メタルキス第ニ話 メタルの共犯者
メタルキス第二話 メタルの共犯者
「つけてみる?」
その声は、どこか期待を含んでいた。
表情を隠すように意識しながら、差し出されたヘッドキャップを手に取ると、彼女が少し近づいてくる。「それは、帽子のように上からかぶって」
言われた通りにかぶると、ちょうどよいフィット感で、意外と優しく頭を包んでくれる。
「…これだけでも結構存在感あるね」
「でしょ? 最初びっくりしたもの。こんなのつけて外歩かなきゃならないんだ…ってね」
次に金属カップを顎に当てる。
まだ、外して時間が経ってないのか、見た目の冷たさはなく、むしろ彼女の体温がまだ残っていて、緊張が高まる。
カップの曲線が、自分の顎にぴたりとはまる。
「……っ」息が止まる。
多分目を丸くしていただろうぼくの反応に彼女が微笑む。
「じゃあ、ゴムをかけるね。ちょっと痛いかも」
彼女がゴムをつまむと、自分の頭を包むキャップに圧力がかかってきた。慣れない感じで、顎の金属カップにゴムをかけていく。彼女は緊張からか小刻みに震えている。
ゴムがカップの左右のフックにかかると、顎が猛烈に後ろへ押し込まれる感覚に圧倒される。しゃべりづらい。
「(なにこれっ…)これ…すごい力だね」
「うん。最初はほんとイヤだったよ。寝れなかったし、何日かは、つけたくないって思ったし、それよりも、たくさんの人に見られて、いじめられたこともあったんだよ。病気を治すためって、それだけを信じて」
やり場のない憤りが起こるのを感じ、次にこの経験を毎日しているとを思うと、自分の憧れが浅はかであること恥じた。
「……これ、毎日?」
彼女は少し照れながら、「もう慣れた。締め付けられるのも、見られるのも、だんだんね、これが“わたしのからだの一部”になってくるの」
胸が強く締めつけられる。
「…すごいよ。頑張ってるんだね」
彼女は優しく笑う。
また、ふた呼吸くらいの時間が流れた。
彼女がそっと言う。「わたしも、これが付いてないと不安になっちゃうんだよね。そろそろ返して、外してあげるね」
彼女が近づき、ぼくの顎に手を伸ばす。片側のゴムを外すと、引っ張る力がふっと消える。そして、もう片方も外れると、金属のカップが彼女の手の中に戻る。
顎から支えがなくなった瞬間、胸からも何もなくなったような感覚。
「…もう少しつけていたかった」
思わず漏れた言葉に、彼女は少し驚き、そして優しく微笑む。
「そっか。…また今度ね」
顎を押される感覚を残しながら、その言葉だけが、ずっと心の中の置きどころを探してた。




