訪れた転機
ふと思い立って書いて見ることにしました。
私の気持ちも主人公の気持ちに代弁されている部分があります。
現実にはありえないけど、あったらいいな、そんなお話です。
あの人に降り注ぐ色とりどりのスポットライト。鳴り響く音とたくさんの人で埋め尽くされた、むせかえるような熱気の中であの人は今日も謳う。
私はその歌に救われ、拾われた。
あの人と出会うまで、私は生きるということの本当の意味を知らなかった。
如月羽衣19歳、ずっと憧れていた看護の大学に入ったが、入って2年目標を失って迷っていた。女手一つで私を大学に入れてくれた母を思うと、今更辞めたいだなんて口が裂けても言えない。
ずっと看護師になりたかった。母のような素敵な看護師を夢見ていた。
でも最近は自分が何をしたいのかよくわからなくなっていた。
毎日同じ時間に学校に行って、帰る。その繰り返し。日付感覚なんてなくなるような日々。私はどこへ向かうんだろう…。言われようのない不安に襲われた。
もともと女子の多い学部。ましてや容姿も普通の私に浮いた話があるはずもなく、ますます生活に張りがない。
こんな日々から抜け出す方法を探していた。
そんな時だ。私があの人と出会ったのは。
「羽衣!うーい!ねぇ、ういってば!話聞いてる?」
昼休みにテンションMAXで話しかけてくる目の前の女子は、私と中学校からずっと一緒の唯一無二の親友、杏里だ。
「ん、あぁ、ごめん、ぼーっとしてたわ。なんだっけ?」
「もう。だから、今度の休みにライブ行かない?」
「いいけど…。誰の?」
「羽衣も聞いたことあるでしょ?UNDER GROUNDっていうバンド」
「あぁ、あのちょっと変わったボーカルの人がいるバンドだよね。最近よくテレビ出てるよねー。…って、え⁉︎あのチケット取れたの?」
「実はさ、そのボーカルの人、私のお兄ちゃんの友達なの!だからチケット貰えちゃって!しかも、行ったらライブのあと本人に会えるって!」
「うそっ!すごいよ、それ。行きたい!私、大ファンってわけじゃないけどずーっと気になっててさ、ほとんどあの人たちの曲知ってるし。いいの?私が行って。」
「いいよぅ!テレビ出てもさ、やっぱ変わってるからファンもそんなに私の周りにいなくてさ。よかった〜、羽衣が好きで。」
「ありがと、誘ってくれて!持つべきものは親友だねっ!」
「えへへ〜。喜んでくれて何より!あ、ちなみに来週の土曜日の午後6時開始ね。場所は○○アリーナで。」
「ふんふん。…え、○○アリーナ⁉︎でかっ‼︎そんなとこでやるんだ…」
「当たり前だよ。いまツアー中だしね。こんな近くであるなんてラッキーだよねー」
「ひゃー…規模がでかいね。そんなところで、終わってから本人に会っても大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、たぶん。ただお兄ちゃんいわく、ボーカルの人は変わり者らしい。」
「まぁそれは…見たらわかるよ。」
「そうだよねー。」
「あ、そろそろ午後の授業始まるわ。また細かいことはメールして!今回は誘ってくれて本当に、ありがと!楽しみにしてる。」
「りょーかい!」
…………授業後……………
ほんとにライブ行けるのか…。てか、杏里のお兄ちゃんすごすぎるでしょ。本人にも会えるなんて…。
張りのない毎日に楽しみが出来た気がした。
その夜、杏里からメールが来た。
「ライブのことだけど、土曜の午後3時に○○駅で待ち合わせて○○アリーナまで一緒にいこー^ ^」
「りょーかい!服はなんでもいいよね?靴はスニーカーがいいかな?」
「スニーカーがいいね!服はなんでもいいよん!」
…っと。よし。これでいいかな。
うわぁぁ…楽しみっ!
本物に会える!歌が聴けちゃう!
歌の予習していこ…。
時は流れてライブ当日
「杏里ごめんっ!待ったよね?」
「もー、うい遅いよ!電車出ちゃう。切符買っといたから早く行こ!」
「ごめん、ありがと!」
家を出る直前に服に悩み、待ち合わせに15分遅れてしまった。柄でもないのに。とりあえず電車に間に合ってよかった…。
ここから会場まで1時間ちょっと。あと少しで会えるんだ…!
杏里とはずっと一緒だからもう気なんて使わなくてすむ。喋りたい時に喋って、寝たい時に寝る。そんな感じで車内を過ごした。こんな心地よく過ごせる友達がいるなんて、結構貴重なことなんじゃないかとふと感慨深くなる。そんな自分を、改めて年を取ってきてると感じてしまう。まだ19だけど。
こうやって歳をとってくのかな…
アリーナに着くとそこは人で溢れかえっていた。
「うわぁ。すごい人…‼︎」
「ねー、流石に有名なだけあるわ」
「あ、グッズもあるのか〜」
「安心して!その辺はお兄ちゃんに頼んであるから!」
「どこまでも用意がいいね…。お兄ちゃんの存在すごいわ。てかさ、杏里はボーカルのYUKIさんとあったことあるの?」
「2.3回は会ったことあるかな…。でもライブはこれが初めて!だからすっごい楽しみなんだよね〜」
「ひぇ〜、友達が有名人と知り合いとか変な感じ」
「知り合いって言っても話はしたことないよ」
「え、そうなの?」
「うん。普段喋らないみたい。お兄ちゃんなら時々話すんだけど」
そうなんだ…やっぱ変わってるのかな…
ライブ開始まで1時間。
ぞろぞろと人がアリーナに飲み込まれてく。
私たちも並び、自分たちの席についた。どうやら全席指定らしい。コネのせいでかなり前の席だった。
高鳴る胸の鼓動。
照明が全て落ちた。一瞬ざわつく会場。
青いスポットライトに照らされたステージの上には彼らがいた。
ステージのサイドから炎が上がり、伴奏が流れ出す。デビュー曲のようだ。
…え…。な…に…これ。
一瞬にして彼らの世界に呑まれた。
めまぐるしく変わる照明と演出。独特の音楽は見事にそれらと調和していた。
目を離すことができない。
身体中の血がざわめくのを感じた。
際立っていたのはボーカルであるYUKIの存在である。
赤に近い髪をしたYUKIはポケットに片手を突っ込み、うつむき加減で歌っている。
なのに。
圧倒的な声量と歌唱力。
男性とは思えない音域の広さ。
自分で作詞を手がけている曲だけあって、イメージと歌詞もぴったりだ。
ー僕等は死んでくために生まれた
終わりにしか向かうことのない先の道をどう進める?ー
ー何のために生きてくの、それは君自身がしってるでしょ、正解もなければ不正解もないだから世界は面白いー
聴けば聴くほどメッセージ性の強い歌だ。
この人はどんな気持ちで歌を作るんだろう…
気づけば私は隣に杏里が居ることも忘れて聴き入っていた。
ーひとりぼっちのこの部屋で、僕は自分を確かめる術を探してる、誰か教えてよ、この道に生きる意味をー
なぜだろう、涙が頬を伝っていた。まるで今の私を象徴するかのような歌詞だった。
トークなどを間に挟むことなく彼らは2時間歌い続けた。
私は少しの間夢を見た。
いかがでしたか?
文章が未熟すぎて泣けてきますが…
まずは羽衣とYUKIの出会いに触れました。
これから先、ゆっくりと2人を追いたいと思います。
続編も読んでくださると幸いです。
それではまたどこかでお目にかかることを期待して…後書きとさせていただきます。




