第62話 暗黒大陸②
千里眼を使わずとも、陸地がはっきりと見えてきた。
徐々に近づいてきたその上空は、黒い雲――いや、闇の瘴気だろうか――に覆われている。
もうここまで来れば船は不要だろう。
俺は舞空術を使って、上陸することにした。
まともな船着き場があるか分らんからな。
船を乗り捨てしても懐が痛まないとか、めっちゃ金持ちになったな、俺。
――先日現れた、あのおぞましい巨大な黒い瞳。
まるで俺の到着を予期していたかのようだった。
薄暗い海岸に俺は降り立つ。
南国のバカンスとは真逆の、重い閉塞感が胸にのしかかる。
目の前には、海からせり上がるように聳える黒い断崖。
岩肌は波に削られ、無数の亀裂が口を開けている。
潮が高く打ち上がり、霧となって頬を濡らした。
とりあえず断崖の上まで行くしかなさそうだ。
見上げても途中から黒い雲で隠れていて、どれくらい高いのかがよく分からんが。
……てか、これじゃ空を飛べない限り、他の大陸との交流とか無理だろ。
舞空術で一気に上昇する。
濃い瘴気が肌にまとわりつき、視界が滲む。
やがて雲を抜けると――その断崖の上は、灰色の大地が果てもなく続いていた。
「なんだ、お前? どこから来た?」
いつの間にか目の前に立っていたのは、褐色の肌に銀髪ロン毛の男。
耳先は少し長く尖っていて、その視線は刃のように突き刺してくる。
……ダークエルフか?
「気配遮断か。エルフの得意技なのか?」
俺はエロドの森でイラーマと初めて出会った時のことを思い出していた。
「質問に答えろ。ここは俺たちのシマだ。お前の回答次第では始末しないといけなくなる」
「なんだよ、物騒だな。とりあえずまた来るから、ちょっと待ってろ」
そう言うと俺は『瞬間移動』を使ってイラーマの元へ向かう。
もう金玉がパンパンで爆発しそうだ。
ついでにダークエルフのことも聞いてみよう。
◆◆◆
挨拶もそこそこに、抜かずの二発で金玉を空にし、ようやく落ち着いた。
いつもならおっさん特有のねちっこい前戯にたっぷり時間をかけるところだが、今日ばかりはいきなり挿れさせてもらった。
もちろん潤滑ゼリーを使って、痛くないように配慮したので安心してほしい。
「で、ダークエルフのことって何か知ってる?」
「一般的には、その起源について二つの説があるわね。」
「ほう」
「一つ目は、元々わたしたちエルフと同じ祖先だったけど、闇の瘴気が濃い環境――つまり暗黒大陸に渡って、そこで代を重ねるごとに肌の色などが変色していった説。もう一つは、そもそも祖先が違っているから最初からわたしたちとは違う説」
「なるほど。もう何千年も、下手すりゃ何万年も前の話だから、今となっては誰も知らない感じか」
「そう。彼らは滅多に暗黒大陸から出てこないし、わたしたちもわざわざあんなとこまで行かないしで、交流なんて全くないわ。だから何も分からないの……。ごめんなさいね」
「いや、謝ることじゃないし」
「でも、他の女の子たちを差し置いて、真っ先にわたしに会いに来てくれたのは彼らのことを知りたかったからでしょ?」
「それは後付けだよ。向こうに着いたらまずイラーマに会いに行くって最初から決めてたから」
「ほんとに? ……じゃあ今日は寝かさないから」
イラーマはそう言うと、俺のチ〇コに手を伸ばしてきた。
……あのダークエルフ、さすがにもう待ってないよな?
◆◆◆
朝までやり続け、気がついたら爆睡していた。
そして目が覚めた時には、既に陽が傾き始めていた。
イラーマはまだ横でぐっすりと眠っている。
まだ頭がうまく回らないが、とりあえず暗黒大陸には無事到着した――そのことを『精神感応』で他の女のコたちに報告していく。
サフィラ様、月姫、ジスの三人は「今すぐ会いたい」と言って聞かなかったが、今は疲れてるので明日の朝から夜までの間で順番に回るから待っててほしい、とだけ伝えておいた。
一晩一人のローテーションで相手しちゃうと、いつまで経っても暗黒大陸を進めないからな。
そんなわけで、再び瞬間移動で暗黒大陸に戻ったのは二日後。
あのダークエルフに会った場所に降り立ったが、さすがに誰もいなかった。
前回は俺のオーラ的な何かに気づいて待ち伏せしていたのだろうか。
しばらくここで待とうかとも思ったが、先へ進むことにした。
ここら辺があいつらのシマだと言っていたから、どこかでまた出くわすだろう。
まだ昼前だというのに、闇の瘴気に覆われたこの大地は薄暗い。
いや、魔界ではこういう環境に慣れているが、こっちに来てからは明るい日差しに恵まれていたせいか、何となく気が滅入ってくる。
とりあえず奥地へ向かって歩いていくと、やがて森が見えてきた。
――今回はさすがに俺も気づいた。
「よう、この前の奴か?」
目の前に姿を現したのは、二人組の男。
ロン毛と角刈りのダークエルフだ。
「こいつか? お前が言ってた怪しい奴は?」
「はい、そうです。今日はいきなり現れやがった」
角刈りの方が、俺を値踏みするようにじっと見つめてくる。
「……まぁ、俺らが束になっても勝てる相手じゃないな」
「え? こんな性犯罪者みたいな奴がですか?」
誰が性犯罪者だよ。
「分からんのか? 表面だけじゃなく、内包してるエネルギーも掴めるようになれ。そんなんじゃ、いつまで経ってもナルビーズ様の信頼は得られんぞ」
角刈り君は俺の方に向き直り、問いかけてきた。
「で、あんたはここに何しに来た?」
「とりあえずは探索かな。暗黒大陸は謎に包まれてるから、色々調査してみようかと思ってな」
「……そうか。じゃ、俺たちの街に案内してやる。あんたから害意は感じられないのは確かだからな」
お、話が早くて助かるわ。
「え? いいんですか!? こんな怪しい奴を連れて帰っても」
「下手に邪魔して暴れられたらかなわんだろ」
いや、そんなに民度低くないよ。




