撤退要請
清永と朝賀の関係を俺は詳しく聞いてみた。
清永と朝賀は小学生の高学年からクラスが同じになり仲良くなったという。
朝賀は清永のことをよくわかってあげているし、清永も朝賀のことを理解している。
つまり親友ということだった。
そしてこの前、朝賀から俺のことを聞いたらしい。
清永と朝賀は今、俺と同じクラスだ。しかし清永と朝賀が一緒にいるのをあまり見ないのだが。
俺「清永と朝賀が学校で一緒にいるのをあまり見たことないんだが…」
清永「………」
俺「?(汗)」
「静かに!!僕の話が先だ…」
な、何だコイツ!?何が静かに!!だよ。ちょっとコイツ変わってるな〜(汗)。俺もだいぶ変わったやつだろうけど…。
まあ、しかし清永の話を聞いてみよう。
「みつるはドジだ…。お前が何をしても無駄だ…。だから手を引くのだ。」
コイツ、ドジとか何をしても無駄とか平気で言えるのか……。朝賀が聞いていたらどうなっていただろうか。
辛口発言はよくしているみたいだが、親友には能力がないと言っているようなものだぞ、これは。親友にもこんなこと言うのか?コイツ…。ホントに親友なのか?
清永の発言に俺は愕然とした。
何か憧れが一気に崩壊していく感じがした…。清永も俺が目の当たりにしたアイツらと同じだったのか……
「な、なぜそんなことを言う?親友じゃないのか?」
俺は清永に尋ねた。
清永な答えは
「親友だからだ…」
だった。
親友ならば親友の能力や何かを信頼するものなんじゃないのか?親友だから能力を信じ応援するんじゃないのか?
俺にはよくわからんが、親友とはそういうものなのでは?
「俺が訓練しても上達しないのか?」
「今までも様々な人が指導したが、みな諦めた…」
確かに朝賀は俺が思っている以上にドジで運動音痴だと言っていた。
俺は心の中で清永を批判したが、俺が普通だと思うことは相手にとっては普通ではないかもしれない。
朝賀は現状を変えられないことを悟っており、清永はそれをくみとり俺に伝えてきたのかもしれない。
だがもし俺に親友がいるなら、俺の能力も信じてほしい。応援してほしい。そう思うのではないだろうか。
「わかった……ただ俺は朝賀の能力を信じたかったんだ」
わかってないが"わかった"と言い俺は自販機コーナーを去ろうとした。
「俺もみつるの能力を信じているのだがな…。残念だ…」
は?
さっきと言ってることが違うじゃないか。何を言ってんだコイツ?ああ言ったりこう言ったりするやつなのか?
「おぃ…、朝賀はドジで何も上達しないんじゃ?(汗)」
「誰もそんなこと言っていない…」
エエエェェーーーーーッ!!!?
俺は心の中で叫んだ。コイツ、二重人格なのか?ヤバいぞ、マジで!
コイツが何なのかよくわからなくなってきた………。
「だってさっき、朝賀はドジだから俺が何をしても無駄だって……」
この時ばかりは興奮気味に発言したが、まだまだ抑揚を限界までつけきれなかった。
「…みつるはドジだが、頑張り屋だ。いつか体育もできるようになる………そう信じたい。」
ナ!?勘違いしてたってのか??、俺は。
無口なタイプにありがちな必要最低限の語彙で説明を済まそうとするというこの事象。俺も説明不足がちなことはあるが、ここまでは甚だしくないと思う。…たぶん。
「何をしても無駄…ってのは?」
「みなすぐ諦めて行くのだ…。…陰気である日高は今までの者より早々に撤退するだろう。…みつるを信じる俺にとれば残念だが、日高は陰気すぎて他の者より長続きしない……」
グハァッッ。かなりのきつめな発言。これが清永…。陰気は俺も自ら自覚はしていたが、人に言われると……………何かヤダ!
しかも信じられてなかったのって俺だったのかよっ!!!!
まあ、そりゃそうか。ただのクラスメイト、しかも陰気なクラスメイトを信じられるわけがない。ハハハハハ、そりゃそうだよな!陰気なやつは何を考えてるかわからんしな!
どうやら俺はヤケになったようだ。
……悲しい
と、ともかく、清永は俺に朝賀から撤退を要請してきたということだ。介入するなということか。しかしなぜなのだろうか。やはり俺では不甲斐ないからか?
「どうして、清永は朝賀を信じてるのに俺に撤退しろって言うんだ…?」
俺は清永に聞いた。
「…みつるが傷つかないように…………だ…」
「?」
いったいどういうことなのだろうか。




