太平の眠りを覚ます…
今日は今学期初の体育のバスケの授業だ。
俺はもともとスポーツは得意ではなかった。特にサッカーやバスケ、野球などのチームプレーを重視する競技は嫌いだ。
しかしここで批判の的になるのは避けるべきだ。すべては平穏のため。俺は訓練を開始した。もちろん一人での訓練だったが手を抜くことはなかった。平穏のために。
そうして俺はなんとか人並みにはチームプレーができるようになった。
ふう、やっと俺の出番が終わった。
バスケが人並みにやれるようになったからと言っても、やはり精神的に疲れる。
と、体育館の壁にもたれて他のチームのプレーを腐った目をして眺めていたその時だった。
「ちゃんとやれよっ!!マジ使えねーな」
この言葉を聞いたとき、俺は心臓がキュッと締め付けられるような気がした。驚いたのか悔しさが甦ったのかわからない。
使えないって言われているやつは確か俺のクラスにいる朝賀みつるだ。朝賀みつるは決して目立つタイプではなく、大人しいタイプだ。意見を主張しないタイプではあるが、人触りは非常にいいやつみたいだ。だがこういうやつは人によく利用されやすいのだ。幸いそれはまだないようだが……
「おい!またかよっ!動ききれねーなぁ、おい!」
朝賀のいるチームはまた失点した。そのたびに強い口調の言葉が聞こえる。決して大声ではないが、嫌みたらしく嫌らしい言い方だ。「ご、ごめん…」
朝賀の声は震えていた。俺は朝賀の気持ちがわからないことはない。だが俺はどうすればいい?がんばれ。と励ますのか?何かおかしいよな…
朝賀にパスが回ることはない。だがボールが敵側から近くに回ってきたときなどは動かざるをえない。そして朝賀はミスをする。
俺もチームプレーは苦手だったがここまでドジったことはない…。かなりの運動音痴らしい。
きつい言葉をかけるのは米倉だ。米倉は運動神経抜群でクラスでは騒ぐ側のタイプだ。意見もはっきり言うし、ちょっと風紀的に乱れたところがあるやつだ。
こいつがイライラしてしまうのも実際無理はないと俺は思う。それは朝賀が運動音痴すぎてあたふたしているのは誰が見てもじれったいだろう。
では、ただ嫌みを言えば解決するか?といえば解決するはずがない。米倉はできないやつの気持ちと、嫌みを言われる側の気持ちもくむべきだ。
しかも嫌みは周りに悪影響が出る。チームワークが悪くなるのだ。クラス中一番運動音痴な朝賀のチームには米倉をはじめ、エース的存在が3人はいる。一方相手方はバスケ部員のエースが一人だが既に得点に大差がついてしまっている。本来、朝賀の不得意をエースが3人もいればカバーできるはずなのだ。しかしそれができていない。
朝賀のチームのチームワークは士気の低下と相互信頼の低下で悪化していた。
試合は朝賀・米倉チームの大敗だった。
朝賀はチームメイトとは離れたところに一人座った。米倉たちは大きな溜息をつく。そのたびに朝賀は肩をすぼめているようだ。
俺も朝賀の気持ちはわかる。同じような経験をしたから。
それならばと、俺は一つの考えに行き当たった。




