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『新学期』

『…はぁ、今年で俺も3年かぁ…』

俺の名前は優馬。どこにでも居る普通の高校生だ。まぁ色々と問題には巻き込まれるが、コレは俺のせいではない。結論、やっぱり普通の高校生だ。

4月9日

春休みも終わり、今日からまたニートから学生に戻される。まぁ学校は好きでもなければ嫌いでもない。

授業中は寝て、休み時間はだべって、昼飯を食って、また寝て、そして帰宅。

強いて言えば朝起きて学校に行くまでの間が一番嫌だ。

そんな感じで小学校、中学校、高校1.2年で一度も学校が嫌だから行きたくないと思った事は無かった。

今年も例外ではない。

『おひさぁ〜!!』

登下校はいつも大体、友人の五右衛門と一緒だった。おっと、勘違いされそうだから言っておくが五右衛門はあだ名で実際の名前は洋介だ。

長期休暇明けの登校日もいつもの待ち合わせ場所で合流した。

『おぅ!今年もお前と同じクラスかな??』

『おぃおぃ…それだけは簡便だぜ…』

『ハハハハ。ちげーねぇ!!』

まぁ当然っちゃー当然の事だが、俺と五右衛門は春休みの出来事を話しながら登校した。

チャリを走らせ20分。ようやく学校に着いた。近くも無いし、遠くも無い距離だ。

『おぉ!!優馬!五右衛門!お前らまた同じクラスだぜッ!!!ついでにワイも!ハハハ。マジに腐れ縁やのぉ!』

彼の名前は光。男とも女とも取れる名前だが当然男だ。

『ヤッパリか…』

『来る途中に何か嫌な予感がするなぁって優馬と話してさ…見事的中!!ハハハ。』

『まっ。クラスわけの決定は変えられねぇし。諦めるしかねぇな!』

『男3人…3年間同じクラスか…きもちわりぃぃぃ。』

『ブハハハハハ。』

実際、3人とも照れくさいのか公では素直に喜ばなかったが3人同じクラスで嫌では無かった、ココまで来たらとことん付き合ってやる!

俺らはそんな風に思っていた。俺らが知り合ったのは高校の入学式の時だった。

『イッテ。気をつけろよ。』

『ぁ?誰だテメェ。テメェが気をつけろ!ボケが!』

『…クソ、高校入学早々最悪な日だ。あんな奴と同じクラスになったらマジに俺の高校生活たまったもんじゃねぇな。…』

俺は、高校時代はのんびり過ごしたかった。だからアホな不良とは関わらず何気なく3年過ごすつもりだった。

『はぃ!皆さん。はじめまして1年4組の担任をすることになりました斉藤隆です。私は皆さんと教師として生徒という関係じゃなく友達のような付き合いをしていきたいと思っています。堅苦しい挨拶はこの辺で、じゃぁ1年間よろしく!』

担任は教師風吹かせるようなタイプでは無い、結構良さそうな感じの奴だった。

『じゃぁ、色々な中学から集まった事だし、とりあえず自己紹介でもするか!じゃぁ伊藤から順番に…』

『はじめまして、伊藤智之です、クラスに同中の人が居ないので友達ができるか不安ですが皆と仲良くやっていきたいと思います、一年間よろしくお願いします。』

交友関係より成績を重視する、嫌われるタイプの真面目君だ。

パチパチパチ。自己紹介の後には良くわからないが皆拍手をする。俺も適当に2,3回手を叩いた。

『ハイ!伊藤!宜しくな!次は…梅田』

斉藤は五十音順で自己紹介を進めて行き、俺の番が回ってきた。

『ハイ!次は高橋。』

『高橋優馬です。趣味は競馬です。一年間宜しくです。』

…パチパチパチ。今までで一番短い自己紹介のせいか、拍手まで少し間があった。俺は自己紹介だの自己アピールだのそういった類の行事は苦手だった。

『出ました!最短記録!7秒!』

斉藤はウケ狙いなのかボケてきやがった。クラスは苦笑し、斉藤は赤面していた。

『次は…田中』

…反応が無かった。

入学早々で席順など決まっていなかったので席は適当だったので、誰が誰の後に発表するのかわからなかった。

まぁ大抵同中の連中で固まって座っていたので、クラスは田中って誰?と言わんばかりにガヤガヤしてきた。

『おーぃ。田中!お前の番だぞ!』と俺の方に近づいてきた。

『…おぃおぃ、俺は今自己紹介したじゃねぇか。こいつまたボケるのか!?簡便してくれよ。…』

と俺の不安は一瞬の事で斉藤は俺の横を通り後ろの奴に話しかけていた。どぉやら俺の後ろの奴が田中らしい。

田中は寝ていて、全然聞いていなかった。斉藤が肩を叩いたせいか、ビクッっとして目覚めた。

『!!!』俺の高校生活は終わったと思った。

入学式の時に肩がぶつかってもめた奴が田中だった。

『触んじゃねェ!!』

田中の突然の叫びにクラスが静まり返り。俺も不覚ながらびっくりしてしまった。

『田中!どぉした!機嫌でも悪いのか!?』

『うっせぇ!話しかけんな!眠いんじゃ』と言い田中はまた眠りに付いた。

斉藤も悟り、これ以上は突っかからなかった。

『田中の眠りは妨げるな!彼が田中です。いきなり良い事を学びましたね。』

斉藤は上手くクラスをまとめ、シーンとしていたクラスに笑いが飛び交った。

『田中の次は…土屋。』

『土屋光。ヒカリやのーてヒカルな!漢字のままやと女みたいな名前やけど最高に男前さかい女と間違われた事はありまへん!皆よろしゅー!』

自分流の方言を使い、普通に面白い奴だった。クラスにも一気に溶け込み土屋の事を知らない奴も笑っていた。

『土屋はおもしろいなぁ!その面白さ半分先生に分けてくれ!』

『有料でッせ!?』

『こりゃまた…お高く付きそうで…』

土屋は斉藤とも打ち解けていた。

『先生には土屋の才能を買う金は無いので…次…中村』

土屋の自己紹介からクラスが楽しい雰囲気になり、ラストの渡辺まで詰まる事なく進んだ。

他の高校は知らないが、この高校ははじめの日の授業は全て学級の時間がとってあり、自己紹介の後は寝てても良し、クラスの子と話しても良しと、かなり楽な高校である。

俺は同中の奴と少し話し、眠くなってきたので眠りに付いた…

キーンコーンカーンコーン。

チャイムの音で目が覚めた。

『…うぅぅ。良く寝た。一時間目終了かぁ…』

と時計を見てみると昼飯の時間だった。

『…やっべぇ。めっちゃ寝ちまったよ…』

昼飯など持って来ていなかったので、購買に買いに行き、食い終わったらまた寝た。

初日のせいか、小学校、中学校と寝てばかりの生活をしていたせいか…とにかく昼飯を食った今、眠たくて仕方なかった。

『高橋君…高橋君…』

眠っていると俺を呼ぶ声が聞こえた。

『ぇ?…ん?…あ!悪い。』

ようやく起きた俺は、声が現実と気づき前の女の子に謝った。

『これ、みんなの連絡簿らしいから後ろの席の子にまわして。』

『あ…あぁ』

プリントを一枚取り、残りを後ろに回わそうとした。

『!!!…おぃおぃ、後ろの子ってあいつじゃねぇか、最悪だ…』

後ろを見てみるが、奴はやっぱり寝ていた。

『田中…おい…田中…』

俺は何故か小さい声で、呼びかけた。やっぱり起きそうに無い。

仕方ないので俺は、田中の肩をゆすり起こした。

『うるせぇなぁ!触んじゃねぇつってんだろ!』

田中が俺の手を思いっきり払いのけた。

ガッッシャァァン!!!

『イテッ!!!』

田中が俺の手を振り払ったときに横にあったガラスに俺の手が当たり、割れてしまった。

俺としては最悪意外何でもない。

腕を2〜3箇所斬り、血がポタポタとたれ落ちた。

流石の田中も同様していた。

『わりぃ。マジわりぃ。大丈夫か!?』

『あぁ。大丈夫だ。気にすんな。』

全然大丈夫じゃねぇ!とぶん殴りたかったが何故か田中の謝罪は心がこもっている気がした。

斉藤が放っておくはずも無く、走ってこっちに来た。

『高橋!!!!大丈夫か!!!!!』

斉藤は急いでハンカチを取り出し俺の傷口に当てた。斬り所が良かったのか、見た目より痛くはなかった。

『もぉ大丈夫っす。』

『何が平気だ!!血が出てるんだぞ!!』

自己紹介の時の斉藤とは別人で、真剣さに圧倒された。

『は…はぁ…』

周りのクラスの先生や、生徒が何が起きたんだと教室から顔を出してみていた。

おそらく、大半の先生や生徒は荒れた生徒がガラスを殴って割ってしまった…そぉ考えているだろう。

実際は違うが、第三者の目にはそんな感じにうつっていても仕方ない。

『…最悪だ、皆こっち見てるよ…』

俺は手を怪我した事より他の先生や生徒から目をつけられる方がよっぽど厄介だった。

『誰か!保健室に連れってッてやってくれ!先生は周りの教室に事情を説明してくる。』

土屋が立ち上がり、俺の元に来た。

『俺がつれてきますわ。高橋、大丈夫か!?』

『あぁ。悪いな。』

『土屋、ありがとな!保健室の場所わかるか!?』

土屋はうなずき、俺の肩を組むように自分の肩にまわした。

『田中…お前も一緒に行ってやれ!』

斉藤は田中にも一緒に行くように言い、周りの教室に状況を話しに言った。

『じゃぁ汚した方俺が持つからそっち側頼むわ!』

と土屋の言葉にあぁと返事し、俺の手を肩に回してくれた。

どぉやら一番冷静なのは俺らしい。

足を怪我したのなら二人が肩を貸してくれるのも理解できるが、腕を怪我して、肩を借りている。

かなり変な光景で妙に恥ずかしい気分だった。

渡り廊下くらいに来て俺はもぉいいだろうと、腕を二人の肩からはずした。

『おぃ!勝手にほどくなよ!』

土屋がちゃんとした日本語を話した。

『あのなぁ…わりぃけど俺が怪我したのは手で足じゃねぇんだ。』

『…』

『…』

『…』

少しの沈黙を挟み三人は爆笑した。俺も怪我の事など忘れてただただ笑えた。

土屋も田中も腹を抱えて笑っていた。

保険室について見てもらうと、バンソウコウ4枚で処置終了。

その内治るでしょうと言われた。

教室に戻ると、斉藤に状況を話し、何でもないと伝えた。

さっきまでの殺伐とした空気が嘘のように30分後にはガヤガヤと何事も無かったかのようになっていた。

俺は多分、斉藤が上手く周りの教室や生徒に話してくれたおかげだと、被害者ながら感謝した。

6現目がが終わり、帰宅の準備をしていると、土屋が帰りにカラオケでもいかへんか?と俺と田中を誘いに来て3人で出かける事にした。

『野郎3人でカラオケはねェだろ!』

『田中に同意!!』

『俺の美声きかそぉとおもたのにな!じゃぁファミレスにするか!』

俺たちは5時間くらいファミレスで騒ぎ、今日初対面とは思えないほど、語りまくった。

明日も学校だしそろそろ帰るかと土屋と田中と別れて帰宅することになった。

俺は一人になるとチャリをこぎながら綺麗な星空に向かって全力で…高校初日サイコー!!!!!…と叫んだ。


『おぃ!優馬!早くしねぇと遅れるぞ!!』

五右衛門に引っ張れた。

『おぉ!わりぃわりぃ!春休み明けで頭まだ回ってねぇや!!』

キーンコーンカーンコーン!!!

『やべぇ!!』

俺ら教室に向かって走り出した。

『コラァ!高橋ッ!土屋ッ!田中ァ!貴様ら初日早々社長出勤カァァ!!後で俺のとこに来い!!』

『優馬がボケてるから斉藤に呼び出しじゃねェか!』

『ハハハ。初日からついてねぇなぁ。』

『わりぃって!ジュースおごるからさ!付き合ってくれ。』

『あぃあぃ!』

こぉして俺の高校生活最後の年が始まった。


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