眠れる獅子
やはり人付き合いは難しい。
自分が正しいと思っていることは、決して相手の正しいにあてはまるとは限らない。
ゆえに自分の意見を押し通しすぎるのはよくない。当然その逆もよくないのだが。
やらなければ何も変わらない、これは俺にいい聞かせたようなものだ……
思わず苦笑いした…
俺は馬鹿で浅はかだ…
昼休みがやってきた……
もちろん俺は一人で弁当を喰う。
他のクラスメイトはもちろんグループで弁当を喰っているだろう。俺だけが浮いている状態。……目立っている。
朝賀で挫折した俺。やはり俺には人付き合いは天敵のようだ。友人つくりは俺には程遠い…。
影が薄くなる方法はないものなのか…。
それにしても昼休みは非常に長い。一時間近くもある…。一人で変に目立つ俺にはきつい。
あと何分だ?
時計を見上げた。30分はある…。
みんな二から四人くらいのグループでそれぞれまとまっている。
と、その中に一人だけ本を読んでいるやつを発見した。やつは清永たかふみ。クールで冷静沈着。何事にも動じず、どんと構えている感じだ。
俺も周りの視線などに左右されず堂々と一人でいられる精神を身につけたいものだ。
清永には恐れるものは何もない感じがする。強い精神を持っていて、何事にも動じない。静かでどちらかと言えば大人しいタイプに入るだろう。しかし米倉など風紀的に乱れたやつ、俺が思うに"やや不良"のやつらにも動じずに辛口な発言をする大したやつだ。
俺には到底真似できない。
はっきり言えば憧れだ。
かつて中国が眠れる獅子と恐れられていた時代があったが、まさに清永はそれだな。
だが俺にとっては憧れに過ぎない…。
"やや不良"に立ち向かうのは俺には相当量の勇気を要するし、まずその前に波風を立てることになってしまい平穏が破られる。
朝賀問題で既に平穏は破れたのではあるが…。
それに清永には取引材料がある。学力が清永はクラス一位なのだ。学力クラス一位の清永には何かと需要がある。清永は勉強を担保にしているから、辛口発言をしても"やや不良"は何も言わないのだろう。目立つことを許さない俺にはできないことだ。
再び時計を見た。まだ20分ある。
他人の視線が気になる俺は教室にはいにくい…。俺はそそくさと教室を出ることにした。




