第7話 オフィーリア②
晩飯は近くの郷土料理屋みたいなところに連れていってもらった。
ハンバーグっぽい肉料理と田舎風のスープ、そしてワインを二本。
お互いにほろ酔い気分になると、オフィーリアの俺に対する警戒も次第に解け、会話から緊張感が消えていった。
「で、お前は行儀が悪くて、教会を追い出されたんだって? 何したんだ?」
「教会ではない。王都の聖騎士団だ。この国で最も歴史が深く、最強の呼び声も高い由緒正しき軍団だぞ? 当然、毎日の鍛錬は厳しく、規律も厳格そのものだった」
「ほう、それで?」
「あたしも入団して何年かは真面目に勤めていたさ。異例のスピードで昇格し、いずれは女将軍として名を轟かせるだろうと噂されていた」
オフィーリアは昔を懐かしむようにワイングラスを揺らし、続ける。
「だが、生来の気質というのはどうしても変えられなかった。禁欲や忍耐を積み重ね続けた結果、ついに爆発した」
「爆発?」
「とうとうオ〇ニーだけじゃ我慢できなくなって、見ず知らずの街の男を逆ナンして行きずりのセッ〇スしたら、その背徳感もあって、ゾクゾクするような快感が波のように襲ってきて、――めちゃくちゃイキまくったんだ」
「……は?」
「一度、その快感を覚えてしまったら、もう止まらない。あたしは休みの度に男を引っ掛け、ヤリまくった」
「え? まさかのヤリマンかよ!?」
「だが、そんな日々も長くは続かなかった。すぐにバレて重大な規律違反ということで解雇された」
「そりゃそうだろ! え? 国民の見本となるべき、由緒正しき聖騎士団の面汚しってことだよな??」
「面汚しだと?」
オフィーリアの目が座っている。
だいぶワインが回ってきているらしい。
「おかしいだろ! 男だったら『女遊びは程ほどにしとけよ』程度の注意で済まされるのに、あたしは解雇だぞ!? やってることは同じなのに、女だからという理由だけで!!」
「……た、確かに一理あるかもな」
「で、あんたはどうなんだ?」
「何が?」
「魔界の王にも性欲はあるのか? そんなものは超越しているのか? それとも、あたしの気持ちが分かったりするのか?」
「めちゃくちゃあるぞ。試してみるか? 魔王のイ〇モツを」
どさくさに紛れて、誘いをかける。
ヤリマンだろうが、こんな金髪美女とヤれるなら逃す手はない。
中出しで30,000ポイントも稼げるし。
「……残念ながら、あたしにも好みがある。あんたみたいなむさ苦しいおっさんは全然タイプじゃないから。筋肉ダルマみたいなゴリマッチョじゃないと濡れないんだよ」
ゴリマッチョ……。
軽く中年太り気味の俺とは真逆じゃねえか。
だが、酔ってる今がチャンスだ。
「お前は外見だけで男を選ぶのか? 俺がこの姿なのは、人間界で目立たないためだぞ。魔界での俺の本当の姿も知らないくせに」
魔界での俺は角が生えて三つ目で、肌はぬるぬる、尻尾の先に双頭の蛇がついてる糞キモ野郎なんだけど。
「……怖いのか? 全然タイプじゃないおっさんにイカされまくるのが。ま、俺は魔王だからな。恐れるのも無理はない」
「恐れる――だと?」
適当なこと言って煽ってみたら、食いついてきた。
「そうだ。ギルドで出会った時も、俺と戦って死にたくないとか言ってただろ?」
「そ、それは――」
「夜の勝負なら、命を賭けることもない。どうだ? 魔王に勝ちたくないのか?」
――その晩、俺の挑発にまんまと乗っかったオフィーリアと対戦した。
結果は言うまでもない。
ティアナと何回かヤッただけのほぼ初心者の俺が、この百戦錬磨のヤリマンに勝てるわけがない。
ちょっと締めつけられただけで、俺は「あぁあ……」と情けない声を漏らし、暴発した。
オフィーリアの呆れたような、哀れむような、蔑むような視線が、トラウマになりそうだった。
勝利の余韻か、満足そうに寝息を立て始めたオフィーリアをベッドに残し、俺はそっと自室へ戻った。
金髪美女に中出しできた喜びなど全く無く、敗北感にまみれながら、スマホを取り出しポイントを確認。
無事に30,000ポイントをゲットしていた。
まずはティアナとの約束を果たすため、《瞬間移動》に10,000ポイントを投じる。
すると、暗闇の中で俺の体が一瞬だけ光に包まれた。
スキルゲット完了。
残り20,000ポイント。
さて、どう使うか……。
あれ?
ふと嫌な予感が脳裏をよぎった。
今夜のあの失態。
明日になってオフィーリアが舐め腐った態度で接してきたらどうする?
俺が弱いことがバレたら、マジでヤバい。
はったりがいつまでも通用するとも思えない。
俺には勝てないと思わせ続けないと殺される。
「……まずい。何か……何か手はないのか!?」
背中を伝う冷たい汗を感じながら、必死にスマホのスキル一覧をスクロールさせる。
そして、そこで目に止まった。
《武術 Lv.1》 1,000P
「これだ……!」
迷わずタップを連打する。
2、3、4――レベルアップの度に光に包まれる。
しかし、《武術 Lv.8》 4,500P のところで、残りポイントでは足りなくなった。
「くそっ! ここまでかよ……!! Lv.7で足りるのか!?」
不安に圧し潰されるような重苦しい感覚のまま、俺はいつしか眠りに落ちた。
――そして翌朝。
まだ薄暗い時間、控えめなノックの音がドア越しに響き、目を覚ます。
「……なんだ……?」
寝ぼけ眼で返事をすると、扉の向こうから張りのある声が返ってきた。
「朝食の前に、運動に付き合ってくれないか?」
「運動?」
「最近は剣の相手がいなかったのでな。手合わせ願いたい」
――やっぱり来たよ!!
あぶねぇ……。
余計なスキルにポイントを振らなくて良かった。
こういう嫌な予感は当たるもんなんだよ。
俺はベッドから身を起こし、わざと落ち着いた声で返す。
「……いいだろう」
大丈夫だ。
いざとなったら《瞬間移動》使って逃げるから。
この夜の出来事の詳細は、ノクターンに連載中の
「 元・魔王の中年童貞のエロ日記 」
ep02. 元・聖騎士オフィーリアとの性交
にて公開してます。
宜しければ、そちらも読んで頂けると嬉しいです!




