第018話「ダンジョンリフォーム2」
次は早ければ水曜までに書けると思います。
エステラがモンスター達のリーダーになる為に戦っている頃、大地はダンジョンの2階層を設置しようとしていた。
「えーっと、階段は設置したからその先に通路ブロックを付けると、お、出た」
大地がウィンドウのタッチパネルを操作して通路を階段の先に設置しようとすると、画面にメッセージが表示された。
『第2階層を設定しますか? YES/NO 』
「YESっと、」
ぱんぱかぱーんぱっぱっぱっぱんかぱーん!!
「!?」
画面のYESを押した瞬間、大地は聞いた覚えのある効果音を耳にした。
「今のってミッションクリアのSE?」
「おーそういやそうだな、第2階層を設置するとボーナスが出るんだった。ちなみに3階層以降はなかったけど」
「へーそうなんだ、今回のボーナスはなんだ?」
大地はさっそくボーナスの内訳を確認するために画面に視線を落とした。
・5000DP
・回復ポーション6個
・ロングソード
「前のボーナスよりはましか、ってそういや前のポーションもそうだけど、ボーナスのアイテムってどこにあるんだろ? もっちー、ボーナスのアイテムってどこに出現するか知ってる?」
「ん? ロングソードやポーションならウィンドウ画面のアイテム倉庫から召喚で取り出せるし、逆に空きがある限りアイテム倉庫にしまっとく事もできるぞ」
「え? なにそれ、そんな4次元〇ケットみたいな便利な物あったの?」
「あれ? 知らなかったのか?」
「Pちゃんからは聞いてないな」
「大地さーん、言われた通りエステラちゃんのところにモンスター達集めてきましたけど、本当に行かなくていいんですか?」
「お、ありがとPちゃん。あと聞きたいんだけど、アイテム倉庫の事Pちゃんは知ってた?」
「あ、えーとですね、それの説明は手持ちの道具やアイテムが一杯になって持ちきれなくなった時でいいかなー、と思って言うのを後回しにしちゃってました、すいません」
「そっか、まぁ別に問題はなかったからいいけど、今後の為にも後で残りのウィンドウに関する説明お願いできる?」
「はい、大地さんがいいなら気のすむまでじっくりと説明しますよ」
「サンキュー、ところでそれとは別で今ちょっと聞きたい事があるんだけど、」
「なんですか?」
「植物系のモンスターって他の植物の支配とか操作って可能かな?」
「レベルや種族にもよりますけど、成長するにあたってある程度は自由に操作することは可能になっていくと思います。事実、高位の植物モンスターの中には森を丸ごと支配して入り込んだ存在を惑わしたり、捕食して自身に栄養を運ばせたりするのに使う者もいますから」
「……なるほど、じゃあ可能性はあるな」
大地はなにか考えるような顔をしながら画面を操作して、Pちゃんに自分の考えを話した。
「Pちゃん、新しいクリエイトを後で創るからアドバイスもらえる?」
「え、もう二体目創るんですか? さすがにDP勿体なくないですか?」
「そうだぞ大地、クリエイト作る分の半分だけでも通常のモンスターに使えば一気に繁殖ペースを上げられるし、ダンジョン防衛ならその方が監視の範囲も、」
「今回のクリエイトは戦力確保が目的じゃないんだよ。あ、Pちゃん。ひとまずエステラの様子見てきてくれない? その間に2階層の設置終わらせとくから」
「はい、分かりました」
Pちゃんがエステラの元に飛んでいくのと入れ替わりでいずこかえと行っていたDちゃんが戻ってきた。
「ただいま~もっちー」
「おかえり~Dちゃん。どこ行ってたんだ?」
「このあたりの自生植物見て回ってたんだけど、あんまりティータイムに使えそうなものはなかったわ」
「まぁしかたないって。野生種だとどうしても果実はうまいのが少ないから」
「それについてはこれからなんとかするよ」
「なんとかって、どうするの大地くん?」
「ま、見ててくれ。成功するかどうかは分かんないけど」
「?」
Dちゃんが頭に?マークを浮かべているのに対して、さきほどの話を聞いていた水野はなんとなく大地のやろうとしている事ついて予想を付けはじめていた。
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半日後、エステラはモンスター達を全て従え終えると、その報告をする為に大地の元へと飛んで行った。
しかしそこでエステラは自分の目を疑いたくなる光景を目撃することになる。
「いいじゃないですか~主様、せっかく創造していただいたのですからまずは私の全てをしっかりと確かめてくださいな」
見覚えのない赤紫色の髪をした女性が大地に詰め寄って手を取ると、何一つ身に着けていない自分の上半身に実った二つの果実に触れさせるべく強引に引き寄せようとしていた。
対する大地は自身の理性と筋力を総動員して抵抗していたが、力負けしているのか少しずつ大地の手は女性の方へと近づきつつあった。
「い、いや、そういうのはまた今度な、今はとりあえず離れて、それと服着ろ! 服!」
自分の主人である大地に見ず知らずの女性が詰め寄っている光景はドラーク渓谷で大地が殴られていた時以上にエステラにとって許しがたいものであり、気が付けばエステラは全力でその女性に襲いかかっていた。
だがエステラの拳が女性に直撃する直前、地面から巨大な植物の蔓が出現してその蔓にエステラの拳は受け止められてしまった。
「あら何かしらこのちんちくりんは? 私と主様の逢瀬を邪魔するとはずいぶんと躾けがなってないわね」
「黙れ害虫! ますたーの周りをふらふらして御身の視界を汚すんじゃない!」
「エステラ!? ちょ、これはその、ち、違うからな!?」
突然現れたエステラに対して大地が弁解をしようとすると、エステラはにっこりと笑って返答した。
「大丈夫ですよますたー、今すぐそこの害虫を駆除いたしますのでしばしお待ちください」
自分の手を絡め取ろうとしていた蔓をぶちぶちと引きちぎりながらそう言ってエステラは戦闘態勢に移ろうとしていた。
「ふふ、あんたのようなちんちくりんに出来るかしら? 全身の血を絞り出して花の養分にでもしてあげましょうか?」
「この植物のように首を引きちぎられるのと虫のように叩き潰されるのならどちらがいいですか? 選ばせてあげますよ害虫さん♪」
「「…………、やってみろ!!」」
「やめぇ―――――い!!!!」
「ますたー?」
「主様?」
「エステラ!」
「は、はい!」
「俺が良いというまできちんと俺の話を聞け! バトル禁止!」
「し、しかし、」
「反論も禁止! 次にアイリス!」
「は~い主様、なんでしょう?」
「エステラとの喧嘩禁止!」
「エステラ? それってこのちんちくりんの事ですか?」
「そうだよ、っていうかちゃんと名前で呼んでやれ、これから一緒にやっていく仲間なんだから」
「ええ~、コレと仲良くですか?」
「嫌なら出て行けばいいんじゃないですか?」
「え? あなたが出て行ってくれるの?」
大地の戦闘禁止令が無ければ即開戦といった雰囲気で睨み合っている二人に対して、大地は気を逸らす為に話を始めた。
「あーとりあえず紹介しとくけど、新しく創ったクリエイトモンスターのアイリスだ。エステラにはモンスターの管理を任せるのと同じようにアイリスには別の事で管理を任せる予定だからそのつもりでな?」
「なにを管理させるのですか? 害虫にさせるという事は虫の管理でしょうか?」
エステラがいつになく毒を吐きながら大地のそばにすり寄ろうとすると、いきなり背後から先ほどと同様の植物の蔓が無数に出現してエステラは縛り上げられ、身動きの出来ないエステラに変わって見せつけるようにアイリスが大地の腕に自分の腕をからめてきた。
「ちんちくりんにはこんな事出来ないでしょうねぇ~、けど安心なさい。これからは私が主様のお世話を手取り足取り全て引き受けてあげるから、あんたは安心してダンジョンの外で門番でもしてなさい♪」
「なぁ、なぁ、ますたー!! 本当ですか!? 本当にこんな害虫に御身のお世話を任せるのですか!!?」
アイリスの発言にエステラは自身を拘束していた蔓を一瞬で引きちぎるとアイリスを押しのけて大地に詰め寄って真偽を問いただした。
「お、落ち着けエステラ、違うから、身の回りの世話を任せた覚えなんてないから!」
「では何のためこんな害虫を!」
「あのなぁ、そもそもアイリスは虫じゃなくて植物モンスターのアルラウネがベースだからな? アイリスにはこれからの食事改善として植物の品種改良をやってもらう予定なんだよ」
「ひんしゅ…かいりょう?」
エステラにとって聞き慣れない単語が出たことで大地を問い詰める勢いが緩み、大地はその隙を逃さず、エステラを納得させるために畳みかけた。
「DP以外での食糧を安定して確保するのは急務だったからな、植物を操作できるクリエイトモンスターで食べやすい植物を大量に確保できればその問題も大分改善できるし、ついでに戦力拡充も図れるからアイリスを創ったんだ。これでもお前の妹みたいなものなんだからちゃんと面倒見てやってくれよ?」
「ま、ますたーがそう望まれるのであれば、……努力します」
「すっげー嫌そうだな」
「…………正直に言えば嫌です」
「はぁ~、こんな形で渡すつもりなかったんだけど……、ほれ、エステラ手出せ」
「? はいますたー」
大地に言われて両手を出したエステラに大地はボーナスで獲得したロングソードをそっと手渡した。
「ますたー? こ、これは……」
「女の子に剣なんてプレゼントとしてはアウトなんだろうけど、俺が使ってもあんまり役に立たなそうだし、これまで俺の命を何度も守ってくれたエステラに対してそろそろ褒美を出さないとなぁ、と思ったら手持ちで褒美になりそうな物がそれしかなかったんだ。いずれちゃんとした褒美を用意するからしばらくはそれでアイリスの事我慢してくれないか?」
「いいえ! 分かりましたますたー!! あとこの剣は絶対に大事にします!!」
「そっか、気に入ってくれてよかった」
「はい!!」
「主様~、わたしにはなにもないんですか?」
「お前はまだ生まれたばかりでなにも仕事してないだろ。ちゃんと仕事したら考えてやるよ」
「言いましたね? ならこんなちんちくりんなんて足元にも及ばないほどたくさんお仕事しちゃいますからご褒美たくさん用意して待ってて下さいよ!」
「ふん、害虫が私より働けると本気で思っているの?」
「あら、使える手足が2本ずつしかないちんちくりんに負けるとでも?」
「やりますか?」
「受けてもいいわよ?」
「だから喧嘩すんな――――――!!」
大地の2体目のクリエイトモンスター、アイリスとエステラの顔合わせはこうして最悪の形で終わった。
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アイリスとエステラが顔合わせをしてから約一月後、アイリスは大地から受け取った野菜の種を栽培して成長させ収穫し、味を見て、望んだ結果にならなければ自身の能力で野菜に手を加え、また成長させて収穫して、のサイクルを繰り返して大地から言い付かった品種改良の仕事に精を出していた。
「主様~、今回の野菜は自信があります。どうぞご賞味あれ!」
「どれどれ、」
「アイリスちゃんの作った野菜か~、期待しちゃうな~」
アイリスが持ってきた大根もどき、ズッキーニもどき、にんじんもどき、それぞれ三種類ほどの野菜を一口大に切り分けると、大地と水野は一つ一つ味見をしていった。
「…………う~ん、たしかに前より青臭さは無くなったけど、野菜本来の味も無くなった感じだな」
「けど、村で手に入れた野菜よりは食いやすいぞ?」
「それはそうなんだけどな、アイリス甘味を出すのは後回しでいいからとりあえず青臭さを押さえながら野菜のうまみを出す方法を探してくれ」
「は~い、ではまた次回までにそのような野菜を目指して努力いたします」
「それと果物の方はどうだ?」
「はい、主様のご指示通り複数個所で私が手を加えて種から育てたアポールの苗を植えて経過観察をしておりますが、日当たりの良い場所の物は順調に育っています。多少日当たりが悪い場所の物に関しても発育が少し遅いですが、概ね順調です。これならあと1,2年ほどで食べられる実ができそうです」
「あんまり成長早めると苗の時点で枯れちゃったからなぁ、あれより成長早めるのはやっぱ無理そうか?」
「申し訳ありません主様。私の力不足でまだあれより成長を早くするのは難しいです」
「そうか、ま、気長に行こう。順調にいけば今後の食糧確保はどうにかなりそうだし」
「どうなるかと思ったけど食料生産もちゃんと形になってきてるなぁ、あとは残ってるのはタンパク質くらいか?」
「あーそれなんだけど、家畜飼うのは難しそうだからそれはいずれ落ち着いたらにしようと思ってるんだ」
「確かに最悪肉はそこらで取ってくればいいし、焦ることもないか」
「そうそう、それに今は別にやることがあるだろ?」
「そーだな、そろそろ準備も整ったし、やるか」
「主様、なにをなさるのですか?」
「ん? DP稼ぎ」
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~新キャラステータス~
『アイリス』
◆種族
アルラウネ
◆称号
【ダンジョンマスターの使い魔】
◆スキル・魔法
【プラントコントロール】
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現在までのDP使用状況(大地)
手持ち540DP
【ボーナス】
+5000DP
【クリエイトモンスター】
クリエイトモンスター作成3000DP -3000DP
モンスター各種設定500DP -500DP
(内訳)
・名前設定
・種族設定
・能力値設定
・スキル設定
・容姿設定
【ダンジョン拡張】
・階層追加500DP -500DP
・階段一階分50DP -50DP
・通路(2m×2m)20DP×10 -200DP
・部屋(5m×5m)100DP×2 -200DP
【物品購入】
・水(1L)1DP ×80 -80DP
残り1010DP