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皇国戦記シリーズ

破断

作者: 尚文産商堂

ある過ちが俺たちの世界を引き裂いた。

首脳会談での言動のブレや、海底油田の岩盤崩落などによって、国際情勢は徐々に混迷度を増していく一方だった。

そして始まってしまった戦争。

その中で、暗殺契約が結ばれた。

相手は某国の大統領。

暗殺者は、不明。

俺はその情報だけをもとにして、世界中を渡り歩いた。

結局わかったのは、いつでも来て不思議ではないし、もう来ないかもしれないという非常にあやふやな解答だけだった。


わからないなりに調べた結果を、上司に報告するために本国へ戻った。

「お久しぶりです、長官」

「ええ、そうね」

長官は、俺と握手を交わし、特別室へ案内した。


特別室のソファーに向かうように二人だけで座った。

「…そう、あなたでもそこまでしか分からなかったの」

「申し訳ありません、俺の実力不足です」

「謝る必要はないわ。こちらとしてもあなたが外回りをしている間にも調べてみたのよ」

「それで…」

「なにも出てこなかったわ。このまま杞憂で過ぎていけば、一番いいのだけどね」

「まったくです」

そう言って、俺たちは本部の建物へと地下通路を通って移動した。


移動先の建物では、我が国の首相が窓辺に立って、どこかへ電話をかけていた。

「いや、AUには、すでに連絡済だ。あとは、やってもらうしかない」

「総理大臣閣下、いかがいたしましたか」

長官が、首相へ聞いてみる。

「いや、こちらの話だ。君たちは情報部の者だろ」

「そうです。すべての情報は、我々が握っているのですよ」

「それを公開するかどうかは、私の役目だがな」

首相が苦笑いしながら、長官と親しげに話す。

「それよりもひとつ、聞いていいか」

「なんでしょうか」

「某国大統領の暗殺計画は本当なのか」

「それは現在調査中です。ただし、すでに契約が結ばれた形跡がありまして、その国の大統領へ連絡を澄ましたところです」

「そうか、なら安全だな。とりあえず、私は大統領ではないし、私が倒れたとしても、替えはすぐに用意される。これほど楽な仕事もないさ」

笑っているが、それはいつでも首相という座を退くことができるという、心を軽くするための詭弁にも聞こえた。

俺は、それからしばらくの間、長官と首相が昔話をしているのを聞いていた。


急に首相に電話が入り、緊張した面持ちになった。

「暗殺計画が実施された。欧州連盟大統領に対して、暗殺未遂があったらしい。彼らは、我々が行ったとして、報復を行うと息巻いているらしい」

「情報通りです。でも、暗殺は実施されてはいないのでしょう」

「ああ、実際に死んだわけではないようだ。大統領が閲兵をしていると、どこからか手りゅう弾が投げ込まれたそうだ。すぐに手りゅう弾が地面に触れる音がしたから、SPたちが速やかに移動させて、大統領は無事だそうだ。閲兵はその時点で中止。参加していた兵のうち3人が破片を浴びて病院へ直行。それ以外にも、避難中や爆発によって軽傷者が出ているらしい」

「あらかじめ言っておきますが、私たち情報部は、一切関与しておりません」

「ああ、わかってる」

首相はそういって、どこかへ行ってしまった。

「…わかってる?」

「あの男のことだ。あらかた誰かに頼んだんだろう」

長官は、それだけ言って、首相とは逆方向へ戻った。

「それよりも、忙しくなるぞ。戦争は相変わらず継続中であるし、これで、和平工作は白紙だ」

「どうするんですか」

「どうもこうもあるか。それをこれから調査するんだよ」

長い時間がかかる調査をする暇があるかどうかはさておき、俺自身が、これからきわめて忙しくなるということは、はっきりした。

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