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『暗中模索★五右衛門,薫』

あれ…あたし、寝ちゃってたのかな…

五右衛門がおんぶしてくれてるんだ…


もぉ少しこのまま五右衛門の背中の上で寝ていたいな…と思いながらも、汗だくで息をハァハァと荒げている五右衛門を見て、チョンチョンっと五右衛門の頬を突付いた。


『あ!!カオリン!起きたのか。大丈夫か!?』

どお見ても五右衛門の方が大丈夫ではなさそうなのに、あたしの心配をしてくれて、少し涙腺が緩んだ。


『ぅん。もぉ大丈夫だから、自分で歩くよ…』

おんぶしてくれてありがとう、っと少し微笑んで軽く会釈した。


いえいえ、そんな気になさらなくとも…と五右衛門は汗でぐっしょり濡れた髪を研ぐように頭をかいた。


五右衛門に下ろされ、久しぶりに自分の足で立った気がし、立ち眩みのような感じでフラフラっと体が流れた。


『やっぱりまだ、万全じゃないじゃん…気にせず乗った乗った』と五右衛門が再び、屈んで自分の背中をポンポンと叩いた。


気持ちは、乗りたい。でも、それはただの甘えになっちゃう。っと、自分に言い聞かせ。

足場が不安定だっただけ♪体調は大丈夫だよ♪とニコっと笑って、五右衛門の背中をポンっと押した。


『ねぇねぇ、羽チャンと優馬は??』

『え??さっきまで直ぐ後ろに居たけど!!!??居ない??…な。』


申し訳ないと五右衛門は、矢印の様に目を瞑り、周りを見渡し、優馬ぁぁっ、羽樹ぅぅぅっと大きい声で叫びだした。


でも、反応が無く、あたしと五右衛門はまず光達に合流しようと、唯一の頼みの綱であるロープの先に進んだ。


むむ??こんな場所通ったかな??…んーでもあの木には見覚え有るような…


自問自答を繰り返し、あたしはただ、五右衛門の作ってくれる道をトコトコと追いかけた。


『オー!!もぉ直ぐ林道にでれるぞ!!』と五右衛門が大きな大木をカツカツと足で蹴っていた。


『ほらコレ♪』と五右衛門が蹴っている先を見ると白色の紙が丸められて捨てられてあった。


『なぁにコレ…』とあたしは徐に、丸くなった紙を広い、ガサガサと音を立てながら、中を確認しギョッとした。


【自殺は、自分を殺す事です。自分も人間です。人殺しは罪です。考え直しましょう。】


と綺麗な字で書かれていた。


【自殺防止呼びかけ箱】の中にあった紙だ…

正直、馬鹿!!阿呆!!と五右衛門を叱りたかったけど、状況的にそれはあたしの中で必然的に優先順位を下げた。

その代りにって言ったら変かもしれないけど、完全にロックオンされていた、あたしから五右衛門へのlove arrowは少しながら照準があわなくなった。


恐怖、不安、疲労、そして自分の恋、色々な事で頭が破裂しちゃいそうだった。


『ふぅ!!着いたぞ!!』


と五右衛門が袖で額を擦って大きく一息ついた。


林道でも決して足場は良いとは言えないけど、獣道に比べたら砂利道とアスファルトロードくらいの違いだった。


『はぁ…疲れた…』

とあたしはロープのくくりつけられた大樹に持たれて、しゃがみこんだ。


『光〜キキ〜』と五右衛門は懐中電灯の明かりを360度クルリと辺りにばら撒き、キョロキョロと顔を動かしながら光達を探していた。


うぅぅ。本当にあたし達大丈夫なのかな…と顔を俯けポタポタと自分では涸らすことの出来ない、涙を地面に打ち付けた。


『カオリン!!カオリン!!』と呼ぶ五右衛門の声にぐちゃぐちゃになった顔を隠すようにポケットにあったハンカチを当てて、顔を上げた。


『なぁにぃ…』


『ちょっとコレ見てくれ』


『ぎゃ!!』


五右衛門はあたしの顔の上に乗せてあったハンカチをシュっとテーブルクロス抜きでもするようにあっさりとはずしてしまった。


あわわ、あわわ、鋭月の明かりに照らされる顔を泥まみれの手で隠すと、そんな手で顔触ったら汚れるだろ、っとさっきとったあたしのハンカチで顔を拭いてくれた。


『アリガト…』ってなんか違うきがする。。とか思いながらも、なるべく顔を隠すように五右衛門が握っていた紙に視線を移した。


『また、防止箱から持ってきたやつ…??』

と今度は完全にロックオンをはずそうとした時、ちがう、多分キキの字だと思う。と言われ五右衛門の額とあたしの額が合わさるくらいまで近づき二人でキキの置手紙をみた。


【先ほど、羽チャンの叫びが聞こえました。ひょっとしたら私の勘違いかもしれません。でもやっぱり心配なので、光と二人でロープを辿って4人を探す事にします。もし、入れ違いでこの場所に戻ってコレを発見した時は、ココで待っていてください。私達も20〜30分でもどります。】


内容を見て、五右衛門と目を合わせた。


『あの、叫び聞こえたんだ…取り合えず、少しだけ待ってみるか…』

と五右衛門から提案され、あたしは小さく頷き、大樹の下で恐怖の象徴とも言えるような鋭く尖った月を見上げていた。


『なぁ、カオリンは、何で男と付き合わないの??前に沢山告白はされてるって言ってたのに。』


と五右衛門からいきなり現実的な会話が飛んできて、あたしは混乱して『い…今は好きな人が居るから。』とこともあろうことか五右衛門に言ちゃった。


『ふむ。そうか…前までは男に興味とかなかったの???』

『ぅぅぅん。そんなとこだね』


どうやら、好きな人が居ると言う点についてはあまり突っ込まれなかった事に安堵の息をもらしていると、『で!?今の好きな人って!?』と不意打ちが入って再び赤面し黙り込んだ。


『言いたくないなら、言わなくても良いよ。…俺は今はまだ好きな人は居ないし、教えあうって訳にもいかんしな』


ガハハハハハと笑う五右衛門をじっと見つめて居たけど、『好きな人が居ない』と言う言葉に、良かった…でもあたしの事も好きではないんだ…と嬉しいような悲しいようなで、またまた、俯いた。


『うーん。おそいな。ココについてからももぉ10分くらい経つし、羽樹が叫んでからもぉ30分は余裕で経ってるだろ。。。』


よっこらせ、と五右衛門が立ち上がると、『探しにいこーぜ』と手を伸ばしてきた。


行きたくない…疲れた…行きたくない…足が痛い…行きたくない…歩けない…


でも『だね♪』と言ってしまうんだよね。


あたしが渋々立ち上がると、今度は五右衛門が座っていた。

どぉしたの??行かないの??っと訊くと、『乗れ!』とデジャブでも見てるかのように背中をポンポンと叩いていた。


潤んだ瞳を隠すように五右衛門の背中に抱きつき、お願いします。。おう!!と会話を交わし、ロープを辿って五右衛門は前進した。


『ねぇ。五右衛門』

『ん!?』

『…なんでもない♪』

『…』


あたしは、ギュッと五右衛門の背中にひっつき、上を見上げて、月に願った。


prays for the achievement of this first love…

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