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第005話「ある日、異世界の森の中」

 串焼きとしぼり汁で腹が満たされた大地は引き続き、周囲の探索をしてダンジョン周りがどんな環境なのかを知る事にした。


「山ん中だからか人影は全然みえないな」


 森の中を歩きながら大地はそんなことをつぶやき、そばを飛んでいたPちゃんがすかさず説明する。


「私がダンジョンコアを設置する際にすぐこっちの人間に見つからない様、場所選びは慎重にしましたからね」


「あ、ここにダンジョンがあるのはPちゃんのおかげなのか」


「はいそうです」


「できれば海の方が魚とか取れたんじゃ…」


「贅沢言わないでください!」


「すいません」


 周囲の探索をしばらくして一通り地形を把握した大地はひとまずダンジョンに帰る事にした。そしてその道中、大地はある生物に出くわすことになった。


「ぐおぉぉぉぉぉ!!」


「!、 なんだ!?」


「あ、まずいです大地さん。 鱗熊が近づいて来てます」


 大地の上空で旋回しながら周りの様子を見ていたPちゃんがそんな情報を伝えてきた。


「く、熊? マジで!?」


「はい、一応モンスターに分類されていますが、ダンジョンシステムで出したものではないので大地さんも普通に襲われます」


「マジでか!!」


 大地は『熊』と『襲われる』という単語からリアルに命の危機を感じ取り、あわててダンジョンに向かって駆け出した。


「大地さん! もっと早く! 鱗熊も走ってきてます!」


「これで全速だっての!!」


 心臓が激しく脈打つのを感じながら大地はすこしでも息を吸い込もうと口を開け、身体を必死に動かしつづけてなんとかダンジョンの入口にたどり着き、内部に駆け込むことに成功した。


「大地さん、ダンジョンのモンスター達に撃退してもらいましょう」


「はぁっはぁっ、よ、よし、ゴブリン! スライム! 鱗熊を迎え撃て!」


「ぐが!」たったったっ


「・・・・・・」ずるずるっ


 大地の指示を受けて、ゴブリンとスライム、計10体が通路の前で待ち構え、鱗熊を待ち構える体勢を取った。


「よし、これで、」


 ざっざっざっ、


 ……ダンジョン内に入ってきた鱗熊は四足の時点で身長160の大地とタメを張れそうな高さと軽自動車並みのサイズはある巨体を持った化け物だった。


「……Pちゃん、これ勝てるの?」


「さあ?」


「さあってなに!? さあって!!?」


 身長が大地の半分ほどしかないゴブリンとバスケットボールくらいのサイズしかないスライムではどうみてもオモチャの兵隊と暴れん坊の子ども以上の差しか感じられない。

 案の定、戦いは一方的になり、スライムは踏みつぶされ、ゴブリンは鱗熊の太い前足で蹴散らされていった。戦いとすら呼べず、ものの20分と経たずに大地のダンジョンモンスターは全滅した。


「ど、どうすればいいんだこれ!?」


「なにか戦い方を考えるしかありません。大地さんファイト!」


「焼き鳥にすんぞてめぇ!」


「な、そんなこと言ったって戦闘では私に出来ることなんてほぼ無いんですからね! 第一トラップも満足に活用できない時点で、あ、」


「トラップがなんだって!?」


「すいません、トラップは設置するだけじゃなくて起動させないと使えない事を説明するのすっかり忘れてました。てへ♪」


「出汁取ってやろうかこの野郎!!」


「あーもう、言い争いしてる間にウィンドウからトラップのアイコン開いて起動のタッチボタン押してください! お詫びに私が鱗熊の注意を引きますから、トラップのある通路まで行きましょう」


「わ、わかった」


 作戦が決まるとPちゃんは鱗熊の方に飛んでいき、大地はウィンドウを開いてトラップのアイコンを開いて起動用タッチボタンを押した。


「行きますよ大地さん! 眩しいので気を付けてください!」


 Pちゃんはさきほど大地と初めてあった時よりもさらに強い光を一瞬にして放ち、突然目の前で強烈な閃光を受けて鱗熊は一瞬視界を奪われた。


「今です! 走って!」


「お、おう!」


 うまく鱗熊が入ってきた通路に逆戻りする形で入り込み、大地とPちゃんはトラップの落とし穴を設置した所まで移動した。


「…うまくいくのか?」


「起動させてしまえばトラップの発動はオートになってますからダンジョンに侵入した対象が上に乗れば即発動します」


「…そうか、」


 そう言われても大地は一抹の不安をぬぐえないでいた。もしトラップが通用しなかった場合、今度こそ大地には打つ手がなくなり、鱗熊に一方的に殺されるしかなくなる。そう考えると大地は怖くてたまらなかった。


「来ましたよ」


 ざっざっざっ


 ゆっくりと強者の風格で鱗熊がこちらに歩いてくるのが見え、一瞬止まったかと思うと大地を獲物として見据えたのか、一直線に駆け出し、そして、落ちた。


「よっしゃあ!」

「やりましたね!」


 まさか鱗熊も自分が入ってきて安全だと思っていた道の地面が突然抜けるとは思っていなかったのだろう。面白いくらいすんなりと落ち、大地は若干笑ってしまったほどだった。


「Pちゃ~ん、どうだ~?」


「落とし穴の底に付いてる杭で完全に串刺しになってます」


 大地達は鱗熊が落ちた落とし穴にゆっくりと近づくと、鱗熊が本当に死んでいるか死亡確認をして安全を確かめた。


「モンスターは配置し直しですね」


「うーん、それなんだけどさぁPちゃん、ちょっと聞いていい?」


「なんですか大地さん?」


「クリエイトモンスターってゴブリンなんかと比べて具体的にどのくらい強いの?」


「……クリエイトシステムは基本設定の段階では使用DPの通り、ゴブリン換算で50体以上の強さを得られる仕様になるように設計されていました。導入の段階で多少仕様変更があったとしてもそこまでダウングレードはしてないハズです」


「そっか、……じゃ作ろう」


「良いんですか? クリエイトを使ったら当分ダンジョンの拡張はおろか、通常モンスターや食事を購入するのにも苦労しますよ?」


「勝てない戦力を揃えるより、最強の一体が居ればそれでいいよ。メシの問題は……どうにかするさ、」


「ダンジョンマスターである大地さんがそう決めたのでしたら私はそのサポートをさせていただくまでです。 では、これよりモンスタークリエイトの本格的なご説明を開始いたします」


「ありがとな、Pちゃん」


 ダンジョン初の戦いを通して大地は貴重な経験を得るとともに新たな戦力を手に入れる為、それから半日以上の時間をかけてじっくりと自分だけのクリエイトモンスターを作り上げていくのだった。




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