『IN 羽樹家』
暑い…もの凄く暑い…死んでしまうのではと思わせる程暑い…そんな中、俺は羽樹を荷台に乗せ川を目指した。
太陽の光が向かい風となり、セミの鳴き声は呪文に感じられ…俺の体力をドンドン奪った…
しかし!!!!!俺は背中に全神経を集中させた…死の淵から這い上がるために…
荷台に乗っている羽樹がギュッと抱きしめると…かすかに感じられる胸の膨らみ…全回復!!
まっ!!コレでこそ正常な男よ・・・!!!俺は決して変体じゃないと、気合の入る下半身を言い聞かせ…川に着いた。
『川が…カラだ…』
『無いね…水…』
透き通った水…丸い石がコロコロと流れに逆らわず上流から下流へと転がっている…浅瀬には子供達がお父さん、お母さんと一緒に水を冷たがり遊んでいる。橋から飛び降り、スリルを楽しむ大学生…冷たい水を服をぬらしながらかけあう俺と羽樹…暑い日に冷たい水…それは…キラキラと太陽光を跳ね返す逆露天風呂!!!
乾ききって、100歳の老人でも目を凝らす事なく見える川底…急激の干上がりで、逃げ遅れた魚の死骸…それを残酷に突付く鳥の群れ…そんな鳥には気がつかずタダタダ走る、甲子園を目指した長袖長ズボンの野球部員…それは…自然サウナ。
川に水が入っているのと入っていないのではこんなに違う物なのか…
そして現実は後者。
『優馬ぁ…暑い…』
『うん…』
この場に居ては俺たちまで干からびてしまうと思い、取り合えずコンビニで涼んで、飲み物でも買って午後から何するかを話す事にした。
『うあ…!!!』
とコンビニに着くなり、羽樹は声を上げた…俺には何も心当たりが無かったが…
『なに!?どぉしたの!?』
『うーん…』
と羽樹は少し顔が赤かった…
『顔…赤いぞ!?…早く店はいろうぜ』
『背中…』
『背中!?』
『背中…見てみ…』と恥ずかしそうに手鏡を渡してきた。
『うあ…なにこれ…何でココだけ濡れてるの!?何かしたっけ?!』
と俺が体制を捻りやっとの思いで見たのは、背中に丸く着いた跡だった。
『多分…うちの胸で…そこだけ汗かいたんだよ…』
『アハハハハ!!!そんな事か!!』
俺に釣られたか、羽樹も苦笑し、一先ずコンビニで汗が引くまで雑誌コーナーで本でも見ながら休んだ。
店内は涼しく、10分ほどで汗が引いた。
ジュースを買い、店内で座りこれからどぉするかを話した。
高校生は…実に不便…
色々と遊んだりしたいのに車が無いのだから…何処に行くにも熱い思いして自転車を転がすか、時間に囚われてお金まで掛かる電車で移動するか…コレくらいしか移動手段が無い…
原付バイク…それも…俺の行っている学校では禁止だった…
要するに小学生から唯一進歩したといったら車輪がでかくなり沢山こがなくても進むという事だけだ…
『うちに来る!?』
『え!?良いの!?今日付き合ったばっかりだよ!?』
『それこそ、え!?だよ!!』
『そぉゆうもんなのか…』
所々で今までホントに女性との関わりが無かったんだな…と思える場面がある…
と言う事で、俺は羽樹の家に行く事にした。取り合えず羽樹の自転車を取りに和茶に戻って、それから…あの超絶な橋を渡って羽樹家だ。
二人で話しながら走っていたせいか、羽樹の家が以前より大分近く感じた。
橋も知らぬ間に上り、知らぬ間に下っていたので体力的にも全く疲れなかった。
羽樹に言われ、羽樹の自転車の横に並べるように停めた。
『ようこそ我が家へ!!アハハ』
『お邪魔しまぁす。』
初めて女の子の家に上がった。
シャンプーなのか香水なのか良く分からないが妙に良い匂いがしたような気がした。
玄関には羽樹の靴の他に2足あったので、お姉さんと母親が居るのだろうっと少し緊張した。
靴棚は白く、花が飾ってあり、何というか凄く綺麗だ。
『こんにちは!お友達!?』
羽樹のお母上登場…いや、あれは姉だ!!!前回見ておいて良かったとほっと一息入れた。
『んーん、彼氏だよ♪』
と言う羽樹の言葉にドキッとした!!
『どうも、はじめまして、羽樹さんのお姉さんですね。羽樹さんの彼氏を勤めさせていただいております、高橋優馬と申します。今後長い付き…』
ボコ!!
イテ!!いきなり羽樹さん…羽樹に殴られ怯んだ。
『アハハハ♪気持ち悪い説明は良いから…それに姉貴じゃなくて、この人はお母さんだから…』
『えぇ!!マジすか!?』
足の爪先から髪の毛の髪先までゆっくりと目をスライドさせて凝視した。コレが…今年18歳の娘を持つ母親…いや!!!姉さんも居るんだ!!!…ありえない、うちのお袋が醜すぎる…
ウフフ♪と絵になるような微笑で俺を迎え入れてくれ、俺はそのまま羽樹の部屋へと案内された。
ちょっとした螺旋状の階段を上って左側の部屋が羽樹の部屋だった。
ガチャ。『お邪魔しますです…』
部屋に一歩足を踏み入れると、かすかに香水の匂いがした…
壁は白に近いピンク色で、ドアと対角の壁には窓があり、さっきまで浴びていた太陽光が入り込んでいた。
日差しを避けるようにベットが置かれてあった。床につくほどの布団シーツは手形が残るのではないかと思われるほど厚みがあった。
枕元には、小型のライトスタンドが着いており、その横には今、呼んでいると思われる小説らしき物が置かれてあった。
今まで、見たものを忘れさせるくらいインパクトがあったのは、小説の横に置かれた2リットルのペットボトルだった。2本も…
中には水が入っており、俺は寝る前に筋トレでもしているのかと思った。
ドアの左側にはメタンラックが置かれており、友人との写真、CDコンポ、液晶TV、DVD,CDなどなどが綺麗に整頓され、置かれていた。
写真はキキもカオリンも写っていた。…何気に気になる、羽樹と俺の知らない男のツーショット…
DVDは主にジブリ…CDは洋楽のアルバムが殆どだった。洋楽に関しては何枚は俺の持っているCDがあり、話のネタに出来そうだと思った。
右側には等身大サイズの鏡と衣類が入っていると思われるクローゼット。小説、雑誌、漫画の並んだ本棚が置いてあった。
鏡には俺の姿が映っていた…少し恥ずかしい…
クローゼットの中には下着も入っているのだろうかと、少しながら想像もしたが、ニヤケ顔になるとまずいので頭から即消去した。
『なにボーっと突っ立ってンの?!エアコンつけたしドア閉めてよ』
羽樹の声で我にかえるまでは異世界にでも居たかと思えるほど、新鮮な空間だった。
『あ!!悪い悪い。それにしても綺麗な部屋だな…』
『え!?そうかな!?』
羽樹に言われるがまま、腰をおろした。羽樹は『着替えてくるからちょっと待ってて♪』と言い、部屋を出て行った。
チャンス!!!とさっきまで気になっていた羽樹と男のツーショット写真を丸めてゴミ箱に捨て、そのままベットにダイブ!!
羽樹の香りとリンスと思われる匂いが舞い上がった。枕を抱きしめゴロゴロとベットを転がり、ピタッと止まった目の先には『立ち入り禁止』『開けるべからず』と書かれているようなクローゼットがあった。
そのまま直立し、クローゼットへと足を忍ばせた。
両開きのドアを開けるとずらーッと並んだ服がかけられていた。
眼内に埋め込まれた、暗視スコープをフル活用し、半身大サイズのタンスを発見した…
物理的に聞こえるくらいの心音を無視し、そのタンスに手を伸ばした。
一段目…【ッち】ハンカチなどなどが綺麗に入っていた。
二段目…【くッ】靴下が色分けされて入っていた。
【ココかァ!!!】と三段目を開けようとしたとき、ガチャ!!!『お待たせぇ!!!』と声が聞こえ、俺の妄想タイムも終了した。