第42話 アーリス③
その後、念の為に何度か意思確認させてもらい、俺たちは寝室へ向かった。
後で何かいちゃもんをつけられたら大変なことになりそうだからな。
正式な書面で誓約書を書いてもらおうかとも思ったが、それを残したら残したでまた厄介なことになりそうなので止めた。
さっきまで威勢の良かったアーリス様だったが、ベッドの前まで来ると、急にもじもじし始める。
俺は先に全裸になって寝転びながら待ち構えていたが、なかなか脱ぐ気配を見せない。
「どうされました?」
「い、いや……その」
「……確かに、昨日の今日で急すぎますもんね。止めときますか?」
「や、止めないわよ!」
そう言うとアーリス様は一度大きく深呼吸し、服を脱いでいく。
大きな窓から差し込む月光が、金色の猫耳とサラサラの長い髪を照らしていた。
少し強気さを覗かせる整ったその顔立ち。
頬を朱に染めた表情は、可憐さと気高さが同居する美しさを映し出していた。
そして、しなやかに伸びる白い肢体の曲線は、月明かりに浮かび上がり、息をのむほど美しい。
そして、ベッドに滑り込むと俺の横へとやって来た。
「さ、始めていいわよ。私は何も分からないから宜しくね」
「猫人の流儀じゃなくていいんですよね?」
「いいわよ。サフィラちゃんともそうなんでしょ?」
「はい」
では、失礼しますと言ってから、俺はアーリス様にキスをする。
舌先をチロチロするだけの猫人のやり方ではなく、がっつりとしたディープキス。
……俺の心の悪い部分がうずうずしてくる。
猫人の流儀についてはアーリス様も処女とは言え頭の中で多少は理解しているだろうけど、人間(魔王)のやり方は全く知識が無いはずだ……!
俺がド変態なプレイをしても、それが猫人以外には普通なのだと思ってもらえる。
――その後は覚悟を決めたアーリス様をして「ちょ!? 嘘でしょ??」「ほ……本当に人間はこんなことをするの!?」「さ、さすがにそれは……や、やめ」などと抵抗されながらも、俺は心ゆくまで王女様の肉体にむしゃぶりつき、俺にも奉仕してもらった。
元々、サフィラ様のマーキングを上書きするとか言ってたんだから、この位はやってもらわないと。
そんな感じで王女様の高貴な純潔をありがたく頂き、その中で果てた俺は、賢者タイムに突入した。
アーリス様に腕枕をしていると、心の中でサフィラ様への罪悪感が、少しだけ棘のように刺さっていた。
◆◆◆
翌朝の訓練場。
昨晩あんなことをした後だというのに、アーリス様は普段と何も変わらない感じで現れた。
「おはよう」
「おはようございます。あの後は大丈夫でしたか?」
「何が?」
「いや、喪失した後は大分痛いという話をよく聞くので」
「ちょ……!?」
みるみるうちに、その頬が赤くなる。
「へ、変なこと言わないでよ! 誰かに聞かれたらどうするの!?」
「誰もおりませんよ」
「そ、そうだけど! 普段からそんなこと話してると、ふとした時に口を滑らせるかもしれないでしょ!? 気をつけなさい!」
「承知しました。失礼しました」
俺がそう頭を下げると、アーリス様はそっぽを向いたまま、ぼそりと呟いた。
「お、思ったほどじゃなかったわよ。今夜も行くから準備しておきなさい」
「え……? 今夜もですか……?」
「言ったでしょ、あなたを私の物にするって。すぐに私の虜にさせてみせるわ」
その後の修業は、至って真面目に行われた。
アーリス様は真剣な面持ちで俺の指示に従い、休憩を勧めても全く休もうとしない。
その姿には、本気で強くなりたいという意思が溢れていた。
呼吸を荒くし、汗だくになりながら一つひとつの動きを体に刻み込む。
俺もその間は、さすがにエロいことなど考えている余裕などなかった。
◆◆◆
数日後。
俺はフィリク様に呼び出され、オフィーリアと共に応接室へ向かった。
部屋に入ると、フィリク様の隣にはアーリス様もいて、すでに俺たちを待ち構えていた。
「ヒロシ殿、お忙しい中すみません」
「いえ、とんでもないです。どうされましたか?」
フィリク様は一冊の古びた本を差し出す。
表紙はすっかり擦り切れて、角も崩れている。
「図書館でこちらを見つけまして」
俺は受け取ってパラパラとめくってみるが、書かれている文字がまったく分からない。
え?
何語だよ、これ……。
「フィリク様、すみません。俺には何と書かれているか」
「ああ、失礼しました。これは古代猫人語で書かれている書物です。我々以外には、なかなか読めないですね」
俺が本を返すと、フィリク様は最初の方のページを広げた。
そこも下の方が既に破れている。
「ここに記されています」
そう言って、咳払いを一つして読み上げ始めた。
――怒れる魔王、六柱の巫女を従へ、天より降りし使者と戦ひけり。
されど魔王は敗れ、大地の裏にて隔絶せられぬ
多くの犠牲を出せし神も、其の座を追はれ給ひぬ。
かくして魔王と巫女らの手にありし武具は、後に『七つの大罪』と呼ばるることとなりぬ
「……つまり、何で怒ったのかはともかくとして、魔王と六人の巫女が、天使たちと戦った。で、負けた魔王はこの世界の裏側に隔離されたが、天界にも大きな犠牲が出たので、神はその座を追われることになった。魔王と巫女が使っていた武器は後に『七つの大罪』と呼ばれるようになった――ということですかね?」
「はい、その通りです。そして、これは偶然ですかね?」
「と、言いますと?」
「魔王であるヒロシ殿がこの世界に召喚されたのと時を同じくして、『七つの大罪』を巡り何者かが動き始めているのは」
応接室の空気がシンと静まる。
「え? 待って……。それって、私は現在の巫女の一人ってことなのかしら?」
アーリス様がめんどくさそうに顔をしかめた。
この夜の出来事の詳細は、ノクターンに連載中の
「 元・魔王の中年童貞のエロ日記 」
ep14 スアヌ王国の王女アーリス様との性交
にて公開してます。
宜しければ、そちらも読んで頂けると嬉しいです!




