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第008話「来訪者2」

 じわじわとブックマークしてくれる人が増えるこの感覚。

 ありがたやありがたや。

「ここ?」


 口を滑らせて自ら墓穴を掘り、言い逃れの出来なくなった大地は仕方なくメーティアをダンジョンに案内することになり、一行はダンジョンの入口に戻ってきていた。


「そう、この洞窟を仮住まいにしてるんだ」


「へぇ、中には何もいなかったの?」


「ああ、とくにはなにも居ないよ」


 嘘である。洞窟内では現在進行形でダンジョンモンスターのゴブリンやスライム達が絶賛活動中である。


「(大地さん、ひとまずゴブリンとスライムはコアのある奥の方に連れてっときますね)」


「(頼むPちゃん)」


 メーティアに聞こえないように小声で大地とやり取りをしたPちゃんはそのまま大地の頭の上から飛び立つと、大地達よりも先にダンジョンの奥に向かって飛んで行った。


「あんたのペット飛んでっちゃったけどいいの?」


「ああ、大丈夫だよ。奥も安全だし、Pちゃんは目がいいから」


「ふ~ん」


「で、俺達の寝床を見せたところで改めていうけど、俺達は王都には行かない」


「…どうしてもダメ?」


「今のとこはここでゆっくりしようと思ってるからな」


「ついて来てくれたら大抵の物は格安で用意してあげられるわよ?」


「金取るのかよ」


「そりゃタダってわけにはいかないわよ、私だってこれでも商人のはしくれですからね」


「ますます行く気しねー」


「え、ちょっ、ちょっと待って! …じゃあ、その、む、胸触るぐらいだったらいいわよ?」


「え? 触っていいの?」


 メーティアの発言に大地はそのまま自然な動作でたわわな二つの膨らみに手を乗せようとしたが、触れる前に手をつねられて阻止された。


「いててて! 触っていいって言ったじゃん!?」


「アホか! 王都までついて来てくれたら触ってもいいって意味よ!」


「苦労の割に報酬がすくねーよ!」


「これがあたしに出来る最大限の譲歩よ!!」


「ますたー! そんな女の胸を触るくらいでしたら私の身体をいくらでも好きにして良いのですよ? 私の全てはますたーのものなのですから!」


「うん、エステラはもう少し大人になっていろんなことを覚えてからな~」


 頭を撫でてやさしく流したつもりの大地だったが、エステラは少々不満そうな顔をして頬を膨らませていた。


「…大地、あんたこんな小さい子が趣味なの?」


「いや違うからね? 俺はちゃんと大人の女性が好みだからね?」


 誤解しないうちに反論しといたつもりだが、いまいちメーティアの目はまだ疑っている感じがした。


「ぴーぴー」


 メーティアとそんなやり取りをしていると、ダンジョンの奥からPちゃんが鳥っぽい鳴き声を出しながら戻ってきた。どうやらモンスターは全てコアの方まで誘導したらしい。


「とにかく、一休みしたら王都でもどこでもメーティアの行きたいとこに行けばいい、けど俺達はついていかない」


「そんな~」


 

 ひとまずモンスター達は奥に隠したが、ダンジョンの中に入れるのは危険なので、ダンジョンの手前で食事を作ることになった。

 湖に食糧調達に行ったメーティアとエステラは皮袋の中に捕まえた魚と水を入れて戻ってきた。


「おかえり~」


「ただいま~、ねぇエステラちゃんってすごいのね、道具も使わず湖の底にいる魚を簡単に捕まえちゃうなんて」


「ますたーのためならこの程度御安い御用です!」


「けど、これは今日は食えないけどな」


「え、なんで?」


「湖の魚ってモノによってはしばらく泥抜きしないと臭くて食えないんだよ、こいつらは臭い方」


「へー、魚って宿でしか食べないから知らなかった」


「エステラ、生け簀にそいつら入れといてくれ」


「はいますたー!」


 ダンジョン内に作った泥抜き用の生け簀に次回以降の分として捕まえさせに行った魚を入れてくるようエステラに指示を出し、大地は泥抜き済みの魚を串に刺して用意しておいたたき火のそばに突き立てた。


「あとは火が通る少し前に塩を振ってと、」


「手慣れたもんね」


「バーベキューとか好きでよく川原に行ったら釣った魚焼いて食ってたからな」


「ばーべきゅー?」


「い、いや、なんでもない」


「ますたー! 昨日取ったお肉はどうしますか?」


「それは夕食にしよう、あとで食えそうな木の実探しに行くから手伝ってくれエステラ」


「はい! お任せください!!」



「エステラちゃんってめちゃくちゃあんたに懐いてるわね、何歳なの?」


「(生後半月…)」


「え? なんて言ったの?」


「あー、えっと10歳くらいだったかな?」


「そうなんだ…、にしてもさっき私が縛られてたときのあの迫力は相当だったわね、そこそこ経験積んだ冒険者が凄んでもあんなに怖いと思ったことはなかったし、やっぱり種族が違うからかしら?」


「どうだろうな?」


 そりゃあ、同じ人間に凄まれるのとモンスターに凄まれるのとじゃあ違うだろうな。


 その後、出来上がった焼き魚をみんなで食べ、腹が膨らんだところで、大地は改めてこのあたりの地理をメーティアに聞いていた。


「…で、今いるのが、このあたり、ギルレオン山脈から少し離れた大森林地帯、あの湖は森林地帯にいくつかあるものの一つだと思うけど、どの湖にも名前はないわ」


 メーティアは地面に枝で簡易的な地図を描きながらこの周辺にあるモノを一つ一つ説明してくれた。


「なるほど、で、メーティアの言ってた王国の国境線がここで、これが王都か」


「そう、この北大陸の四分の一を支配するドラン王国の王都よ」


「へー、やっぱすごいのか? 王都って」


「そりゃあすごいわよ、レンガ作りの建物いっぱいあるし、最近はなにか白い石みたいになる泥のようなものですっごい高い塔とか建物がどんどん増えてるのよ」


 白い石になる泥? コンクリートの親戚か何かか?


「あとはやっぱりいろいろな商品が王国全土から集まるのも見どころの一つね、食材に装飾品、日用品に衣類にあとは質を問わなければ魔導具だってそこらの街なんかよりはるかに数が揃ってるし、それに!」


「あー、わかったわかった、王都が物流の中心地ってのは十分わかったから落ち着けよ」


「なによう、ここからがすごいのよ?」


 どうすごいんだよ。


「ね、だからそんなすごい王都に一緒に行かない?」


「行かない」


「むー」


 メーティアの話を聞いていると、無理矢理王都に付いてくるように説得してくるので、大地はしかたなくそこで話を聞くのを止めにして夕食の食材探しに行くことにした。


 ここ数回の食材採取でダンジョンの周りで木の実が生えている場所をあらかた把握した大地はエステラとともに木の実の取れるスポットに来ていた。そこで木の実を集めていると手伝っていたエステラがそれとなく大地に聞いてきた。


「ますたー、いつまであのような下等な人間を置いておくのですか?」


「…エステラ、俺も一応人間なんだけど?」


「いえ、ますたーはダンジョンますたーですから特別です!」


 そういう問題なのか?


「まぁ、ほっといてもいずれ王都に行くだろうし、それまで俺らの正体がばれなきゃそれでいい」


「殺ってしまえばそれで済むのでは?」


「そうやっていちいち殺してたらあとでそいつを探して大軍が来ましたってことも絶対にないとは言い切れないからな、無駄な面倒事はしょい込まないに限る」


「ですが…、」


「エステラ、お前は毎日戦いだけに明け暮れる日々と俺やPちゃんと一緒にまったり過ごせる日々、どっちがいい?」


「ますたーと一緒の方がいいです!!」


 即答だなおい。


「なら無闇に戦闘を増やす行為はするな、殺るときは必要だと判断した時だけだ」


「はい! わかりましたますたー!!」


 よーしいい返事だ。


 エステラに改めて気軽な殺生をしないように言い聞かせた大地は木の実も集まった所でメーティアのところに戻る事にした。しかし、そこではさらなる問題が発生していた。


 ダンジョンの入口近くに戻ると、そこには灰色の狼が5頭、木の上に上っているメーティアを取り囲むようにしてうろうろしていた。

 大地はエステラを連れて慌てて茂みに隠れると、そこから様子を伺った。


「あれってメーティアの言ってたグレイウルフか?」


「おそらくそうだと思います。ふつうの動物よりも多くの魔力を感じますから」


 魔力でモンスターかどうかってわかるのか、あ、お約束みたいにメーティアの掴んでる枝が折れそう。


「エステラ、お前あいつらに勝てそうか?」


「ご命令いただければすぐにでも!」


「ここまで来て見捨てるのもなんだしなぁ、…よし、殺っちゃいなさい」


「仰せのままに!」


 大地の命令を受けて隠れていた茂みから飛び出したエステラはそのままの勢いで最初のグレイウルフを仕留めた。

 1体目がやられたことで、それに気づいた残りの4体のグレイウルフはエステラを敵として認識し、一斉に襲い掛かった。

 しかし、次の瞬間、襲い掛かるグレイウルフの目の前で爆発が起こり、勢いを殺されたグレイウルフ達は

エステラを見失い、着地と同時に周囲を見回した。


「こっちですよ」


 声のする方をグレイウルフ達がみると、首を折られた仲間を引きずって立っているエステラが居た。

 あっという間に仲間を2匹も殺され、グレイウルフ達は警戒してエステラを取り囲むように動く。しかし、そんなものをのんきに待つほど、エステラは悠長でもお人よしでもなかった。

 

 左に回り込もうとしていた一体に狙いを定めたエステラはグレイウルフの正面に回り込んで砂を浴びせ、目を潰すと、頭を抱えて一回転。首の骨を簡単にへし折って続けざまに4体目に飛びかかった。

 

4体目のグレイウルフはエステラをカウンターで迎え撃とうと大きく口を開いて飛びかかったが、エステラはそれをするりと避けると、グレイウルフの腹に膝蹴りを加え、しっぽを掴んで投げ飛ばした。木に激突したグレイウルフはまだ息があったが、口から大量の血を吐き出し、ぴくぴくと痙攣していた。


 残った最後のグレイウルフは仲間達が全てやられたのを見て逃走を図ろうとしたが、それをエステラは見逃さず、翼を開いて上昇し、上から勢いをつけて一気に叩き潰し、最後のグレイウルフも倒されたのだった。


 グレイウルフ達を倒し、大地の元に戻ろうとしていたエステラは、ふいに自分の方に走ってくる大地に気が付いた。


「あ、ますたー! みてください! 全部たおしましたよー!」


「エステラー! あとでおしおきじゃー!!」


 なぜですか~!? ……でもますたーのおしおき、なぜだか少し心がどきどきします。


 

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