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第016話「ダンジョンへの帰還」 

修正4 次回最新話は来週までに書き上げるつもりです。

 『スライム魔窟』から脱出した大地たちは勇者との接触を避け、その場を離れると、ひとまず落ち着ける場所に向かうことにし、大地のダンジョンに向かって歩き出していた。


「そういえば、せっかくあんな強いスライム居たのに捨て駒にしちゃってよかったのか?」


「んー? スフィアスライムの事か? もうあいつらに姿見られちゃったし、いない方が後々面倒なことになりそうだからなぁ、」


「面倒なこと?」


「えっとな、強いモンスターが居たとして、倒したわけでもないのにそいつの姿が見えない。お前だったらどうする?」


「う~ん、探して居場所を確認するなり、倒すなり、あ、」


「そういう事、居なきゃいないで捜索された上に、ヘタなとこで見つかったらこっちもやばいだろ? だからスフィアはあの場でボスとしての役目を全うしてもらったってわけ」


「言われてみればその方が理にかなってるわけか、」


「と、言うわけで、まず確認なんだが、大地のダンジョンってどこにあるんだ?」


「だいたい王都から徒歩で七日ほどのとこだけど」


「へぇ、ちょっと待ってな」


 マントの下から水野がいきなりバサッと茶色い羊皮紙を取り出して開くと、そこには王都を中心とした地図が描かれていた。


「これ前に王都で買ったやつで結構おおざっぱだけど大体の位置はわかるから、どのあたりか教えてくれ」


「ここが王都で、ここがドラーク渓谷だろ? そこから湖のある地帯がここだから、うわ、ほとんど地図の端っこだ」


「てことはドラン王国の国境線ギリギリってことか、お前のダンジョンの近くに山脈ってあるか?」


「あー、少し離れたとこに見えるぞ」


「やっぱそうか、それ帝国との国境線になってるギルレオン山脈だ、標高が高いのと竜種系モンスターの巣が大量にあるせいで、王国も帝国も領土にできず、互いに国境線にしてる山脈だ」


「へぇ、知らなかった」


「ま、今の俺らにゃどうでもいい話だけどな」


 大地と水野が話していると、ふいに大地は自分の服を引っ張る存在に気付いた。


「どうしたエステラ?」


「ますたー、本当にあの者達をますたーのダンジョンにお招きしてもよろしいのですか?」


「大丈夫だよ、もっちーはそんな悪い奴じゃなさそうだし、何よりこっちを害する意思があればあいつのダンジョンに居る時にいくらでもやれただろうからな」


「それはそうですが、」


「それにお前もあいつに敵意を感じなかったから黙ってたんだろ?」


「!……気づいておいでだったのですか?」


「お前がなんか言ってくる時は相手に問題がある時だけだっていい加減分かったからな。その上で俺はあいつをダンジョンに招いても大丈夫だと判断した。だから信じろエステラ」


「……私のようなものの考えを理解していただいた上にそうまで言われては従うほかありません。どこまでもお供いたします、ますたー」


「ああ、よろしくな」


「はい!」


「俺に丸聞こえだけど、それは良いのかよ」


「別に大丈夫だろ? なんか仕掛けてくるならエステラが防いでくれるし」


「ま、信じてくれるのはうれしいけどな、ところでずっとバタバタしてて効く暇なかったけど、エステラちゃんってアレだよな? クリエイトモンスターだよな?」


「そうだけど、」


「うぁ~いいなぁ、美少女モンスターいいなぁ~!」


「もっちーも作ればいいじゃん」


「…………たんだ」


「え? なに?」


「DPがそんなに余ってなかったんだよ~!!」


「えぇ? なんで?」


「最初の頃、ダンジョン作り以外のDPを全てスライムにつぎ込んだせいで、以降は防衛によるDP稼ぎとスライム召喚による自転車操業状態だったもんね~、もっちー」


 水野の髪の中から頭だけを出したDちゃんが冗談めかしてそんなことを言ってきた。


「だってDちゃんが説明してくれないから、」


「あたしが言う前に召喚ウィンドウ開いて勝手に召喚したのはどこのどいつよ、あ~ん?」


「ぐ、そ、それはまぁ、反省してるけど、」


「だったらもっちーになんか言う権利もないわよねぇ?」


「けど、説明してくれる時いつも思うけど、Dちゃんって全体的にいい加減な気が、」


「口答えするんじゃないわよ」


 頭の上に乗ったDちゃんはそう言うとくちばしで水野の頭を軽く小突いた。


「いって!」


「大変そうだなもっちー」

「みたいですねー」


 大地とエステラはDちゃんにくちばしでつつかれるもっちーを離れた所から他人ごととして眺めていた。


「ついでにいえば、今のあんたには「スレイ」ちゃんが居るんだからいいじゃない」


「そうだけどさぁ、今のスレイだとあそこまでの美少女体型にはできな、いててて! ごめん! 悪かった! 謝るから許してくれスレイ!」


 突然一人で苦しみだした水野に大地は最初理由がよくわからなかったが、マントの下がぐねぐねとうごめき始めたのを見て察しがついた。


「おい、もっちー、スレイって、」


「ああ、そうだよ、これが俺のクリエイトモンスター、ヒューマンスライム(・・・・・・・・・)のスレイだ」


 水野がマントを外すと、その下には水野の身体を鎧のように覆う形でスライムが張り付き、胸のところには他のスライムよりも大きな核とうっすらと人間のような顔が見えていた。


「こいつは俺の身体に纏わせる事で身体能力を上乗せしたり、傷を負ってもスライムボディで塞いで応急処置したりできるんだ。ま、スフィア以上の切り札だな」


ヒューマン(・・・・・)ってことはやっぱり、」


「ああ、人型形態にもなれる。ていうかそっちが本来の状態かな、こうして俺が纏っている時は外出したりなにかと戦う時くらいだ」


「だから王都で私に追いつけたのですね」


「そういう事、じゃなきゃ俺みたいな一般ピープルがお嬢ちゃんみたいなでたらめなスピード出せるわけないだろ?」


「なんだ、じゃあ俺らってこの世界でも強くはなれないのか?」


「いや、一応俺らもレベルUPとかすると身体能力は上がるし、普通に鍛える事も出来るぜ、ただ、ヘタすると死ぬのは前の世界と一緒だ。ついでに俺の知る限りでこの世界に復活のアイテムや魔法があるって情報はまだ聞いたことがない」


「じゃあまだしばらくは作戦「命大事に」でいった方がいいな」


「そゆこと、そもそも俺らダンジョンマスターなんだから自分を鍛えるよりダンジョン強くした方が早いだろ」


「それもそうか」


 そんな風に雑談を交えながら大地達は徒歩で移動を続け、2日ほどかけてドラーク渓谷にたどり着いた。

 

「う~ん、メーティアの時にはあいつの身分証があったから通れたけど、今回はどうすっかなぁ、もっちーなんかいい案ない?」


「言っとくけど俺は身分を証明出来るモノなんて特に持ってないぞ?」


「だめか、」


 大地が考え込んでいると、服の裾をくいくい引っ張る可愛い小動物、もといエステラがなにかを言いたそうにしているので、話を聞くことにした。


「どうしたエステラ?」


「ますたー、私が空からお運びしましょうか?」


「……できるのかエステラ?」


「はい! 大丈夫です。ずっと上まで持ち上げるのは難しいですが、ますたー達を運ぶくらいは出来ます」


 両手でガッツポーズを決めながらエステラがそう言うので、大地はまず自分が試してみることにした。


「おぉ、ほんとに持ち上がった」


「すげー、やるなエステラちゃん」


「では、ますたーをお運びしてから水野さんの番でよろしいですね?」


「ああ、頼むよ」


 エステラの飛行能力のおかげで一行は王国側に悟られる事なくドラーク渓谷を超えることに成功し、無事に谷の反対側に渡る事に成功した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ドラーク渓谷を越えてそこからさらに少し進んだところで大地達は途中にある村に立ち寄った。


「もっちー、村に寄ってどうするんだ?」


「そろそろ野生動物の肉だけじゃ栄養バランス的にまずいだろ? 少しタンパク質以外の物を手に入れようぜ」


「出来るのか?」


「まぁ見てな、野菜と、あとあれば果物も手に入れてやるよ」


 水野にそう言われて大地はメーティアと王都に行く時覚えていた村まで来ると、水野に任せて自分は後ろに控えることにした。


「お~い、誰か食糧を売ってくれないか? 少しでいいんだ。金はあるぞ~!」


 水野がそういうと村の家から一人の老人と若者二人が姿を現して厳しい目つきで話しかけてきた。


「冬籠り前のこの時期にいきなり来て食糧を売れとはずいぶんな物言いじゃな?」


「そう警戒しないでくれよ、ちゃんと金はあるんだ、銀貨一枚と引き換えで野菜と果物を少し分けてくれればそれでいいからさ」


「……偽通貨じゃないだろうな?」


「心配なら調べてくれても構わないぜ、ちょっと道中の食糧が足りなくなりそうだから一籠分の野菜と出来れば果物を仕入れたいだけなんだよ、なぁ、いいだろ?」


「……そこで待て、誰か秤と重りを持ってきてくれ」


「へいへい、気が済むまで調べてくれていいぜ」


 水野と老人の話は大地が内容をよく理解するよりも早く進んでいき、若者の一人が天秤をもってくると、老人はその天秤に水野から受け取った銀貨といくつかの重りを乗せて重量が釣り合うかどうかを試し、ちょうど重りと銀貨が釣り合ったところで老人はじっと重りの数を確認し、静かにうなづいた。


「たしかに本物の銀貨のようだ」


「だから言ったろ、籠一つ分の野菜で銀貨を払うバカなんて普通はいないぜ? いきなり来て迷惑かけてるのが分かってるからその分も含めて払ってるんだ。あんまり渋るんだったら別の村で交渉するけど、その方がいいか?」


「いや、払うものを払ってくれるなら文句はない、おい、一籠分の野菜と果物を用意してやりなさい」


「分かりました村長」


 水野と村長の話がまとまり、村長は銀貨を、大地たちは野菜と果物を手に入れた。




「ありがとなもっちー、大事な金を使わせちまって、」


「良いって事よ、どうせ俺のダンジョンに侵入してきた奴らから頂いた金だからな」


「そうよ~、あんまりにも使い道がないからってもっちーそのお金で王都に家まで買っちゃうほどのバカなんだから、どんどん無駄遣いさせちゃっていいからね~」


「Dちゃん、バカはひどいだろ、それに王都に拠点を作っとくことは無駄じゃないし」


「ダンジョンマスターからすればあそこは完全な敵地よ? そこに拠点を作るなんて正気じゃないと思うんだけど、無駄以外のなんだっていうのかしら?」


「う~、ひっでえなぁ」


「大丈夫だってもっちー、俺も王都に近かったらそういう事考えたかもだし」


「うう、大地~」


「水野さん、ますたーにあまりくっつかないでください」


 いつの間に大地と水野の間に割り込んでいたエステラによって大地に縋り付こうしていた水野は強引に引きはがされた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 村に立ち寄って食糧を手に入れた後、とくに障害もなく大地たちは4日かけてようやくなつかしの洞窟(我が家)に帰ってきた。


「Pちゃ~ん、ただいま~」


 洞窟の中に向かって大地がそういうと、少ししてパタパタ翼がはばたく音ともに見覚えのある黄色いデフォルメボディーが見えてきた。


「おかえりなさーい大地さーん」


「元気だった?」


「元気ですよ~、むしろそっちの方が元気だったんで……、大地さん、その後ろの方は?」


「ああ、こっちは同じ日本人でダンジョンマスターの水野 模智太郎でこっちが、」


「はぁ~い、お久しぶりねPちゃ~ん?」


「!……なんでお前がここにいる?」


「そりゃああたしがもっちーの担当だからに決まってるじゃない。もっちーのダンジョンがダメになっちゃって大地くんが「うちにおいで」って言ってくれたからお言葉に甘えたのよ。わかった?」


「大地さん! さっさとこの駄鳥を追い払ってください!!」


「へ? 急にどしたのPちゃん?」


「いいから今すぐに、」


「いいのかしら? 同じ眷属同士で助け合って担当の子をサポートするのも私たちの仕事よ? うちのもっちーをあんたが見捨てたなんて報告を私がすればあんたの給料どーなるかしら?」


「くぅ、相変わらず寄生する気まんまんですねあなたは」


「いいじゃない、困った時は助け合いましょう?」


「あなたの場合、助けられっぱなしで誰かを助けたトコなんて見たことないんですけど?」


「……なんか知らんけど、仲良く行こうぜ? 二羽? とも同じ神に仕える眷属なんだろ?」


「激しく不快で認めたくないですが、一応そうです」


「そうそう、同期のよしみで、ね? お願い!」


「はぁ~、大地さんの邪魔だけはしないでくださいよ? 私の評価が不当に貶められるのだけは我慢なりませんからね」


「分かってるわよ」


 帰ってそうそうなにやら女の戦いみたいなものが勃発したが、ひとまず収束したことに大地は安堵した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 洞窟に入った大地達はひとまずこれまでの経緯をPちゃんに話し、二人のダンジョンマスターが一緒にダンジョンをやってもいいのか相談することにした。


「なるほど、それはなかなか面白そうですね大地さん」


「どうかなPちゃん?」


「そーですね、二人でダンジョンマスターをするという件に関してですが、とりあえず私から言う事はありません。特にそのことに関してこの世界の神と取り決めをしているわけでもありませんし、むしろ今後の参考のためにも良いモデルケースになると思います」


「要は分かんないからやってみようって事か?」


「はい。その言い方が適当だと思います」


「じゃ、改めてこれからダンジョンを作るとするか、よろしくなもっちー」


「ああ、こちらこそ、宜しくな大地!」


 大地と水野の二人は改めて挨拶を交わして二人のダンジョンマスターによるダンジョンがここにスタートした。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「いや、名前はまだいいだろ」


「なんでだよ『新・スライム魔窟』とかで決まりだろ?」


「なんでもっちーのダンジョン名をそのまま引き継がないといけねーんだよ。付けるならもっと違う名前にしようぜ!」


「なんだとー!? 『スライム魔窟』のどこが嫌だって言うんだよ! いいか? スライムには工夫次第で無限の可能性が、」


 二人の口論をエステラの頭の上から眺めながら二羽の鳥はぼやきながらため息をついた。


「こんな調子でちゃんとしたダンジョン出来るんですかねぇ?」


「さぁ? もとのもっちーのダンジョンも階層がある以外はここと大差なかったけど、」


「「……先行き不安ですね~(よね~)」」



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