『廃墟★優馬,羽樹』
4人が待っていると思われた大樹には誰も居なかった。
キキの置手紙と、カオリンのハンカチ、そして2本のロープ。
全てをパズルのピースとして考えだした、優馬と羽樹。
優馬の閃きによって導き出された答え。その答えを信じ、二人は4人を追った。
凸凹とした二度目の死地が再び俺達の体力を食らい尽くしてきた。
羽樹から戻って警察に言ってからまた探しに来ようと何度も言われたが、俺は羽樹を説得し、進み続けた。
他の4人が心配でたまらなかったんだ。
木々の擦れ合う音と、虫の鳴き声それだけが耳でリピートされた。
羽樹との会話はいつの間にかなくなっていた。
何か話しないと…と思うのだが、喉で声が引っかかり、声がでてくれなかった。
ちらちらと羽樹を見るが、目が合うと避けるように回避してしまっていた。
バサバサバサ!!クァクァクァァ!!
っと日本のカラスとは思えないほどに大きなカラスが木々を掻き分け飛び立った。
『キャッ』と羽樹が悲鳴を上げた転ぶように尻餅をついた時に要約喉に詰まっていた声があふれ出した。
『大丈夫!?怪我とか無いか??』
『ぅん…びっくりした…』
若干湿っぽい土をポンポンとズボンから払い、恥ずかしそうに『アハハ』と笑う羽樹を見て、少し心が癒された。
長かった無言の時間も幕を閉じ、思いつく限り二人で話題を考え話しながら進んだ。
『なんだあれ…』
『虫…??』
『ぅん…でも殆ど死んでるな…』
『ぅん…気持ち悪い…』
『確かに…』
『インセクト・コープス・ロードだね…』
何それ??と阿呆な俺が訊くと、虫の死体の道となんともグロテスクな返事がきた。
歩くにつれ虫の量は増え続けた。
虫の死骸に混じれて五右衛門達の死体も落ちてたら嫌だなっと冗談をかます俺に、羽樹は痛いくらいの視線をぶつけてきた。
すいません。。っと頭を下げ、再び沈黙に戻ってしまった。
【あぁ…何やってんだ、俺は…】と後悔をしていると、ヒューっと俺の体を風が突き抜けた。
ブルブルッっと尿意が襲ってきた。【こ…こんな時に…】
出来るだけ我慢をして歩いていたが、尿意が近づくにつれ、足をクネクネとトイレを我慢している小学生のように、歩いている俺に羽樹は心配の声をかけてきた。
『どぉしたの???何か歩き方変だよ??足痛いなら少しやすも!!』
『い、いや。痛いとかじゃないんだけど…』
『けど???…』
『その…あの…、お手洗いに行きとおございまして…』
あんまり離れないでね…しばしお待ちを…っと声を交わし、俺は直ぐ横の木を背にし、羽樹から見えない場所で用をたした。
ジョジョジョジョっと地面に当たる尿が少し恥ずかしく、豪快に振り回して、音の鳴らないように辺りに満遍なくばらまいた。
【真に申し訳ない…お願いですので呪わないでください…】と何度も呟き、チャックを閉め、羽樹の所に戻ろうとした時、俺の目に変なものが写った。
何だあれ…と懐中電灯を向け、光を当てた。
表紙に【樹海生活】と書かれた本のような、ノートのような、兎に角ボロボロの紙の集合体があった。
それを拾い、羽樹の所へ戻った。
『お待たせ!!』
『おそーい!!』
こんなのが落ちててさ…とさっき拾った本を見せた。
『何コレ…汚い…ってか辺なの拾ってこないでよ…』と捨てようとする手をバシっとつかみ、ちょ!ちょっと待て!とページをめくって見せた。
【樹海生活】
1ページ目
2月12日。
月夜の晩、ドーンというすさまじい音と共に私の家の前に大きな墓石が落ちてきた。
私は、隕石か何かかと思い、家に落ちなくて良かったと、胸を撫で下ろした。
2ページ目
2月13日
雨の日。私はいつもどおり食料を集めに虫たちを探していた。今日も大量と気分良く家に帰ると昨日落ちてきた石が雨に打たれ、若干綺麗になっているのに気がついた。意外と良いインテリアになるかも…と少しにやけた。
3ページ目
2月14日
一般の人達にとってはバレンタインデー。私は、昨日の前に落ちてきた石を磨く事にした。
自前のタワシと貴重な水分をフルに活用し、半日かけて泥や苔を落とした。
すると、変な文字が書かれていることに気がついた。
【どうだ妹と二人暮らし、どうだいもっととうもろこし】
それはいくら擦っても落ちる事は無かった。
4ページ目
2月15日
星の見える夜、私は部屋の掃除をした。客人なんて来ないし、掃除をすることに特に意味は無いが、いらない物を外に運び出した。
ふと、私の目に降ってきた石が写った。四角い石が私にはパソコンのモニターに見えた。
ガラクタの山からパソコンのキーボードを取り出し、石の前に置き、意味不明の文字の横に、
【正解を入力せよ…】を油性マジックで書き記した。ますます謎めいた石に一人でカカカカと笑い、私は少しテンションがあがった。
と最後のページまでびっしりと毎日の日記が書き記されていた。
最初の4ページは、しっかりと目を通したが、5ページ目からはパラパラとめくるだけで最後までめくりきった。
4ページだけしか見てないが、書き主は阿呆だ…と思った。
空から石が降ってきた???
虫を食ってる?!?
石に落書きして笑ってる!?
阿呆意外何者でも無いと確信した。
羽樹と顔を合わせ、少し笑えて来た。日記帳というよりネタ帳みたいだね…と言う羽樹に俺は大きく頷いた。
俺はそのネタ帳(樹海生活)をポイとその辺に捨て、さてもぉひと歩きするか。と羽樹の手を握った。
ドンッドンッドンッドンッ!!!
ドンッドンッドンッドンッ!!!
と突然何処からとも無く音が聞こえてきた。
なんの音!!?と羽樹が声を震わせて訊いてきたが、訊きたいのは俺も同じである…
音はロープの先から、聞こえてきた…
怖い気持ちも無かったわけでは無いが、恐怖より興味ってね。
足早にロープを辿って、音の下を目指した。
ロープの切れ目は意外とすぐだった。大きな木にくくりつけられており、目の前にはボロボロの家があった。
なんだこのボロ小屋…と思い、家に近づこうとすると『シ!!!』と羽樹に口を押さえられ、木の陰へと引っ張られた。
『な、何!?どぉしたの!?』
『だ…誰か居た…』
『え??…』
羽樹は指を震わせその場所を指した。
目を凝らしてみてみると、人影が二つあった…大きいのと小さいの…顔までは暗くてはっきりと見えなかった。
きっと五右衛門達だ…と羽樹に小声で伝え。
恐る恐る、近寄った。