パッチワークの9
「私は都市の中じゃ戦えないのよ」
ちょっとした世間話だった。
つい数日前のことだ。どういう会話の流れでその話になったのかは忘れてしまったが、リュージはこんな質問をした。
即ち『なんでもっと積極的に前に出て戦わないのか?』と。
そして冒頭の一言をラフィが言ったのだ。
不思議そうに眉を顰めるリュージに、ラフィはつまらなさそうに口を開いた。
『私が本気出したら辺りが持たないからね』
リュージはようやく思い出していた。
本人の性格ゆえに、忘れそうになってしまうがラフィは世界中でも稀に見る『亜人』という体質なのだ。
生まれつき魔素保有量が常人をはるかに上回る彼らは、それ故に手加減が下手である。
元栓が全開の状態では同じように蛇口をひねっても、出てくる水の量は通常のものとは全く違う。
どれだけ小さく蛇口をひねっても、一定以上の水が出てしまう。亜人にとって魔法を使うとはそういうことなのだ。
『私亜人の中でも多い方だから、どうも手加減できないのよねぇ。だから戦えないわけじゃないわよ?別に都市がどうなってもいいんだったらなんとでも――』
頼むから止めろと、リュージは頭を抱えた。
最初から前線で戦わせるつもりなどなかったが、これから先も自分が主となって戦うことになりそうだと、決意を固くしたものだった。
そしてリュージはその時の言葉を強くかみしめていた。
眼前を埋め尽くすほどの氷塊を必死に叩き落としながら、リュージは叫ぶ。
「ラフィ! てめえいい加減にしろ!霜焼けになるだろうが!」
あまりの氷塊の多さに、向こう側にいるラフィが見えない。
絶え間なく迫りくる氷塊を、両腕を連続で突き出して破壊していく。
小さな破片になった氷が路面に散らばり、光を反射して輝いていた。
その大半はもはや解けて水になってきている。予想以上に続く防戦一方の状況にリュージは歯嚙みした。
無論リュージは全力を出してはいない。本当に本気を出していいなら被弾を気にせず突進して抑えつければいい。どうせ大したダメージにはならないのだ。
そうしたいのは山々なのだが――。
――思ったより、厄介だな。
リュージの行動を邪魔しているのは道の両脇に佇んだままの住人たちだ。
リュージが回避を選択すればその余波は確実に彼らに及ぶだろう。どころか壊しきれなくても同じことが起きる。
結果としてリュージに残された選択肢は全て壊し切ることだけだ。
『うふふ、なんだか心配しちゃったけど、どうやら戦うことを選んでも無駄だったみたいね』
幸いなのは、そんなリュージの様子を見た人形悪魔が横やりを挟んでこないことか。
余裕綽綽の態度に腹が立つが、防ぐことしかできていないのもまた事実。
なんとか突破口を見つけたいところではあるが――。
「底なしってのは誇張じゃねえな」
魔法を使えないリュージからすれば、この規模の魔法を打ち続けられるというのがどの程度あり得ないことなのか判断することはできない。
しかしもう数分間勢いが弱まらない猛攻を前に焦っているのは確かだった。
強化された肉体に疲れはない。硬い氷を殴っている拳に痛みはない。それでもリュージを追い詰めているもの、それは低温。
氷を殴り続けることにより、次第に細かく震え始める拳、だんだんと感覚はなくなり始めていた。
「地味に、まずいな」
『もう降参したらどうか知らん? 今謝るなら許してあげないこともなくってよ』
「そりゃこっちのセリフだ。そろそろ謝る準備してやがれ」
『……まだ減らず口が叩けるなんて、もはや尊敬しちゃうわ、だったら気のすむまでやってなさいな』
「言われなくても、だ!」
ちらりと視線をずらせば、イナセもまたヴィート相手に苦戦してるようだ。
とは言っても一心に攻め立てるイナセの攻撃をヴィートがいなし続けているだけだ。ただ相手がヴィートなのでイナセが傷を負う心配はしなくていいだろう。
人形悪魔が言っていた言葉を思い出す。
行動を操っているわけではない。あくまで二人は自分の意志で動いているらしい。ヴィートが攻撃していないのはそう言う理由だと推測できる。
どちらにせよ決着がつかないという点では同じこと、イナセの助けを期待するのは難しそうだ。
――とにかく、全部殴り壊しながら少しずつ進んでいくしかねえ
リュージは素早く空気を取り込むと、呼吸を止める。
全身の筋肉が連動するのを感じながら、パンチの回転をさらに上げる。
傍から見ればリュージの肩から先が消え、当たる直前の氷が弾け飛んでいるようにさえ見える。
一歩、ようやく踏み出した。
一歩、さらに一歩。ゆっくりと歩みを重ねる。
魔法は強固なイメージを要するが故に発動中に大きく動くことが困難だ。それは魔法の規模と比例する。
つまりラフィは今身動きが取れなくなっているはずだ。歩みは遅くともこのまま進めばいずれは辿りつける。
遠くない勝利を確信したリュージは次の一歩を踏み出そうとして――大きく体勢を崩した。
「なんっ――!?」
前のめりになったリュージの顔面に氷塊が直撃した。一気にのけぞる形になったリュージに遠慮なく暴力が飛来する。
一度崩れたものを立て直すのは容易ではない。数え切れない氷塊の波に、リュージは両腕をクロスさせて腰を落とした。
「くそ、何が――」
途切れない攻撃の合間に、何故か持ちあがらなかった左足に目をやる。
一見何も異変はないように見える、異変に気づくのは直後。
――地面が、凍ってる?
リュージが砕いた氷の破片、日の光で水になっていたそれらが再び凍りついていた。
それによってリュージの靴が完全に地面と接着されていた。舌打ちをしている間に右足も同じように動かせなくなる。
まさかとは思うが、この為に氷を打ちこんで来ていたというのか。
「ったく、操られてる時くらい頭使わずに戦いやがれ……!」
苦し紛れに毒づいてみるが氷の向こうにいるラフィからの返答はない。
耐え忍ぶしか無いリュージに、人形悪魔の高笑いが響く。
『おーほっほっほ!!どうやらここまでのようねぇあなたを倒したあとはあっちの小娘を二人がかりで倒しておしまい。案外あっけなかったわね、勇者って言うのも』
「なにもう終わったみたいな顔してんだ」
『みたいじゃないわ、終わりじゃないの。その減らず口も風前のともしびだと思うと可愛らしいものねぇ、安心なさい、ちゃんと美しく生まれ変わらせてあげる。その後旅にでも何でも出ればいいわ。世界を救う英雄がワタクシの服を着てるなんて、今までバカにしてた奴らはどんな顔するのかしら』
「……お前、本当にそれで満足なのかよ」
『なぁに、この期に及んで情に訴えかけるつもり』
「違う、聞きたいだけだ。こんな手段で周りの奴らの服装変えたところで、誰もお前の実力なんて認めてねえだろ」
道の脇に一列に並ぶ住民たちには一様に表情というものがない。
楽しそうでも、嫌そうでもない。これが人形悪魔の言う美しさに目覚めた人間の顔だというのか。
リュージの言わんとすることが伝わったのか、人形悪魔は住民たちの顔を見て、緩やかに首を横に振った。
『……どうせ、同じことよ』
「……」
『この都市に生まれて、長いこと生きてきて、ワタクシを認めてくれる人なんて誰もいなかった、お父様が生きている時なんて自分の作りたいものを作らせてももらえなかった。お前の作るものは、パッチワークの評判を落とすものにしかならないって』
人形悪魔の声音は、どこか投げやりだった。
その根底になるのは、自身の価値観を押し付けたいなんて歪んだ願望ではなく、ただただ寂寞とした諦めだった。
『どうせどれだけ頑張っても受け入れてもらないに決まってるわ。だったらこんなやり方でも同じじゃない。もう、どうでもいいのよ』
それは返答と言うよりも独白に近かった。
自分の行いに言い訳をするような、自身の感情に妥協と言う形で決着を付けようとするような、言葉の羅列に過ぎなかった。
それを聞いたリュージの口から、応えは出てこなかった。
ただ、リュージは顔の前でクロスさせていた両腕を解く。
顔を地面のほうに向けたまま、右腕を高く持ち上げる。強く握った拳からはぎちぎちと音が漏れている。
『……?貴方何を――』
リュージはそのまま拳を、地面にたたきつけた。
小規模な爆発だった。
路面に生まれた罅は瞬く間に広がり、リュージの踏んでいた地面を凍りごと破壊した。
反動で宙に浮いたリュージは地面に着地すると、すぐ傍で戦っていたイナセに声をかけた。
「イナセ」
「何だよ今忙しんだけど」
呼びかけられたイナセは何の気なしにリュージへと向きなおる。
「ちょっと無理してもらえねえか」
「あん?どういう意味だよ?」
「三十秒でいい、ヴィートとラフィ両方抑えててくれ」
それは確かに無理な要求だった。
イナセとヴィートはどう見ても互角だ。そこにリュージでさえ手こずるラフィの相手もしなければならないとなると、明らかにイナセの手には余る。
イナセは頭をガシガシと掻いた。
「冗談きついぜ旦那」
「無理言ってんのは分かる、だが――」
「アタシが三十秒しか持たないと思ってる?」
「任せていいってことか?」
「三十分でもぬりぃや、三日くらいだと流石にキツイかもな」
「……頼りになる奴ばっかで心強い限りだな」
『おしゃべりはもうお終いかしら?』
人形悪魔が、右腕を上げてリュージに向ける。
リュージは首に手を当てて鳴らす。
「ああお終いだ、今からお前をぶん殴ってな」
『やれるものなら、やって御覧なさい!!』
人形悪魔の右腕が輝くと同時にリュージが動いた。
距離を詰めようろするリュージ、全力で距離を取りながら光線を放つ人形悪魔、そんな二人を尻目にイナセは持っていた脇差をヴィートへと投げつけた。
当然のように現れた黒い壁に阻まれた短い刃は弾かれたあらぬ方向に飛ぶ。ヴィートの視線が、脇差を追いかけた、追いかけてしまった。
「よそ見してんじゃねぇよ!」
たかが一瞬、されど一瞬、イナセが距離を詰めるには十分すぎる時間。
イナセは近づいた勢いのままにヴィートに体当たりをかますと、リュージへ魔法を放とうとしているラフィの方へと突き飛ばした。
イナセは近くの壁を蹴って高く上がると、宙に舞っていた脇差を掴み取る。
「姐さんわりぃ!ちょっといてぇぞ!」
イナセは落下しながら、脇差を鞘に戻すと素早く三回抜いて戻す。
「モトマル変幻!ツブラマル!」
叫びながら抜いた脇差を再び天高く投げる。
天高く投げられた脇差の刀身が急速に伸びる。刀身は大きく円を描くように伸びると、柄の頭に着地した。
先に着地していたイナセは輪刀と化したそれの持ち手を掴むとその場で大きく回転する。
「ツブラ三輪!」
遠心力のままに投げつけられた輪刀はヴィートとラフィのはるか頭上に飛んでいく。
高速で回転する刃が次第にぶれる。次第にぶれは大きくなり、次の瞬間輪刀は巨大化した。
目の錯覚ではない、確かに大きくなっている。
輪刀はそのままヴィート達が輪の内側になるように移動すると、回転しながら落下することなく中に留まり続ける。
「蓮華草!」
イナセの声と同時に巨大化していた輪刀が急激に縮み、内側にいた二人をまとめて締め付けた。
二人は身動きが取れないながらも、イナセに魔法を放とうと視線を向ける。
「おっと、そいつはごめんだぜ」
二人を縛りつけている輪がさらに力を増す。
あまりの締め付けに、ヴィートの手から剣が落ちた。
表情が消えていなければ二人とも痛みに顔を歪めていることだろう。
魔法は正確なイメージが必要となる技術だ。痛みをこらえながらではまともに使えない。制圧完了だ。
イナセは残った鞘で肩を叩きながら呟いた。
「ま、こんなもんだ」
何のこともないように言うイナセだったが、その顔はどこか得意げだった。
※ ※ ※ ※
突き進む。
『この!この!』
飛び交う光線をかわし、一直線に突き進む。
『なんで当たらないのよ!?』
「直線的すぎんだよ、それじゃいくら早くても当たる方が難しい」
『きぃぃぃぃぃぃ!!』
おまけに一本一本は細い、必要最低限の動きだけで回避することが可能だ。
人形悪魔は焦りに任せて乱射しているが、全て紙一重で当たらない。
当然といえば当然だ。
ヴィートに当てた時も奇襲、ラフィに当てた時も、ラフィの自業自得とは言え結果的に不意打ち。そう、人形悪魔の能力は明らかに奇襲向けだった。正面からの戦闘に向いていないのだ。
今やっていることだって、リュージだからできているというわけでもない。ある程度熟練した騎士なら誰でもできる芸当だ。
身を低くし、首を軽く曲げ、半身になり、進み続ける。
幾度の回避の末、とうとう両者の距離は手を伸ばせば届く距離にまで近付いた。
『い、いやああああああああ!?殴らないでぇ!』
「歯ぁくいしばれ!」
苦し紛れに振るわれた右腕は大きく逸れて、屈んだリュージの頭上で空ぶった。
固く握られた右拳が、人形悪魔の顎めがけて放たれる。
その直前、リュージは聞いた。
『なんてね』
どこか小馬鹿にしたようなその声を――
人形悪魔が、ここまで一切使ってなかった左手をリュージに向けた。
「しまっ――」
『ビューティフルビィーーーム!!』
至近距離から放たれた光線が、リュージの胴体に吸い込まれた。
「ぐああああああああああああ!!」
全身に流れる電流のような痺れにリュージの叫び声がこだました。
虹色の輝きに包まれるリュージを前に、再び人形悪魔の高笑いが響き渡る。
『お―ほっほっほっほ!!右手からしか出せないなんて言った覚えなくってよ?って言っても、もう遅いかしらね』
すでに膝をついてしまったリュージを見下して、人形悪魔はどこか冷めたように吐き捨てた。
『おしまいね、もう、おしまい』
「何よそ見してんだ」
『へ?』
人形悪魔の視界に何かが映り込んだ。
それが自分に向かってくる拳だと気づいた瞬間には、人形悪魔は地面から離れていた。
宙を舞う感覚、直後に壁に叩きつけられる衝撃、遅れてきた痛み、ここまで来てようやく殴られたのだと認識する。
『な、な、なんで……確かに当たった、はず』
「二度も、言わ、せんなよ」
肩で息をしながら、リュージは人形悪魔を睨みつける。
睨みつけて、はっきりと言った。
「お前みたいな根性無しにやられるほど、俺は柔じゃねえんだよ」
言い終わると同時にリュージの体を覆っていた虹色の光が薄れていく。
辺りを見渡せば、道の端に立っていた住民たちはバタバタと倒れていくのが見えた。着ている服はもう元に戻っていた。
人形悪魔の体が、徐々に崩れ始めていた。その体から飛び出してきたジャンクスピリットを砕きながら、リュージは近づいていく。
『う、うふふ、お終いはお終いでも、ワタクシのお終いだったようね』
「そうみたいだな」
『……ねぇリュージちゃん、ワタクシは、分かってほしかっただけなのよ』
「……」
『でも、こんな手段でも使わないと、誰も、誰も分かってくれなかった、間違ってるなんて分かりきってたのにね』
「……それだけじゃねえよ」
リュージは、人形悪魔の前で屈む。
人間に戻りつつある相手と、目を合わせて、リュージは口を開く。
「お前は都市の人間に酷いことしたかもしれねえ、でも一番の間違いはそれじゃねえと思うぞ」
『じゃあ、なんだって言うのかしら』
「お前は、お前の服を馬鹿にしすぎたんだよ」
『ワタクシ、が――?』
「こんな手段じゃねえと分かってもらえねえなんて、馬鹿にしてる以外の何物でもねえじゃねえか」
『それ、は……』
リュージの勝手な予想でしかないが、最後の光線を食らったはずのリュージが動くことができたのもそれが理由なのではないだろうか。
フランソワの信じる美しさで相手を洗脳する光線。
ならば、その信じる心自体が揺らいでしまえば、洗脳の強制力が落ちても不思議ではない
だが、言い換えればその揺らぎはフランソワの心に残った良心だったのかもしれない。
こんなやり方は間違っているという、彼の心の叫びだったのかもしれなかった。
だとしたら、その気持ちは間違ってないはずだ。決して、間違いじゃないはずなのだ。
「黙って胸張ってろよ、こんなことしなくてもお前の作ってるものは凄いんだからよ」
『……ありがとう、お世辞でも嬉しいわ』
「世辞言えるほど、頭回らねえよ」
『いいのよ、気を使わなくっても……そうよね、誰にも愛してもらえなくっても、ワタクシだけはあの子たちの味方をするべきだったわね、でも、でも誰か一人くらい、一人でいいからあの服を好きって言ってくれる人が、いてほしかった』
「いるよ!!」
突然聞こえた声に、リュージが振り返る。
「イナセ、お前それ」
「旦那がそいつ殴ってるのが見えたから、もう大丈夫だと思ってさ、走って取ってきた」
イナセはずかずかと人形悪魔の前まで来ると、両手に抱えてみたものを突き出した。
それはふんだんにレースやフリルがあしらわれた布――昨日イナセが着ていた服だ。
「おい!」
『な、なにかしら……』
「これ、なぁ……その、えと、かわい、かったから――」
徐々にイナセの顔が赤みを増していく、いつもは表情を隠してくれている帽子はない。今にも逃げ出しそうだが、それでもイナセはギュッと目を瞑ると、半ば自棄になったように叫んだ。
「これ!気に入ったから!貰ってく、から!」
人形悪魔からの返事はなかった。
代わりに、ぽたりと一粒の滴が落ちる。表情というものが存在しないはずの悪魔の瞳から透明の液体が流れた。
それを皮切りに、人形悪魔としての肉体が完全に霧散する。まるで悲しみで糊付けされていた肉体が、涙で剝がれるように――。
あとに残るのは、人間の、フランソワの肉体。
「ありがとう二人とも、長らく忘れていたわ、この感情」
立ち上がるフランソワに、リュージ達は何も言わない。
「私は、服を作るのが好きだから作っていたのよね。そして、私の服を着たいって言ってくれる人のために――」
フランソワがもう少し、冷静だったならばリュージ達が喋らないのではなく喋れないのだと気づいただろう。
もっと分かりやすく言えば、イナセが絶句しているということに。
しかし、感動に包まれているフランソワは、それに気づかない。
「ありがとう二人とも!ワタクシはもう迷わない、誰になんと言われようと、ワタクシの作りたいものを作る、信念を貫くわー!」
わなわなと震えていたイナセの頭から、ぶちっと言う何かが切れる音が聞こえた。
イナセが跳ねた。綺麗に流線型を描く蹴りは寸分なくフランソワの顎を狙う。
「服着ろこのド変態がー!!」
「へぶんっ!!」
白目をむいて崩れ落ちるフランソワに、都合良くその辺に落ちていた布を被せながら、リュージは大きくため息をついた。
「……結局また予定通りいかなかったな」
滞在は、一日延びそうだった。




