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ステゴロソウル~たとえば俺が勇者なら~  作者: 寅猛
建設都市アルカディア
90/165

アルカディアの35



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  



 「あなた、こんな所で何をしているの?」



 視線を上げると見知らぬ女性が自分を見下ろしていた。

 見下ろされた人物は女性には少しも興味がないようで、布団代わりの布切れを被りなおすと道の端で横になる。

 それがこの都市に来てからの彼の日常だったからだ。



 「……あなた、お父さんとお母さんは?」

 「……」

 「なんで一人なの?」

 「……」

 「お腹空いてたり――」

 「うるさい」



 無視を決め込むつもりだったが、いつまでたっても帰ろうとしない女性にその人物は腹を立てた。

 何故この人は自分に構うのか、同情か、偽善か、それとも騙して売り払うつもりか。

 最後の一つが有力だが、むしろ前に挙げた二つだった場合のほうが面倒くさい。

 せっかく一人で生きていく決意を固めたところなのに、今さら来られても困るのだ。

 だから彼は精一杯目を怒らせて女性を睨む。



 「自分のことは自分で面倒見れる。構うな、邪魔だ!」



 これだけ言えば帰るだろう。少年は再び女性に背を向けて寝転んだ。

 しゃがんでいた女性が立ち上がる気配に満足した少年は、瞼を下げて世界を暗闇に変える。

 これでいいのだ。自分は一人だ、一人でいい。

 今さら何を詰めたって、胸に生まれた穴は埋まらないだろうから。

 それならいっそ、何も期待させてほしくなどない。

 ただ孤独のままに、野垂れ死にたいのだ。



 数分ほどたって、少年が心地よい微睡に沈みかけていた時、とすん、と何かが少年の隣に腰かけた。

 怪訝に思った少年が体を返して音源を見る。



 「……なにやってんだよ」

 「何って?」

 「なんで戻ってきてんだよ!てか何食べてるんだよ酒飲むなよ!」

 「欲しいなら欲しいって言えばいいでしょう?」

 「誰も欲しいなんて――」



 少年の腹が盛大になった。

 口とは違い素直に空腹を訴える腹を少年は慌てて押さえた。

 女性はくすくすと笑いながら手にしていたパンを少年に渡す。

 少年は無言でそれを受け取ってがっついた。

 実を言えばこれが三日ぶりの食料だ。空腹が満たされる感覚に体が歓喜の声を上げていた。

 無言で差し出される水を、また無言で受け取る。



 「やっぱりお腹空いてたんじゃない」

 「うるさいな」

 「ありがとうは望まないけど、ごちそうさまは言いなさい?」

 「……ごちそうさま、何が狙いか知らないけど、渡せるものは何も持ってないんだ」

 「あなた、帰るところは?」



 なにも聞いてない。というかよく見れば顔も赤い、どうやら酔っぱらっているらしかった。

 話の流れを無視した問いかけに、少年は憮然とした態度で答える。



 「無いよそんなの、あったらこんなところいないでしょ」

 「そうよね、それはその通りだわ」

 「……ねぇ、何が狙いなのか教えてよ」

 「狙い……狙いねぇ。」



 女性は何がおかしいのかカラカラと笑った。

 突然笑い出した女性を、少年は不気味に感じたが、よく見れば月明りに照らされた横顔はとても悲しそうだった。



 「……どうしてそんなに悲しそうなの?」

 「悲しそう?そう見える」

 「そうとしか見えないけど……」

 「――そうね、悲しいのでしょうね。ずっと続くと思ってた時間が終わって、絶対になくならないと信じてた居場所も失って、もう私には何もないもの」



 女性が何を言っているのか、少年には理解できなかった。

 ただその言葉の一つ一つに、どうしようもなく共感を覚えてしまっている自分がいた。

 女性は、眼鏡越しに少年を見ている。



 「ねぇ、もしあなたが独りぼっちなら、私の所に来ない?」

 「……寂しさを紛らわすために僕を使おうってこと?」

 「そうね、そういうことになるのかもね……最低な大人だって思うでしょ?」

 「うん」



 躊躇なく頷く少年に女性は苦笑した。

 彼女の言っていることはめちゃくちゃだった。

 今日会ったばかりの子どもを捕まえて、寂しさを紛らわすためのおもちゃになれと言う。

 こんなばかげた話に乗る必要はない。少年は一笑に付した。

 ――少なくとも、そうするつもりだった。



 「――ありがとう、優しい子なのね、あなたは」



 ――だから自分がなぜ伸ばされた手を取ったのか、十歳のスヴェンにはさっぱりわからなかった。



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  



 断片的な映像が脳内を流れていく、きれいな部屋、向かい合って座る自分とナディヤ。



 『言葉遣いは大事なのよスヴェン、ちゃんと覚えなさい』

 『はい、わかりましたナディヤさん』

 『……お姉ちゃんって呼んでもいいのよ?』



 映像が切り替わる。ブルーノの会社、自分はブルーノを見上げていた。



 『お前か、ナディヤが連れてきた奴ってのは』

 『は、はい』

 『……やる気があるならしっかり働かせてやる』

 『あ、ありがとうございます!』



 切り替わる。



 『すごいじゃないスヴェン!ブルーノさんが褒めてたわよ。とっても筋がいいって!』

 『きっとお世辞ですよ』

 『そんなことが言える人じゃないのは私がよく知ってるわ。あなたはすごいことができる子なのよ!』

 『止めてくださいってば』



 切り替わる。



 『スヴェン』

 『なんですか社長?』

 『これ、使うといい』

 『え、これって……』

 『ああ、お前の万年筆もうボロボロじゃないか。それを使え』

 『なんで急に――』

 『……いつも助かってる。細かい仕事を任せきりにして悪いな』

 『そ、それが私の仕事というだけで……』

 『それでも、ありがとうな。要らないなら捨ててくれ』



 切り替わる。切り替わる。切り替わる。

 ページを捲るように、消えては現れる思い出がスヴェンの頭の隅にこびりつく。

 自分は今何をしているのか、なんでこんなことをしているのか。

 こんなことが、したかったわけじゃ――





 『壊せ』





 すべての思い出が色を失った。

 脳内に響く声は、たった一度だけ聞いたことのある声。

 なのにいつまでもスヴェンを離さない声。



 『憎いだろう?怒りがわいてくるだろう?なぁスヴェン、君が持っているのは持っていて当然の感情なんだ。自分を否定してはいけないよ、今から私が君に与えるのは権利なんだ。君が持つべき正当な権利なんだよ、復讐というね』



 ――壊さないと。

 胸に広がりかけていた温かい何かが凍り付いていく。

 すべきことは破壊、ただそれのみ、その先に何もなくても、いいのだ。

 もう、どうだって、いいのだ。

 どうせもう、戻れないのだから――。



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  




 「ここが良い、ここしかないわ!」



 風による加速と近道を繰り返し何とか球体悪魔の先に回りこんだラフィとヴィートがいたのは大きめの広場だった。いくつかの通りが

 近くに民家がなくある程度の広さを確保できるのはここだけだったのだ。

 間に合ったと言ってもぎりぎりなところで、すでに向かってくる球体悪魔の姿が見えていた。あと三十秒もすればここに来るだろう。

 そしてもしここで止められなければ数分もしないうちにフィリーネのいる騎士団本部は文字通り潰されるだろう。

 ヴィートは胸に手を当てて服を握りこんだ。



 「なーによ、そんなに緊張しちゃって」

 「そ、そりゃしますよ。絶対にミスできないですし」

 「そう思ってるなら大丈夫よ」

 「え?」

 「ヴィートは守る者なんでしょ?今は後ろに守るものがたくさんある。ヴィートなら上手くやるわ」

 「ラ、ラフィさん……」



 いつもは自分をからかうばかりの仲間からの強い信頼にヴィートは思わず涙ぐんだ。

 普段はふざけていても、こういう時には自分を励ましてくれる人なのだ。



 「つまり失敗したら人命と私からの信頼も丸ごと失うからがんばってね」

 「激励したいのか追い詰めたいのかはっきりしてくださいよ!」

 「はいはい来たわよ」



 偶にはいいことを言うと思えばやはりいつも通りだ。

 だけど、おかげで目の前に死が迫っているとは思えないほど穏かな気持ちだ。

 もしかしてこれが狙いだったのだろうかと隣を見てみるが、うっすら笑みすら浮かべるシスターの本心は分からずじまいだった。

 そして、そのときが来た。

 指定の位置に迫った球体悪魔を指しながらラフィが指示を飛ばす。



 「やっちゃいなさい!」



 普段と何も変わらないその声音に、ヴィートは苦笑さえ浮かべて腰の剣を引き抜いた。

 そしてその見えない刃を、守るためだけの剣先を球体に向けて叫ぶ。



 「頑固一徹(くろいろ)!」



 現れたのはかつて無いほど巨大な漆黒の塊。大きさだけでいうなら転がってくる球体悪魔と比べても遜色ない。

 こねられた粘土のように姿を変えていく黒色は、球体の前にその全容を明らかにした。

 それは一言でいえば坂だった。勾配が恐ろしいほど急だが球体悪魔の速度ならばジャンプ台になってもおかしくない。間に合わせで作った凸凹の道が通りを塞ぐ。



 『邪魔』    『邪魔』       『じゃま』

       『コワス』      『乗り上げる』  『壊せる』



 そのまま進めば乗り上げて進むだけにも関わらず、球体悪魔は目の前に現れた物体を破壊するつもりらしかった。

 ヴィートの体が強張る。実際に本気で突っ込まれるとどうなるか分からない。

 黒色が壊れるとは思っていないが、壊れないだけで押されれば黒色ごと動かされる可能性はあるからだ。

 そして、その可能性を潰すのが、ラフィの仕事――。



 「だったらついでに、これでどうよ!」



 球体悪魔が道に乗るのとほぼ同時にラフィが黒色に触れる。黒色の表面が音を立てて凍りついた。

 凄まじい回転音が鼓膜を震わせる。

 勾配にスピードを殺され、表面に張っている氷に摩擦を殺された球体悪魔は、なにも考えずに回転を速める。

 が、尽く空回りだ。

 そして、少しづつ、球体悪魔は元来た道へと押し返されていく。



 「おまけよ。お礼はいらないから」



 ラフィはそう言うと右手を悪魔の方へと向ける。

 その場の空気が静まり返る。ラフィの掌に目に見えない力が集まっていく。

 次の瞬間、圧縮された空気が爆発した。強烈な突風が指向性をもって球体悪魔に襲い掛かる。悪魔はこの瞬間完全に回転の制御を失って、元来た方向へと転がされていった。

 悪魔が転がっていく方向に狂いが無いことを確かめて、ラフィは座り込んだ。



 「あー、疲れた。魔素きれた……」

 「ぼ、僕もちょっと限界です」



 ヴィートはあそこまで巨大な魔法は使ったことが無かった。

 もう指一本動かすなと体が駄々をこねている。ラフィもそこまででは無いものの、動きたくない程度に疲れているのは同じだ。

 ラフィは聞こえないと知っていながら、離れたところに立っているはずの男に向かって呟いた。



 「後は任せたわよ」



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  



 一部始終はここからでも見えていた。

 二人は自分の役目を確かにこなした。次は自分の番だ。

 少しずつ悪魔が近づいてくる。

 リュージは首を鳴らした。



 正直言って状況はよくない。作戦は上手くいっているものの、本体が中にいるというあの悪魔の構造上表面をいくら殴っても意味が無いだろう。殴ることしか出来ないリュージにとっては相性が最悪なのだ。

 だからといって止めようと接触すればあの体表ならばどこからでも現れる口に捕らえられる。

 よって勝負はすれ違いざまの一瞬でつけるしかない。



 「……考えてもしょうがねえ。すれ違いざまに全力で、内側まで届くくらい全力で殴るしかねえ」



 正直言って無謀にもほどがある作戦だが、ラフィたちが有言実行した以上こっちだってやるしかない。

後で零れる涙が一滴でも減るなら、出来ませんなんて言うわけにはいかない。

 それが『勇者』なんて似合わない立場を与えられている、リュージの仕事なのだ。



 「どう考えてもそれじゃ無理だぜ」



 今の今まで誰もいなかったはずの背後から聞こえた声に、リュージは振り返る。

しかし背後には誰もいなかった。不思議そうに首を回すリュージ。



 「喧嘩売ってのか!下だよ下!」



 憤慨している声に視線を下げれば、そこには帽子を被った少女が腕を組んで仁王立ちしていた。相変わらず帽子のせいで顔の上半分は見えないが、口をへの字にしているのでおそらく怒っているのだろう。

 と、そんなことを気にしている場合ではないとリュージは思い出した。焦りのあまりイナセに向かって声を荒げる。



 「なにやってんだイナセ!ここは危ねえ、隠れてろ」

 「……アタシさ、さっきから旦那が戦うとこずっと見てたんだ」



 驚いて目を見開くリュージ。

 当然だがそんな気配はなかった。気づいていたならば何をおいても安全な場所に連れて行っていた。

 あの爆心地のような戦場にいたというのか。しかも誰にも気づかれないように、それも傷一つなく。

 リュージの驚愕など意に介さず、イナセは語り続ける。



 「手助けとかしなくてごめんな」

 「馬鹿!そんなのはどうでも良い!あんな危ねえ場所に来るんじゃねえ!怪我したらどうするんだ!」

 「……ヴィートとか姐さんも同じこと言いそうだな」

 「言うに決まってんだろ」



 言うまでもない。あの二人ならば確実に怒る。

 なんて危ないことをするんだと、叱るに決まっている。

 即答するリュージを見て、イナセは口元に笑みをたたえた。

 隠し切れない寂寞を感じさせる笑みだった。笑みを張り付けたままイナセは口を開く。



 「旦那、アタシはさぁ……人を信じるのが怖いよ。すごく怖い」

 「……」

 「さっきだってさ、怖かったんだ。それどころじゃないって分かってたのに、旦那を信じて助けに入るのが怖かったんだ」

 「……そうか」

 「ずっと裏切られてきた、ずっと疑って生きてきた。きっとこれからだってアタシはいろんなものを疑いながら生きていくよ……心の底から何かを信じられる日なんて、来ないかもしれない」



 いつもどおり帽子で顔を隠している少女の表情はリュージからは伺い知れない。

 それでもイナセが一生懸命言葉を紡いでいることくらいは分かるつもりだ。今の状況とかそんなことはどうでも良い。

 ただ全力で向き合ってくる相手には全力で向き合う。

 それがリュージ・キドの生き方だと決めているから。



 「こんなアタシでも、信じてくれる?」



 その問いかけは、きっとここにいない二人にも向けられているものだろう。

 泣く手前にも見える少女に、リュージは一言返した。

 あの二人もこう答えるだろうなと、確信しながらーー



 「わざわざ聞くな」



 急にイナセがリュージに背を向けた。

 目元をごしごしと拭っているその姿に、リュージからはもう何も言うことはない。

 イナセはそのままの体勢のまま腰にかけてある筒のようなものを掴んだ。



 「旦那、あれの内側に攻撃したいんだろ?」

 「ああ、そうだな」

 「アタシが先に突っ込むからさ、旦那はアタシを信じて後から来てくれ」

 「お前何を――」

 「信じてくれるんだろ?」



 そう言って頬を緩めるイナセに、リュージはため息をついた。

 それはもうさみしさを感じさせる笑みなどではなかった。

 自信と意志に満ちたエネルギーの塊みたいな、それでいて穏やかな微笑みだった。



 「人の揚げ足ばっかりとってると悪い大人になるぞ」

 「もう既に悪い子供だよ」



 球体悪魔がいよいよ迫ってきた。

 彼我の差は十メートル、数秒で詰まる差だ。

 リュージは未だ行動を起こさない。

 根拠なんて必要ない。一度信じると言ったから、なにがあっても信じぬく、隣に立つ少女を――。



 ただでさえ短い距離が半分になったとき、イナセの姿が消えた。

 球体悪魔にも、リュージにさえ捕らえることが困難なスピードでイナセは球体悪魔の真横にいた。

 全てが止まって見えるような高速の世界でイナセは腰の筒を――地球では脇差と呼ばれるその刀を――小さく引き抜いて戻す。

 カンという音が響く。小さいのによく響く音だ。



 「モトマル変幻!カシラマル!」



 宣言とともに再び引き抜かれた脇差は、いやそれはもはや脇差といえる長さではなかった。

 鞘から放たれた刀は引けば引くほど刀身が生まれてくるように伸び続ける。

 長大な刀身は大きくしなりながら、球体悪魔に襲い掛かる。



 「カシラ一振り――」



 イナセは振るう。その刀を、自分が住んできた都市のために。

 守りたい友人のために。

 自分を信じてくれた人たちのために。

 何よりも、自分が信じたいと思ったその人たちのために――。



 「立葵!」



 たった一振り、その一太刀で、巨大を誇った球体悪魔がずれた(・・・)



 気づかずに回転を続けようとしてしまった悪魔の上半分がきれいに飛んでいく。

 驚愕による遅れなど無いーー信じると言ったのだから……!

 剥き身になった本体に飛び込みながら、右の拳を振りかぶって、リュージは声を張り上げる。



 「一人で戻れねえなら、戻してやるよ……!」



 目を開けていられない程の輝きと共に、その拳が振るわれる。

 その輝きを球体悪魔の中身は、ただ黙って見ていた。



 「さっさと戻ってこい!待ってる奴らがいるんだろうが!」



 それで、すべてが終わった。



※    ※    ※    ※    ※    ※     ※  



 「これもまた、俺のせいなんだろうな」



 屋上からうっすらと見える決着を見届けた後、オットナーがそう零した。



 「俺はあの村がどうなったか、住民が生きているのかどうか、調べもしなかった。怖かったからだ。全部が自分のせいだと認めるのが恐ろしかったんだ」

 「そんなのは俺だってそうさ。全部をお前に押し付けてさっさと逃げた。自分の責任だって認めたくなかったんだ。それに今回のことは自分の部下のことさえ知らなかった俺の落ち度だ」

 「そ、そんなこと言ったら私など一緒に住んでいたのに……」



 三人は顔を見合わせてぎこちないながらも笑いあった。

 そうするべきだと、思ったからだ。



 「なぁブルーノ、俺たちはだいぶダメな奴だな」

 「ふっ、そうだな。他所では見ないようなダメ人間だ」

 「俺はさ、お前が行っちまって、することがなくなって、お前に言われた『人の上に立つ器じゃない』って言葉を否定するためだけに、がむしゃらに働いてきたんだ……でも本当は分かってたんだ。お前の言う通りだって」

 「今更気づいたのか?」

 「否定してくれよ……」

 「嘘は言えん、なぁナディヤ?」



 困ったように微笑むナディヤに、オットナーは嘆息してどっかりと座り込んだ。

 その隣をブルーノとナディヤが挟むように座る。



 「なあオットナー、もう戻ろう。クソガキだって言われながら、ペンと紙さえあればなんでも出来ると思ってた頃に」

 「……戻れるかな、今更」

 「出来るさ、俺とお前が揃えば何だって出来るんだ。なんたって俺たちは黄金コンビ、なんだからな」

 「……そう、だな」



 青空が滲んで見えた。

 子どものころ見た空と同じような、全く違うような。

 それが誰の視界なのかすら分からないまま、アルカディアに続いた十年以上もの確執は、涙のように零れていった。



普段技名を口で言うキャラって作らないんですけどね、イナセちゃんはすこし言わせてみたくなったもので……彼女の武器の解説はまたいずれ別のエピソードで。

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