第5話 伯爵領都アルナ
「そう言えば、この村には回復魔法が使える奴もいないのか?」
そのままティアナの家に泊めてもらった翌朝、朝食の黒パンを齧りながら何気なく尋ねてみる。
「いるわけないでしょ……いたら、どんなに助かるか。街の薬局で買う薬も高いし、薬草で何とかやり繰りするしかないの」
「そうか」
「何でそんなこと聞くの?」
「いや、お前に手コキしてもらったポイントがまだ残ってるから、もう一回お前に中出ししたら、回復魔法も取り戻せると思って」
「――――するわけないでしょ!! 朝っぱらから何言い出してんのよ!?」
「いやいや、考えてみろよ。回復と状態異常回復の二枚看板が揃った俺が、暫くここを拠点にしてやってもいいんだぜ? さらに定期的に戻ってきて、村人たちを治療してやってもいい。」
「え?」
「もちろん、金なんて取るつもりもない。悪くない取引じゃないか?」
「こ、この……悪魔っ!!」
野菜スープも美味いな。
「また中に出されたら、子供が出来ちゃうかもしれないし」
「いや、それは大丈夫だと思うぞ。神には、俺の魔族という属性は変えられんって言われてるから。異種族間で子供が出来る確率なんて奇跡みたいなもんだろ?」
「そうなの? どこからどう見ても、あんたは人間のおっさんにしか見えないんだけど……」
「でも、俺の言うことはもう信じられるだろ?」
「それは……てか、ホントにそんな善意から言ってるわけ?」
朝の眩しい光が射し込むせいか、昨日までの重苦しい空気はもはや無い。
「ま、ぶっちゃけると、昨日の初めてがあんな感じだったからさ、やり直したいんだよ」
「…………」
「どうする? もうお前の願いは叶えたし、無理強いするつもりは無いから、嫌なら俺はこのまま旅に出るけど」
ティアナは長い沈黙の末、スープを一口すすると、小さく息を吐いた。
「……しばらく滞在っていつまで? あと定期的にってどれ位の頻度よ」
「そうだな……《瞬間移動》に必要なポイントが10,000か。この辺に大きな街はあるか?」
「あるわよ。貴族様が治めてる大きな街は、歩いて半日くらいかしら」
「そっか、じゃそこでポイント稼ぐとして、どれくらいかかるかは……やってみないと分からんな。他にも優先すべきスキルも出てくるだろうし。ってことで結構長く滞在できると思う」
――その晩、ティアナは今度こそ全部脱いでくれた。
舐めたり触ることも許可された。
ただ、昨日よりは少し長く我慢できたとはいえ、俺はまた数分で果ててしまったのだった。
だが、そのおかげで――
俺は《回復魔法 Lv.1》を無事に取り戻したのだった。
翌日から暫くの間、村中の人々に回復魔法を施すことになったのは言うまでもない。
風邪や軽い怪我、虫刺されに至るまで、頼まれれば即座に手をかざす日々。
「魔界から来た悪魔様」として、子供から老人まで、村人たちは驚きと感謝の眼差しを向けてきた。
ま、悪魔どころか魔王なんだけどな。
◆◆◆
空いている時間を利用して、俺はティアナに召喚魔法の使い方を指導していた。
もちろん、俺自身は魔界で召喚魔法も使えたし、いつかポイント交換することも視野に入れている。
巨大な冥竜王などを召喚したら、この世界はさぞかし大騒ぎになるだろうが、今のところ優先度は高くない。
指導するのには当然、理由がある。
ティアナが召喚術師として成長すれば、下がってしまったポイントの上限も再び上がるからだ。
あれから取り戻した魔法のレベルをさらに上げるためと言い包め、土下座して何度か中出しをさせてもらったので、次にやったとしても得られるポイントは、もはや500Pにも満たない。
変態と罵られながら、試しに口でもやってもらったが、思ったほどのポイントは貰えなかった。
つまり、回復魔法も状態異常回復魔法も、Lv.3から先へ進む道のりは、かなり遠いということだ。
伯爵領の領都アルナは、ここから歩いて半日くらいだったか。
「ティアナ、俺はしばらく領都へ行くことにした。その間、お前は召喚術士としての腕を磨いておけ」
「はぁ? 何よ、偉そうに」
いつものようにティアナの家で朝飯をかき込みながら、俺はそう宣言した。
ティアナの母はすっかり回復し、今では家事全般を普通にこなしている。この美味い朝食も母の手料理だ。
回復したら親子丼でも……と考えたが、母からもらえるポイントは最大で50Pだったので、さすがにやる気が削がれた。
「ほら、お前が成長すればポイントの上限値も上がるから」
母に気づかれないよう、ティアナの耳元にこそこそと話しかける。
「――ば、馬鹿じゃないの? あ、あんたの為に修業してるわけじゃないから」
顔を真っ赤にして抗議してくるティアナ。
「分かってるって。とにかくある程度ポイント稼いで、スキル取り戻したら戻ってくる」
「なーに、ポイントって?」
何も知らない母が、不思議そうに尋ねてくる。
「え? ああ、大したことじゃないっす。気にしないで」
まさか、「あなたの娘に中出しして稼ぐポイントなんです」なんて口が裂けても言えるわけがない。
「とりあえず、領都までの地図を書いてくれよ」
「分かったわよ」
◆◆◆
鬱蒼とした森を抜けると、目の前に広がるのは一面の草原だった。
馬車の轍が地面にくっきりと残り、領都までの道しるべとなっている。
道中、ティアナの母に作ってもらった弁当を広げて休憩した以外は、ほとんど立ち止まらずに進んだ。
草原の風を浴びながら歩き続け、夕方になる前、ついに領都の入口にたどり着く。
門は想像以上に巨大だった。
石造りで高くそびえ立っている。
門の上には領都の紋章が刻まれ、城塞都市としての威厳を誇示していた。
俺はその迫力に一瞬圧倒されつつも、門番に敬礼をしてから足を踏み入れる。
そして、その先に広がる街並みは、門の威容に負けず劣らず壮大だった。
石畳の大通りがまっすぐ延び、両脇には三階建て前後の建物が立ち並ぶ。
商店の軒先には鮮やかな布や旗が掲げられ、人々の喧騒が絶え間なく響いていた。
広場では馬に乗った衛兵や、市場で品物を並べる商人、荷車を引く人々が忙しなく行き交い、城下町としての活気と秩序が混ざり合った雰囲気を醸し出す。
――ここが、伯爵領の中心地、アルナか。
まるでファンタジー世界の見本みたいな街並みだ。
さて、最初にやるべきことは決まっている。
俺はポケットからスマホを取り出し、通りを歩く女性たちにレンズを向けた。
え……
マジで!?
故障かと思い、何人か別の女性も確認するが、結果はほぼ同じ。
見た目はごく平凡でも、ポイント最大値が5,000くらいある。
そうか、ポイントは身分、スキル、美貌、希少性など、複数の要素を合算して決まるんだったな。
貧しい村では、どんなに可愛くても身分ポイントが底辺だから、総合で低くなっていたのだろう。
さて、街と言えば、冒険者ギルド――当然、あるよな?
そこで、めっちゃ強いスキルを持った美女でもいたら、余裕で10,000ポイントくらい稼げるんじゃないの?
実際にヤれるかどうかは、一旦置いといて。
やる気が倍増した。
俺は期待で股間を膨らませつつ、ギルドを探しに歩き出したのだった。




