『愛の告白!!』
雲ひとつ無い晴天。
太陽で暑く眩しい和茶の庭。
7月にかけた短冊はマスターがゴミと勘違いし、いつの間にか捨てられていて、今は掛かってない。
変わりに2匹の小鳥が枝の上でイチャイチャしている。一羽が飛び立つともぉ一羽も後を追うように飛び立った。
『これからどぉする!?♪』
つい30分前までは怒り狂っていた羽樹も今では何か楽しそうに『今日は天気が良くて気持ちい』だの『夏は皆で海行きたいね!!』だのいつもの羽樹に戻っていた。で、今日はどぉするのか…俺が聞きたいところだ。
『んー…一つ聞いていい!?』
『ん??いいよ♪』
『今、俺は羽樹の彼氏なの!?』
『え!?…ちがうの!?』
そう!俺は自分でも知らないうちに自分の口から羽樹に愛の告白とやらをしていたらしい。
そぉゆうことなら、あれだけ悩んでいたのも何となく分かる気がする。
嬉しくないのか!?と聞かれたらそりゃ嬉しい!!とは言うものの…
『えっと…本当に俺が彼氏で良いの!?』
『えぇ!?何を今更…』
『んー。何か想像が付かなくてさ。だって俺だよ!?俺が羽樹だよ!?』
『ぅん。で!?』
『何か…羽樹ならもっと良い男だって沢山寄ってくるんじゃないかな…って…その…何だ…』
ブツブツと俺が一人で言っていると、クスクスと笑い、羽樹は
『優馬と居ると楽しいし、うちがイライラしてる時でもちゃんと話は聞いてくれるし、何て言えば良いのか分からないし…最初は戸惑ったけど…今は後悔してない!!♪』
と言ってくれた。
無理!!今、俺が…『えっとさ…何か勘違いしてるようだから言うけど…俺が好きって言ったのは友達としてで…コレからよろしくってのも…』何てナイフを突きつけられていても言えない!!
それに俺は羽樹に気が無いわけではない…羽樹は3人の中でも俺に一番近い気がした…と言うか気が合う!?
だから、俺にとってはこの状況は美味し過ぎる…ありえない状況…
でも…本当に良いのかな!?
羽樹を可愛い高校生とすると俺は精々ブルドック…クラス…釣り合わない…
友達としてワィワィ騒いでる時は緊張とか何もなかったけど…
俺も知らないうちに彼女に…そんな事あるか!?
夢のようだ…夢の……よう!?
あぁ。
そうかコレはきっと夢だ…夢の中では幸せで起きたら現実に叩き落される、ゆわいる寝起き悪夢ってやつだ…ブツブツ…
ボカ!!
『いって!!』
『もぉ!!何一人でブツブツ言ってるの!?』
『今、若干…頭部に刺激が走ったんだけど…俺はベットから落ちたのかな…』
『はァ!?…あぁあ…先が思いやられるなぁ…』
頭部の刺激…
不機嫌になる…現実ぽい羽樹の表情…
…
現実だ…!!
俺は羽樹の彼氏なんだ!!!
嬉しいような…嬉しいような…嬉しいような…嬉しいような…嬉しいんじゃねぇか!!
でも…
『羽樹ッ!!』
『はぃ!!』
羽樹は俺の裏返った大きい声に、ビクっと背筋を伸ばした。
『俺には色々頼りない部分もあるし、ルックスだって良くない、頭だって光に劣るし、運動は五右衛門に劣る…何もとりえが無いって言うと自虐的な言い方になるかも知れないけど…コレは事実、でももぉ一つ、誰にも負けない事実もある!!…コレから羽樹を大切に思って、1分でも多く笑顔で居られるように…色々楽しい思い出とか作りたいって思う…それで…もし良かったら…俺と付き合って欲しい!!』
明らかに変な発言だけど、俺としてはトどぉしても適当に付き合うのは嫌だった。
羽樹に申し訳ない、知らないうちに彼氏になってました。そんなの人としてどぉかと思う。
だから…タイミング的には意味不明だけど、今を逃したらダラダラと彼氏気取りで付き合うことになりそうだったから…
俺としては初めて、羽樹としては2回目の告白をした。
『え!?うん…いいよ♪さっき答えたつもりだったんだけど…伝わってなかったかな!?アハハ♪』
当然っていったら当然な結果かもしれないが…
ちゃんと自分の意思で気持ちを伝え…それで彼女になってくれると言う…スッキリした…それ以上に嬉しくて…嬉しくて…叫びたかった。
2008年8月1日金曜日…午前10時22分…俺に高校生活で初めての彼女が出来た…
俺達人間には、諦めなくちゃ…悟らなくてはいけない状況ってのがある…
どれだけ俺が人を愛したからってその人が必ずしも俺の所に来てくれることなんて無い…むしろ好きな子…気になってる子も…好きでいてくれてて、相思相愛って言うパターンのが稀…
俺に欲しい物があってそれが欲しいんだって願って頑張っても…必ずしも俺の手に入るなんて事は無い…むしろ手に入らるケースのが稀…
そう。諦めは肝心。
無理なんだと考え、悟らなければならない…
行動せず後悔するより…行動して後悔するほうが良いと言う事を良く耳にする…
けど…
それは難しい…
それにやっぱり失敗すれば自分が傷つく…苦しく…辛い…
だから、悟る…諦める…
俺は、心では羽樹が好きでも、無理だ…諦めるんだ…
今の状況もままならなくなるぞ…
友達で居られるだけでも幸運だよ…と考えていた。
でも…
俺の考えは間違ってた…
自分への自信のなさがそんな思考を生み出したんだ…
人生は何が起こるか分からない…
1時間前には想像も出来なかった事が毎日の様に起こっている…
1時間前は友達と楽しく騒いでたサラリーマンも…一時間後は交通事故を起こし、殺人犯になってるかもしれない…
1時間前は意識がなく植物状態だった子が…一時間後には意識を取り戻し、親子で話しているかもしれない…
1時間前は羽樹に怒鳴られ急いで準備し、自転車を転がしてた俺も今は…
うん。人生…何でも起こりうるだよな…
人生って…と考えようとした時、むぅっと膨れ上がった顔と、開いているのか開いてないのか分からないくらい細められた目でずっと見ている羽樹に気が付き、ドキっとした。
『妄想…してるでしょ…』
『してな…くもない…』
『えっちな事考えてたんでしょ…』
『アホか!!人生について…』
『ふぅん…それにしても…あついねぇ!!』
『だな…川でも行くか♪』
『賛成ぇ♪』
『ってか…今朝はなんで不機嫌だったの!?』
『…内緒♪』