表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステゴロソウル~たとえば俺が勇者なら~  作者: 寅猛
番外編 裁縫都市パッチワーク
96/165

パッチワークの4


「すみません、お忙しい方ですので事前に連絡がないのでしたらお会いするのは少々難しいかと――」



 目の前に座っている受付が眉を八の字にして、申し訳なさそうに頭を下げた。

 よくよく考えれば当たり前のことだ。一都市のトップで、現役の職人、突然来た見知らぬ輩に会う時間などあるわけもない。

 気軽な気持ちで来てしまったリュージもリュージだが、言い出しっぺのラフィはどうするつもりなのか、意見を仰ごうと視線を向ければ腰に手を当てたラフィが胸を張ってこう告げた。



「リュージ・キドが来たと伝えてもらえないかしら、急を要する用だとも伝えて」

「おいこら」

「何よ、嘘は何一つ言ってないでしょ?」

「俺の名前を勝手に使って無茶するんじゃねえ、他人の迷惑考えねえ金持ちみたいだろうが」



 こんな権力を笠に着るようなやり方は断固として嫌だった。相手の都合を押しのけるための『勇者』の称号ではないのだ。

 しかしラフィはリュージの諫言などどこ吹く風、むしろ楽しげに反論した。



「あら、だって急ぐのは本当でしょ?ただでさえアルカディアでは予想外の長期滞在になったのよ、服を作ってもらうためにまたひと月近く待つつもり?」

「だからって人の都合を無視していいわけじゃねえだろうが、大体そんなにかからねえだろ」

「それはどうかしら、だってアルカディアでも最初は数泊だけの予定だったのがああなったのよ?もう私たちの旅が予想どおりに進むなんて楽観的すぎるわよ」

「……た、確かに言われてみると、不安になってくるような」



 ついつい納得してしまうヴィートにため息をひとつ零してから、リュージは今までの旅路を思い返す。

 ――確かに予定通り進んだためしがない。本来の予定ならば今頃一人で海の上にいてもおかしくないのだ。

 何の因果か人数も四人になり、現在位置は未だ西大陸、改めて現状を省みれば急ぐべきだとも思えてくる。



「……あの、それで結局どのように」



 受付が恐る恐るといったふうにリュージに尋ねる。

 リュージは迷った挙句、気まずさと申し訳なさを覚えながら言葉を紡いだ。



「……どうしても忙しかったらいいって伝えてくれ」



 満足げに頷くラフィを一睨みするも、気にしている様子はない。

 結局のところ舌に油でも差していそうなラフィが相手では、口下手のリュージが適う道理もない。いつもどおり流されて肩を落とす男の背中をイナセが叩いた。



「気にすんなよ旦那、男が負けてる方が世の中平和なんだぜ?」

「……背伸びしても肩に届かねえなら叩かなくてもいいぞ」

「よ、余計なお世話だよ!すぐに伸びる!」



 真っ赤になって怒るイナセを、ヴィートが宥める。

 一気に喧しくなった四人に迷惑そうな視線を向けつつ、受付は奥の通路へと姿を消した。

 ほどなく戻ってきた彼女は、驚いた様子で面会の許可が出たことを四人に告げた。



「驚きました、裁縫長は突然来た方に会うことは少ないのですが」

「そうなのか」

「はい、『事前に連絡も入れない相手は人としてなってないから通さなくていい』といつも――」



 都市に広がる服屋、活気のある通り、和やかな雰囲気のせいでトップまでのんびりした人物であると決めてかかっていたが、よく考えれば都市中で商売をしている所のトップなのだ、規律に厳しくなければ勤まらないのかもしれない。



「あの、もしかして裁縫長のお知合いなんですか?」

「いや、ここに来るのは初めてだ」

「そうですか、それでは勿論裁縫長に会うのも――」

「初めてだな」

「……なるほど、それじゃどんな方かご存知でないんですね」

「随分含みのある言い方ね、もしかしてものすごく偉そうとか、態度が悪いとかそんなの?」



 ラフィの言葉に受け付けは慌てて首を横に振った。



「い、いえ!裁縫長はとても素晴しい方です!礼儀には少し厳しいですが、下の者にもとても優しくて、偉そうにしたことなんて一度もなくて――」

「へぇ、すごくいい人なんですね!」

「は、はい、それはもう、都市民からも愛されている方で……」



 一瞬受付の表情に陰りがさしたのに気づいたラフィが訝しげに彼女を一瞥する。

 しかしそれも一瞬のことだった。受付は自らの職務を全うすべく、歩きだした。



「それではこちらにどうぞ」



 リュージ達はそれについて建物の奥へと進む。

 何度も比べるものではないが、やはりアルカディアの建物に慣れていたせいか、とても狭く感じた。

 ただコンクリートを踏んだ時に感じる無機質な感触よりも、木の床を踏んだ時の音の方が、心が安らぐような気がするのは気のせいだろうか。

 リュージは石造りの壁や、木の床に安心感を覚えつつある自分が少しおかしくなった。

 つい数か月前まではアスファルトやコンクリートに囲まれて生きていたというのに、これでは元の世界に帰った時に足もとが気になり過ぎて歩くのに難儀するかもしれない。



「……なんで急ににやにやしてんだよ」

「ん?してたか、気付かなかった」

「してたぜ、目が全然笑ってねぇから不気味だった」

「ほっとけ……まあ気にするな、少しな取り留めもないこと考えてただけだ」

「ふーん?床見ながら考えることねぇ」



 それ以外の会話もなく、リュージ達は三階の奥の部屋までたどり着いた。

 それにしてもどうして偉い人間と言うのは最上階の一番奥を使うのだろうか。

 受付が扉を三回叩いた。



「裁縫長、お連れしました」

「入れてちょうだい」



 中から聞こえてきた声に、リュージは抑えきれない違和感を抱いた。

 嫌な予感ともいう。

 許可をもらった受付が、扉を開ける。開かれた室内を見たリュージが絶句して固まる。



「どうしたんですか……!?」

「何よ何よ……うわぁ」



 リュージの背から顔をのぞかせたヴィートもまた同じ反応をした。

 ラフィでさえ驚きに目を見開いている。



「おい?おーい、何がどうなってんだよ、アタシにも見せろって」



 自分よりも背の高い三人に視界を塞がれたイナセは三人を押しのけるようにしてようやく室内を見渡した。

 ――見渡してしまった。

 部屋一面の極彩色の、これでもかと言うほどに裾がひらひらしている、着るだけでエネルギーを使い切りそうな服の数々を――。



「……なにこれ」



 イナセがつい洩らしたその感想が全てだった。

 あちこちに吊るされた服のせいで、部屋の本来の広さすら分からない。

 そんな布の森の奥から、先ほど聞いた声が再び聞こえる。



「こんな目立たない都市にまで良く来てくださったわ!勇者様!」



 数多いハンガー掛けがひとりでに部屋の脇へとずれていき、その奥にいた人物の姿が露になる。



「あんらぁ!良く見たら渋めのイケメンじゃないの!」

「ほ――」

「やっだわぁ!それならそうと言ってくれなきゃ、今日はメイクに力入れてないのよぉ!」

「ほ――」

「やだわやだわぁ!こんなんじゃ――」

「ほわあああああああああああああああああああ!!!」



 ヴィートの悲鳴が室内を揺らした。

 それも仕方がない、なにせ目の前に現れたのは――。

 ――部屋にあるような服に身を包んだ、素顔が分からないほど分厚いメイクを施した筋骨隆々の巨漢だった。



 人類が四足歩行だったころから二足歩行へと変わり、道具を使うようになり、火を恐れなくなり、刃物を使うようになり、徒党を組んで巨大な獣に立ち向かうようになり、やがて文明が生まれ今のような生き物になるまで数億年の時が必要だったのはきっとこの世界でも同じはずだ。

 人類だって元をたどればそこらにいる動物と同じ、本能だけで生きている獣の一匹にすぎなかったのだ。偶然脳みそが大きくなり、偶然絶滅しなかった結果今のようになったにすぎない。

 そんな今現在でさえ人間は本能を完全に捨て去ることはできない。

 例えばすりガラスを引っ掻いた時の音に鳥肌が立つのは、サルが発する警告音と周波数が似ているかららしい。

 そう危機感だ、やはり人類も生き物である限り、身の危険を感じた際に体が勝手に動いてしまうものなのだ。

 だからリュージがヴィートの悲鳴とともに瞬時に巨漢との距離を詰め、その胸倉を掴んで床に叩きつけたのにも、理由らしい理由はなかった。危機感があっただけだった。

 リュージは巨漢を抑えつけたまま部屋の入口にいる受付に叫んだ。



「おい!不審者は抑えておくから裁縫長を探せ!」

「あ、あの……」

「早く無事を確認しろ!」

「だ、だから!その人です」

「ああ?」

「その人が、裁縫長のフランソワさんです」



 リュージは白目をむいて気を失っている巨漢を見て、額に汗が流れるのを感じた。



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  



「悪かった。本当に悪かった」

「気にしなくていいのよリュージちゃん!なかなか熱い一撃だったわぁ」



 そう言って豪快に笑うフランソワ(?)にリュージは深く頭を下げ続けていた。



「それであなたが裁縫長?」

「ええそうよ、ワタクシがパッチワーク当代裁縫長にして、世界の美を追い求める美の化身、フランソワよ!」

「あの、それ本名じゃな――」

「本名よ」

「いや、だってあの――」

「本名と言っているでしょう?」



 そう語るフランソワの背後に恐ろしい鬼の姿を見たヴィートは小さな悲鳴を上げて縮こまった。

 パッチワークの裁縫長のことは誰も知らなかったにしてもこの状況は予想外すぎた。あまりの衝撃に何から話せばいいのかさえ分からない。

 口を開きあぐねているリュージとは違い、一際早く立ち直った――というか最初からあまり気にしてなかった――ラフィがフランソワに問いかける。



「それにしてもこの部屋にある服は全部あなたが作ったの?」

「ええそうよぉ、この子たちはワテクシが腕によりをかけて作った美のサナギたちよぉ」

「サナギって、こいつらまだ完成じゃねぇのかよ?」

「お嬢ちゃん、服はね作れば完成ってわけじゃないのよぉ?服の完成って言うのはそれを着てくれる人に出会った時なの、この子たちが蝶として羽ばたくのはその時なのよ」



 小さなイナセが相手だからか、口調が優しくなるフランソワ。

 服に頓着しないイナセはピンとこないのか、「ふぅん」と生返事を返すだけだった。

 フランソワは、その様子を微笑ましそうに眺めている。



「うふふ、きっとあなたもいつか分かる時が来るわ……それで、ワテクシに用があるのはどなたかしらぁ?」

「用があるのは俺だが、押しかけといてなんだがいいのか?忙しいんだろう?」

「あんらぁ!!心配してくれるのぉ?リュージちゃんたら、や・さ・し・い」

「大丈夫そうだな要件言うぞ」



 早口で言うとリュージはジャケットを脱いで下のワイシャツを見せた。

 途端、フランソワの眼が鋭くなる。ふざけた態度は一切ない、職人として一都市のトップに立つ男の姿がそこにはあった。

 リュージはその視線に気圧されることなく、まっすぐに見据えて言った。



「頼みたいのはこの――」

「言わなくても分かっているわ、それ元は長そでだったんじゃない?」

「……よく分かったな」

「頼みたいのは修復?量産?それとも両方かしら?」

「すげぇ!何も言ってねぇのに、ただの変な格好してるおっさんじゃなかったんだな!」

「だめだよイナセちゃん!」

「うふふ、いいのよヴィートちゃん、気にしないでね、それで仕事に関してだけど、量産はできるわ、ただ修復は不可能ね」



 朗報と悲報をあっさりと言い放つフランソワに、リュージが目を見開いた。



「……不可能ってのは、どういう意味だ?」

「言葉通り、位置から作るのはすぐにできるわ、明日まで待ってくれたら、そのシャツだけとは言わず貴方が来ている物一式、十以上作れるわ、でも直すのは無理」

「だから何で――」

「その服の繊維はおそらくこの世界には存在しないのよ、貴方の世界独特のものなんじゃなくて?」



 頭に一撃くらわされた様な衝撃がリュージを襲った。

 確かにそのことを考えてなかった。リュージの着ているワイシャツは化学繊維だ。地球でさえ化学繊維ができたのは数十年前、この世界にあるわけがない。

 打ちのめされるリュージを気の毒そうに見ながら、フランソワは言葉を重ねる。



「勿論他の生地で変えようと思えばできないことはないわ、でもおすすめはしない、そんな真似したら無事なところまで痛むのがオチよ」

「そうか、無理か」

「リュージ……」



 珍しく本気で心配そうなラフィ、それほどまでにリュージはダメージを受けていた。

 あのスーツは、リュージが元の世界から持ち込めた数少ない私物だ。そしてそれと同時にもう一つ大きな意味を持った品物でもあった。

 ラフィは小さくため息をつくと、リュージの背中を思い切り張った。



「いってえ!何すんだ!」

「うじうじしないの!この世界で無理ってだけでしょ!代わりのものは作れるんだから!それは大事にしまっておいて、元の世界に帰ってから直せばいいじゃない!違う?」

「……いや、違わねえな。その通りだ」



 リュージは薄く微笑むと、表情に力を入れ直す。

 そして黙って返事を待っていたフランソワに向かって頭を下げた。



「俺の一張羅の代わりになるようなやつを頼む」

「……頼まれたわ、安心してちょうだい、貴方みたいな服を大切にしてくれる人が着るものだもの、これ以上ない物を作ると約束するわ」



 格好の奇抜さを忘れさせるほどの真剣な表情で、フランソワは頷いた。その眼はやはり、服飾に人生を賭している男の顔だった。



「ああ、あんたになら安心して任せられそうだ」

「あんらぁ!!そこまで買ってくれてるなら応えなくちゃいけないわねぇ!明日のこの時間に来てちょうだい?それまでにできるだけ作っておくから」

「じゃあそれまでは観光かしらね!」

「ちょちょちょちょぉっと待ってちょうだい!」



 意気揚々と立ち上がるラフィを手で制して、フランソワはその巨体を揺らしながら、イナセの前に立つ。

 イナセは不思議そうに、そびえ立つフランソワに訊ねた。



「……なんだよ、アタシに用か?」

「ありありよぉ!貴方、その身に纏っているものは何なのかしら」

「何って、服だろ?」

「ノンノンノン!それは服とは言わない、布じゃないの!」

「や、破れたりしてんのはしょうがねぇだろ!長いこと旅してたから、買う暇も金もなかったんだよ!」



 九歳ごろから背もほとんど伸びなくなってしまったイナセからすれば、途中で服を変える必要性などどこにもなかったのだ。

 だがフランソワの激昂は収まらない。



「しょうがない!?その一言で貴方の美しさがどれほど損なわれていることか!」

「そ、そんなの興味ね――」

「分かる!分かるわフランソワ!」



 急に叫びだしたラフィがツカツカと歩み寄っていくろフランソワの手を取る。

 その爛々と輝いている瞳は明らかにこれから起きる事態を全力で楽しむことしか考えてないものだった。



「そうなのよ!この子ったらオシャレってものに何の興味も持ってないの!もったいないと思わない!?」

「その通りよラフィ!女の子は皆美の蕾を持って生まれてくるの、それに水をやらないなんて美しさへの冒瀆よぉ!」

「フ、フランソワさんはおと――」

「お黙りなさい坊や!!」

「ひぃ!?」



 リュージにも負けて劣らない鬼のような眼力で睨まれたヴィートは小さく悲鳴を上げてリュージの後ろに逃げ込んだ。

 リュージはリュージでこの意味の分からない状況についていくことを早々に諦めたのか、呆れて押し黙っていた。

 フランソワは、ヒートアップしてイナセに詰めよる。



「さあさあさあ!ワテクシが全身全霊を込めて貴方のうちに眠る美を目覚めさせて見せるわ!まずはその野暮ったい帽子を取りなさい!」

「や、やだよ!なんでとらなきゃいけねぇんだ!」

「全体像を正確に掴まなくちゃ正しいコーディネートができないでしょう!?いいから取りなさい!」



 巨体の割に俊敏に振り回される剛腕から、イナセは必死に逃げ回る。



「どんな服が!似合うかしらん!?貴方は!よく動く子みたいだし!中性的にまとめる!?それとも!お淑やかな感じで!攻めてみるぅ!?」

「絶対やだ!アタシはこのままでいいんだ!」



 フランソワの素早さはたいしたものだったが、本職の騎士を相手取れる程速さに自信のあるイナセが相手だ。なかなか捕まらない。

 ――だがイナセは忘れていた。敵は二人だということを。



「そこよ!」

「うわぁ!!」



 掛け声と同時にイナセの足元を不自然な突風が襲った。

 堪らずバランスを崩したイナセの腕を、頭ほどもありそうな掌が掴んだ。



「つぅかまぁえた!」

「く、くそ!離せ!!」

「そしてすかさず帽子をとる!」

「あ、姐さん!?」



 素早くイナセの帽子を奪うラフィ、その下にある素顔が白日の下にさらされた。

 燃える炎のような髪――。

 熟れた林檎のような瞳――。

 突如、フランソワの体が雷に打たれた。周囲にいたリュージ達にさえそのイメージが見えるようだった。



「こ、これは――」

「な、何なんだよ!」

「美しいいいいいいいい!!」



 フランソワはイナセを片手に持ったまま布の密林へと姿を消したかと思うと、程無くして戻ってきた。

 片手にイナセ、もう片方の手には白と赤を基調とした、部屋にある中でも一際フリルのついた服を持っていた。

 フランソワはそのままリュージ達の前まで戻ってくると、イナセにそのドレスを見せる。



「これよぉ!イナセちゃんには確実にこれが似合うわぁ!!」

「絶対に嫌だー!」

「問答無用よ!ラフィ、手伝ってちょうだい!!」

「よしきた!!」



 素早さには自信があっても、腕力は十四の子どものものでしか無い。

 一人ではこの状況から逃げきれないと悟ったイナセは、もはや静観を決め込んでいる男性陣に助けを求める。



「ヴィ、ヴィート助けてくれ!このままじゃおっさんに服脱がされる!!」

「あ、あのフランソワさん?流石に女の子の服を脱がせるのは良くないかと――」

「服に命をかけると決めた時から性別なんて捨ててるのよ!」

「……だそうなので」

「この役立たず!!だ、旦那ぁ!!」

「悪いな、もう俺にはどうにもできないらしい」

「この人でなしぃ!!」

「リュージちゃん!ヴィートちゃん!!お部屋から出てなさい!!」



 二人は唯々諾々とそれに従い、部屋の入口に向かって歩き始めた。

 背後からは、諦めの悪い少女の最後の抵抗が耳に入ってくるばかりだ。



「や、やだぁ!寄るな来るな!や、や、やだああああああああああああ!!」



 扉を閉めて、喧騒から解放されて、どっとたまった疲れを口から吐き出しながらリュージはぽつりと呟いた。



「俺たち何しに来たんだ」



 ヴィートからの返事はなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ