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『Night Park』

『コレ!!お母さんが食べてって♪』

『お!!ありがと!!』


羽樹がもってきたのはまだ暖かいクッキーと、よく冷えた紅茶だった。

エアコンも大分効いてきて、居心地の良い環境が完璧なまでに整った。が…何か妙に気まずい気がする。

普段は何気なく話せていた会話が、詰まり無愛想な返事になってしまう…

【光やキキはどんな会話をしてるんだろう…】

【光の事だし、二人の時でも上手く盛り上げてるんだろうなぁ…】

と俺が、考え込むと時が止まったように沈黙の時間が流れた。

【このままではまずい…】と思い、ふと頭に浮かんだ疑問をぶつけてみた。


『ねぇ!羽樹はなんで俺と付き合う気になったの!?』

『え!?うーん…興味が合ったからかな…趣味とかもうちと優馬って近いじゃん!?それで付き合ってみたら楽しいかなって思って♪残念ながらまだ好きにはなってません♪少し一緒に居て、恋人として見れなかったら別れると思うし、好きになっていったらこのままずっと一緒に居るんじゃないかな??』

『ほぅ…』


恋愛に疎い俺は付き合うとはお互いが好きで成立するもんだと思っていたけど、羽樹の言うとおり、好きじゃなくても興味が合って一緒にいて楽しければ自然と好意が持ててくるって考えもあるんだなと少し関心した。


『でぇぇぇぇも!!こんな調子じゃっぁ好きになる所か興醒めも良いとこだね…』


『えぇぇぇ!!』


『だって…友達で居た時のガちゃんと話できてたし…』と羽樹が少し残念そうに顔を俯けた。


『ちょっと…正直言って、俺…女の子の部屋来るのとか初めてで…落ち着かないって言うか…慣れてないと言うか…これから期待してて!!』

こうゆう言い訳じみた事は得意である…嘘つきにならないために今後頑張らなくてはならんが…


『えー…初めての彼女ではないでしょ!?』


『んー。中学の時に付き合った子は居たけど、登下校一緒にしたり、昼休み話したりするくらいで、休日に二人っきりで遊ぶなんて無かったから…こぉゆぅ付き合いは初めてだな…』


『もしかして…童貞!?』と羽樹に白い目で見つめられた。


『…ほっとけ…』


『18歳で!?…』


『うるせぇ…羽樹は処女じゃないん??…』


『勿論!!!秘密です!!』


『なんだそれ!!』


『((ハハハハハ))』


対角に向かい合うように座って、距離を感じられたが、話が盛り上がったり、アルバムを見せてもらったりしているうちに次第に隔てていた壁も壊れて、腕がぶつかるくらいの距離でも普通に話せるようになっていた。

エロトークから始まり、音楽の話題になり、高校1年、2年の出来事を話し合ったり、いつものメンバーの過去を教えあったり…話をしているだけなのに…とてつもなく楽しく幸せに思えた。夢の中に居るような…


『羽樹〜羽樹〜』

羽樹の母の声で夢から現実に戻ったら昼間だったのが夜になっていた。

『はぁい!!』

『ごめん!ちょっと待っててね』

『おう!』

羽樹が部屋をでて階段を下りる足音が聞こえた。

『ふぅ…』

長い間夢の世界に居たせいか…いきなり現実に連れ戻されたせいなのか…凄いため息がでた。


ダダダダダと今度は階段を上がってくる音が聞こえ、何故か背筋を伸ばし、姿勢を整えた。


『ごめん!おまたせ!』

『何だったの!?』

『ご飯どぉするって聞かれたから、出かける予定って答えちゃった』

『アハハハ。そんな予定あったっけ!?』

『無い♪けど、もぉ外もあんまり暑くないしどこか行こうよ♪』

『OK〜』


最初の印象はどんな時でも大切だ…と思い、伸ばしても落ちるはずのない服のしわをピッピッと伸ばし、『紅茶とクッキーご馳走様でした。お邪魔しました。』と苦笑する羽樹を背に礼儀正しく羽樹の母に伝え、深く会釈して家を出た。


『もぉ!!何かキャラちがく無い!?』

『最初の印象って大事だしさ!!羽樹に好かれてても羽樹の家族に嫌われてたらお互い嫌やん!?』

『まぁ…それもそっか♪』


外はすっかり暗くなり電灯が道を照らしていた。電灯には無数の小さい虫が集り、光の屑が飛び散っているようにも見えた。

自転車を引きずり、会話の続きをしながら、コンビニでおにぎりを買い、近くの公園で腰を下ろした。

電灯の光も無い公園は月明かりだけが俺らを照らしていた。

夜の道をトボトボと20分近くかけて歩いただけの事もあり、目は闇に慣れ、暗くても近くに居れば相手の顔くらいは確認できた。


『なぁ…一つ聞いていい!?』

『まみ!?』口にご飯を含んでいた羽樹は少し濁らせて答えた。


『話してる間の時間がめっちゃ早く感じたんだけど…あれって俺だけ!?』

『あー、うちもめっちゃ早く感じたよ!?楽しかった証拠やない!?』

『そっかぁ♪』


いつもより空気がおいしい…

いつもより夜星が輝いて見える…

いつもより虫の鳴き声が綺麗に聞こえる…

いつもより胸が高鳴り生を感じる…


羽樹と居るとそんなふうに思えた。


『人を好きになるって不思議だよな…』

『ぅん』


『今日付き合ったばっかりなのにこのままずっと一緒に入れる気がする…』

『ぅん』


『たまには喧嘩したりとかもするのかな…』

『ぅん』


『そぉやって色々な思い出を作っていきたいな…』

『ぅん』


『機会があったらあいつらにも報告しないとな…』

『ぅん』


『さっきから『ぅん』ばっかりだな…』

『ぅん』


『…』

羽樹は星空を仰ぎただただぅんぅんと少し微笑んで答えるだけだった。

普段なら、「聞いてる!?」って突っかかる所だが、可愛いなァっと頭を撫でたくなるのはきっと好きだからなんだろうなっと少しからず頬を赤めた。


『今日の朝は俺が羽樹を怖がって、羽樹は俺にイライラしてたんだよな…』

『ぅん…ってそれ言わないの♪』


結局この日はずーっと話詰めだった。普段無口でない俺でも1年分くらいは話した気がした。

来週当たりに皆で出かけようって最後の最後に提案した意外は特に何の会話したのか部分的にしか覚えてないけど…幸せな時間だった事ははっきりと覚えてる。


俺は以前TVかネットか忘れてしまったが、誰かがこんな事を言っていたのを思い出した…


『人が人を好きになるというのは理屈じゃなくて感情だ。頭じゃなくて心だ。だから好きになろうとしても好きになれないこともあるし好きにならないようしていても想いはとめられない…』


今日はその言葉が心身納得できる一日だった。


公園についてどれくらいの時間が立ったんだろう…夏夜の月が、ゆらんと揺れて二人だけの公園のブランコ横に浮かんでいた。

銀と黒との公園に、程良くほんのり漂う時が月に揺らいだ歴史の銀と、夜の上擦る伝承黒を蝉の鼓動に合わせるように、幽かにふるんと混ぜていた…

柔らかな風に逆らう事無く流れる羽樹の髪は月の光を満遍なく受け、気持ち良さそう…


またね♪…と別れたのは午後23時を回っていた。

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