第61話 暗黒大陸①
翌朝。
海に近いのはアルナか。
目が覚めた俺はサフィラ様に『精神感応』で連絡する。
アルナ家でもいくつか船を所有しているとのことだったので、その内の一つを買い取らせてもらうことにした。
さすがに大陸間を舞空術で移動するのはしんどすぎるからな。
お金などいらないと言ってくれたが、武闘祭の賞金とかで今や腐るほど金はあるし、ちゃんと払わせてもらう。
――カトロジー様には全裸にエプロン姿で朝飯を作ってもらった。
男の夢がまた一つ実現したのだ。
当然、その姿に我慢できるわけもなく「あ、危ないですから!」などと言われながら、後ろからバコバコ突きまくった。
聖女様のありがたい手料理を食ってから、日課のアーリス様の修業を終え、俺はサフィラ様の元へ瞬間移動する。
船の整備には数日かかるということで、その間に船の操縦方法を教わることにした。
港に着くと、アルナ家の別の船に乗り、船乗りたちの指導を受ける。
ちなみに、サフィラ様は会議があるということで、同行していない。
さすがに彼らの前でイチャイチャしてきたら困るので助かった。
俺は集中して、その技術の習得に取り組むことが出来たのだった。
◆◆◆
「操船の授業はどうでしたか? 難しかったですか?」
「難しいとまでは思いませんが、ちょっとコツがいりますね。でも久しぶりに新しい技術を習得できるので楽しいです」
一回戦を終え、ベッドの上に寝転がる俺に、全裸のサフィラ様が絡みつきながら、問いかける。
「明日もわたくしは午前中から街の議員たちとの会議があって、ご一緒できないのです」
「そっちの方が全然重要ですから。俺のことは気にしないで下さい」
会話の最中でもお構いなしに、サフィラ様は俺の首筋や耳のあたりをペロペロとマーキングしてくる。
……どうせ明日、アーリス様にまた上書きされちゃうんだろうけど。
「南の大陸までの航海は本当にお一人で大丈夫なのですか? 航路とか」
「ああ、『千里眼』のスキルを取り戻しておいたので、場所はもう把握しました。トラブルさえなければ2~3週間くらいで到着できるはずです」
「……南の大陸はわたくしたちの理解が及ばぬ地です。ヒロシ様なら何も心配はいらないと思いますが――それでも、やはり不安になってしまいます」
サフィラ様の声音には、心から俺を気遣う気持ちが込められていた。
「大丈夫ですよ。それよりツボ押して復活したので、二回戦に突入しましょう」
「はい!」
◆◆◆
船旅の最中は「瞬間移動」を使えない。
俺がどっかへ行ってる間に、船が波で流されてしまったら、いつまで経っても目的地に到着できないからな。
無人島とかの小さな島があるのかもしれないけど、上手く停泊できるとも限らない。
それに無闇に近づいたら、岩礁や浅瀬で座礁する危険も発生する。
ということで、しばらくはエロいことが出来なくなる。
そこで出発前に、主要な女の子たち全員と平等に夜を共にした結果――出発がだいぶ遅れてしまった。
もちろんアーリス様には、俺が不在の間の修業メニューをちゃんと渡してある。
食料や水や酒なども「無限収納」で数ヶ月分を確保しておく。
一人旅は退屈なので、暇してそうなオフィーリアあたりを連れていきたかったのだが、そんなことをしたらジスに殺されてしまう――オフィーリアが。
サフィラ様に見送られ、俺は船を出す。
波は穏やかで、空は雲ひとつない快晴。
今日はまさに、絶好の出航日和だ。
◆◆◆
……何日経っただろうか。
「千里眼」で捕捉した南の大陸は、ゆっくりと、しかし確実に近づいている。
それでも船から見える景色は、前も後ろも、右も左も変わらない。
ただ海面だけが静かに揺れていた。
釣竿を取り出して何回か海釣りにチャレンジしてみたものの、ほとんど何も釣れず、俺はひたすら退屈と戦っていた。
『精神感応』を使って女の子たちと会話することも考えたが、ヤリたくなるのが目に見えてるので自重している。
ただ、一年近くも酷使し続けてきたチ〇コを休ませるにはいい機会だった。
自家発電したいという欲望すら湧いてこず、おっきくもならなかった。
絶世の美女たちをいつでも好きにできる今の俺には、自分一人で処理することなど、もはや虚しい以外の何物でもない。
南の大陸に到着したら、まず最初に誰の元へ瞬間移動しようか。
めちゃくちゃ溜まってるだろうから、そんな暴れチ〇コを任せられるのはイラーマかな?
そんなことを考えながら、今日も船は進んでいく。
単調な日々の中で、時間の感覚すら曖昧になっていった。
――さらに数日が経過すると、空気が少しずつ変わってきたのが分かる。
海の潮気ではない。
明らかにそれとは別の湿り気が、船全体に侵食してくる。
少しだけ懐かしさを感じた。
魔界の瘴気のような気配。
別にそれが心地良いわけではない。
どちらかと言えば、どんよりとした気分になってくる。
それは俺の向かう方向――南の大陸から流れてきている。
なるほど、これが暗黒の大陸か。
――そう思った瞬間、ゾッとした。
全身が毛の先まで逆立つような、不安を掻き立てるような、ぞわぞわした感覚が俺を包み込んだ。
「見つけた」
高い場所から、低く囁くような声が聞こえた気がした。
空を見上げると、心臓が凍りつくような衝撃を受ける。
そこには、巨大な瞳があった。
空に浮かび、こちらをじっと見下ろす、おぞましい大きな黒い瞳。
「ずっと待ってたから」
そう言い残すと、その瞳は、まるで最初からそこには無かったかのように、空に溶けて消えていった。




