君と抹茶ラテ
「ねぇ〜みゆき〜」
「ん?どうした?」
カレカノ、でもない。幼馴染、というわけでもない。いつの間にか友達として親しくなっていた私たちは、まだ日の落ちていない帰り道を2人で歩く。
「僕さ、どうしてもスタバに用があってちょっといいかな…」
「え、まぁいいけど。」
特に用事もないのでしょうがなく付き合ってやる。そろそろ目的地が見えてきた頃、周りの騒音もだいぶ小さくなってきていて。
=======
「プレミアム抹茶ラテクリーム増量ソフト乗せください。」
満面の笑みでレジカウンターで注文をする。
「もしかして甘党?かわ…」
からかいの後にふと漏れた独り言。どうやらそこは聞こえていなかった様で。
「いや!そんなんじゃぁ…」
恥ずかしそうに語尾をしぼめる様子は、誰の目から見ても可愛く写っているはずだ。どういうわけか彼は男の子にも関わらず、男女問わず「可愛い」と言い切れる程のふんわりとした佇まいで、誰からも人気を受けている。
=======
「ん〜、抹茶美味しいね!」
隣の彼は幸せの絶頂といった笑顔で、CMに出られるのではないかと思うくらい美味しそうに抹茶ラテをすすっている。
「でさ、用って…?」
訝しげにはじめに言った「どうしても」の用について聞いてみる。
「どうしても抹茶の間だけいけない用事」
「え!ちょっと」
ある程度想定内の答えだったがそれよりも、
「きっとみゆきもこの美味しさが分かればきっと!」
「は?!」
「いいから飲んで〜」
そう言って抹茶飲みかけの抹茶ラテを強引に押し付けてくる。全く、お金のことなど一切頭にない様な純粋無垢な瞳。負けてしまった私はしょうがなく手に取り一口。
========
馬鹿な私たちは、飲み終わったあとに気づく。そんな今更、もう遅くて。
赤く染まった太陽だけが、じっとこちらに微笑んでいた。
「そういえばこれ…」
「あ…」