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その2

「それでは、これより転送の儀を行う。両皇子殿下陣の中へ」

 翌日。俺たちはテストポイントとなる地球へと向かうため、魔力を充満させた個室へときていた。

 外部からの入場者への配慮をことごとく無視し、機能性だけを重視されたこの室内は煌びやかな装飾品などは一切ない。正方形の室内に、大きな魔法陣が中央に描かれただけの殺風景な部屋だ。

 人や物を自由に移動させることができるこの魔方陣は国の要人のみが利用できる高等魔術。そのため、現在この部屋にいるのは転送される俺たち兄弟と国王。それからこのテストを考案したと思われる宰相他数名の臣下のみ。

 先ほど、重々しい口調で陣へと誘ったのは頭頂部がちょっと危うい宰相だ。気のせいか俺たちの継承問題が起こったあたりから急速に減っている気がする。

 宰相の言葉に従い俺たちは並んで魔法陣の中へ入り、見送る人々と対面する。

「今より、お前たちから一定の能力を封じる。その封じられた力の中で、あるものを集めるように」

「あるもの?」

 国王から告げられた課題に、俺と弟は口をそろえて呟いていた。その俺たちを見て国王は首肯し掌に収まる丸いガラスの珠を二つ俺たちへ向ける。

「これは瓶と同じ。この中にお前たちに欠けていると思う物を集めよ」

 手渡された丸い球をまじまじと見る。何の変哲もないただのガラス玉だ。仲が空洞になってる様子もない。

「欠けているものを集めたとして、この中に収めるにはどうすればいいのでしょうか?」

 隣で何やらむきになってガラス玉をこじ開けようと奮起する弟を横目に見て、王へと尋ねれば、答えは簡潔に「集めればわかる」とだけ返された。

 分からなかった場合どうしてくれるクソおやじ。

「では、あちらの世界に行く前に、能力を封じる」

 王の言葉が終わると同時に、体中がぞわぞわと不快感が襲う。その気持ちの悪い感覚に流されないように目を瞑り耐えていると、不意にその気持ち悪さはなくなり、代わりに何やらもっさりとした何かが肌を覆っていた。

「うわぁぁぁぁぁ」

 突然。隣から驚愕の悲鳴が届く。

 発したのは弟。何事かと視線を向けて、俺は目をむいた。

 ピンクのミニブタが隣で俺と同じように目をむいている。そのピンク色のブタからは、聞きなれた弟の驚きに震える声が発せられていた。

「兄上が……兄上が巨大なヒヨコに~~~~~!!」

「お前も小さくなってんだよ」

「なんと!? うわぁぁぁ、なんか手に(ひづめ)が!!!」

 騒がしいやつだ……。弟は俺と自身の変化に驚きわたわたと動揺を露わに陣の中を走り回る。

 俺はというと、弟の「巨大ヒヨコ」発言で、俺が今どんな生き物になったのかは理解することができた事と、ぎゃんぎゃん騒ぐ弟の姿を見て、混乱する前に冷静になれた。

 なるほど、通りでもっさぁと体が温い訳だ。

 関節の作りがいつもと違うため、両手を翳すことができずにちらりと横を見ると手羽が見えた。黄色い手羽が見えた。これぞまさしくヒヨコの手羽。

 足元へと目を向ければ、そこには鋭い三角の爪をもったウロコ模様の足。まさしく鳥の足。

 改めて周りへと目を向ければ、俺たちを見下ろしてくる王と宰相とその他大勢。弟に言った通り、自分たちがやはり小さくなった様だ。

「その姿である内は、力の行使は無理になさらないよう。万が一にもそのような事が起きた場合には、一切の保証は致しかねます」

 何そのフラグ的なセリフ。

 宰相の言葉に俺は頷きつつ、未だに走り回っていた弟の進行方向にそっと足を突き出して暴走を止めた。

「ぷぎぃ」

 心身もろとも豚になるのはいかがかと、兄は思うぞ。

「それから……万が一、必要以上の力の行使を求めるような事があった場合には、こちらを使用ください」

 そういって渡されるチョーカー。中心には赤い球が三つ連なり、秘めた力を誇示するように煌めいていた。

「これは?」

「この赤い宝石は、一時的にではありますが、王子殿下の封を解く魔法具です。使用後、元の姿に戻っていられるのは一日ほど、使用したら宝石は砕けますので使いきりのものとなります。ですから、利用する機会をくれぐれも間違いませんよう」

 何そのフラグ的なセリフ。

 色々と突っ込みたいことはあったが、喉元で抑えチョーカーを受け取った。隣の弟も、同じように神妙な顔でそのチョーカーを受け取っている。

 ついでに、チョーカーを首に回してもらった……手羽では取り付け不可だったんだ。

 そうして俺と弟がチョーカーを受け取り改めて陣の中央へ並んで立つと、近づいていた王と宰相は部屋の隅へと移動し、陣が輝き始める。

「では、これよりテストを開始する。異界にて困難に立ち向かい。善き王になれるよう精進するように」

「はい。行ってまいります」

「必ずやご期待にそえるよう尽力いたします!!」

 王の言葉に揃って応じれば、目を細め王は頷く。

 そして俺たちは、陣の光に包まれこの国を旅だった。

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