メタルキス第四話 メタルの欠片
メタルキス第四話 メタルの欠片
国語の授業、午後の倦怠感が漂う教室。
教科書に掲載されている寓話の朗読をしていたときのこと。「…ウサギは丘を一気に駆け下り、ゴールを目指して突き進む。三日月は意地悪そうに…」
その時だった。
(……見ろよ、あの挿絵。あいつにそっくりじゃん)
(……ぷっ、ほんとだ。「三日月顎」だな)
後ろの方から乾いたような小さな嘲笑。クラスメイトたちの指先が、挿絵とぼくの顔を交互に往復する。
そして、また、カサカサっとしたざわめき。
朗読しているページには、夜空に浮かぶ「三日月」の挿絵があり、突き出た下顎のような、歪な弧を描いて笑う月。
ぼくのコンプレックスである「受け口」が、衆人環視の中で滑稽な記号へと成り下がっていく。「……その夜、三日月は……地上の人々を蔑むように、歪な笑みを浮かべ……」
顔を隠したい。喉が焼けるように熱い。視界が滲み、文字が躍る。声がかすれ、最後まで読めなくなった。
その時だった。斜め前で、彼女の背中がびくりと跳ねた。肩を小さく震わせている。こちらを振り返ることはなかったが、彼女を縛る白いヘッドバンドの太いゴムが、怒りに震えるようにピンと張り詰めたような気がした。
彼女はゆっくりと、自分の顎を包み込む金属カップに手を添えたのがわかった。午後の昼下がりのブラインドの隙間から差し込んだであろう一筋の光が、彼女の顎の金属カップに跳ね返り、一瞬、三日月の光を帯びたのは偶然か、滲んだ世界に唯一見えたものだった。




