第59話 冥竜王『ガストリマルギア』
さすがに初めてだったジスに、その晩だけで複数回など出来るわけもない。
次の日以降、三日間毎日一回ずつ中出しして、『冥竜召喚』のカンスト分のポイントが貯まった。
もう、ここまで来たら後には引けない。
俺は竜王一族と共に、竜騎士団の本拠へと向かった。
広大な中庭に足を踏み入れると、そこには俺たちの到着を待ち構えていたかのように、何十人もの竜騎士たちが整列している。
噂の冥竜王を一目見たいのだろうが――マジでどうなっても責任は取らないからな……。
「本当にいいんですね?」
俺は竜王に最後の確認をした。
「ええ、お願いします」
俺は左手を宙にかざし、魔力を発動する。
周囲の光がみるみる吸い込まれ、空間そのものが捻じれるようにして、漆黒の渦が生まれた。
前回とは比べものにならないほどの巨大な渦。
空気がビリビリと震え、胸の奥まで圧迫していく。
闇の奥底から、まず爪の長い巨大な左手がぬるりと現れる。
続いて右手が渦をつかむように出てきて、その二本の腕で空間を強引に引き裂く。
そこから覗いたのは、災厄そのもののような禍々しい竜の顔だった。
暗黒の霧が色濃く立ちこめ、紫の稲光が体表を這いずり回っている。
「ガハハハハハ!!!!!」
地鳴りのような笑い声と共に、冥竜王ガストリマルギアは全貌を現した。
その巨体が地を踏むだけで、石畳が軋み、騎士たちが小さく悲鳴を上げる。
「どうした、魔王! また我の力が必要か? この辺りをぶっ壊せばいいのか?」
体の芯まで震わせる大声。
「ば、馬鹿! 余計なことはするな!! ステイだ! ステイ!!」
「ガハハハハハ!!!!! そうは言ってもエネルギーを抑えきれん!! とりあえず軽く放出するぞ!!」
「や、止めろ!!」
やっぱダメだ、こいつ!!
俺の魔力でカバーしきれるか??
頭をフル回転させていると、凛とした声が響いた。
「止まりなさい」
ジスが俺の横に並び、冥竜王へ向かって右手を差し伸べる。
「ああん? なんじゃ、小娘――ん……? ま、まさか!?」
今にも空に飛び立とうとしていた冥竜王の動きがピタリと止まる。
「ちぃっ! だが我も二千年前とは違う。貴様に制御などされぬわ!」
そのまま地面を蹴り上げた瞬間――漆黒の稲妻が冥竜王の体を貫いた。
「ぎゃあああああああああああ!!!!」
大地を震わすような絶叫が轟く。
「私の言うことを、聞きなさい」
「だ、誰が……貴様の言うことなど――ギャアアアアアアアア!!!!」
再び、漆黒の稲妻が迸る。
悪ガキをしつける女教師みたいだな……。
ジスは背筋をピンと伸ばし、涼しげな目元でこの巨体を前にしても全く怯まない。
その姿は凛々しさを一層際立たせている。
「やはり私の魔力はあなたを制御する為だけにあるみたいね。こんな稲妻に変換されるなんて」
「わ、分かった……。は、話を聞こう」
え……。
マジで?
マジでこいつを制御できるの??
「ふふっ。いい子ね。あなたの真価は『武装化』にあると聞いてます。やってもらっていいかしら?」
「わ、我を物扱いする『武装化』だと……? ふん、誰がそんなこ――ぎゃあああああああ!!!」
また漆黒の稲妻。
てか、お前もいい加減学べよ。
「わ、分かったから……ちょ……やめ……ああああああああ!!!!」
折檻を止める素振りを見せないジスは、薄っすらと笑みを浮かべている。
――ちょっと待って?
ひょっとして、ドSなの……?
見た目通り、こっちが本当の姿?
「はぁ……はぁ……い、今やるから少し待て……」
冥竜王は地面に倒れ、ピクピクと痙攣しながらもようやく覚悟を固めたようだった。
次の瞬間――
その巨体が形を失い、パン、と弾けて暗黒の粒子が形成する球体に変わる。
そして、それはジスへと吸い寄せられ、巻き付くように収縮していく。
ゾクリ、と。
心臓が一瞬、鷲掴みされたかのような根源的な恐怖感のようなものが駆け抜けた。
いつの間にか、ジスの姿は漆黒の甲冑に覆われ、その右手には禍々しい瘴気を放つ長槍が握られている。
「魔王様……!」
ニッコリと柔らかい笑顔で話しかけてくるジスに、俺はハッと我に返る。
「これが、『七つの大罪』が一つ、『暴食』の邪槍ガストリマルギアでございます」
「お、おう……」
その槍に内包された暴力的なまでのエネルギーに、言葉が出ない。
「どうですか……? 似合っておりますか?」
「う、うん……。めっちゃ似合ってるよ」
俺の言葉に、さっきまで冥竜王を躾ける女教師のようだったジスは照れくさそうに、はにかんだ。
周囲の竜王たちも皆、呆然としたまま言葉を失っている。
何人かはその場で腰を抜かし、立ち上がることすらできていない。
ジスは槍を手に馴染ませるかのように、一度だけ軽く振った。
――ゴォンッ!!
空気そのものが悲鳴を上げるような衝撃音とともに、中庭の大地がバキバキと裂けていく。
その亀裂は一直線に外壁へと伸び、石を砕いていった。
え?
嘘だろ……。
これって……俺より強くね!?
てか、『魔王の寵愛』について説明しちゃったし……。
それ聞いて、めっちゃ嬉しそうにしてたし……。
「魔王様、今晩もお伺いしますので、たくさん可愛がってください」
俺の耳元でこっそりとそう囁いたジスに、俺の股間は膨らむどころか、金玉がキュッと冷たくなるのを感じた。
「い、いや、さすがに五日連続はちょっと。他の女の子たちにも会いに行かないとだし……みんな寂しがってるだろうから」
「他の女の子……?」
空気が一瞬にして凍りつく。
ジスの涼しげな目元に、ぞっとするような狂気の光が宿った。
「私がいれば、もう他の女なんて不要でしょう?」
「いや、俺は一人に縛られるつもりはないっていうか……」
「私以外に魔王様に愛される女が存在するなんて、許せません。殺しちゃってもいいですよね?」
「ちょっ……! 駄目だって! 巫女たちみんなで協力しないと天使たちには勝てないんだから、仲良くしよう!!」
「たしかハイエルフの姫とメーザン教の聖女も巫女でしたよね? 今から殺しに行ってきます」
まるで話を聞かないジスの漆黒の鎧の背に、闇の翼が生えた。
そして、まさに飛び立とうとしたその瞬間、俺はギリギリで取り押さえる。
「だ、駄目だって!! そんなことしたら、もうジスを愛さないぞ!!」
「え……?」
「俺の女に手を出したら、ジスでも許さないからな」
「……分かりました。殺すのは我慢します。だから、今夜は私を可愛がってください」
「お、おう。分かった」
これは、しばらくジスを最優先しないとだな……。
『魔王の加護』はよっぽどヤバい奴からの攻撃なら何とかなるが、ジスはこの「よっぽどヤバい奴」に見事に当てはまってるし……。
まさかの、敵は味方にありかよ……。
この夜の出来事の詳細は、ノクターンに連載中の
「 元・魔王の中年童貞のエロ日記 」
ep18 デン・マ竜国の竜姫ジスポートとの性交
にて公開してます。
宜しければ、そちらも読んで頂けると嬉しいです!




