になってる。』
ふぅん。っと鼻で答えると今度は本当に沈黙状態になった。
冷やしておいたタオルもお湯になり、体内からは汗が噴出し、ソロソロでた方が良いかな…っと思った時、お先。っと五右衛門が立ち上がり、サウナ室を後にした。
『カー!!何で今のタイミングに出て行くかな…』と一人でぼやき、汗のしみこんだタオルを絞り、顔を拭き、よし!あと5分だけ粘ろうっと誓った。
考えたくないと思っていても、やっぱり俺も五右衛門、光同様に、本と石の事が気になった。
あぁチクショー!!と頬をパンパンと叩き、マグナムを覆っていたタオルを手に取り、サウナ室をでた。
サウナ室の横にあったウォータークーラーで水分を補給し、爪先からゆっくりと水風呂に入った。
クゥゥゥゥゥ…冷たい…体が絞られるように凝縮されるのが手に取るように分かる。
15度という完全なる冷水に俺のマグナムも縮こまっていた。
ゆっく、頭の天辺までつかり、ゆっくり20秒数えた。
19,18,17,…3,2,1…ブファー!!!
鯨が息継ぎをするように豪快に水しぶきを上げ、水風呂から飛び出た。
五右衛門と光が気持ち良さそうにジャグジーバスで寛いでいるのを発見し、直行した。
『よう!!』元気に声をかけて見たが…
『ん??』と相変わらずテンションの低い返事が来た。
まぁこの重い空気は俺が作ったみたいなもんだしな…と納得し、『本と石』の話題を出した。
『明日、朝一で本と石の謎でも解きに行くか!!!!野郎だけで!!』と言った自分が恥ずかしくなるくらい声は響き渡った。
『おう!!!』と光も五右衛門も俺の響き渡った声を掻き消すように返事し、皆で露天風呂へと向かった。
カー!!!夏季でも露天風呂は最高だな〜!!っと光が言い、俺達も最高だー!!っと夏の夜空に叫んだ。
『うるさぁぁぁい♪』と一つ隣の竹で出来た壁の向こうから聞き慣れたキュートな声が聞こえてきた。
『優馬氏、光氏…』と五右衛門があくどい目で俺達に訴えてきた。
俺も光もニヤリと笑い、無意識のうちに聞き手を前に出し、三人で手を合わせて、オー。っとやっていた。
作戦の指揮をとったのは他でも無い天才児光だった。作戦開始!!…GO!!